介護保険の費用はいくら?給付費11.2兆円の内訳と、誰が負担しているのか【令和6年度】

介護保険の費用はいくら?給付費11.2兆円の内訳と、誰が負担しているのか【令和6年度】
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介護保険の給付費は、令和6年度に11兆1,826億円になりました。制度が始まった平成12年度は3兆2,427億円でしたから、25年で3.45倍です。

この記事では、厚生労働省の「令和6年度 介護保険事業状況報告(年報)」をもとに、介護保険にいくらかかっていて、そのお金を誰が出し、どこへ流れているのかを数字で追います。そのうえで、この水準をどう考えるべきかについて、現場で働く一人としての見方も書きます。

令和6年度の介護保険 数字でみる全体像

引用:令和6年度 介護保険事業状況報告(年報)のポイント、令和6年度 介護保険事業状況報告(年報)

項目令和6年度前年度からの変化
第1号被保険者数(年度末)3,584万人5万人(△0.1%)
要介護(要支援)認定者数721万人12万人増(+1.8%)
認定率19.7%0.3ポイント増
サービス受給者数(月平均)620万人12万人増(+1.9%)
費用額(利用者負担を含む)12兆952億円3,766億円増(+3.2%)
給付費(利用者負担を除く)11兆1,826億円3,564億円増(+3.3%)
第1号被保険者1人あたり給付費31万2千円1万400円増(+3.4%)
第1号被保険者の保険料収納額2兆5,862億円1,542億円増(+6.3%)
介護給付費準備基金の残高1兆1,054億円296億円増

この表のなかで、いちばん重要なのは1行目と2行目の対比です。65歳以上の人口は減ったのに、認定者も受給者も給付費も増えている。これが今の介護保険の状態です。

「費用額」「給付費」「総費用」はどれも違う数字

介護保険の規模を語るとき、資料によって数字が違うことがあります。混乱しやすいので先に整理します。

用語中身令和6年度
費用額保険給付の対象となったサービス費用の総額。利用者の自己負担を含む12兆952億円
給付費費用額から利用者負担を差し引いた、保険から出た額11兆1,826億円
介護保険特別会計の歳出保険給付費に加え、地域支援事業費や事務費なども含む12兆2,834億円

このほか、予算資料などでは地域支援事業費や利用者負担まで含めた「総費用」として、さらに大きな数字が示されることもあります。「介護に何兆円かかっている」という話を見たときは、どの範囲の数字なのかを確かめるのが大切です。この記事では、断りのない限り年報の実績値である給付費11兆1,826億円を基準にします。

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25年で3.45倍 何が費用を押し上げたのか

項目平成12年度令和6年度倍率
給付費3兆2,427億円11兆1,826億円3.45倍
サービス受給者数(月平均)184万人620万人3.37倍
要介護(要支援)認定者数256万人721万人2.82倍
第1号被保険者1人あたり給付費14万5千円31万2千円2.15倍
第1号被保険者数2,242万人3,584万人1.60倍

ここを読み解くと、費用の膨張が「高齢者が増えたから」だけでは説明できないことがわかります。支える対象である第1号被保険者は1.60倍にしかなっていないのに、給付費は3.45倍になっています。

差を生んでいるのは、認定率の上昇(11.0%→19.7%)と、1人あたり給付費が2.15倍になったことです。同じ人数でも、より多くの人が認定を受け、一人ひとりがより多くのサービスを使うようになった、ということです。

これ自体は制度が根づいた証でもあります。介護保険は「介護の社会化」を掲げて始まり、家族が抱え込んでいた介護を制度が引き受けてきました。高齢化が進み、超高齢社会のただ中にある日本で利用が広がるのは、設計どおりでもあります。

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被保険者はもう増えない 増えるのは「中身」

第1号被保険者数の推移を見ると、令和に入ってからほぼ横ばいです。

令和元年度3,555万人 → 2年度3,579万人 → 3年度3,589万人 → 4年度3,585万人 → 5年度3,589万人 → 6年度3,584万人。すでに頭打ちになっています。

しかし、その内訳は大きく動いています。

  • 前期高齢者(65〜74歳) 1,507万人 前年度から63.6万人減(△4.1%)
  • 後期高齢者(75歳以上) 2,077万人 前年度から58.6万人増(+2.9%)

認定率は、65〜74歳では4.3%にとどまるのに対し、75歳以上では31.0%に跳ね上がります。頭数は増えなくても、認定率が7倍以上高い層へ重心が移っているのですから、給付費が伸びるのは当然の帰結です。

実際、認定者を年齢別にみると、90歳以上が209万人(男性46万人・女性163万人)を占めます。人口は増えないのに費用だけが伸びる構造は、団塊の世代が全員75歳以上となった今後、いっそう強まります。さらに団塊ジュニア世代が高齢期に入る2040年ごろには、支え手そのものの減少が重なります。

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この11.2兆円は、誰が出しているのか

ここが、介護保険でもっとも誤解されやすいところです。

年報には「第1号被保険者の保険料収納額 2兆5,862億円」という数字が載っています。

給付費11兆1,826億円と並べると、保険料の4倍以上を給付しているように見えます。

しかしこれは、65歳以上の方から市町村が直接集めた保険料だけの数字です。介護保険特別会計の歳入を見ると、全体像が見えてきます。

介護保険特別会計の歳入内訳を示す円グラフ。第1号保険料20.6%、支払基金交付金(第2号保険料)25.0%、国庫支出金22.4%、都道府県支出金13.6%、繰入金15.7%、繰越金その他2.6%。保険料が45.6%、公費が51.7%
歳入の内訳(令和6年度)金額構成比性格
保険料2兆5,971億円20.6%第1号(65歳以上)の保険料
支払基金交付金3兆1,446億円25.0%第2号(40〜64歳)の保険料
国庫支出金2兆8,218億円22.4%公費(国)
都道府県支出金1兆7,083億円13.6%公費(都道府県)
繰入金1兆9,774億円15.7%公費(市町村ほか)
繰越金・その他3,322億円2.6%
歳入合計12兆5,814億円100.0%

40〜64歳の第2号被保険者が払う保険料は、市町村ではなく医療保険料に上乗せして徴収され、社会保険診療報酬支払基金を経由して「支払基金交付金」として入ってきます。だから市町村の帳簿では「保険料」の欄に現れません。

※年報の「第1号被保険者の保険料収納額(2兆5,862億円)」と、介護保険特別会計の歳入における「保険料(2兆5,971億円)」は、集計上の範囲や会計上の整理が異なるため、金額が完全には一致しません。

令和6年度決算の歳入で見ると、第1号保険料と支払基金交付金を合わせた保険料系の収入は約5兆7,417億円で、歳入全体の約46%です。一方、介護保険の制度設計としては、介護給付費は原則として公費50%・保険料50%で支える仕組みになっています。決算の歳入には繰入金や繰越金など性格の異なるものが混在するため、決算値と制度設計上の割合は分けて見る必要があります。なお、第2号被保険者の年齢を40歳より下げる案は以前から議論されていますが、実現していません。

介護保険の財源構成(第9期・令和6〜8年度)

公費 50% 国25%/都道府県12.5%/市町村12.5%
※施設等給付では国20%・都道府県17.5%

保険料 50% 第1号被保険者23%/第2号被保険者27%

したがって「保険料の4倍も給付している」という読み方は正しくありません。ただし、この構造から見えてくる事実はあります。65歳以上の第1号被保険者が負担する保険料は、制度設計上、介護給付費全体の23%です。残りは、40〜64歳の現役世代の保険料と、国・都道府県・市町村の公費でまかなわれています。介護サービスを使っていない高齢者も含めて、第1号被保険者全体で負担している23%だという点にも注意が必要です。なお、利用者が窓口で払う割合は負担割合証で1割・2割・3割に分かれます。

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お金はどこへ流れているのか

サービス区分別の内訳

区分給付費構成比
居宅サービス5兆4,407億円51.2%
施設サービス3兆3,722億円31.8%
地域密着型サービス1兆8,059億円17.0%
高額介護サービス費2,916億円
特定入所者介護サービス費(補足給付)2,322億円
高額医療合算介護サービス費401億円

※居宅サービス・地域密着型サービス・施設サービスの構成比は、この3区分の合計を100%とした割合です。高額介護サービス費、高額医療合算介護サービス費、特定入所者介護サービス費はこの構成比には含まれていません。

制度開始時は施設サービスが66.1%を占めていましたが、令和6年度は31.8%まで下がりました。代わりに居宅と地域密着型が伸びています。「施設から在宅へ」という政策の方向は、数字の上では実現しています。

人数と金額の「ねじれ」

この記事でいちばんお伝えしたいデータです。要介護度別に、認定者の割合と給付費の割合を並べてみます。

区分認定者に占める割合給付費に占める割合
要支援114.7%1.0%
要支援214.3%1.9%
要介護120.7%14.9%
要介護216.8%17.9%
要介護313.0%21.8%
要介護412.5%24.7%
要介護58.0%17.8%
軽度(要支援1〜要介護2)66.5%35.7%
重度(要介護3〜5)33.5%64.3%

※この表の給付費割合は、居宅サービス・地域密着型サービス・施設サービスの給付費(合計10兆6,187億円)を基準にした割合です。高額介護サービス費、高額医療合算介護サービス費、特定入所者介護サービス費は含みません。

人数では軽度が3分の2、金額では重度が3分の2。きれいに逆転しています。要支援1・2は認定者の29.0%を占めますが、居宅・地域密着型・施設サービスの給付費ベースでは2.9%にとどまります。

この事実は、費用の議論をするときに必ず踏まえておく必要があります。後の章でまた触れます。

サービス別の1人あたり給付費(月額)

サービス1人あたり月額
介護医療院37万円
介護老人保健施設30万2千円
地域密着型介護老人福祉施設29万9千円
介護老人福祉施設(特養)27万8千円
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)27万円
小規模多機能型居宅介護19万8千円
特定施設入居者生活介護19万円
定期巡回・随時対応型訪問介護看護16万8千円
認知症対応型通所介護11万9千円
通所介護8万4千円
訪問介護8万3千円
訪問看護4万2千円
居宅介護支援・介護予防支援1万3千円
福祉用具貸与1万2千円

施設系が20万〜37万円台であるのに対し、在宅の中心である訪問介護・通所介護は8万円台です。施設系サービスは1人あたりの給付額が大きく、施設入所が増えるほど給付費を押し上げやすい構造があります。ただし、施設サービスの受給者は要介護4・5だけで61.2%を占めるなど重度者の割合が高く、在宅サービスとは利用者の状態像が異なります。単純に「在宅の方が安い」と比較するだけでは不十分です。

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GDP比1.8%をどう読むか

給付費の対国内総生産(名目)比は、制度開始時の0.6%から、令和6年度は1.8%になりました。令和3・4年度に1.9%を記録し、その後は1.8%で推移しています。

「たった1.8%」と見るか「もう1.8%」と見るかは立場によります。ただ、視野を社会保障全体に広げると景色が変わります。厚生労働省によれば、社会保障給付費は2026年度(予算ベース)で144.1兆円、対GDP比20.8%。年金・医療・福祉を合わせると、国内総生産の5分の1が社会保障給付として動いていることになります。

介護保険はそのなかの一部門にすぎません。それでも25年で給付費が3.45倍になっていることは、制度の拡大速度の大きさを示しています。そして今後、後期高齢者への重心移動によって、給付費の増加圧力はさらに強まると考えられます。

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【論点】この水準は持続可能なのか

ここからは、数字の紹介ではなく、筆者(理学療法士・介護支援専門員)としての見方を書きます。異なる立場があり得ることを承知のうえで、現場から見えているものを率直に述べます。

負担する側の限界は、すでに見えている

厚生労働省の公表によれば、第1号被保険者の介護保険料は制度開始時(第1期)の全国平均月2,911円から、第9期(令和6〜8年度)には6,225円へと約2.1倍になりました。40歳以上の医療保険料に上乗せされる第2号保険料も年々重くなり、そこへ子ども・子育て支援金(通称:独身税)のような新たな上乗せも加わっています。

同じことは医療保険でも起きており、後期高齢者医療制度の保険料や高額療養費制度の見直しも続いています。手取りが増えないなかで社会保険料だけが上がっていく状況は、現役世代にとって切実です。「制度を守るために負担を増やす」という手段は、そろそろ限界に近づいていると考えるべきでしょう。

それでも介護報酬は下げられない

一方で、給付費を抑える最も直接的な手段である介護報酬の引き下げは、現実的にきわめて難しくなっています。

介護職員の人数は増えてきたものの、賃金は他産業と比べてなお低く、人材確保の難しさは年々増しています。訪問介護をはじめ、事業所の休廃業も課題になっています。報酬を下げれば、事業所が減り、サービスそのものが提供できなくなる処遇改善加算の拡充が改定のたびに繰り返されてきたのは、そのためです。

つまり、負担は増やせない、報酬は下げられないという板挟みのなかで、給付費だけが伸び続けているのが現在地です。

残るのは「中身の精査」しかない

この状況で残された道は、給付されているサービスの中身を精査することだと考えます。

現場にいると、必要性を十分に説明できないまま続いているサービスに出会うことがあります。目的が曖昧なまま継続している通所介護、生活の自立に結びついているとは言いがたい訪問介護、使われないまま置かれている福祉用具。それぞれの事業所も利用者も悪意があるわけではなく、「ずっとそうしてきたから」続いているものです。保険者によるケアプラン点検や、区分支給限度額の7割以上を利用するプランの検証が制度化されているのも、この問題意識からです。

介護保険は、65歳以上の第1号被保険者が直接負担する保険料だけで給付をまかなう制度ではありません。第2号被保険者の保険料と公費を合わせて支える仕組みであり、利用者本人が窓口で見る負担額と、実際に制度から支払われている給付額には大きな距離があります。その距離があるぶん、費用への意識は働きにくい構造になっています。だからこそ、効果を測り、必要性を説明する責任は、制度を運用する側にあると思います。

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ただし「削ればいい」では解決しない

ここで、自分の主張にブレーキをかけておきたいことが3つあります。数字を見れば見るほど、単純な削減論では答えにならないことがわかるからです。

1 軽度者を削っても財政効果は限定的

「軽度者へのサービスを見直すべき」という議論は繰り返し出てきます。しかし先ほどの表のとおり、要支援1・2は認定者の29.0%を占めるのに、居宅・地域密着型・施設サービスの給付費では2.9%にすぎません。仮にここをすべて削っても、給付費全体への影響はごくわずかです。

要介護1・2まで含めても、軽度全体で給付費の35.7%。「人数が多いところ=お金がかかっているところ」ではないという事実は、議論の出発点として押さえておくべきです。

2 軽度への支援を削ると、重度化して費用が増えうる

在宅の訪問介護・通所介護は1人あたり月8万円台、施設は20万〜37万円台です。在宅で支えきれなくなって施設入所に至れば、費用は3〜4倍になります。

軽度のうちにフレイルの進行を食い止め、健康寿命を延ばすことができれば、結果として給付費は抑えられる可能性があります。通いの場総合事業が重視されるのもそのためです。

もっとも、健康寿命の延伸が医療費抑制につながるかどうかには異論もあり、予防の費用対効果は簡単には測れません。それでも、目先の削減が中長期の増加を招く可能性は、削減論を語る側こそ慎重に見ておくべきところです。

3 そもそも保険料だけで賄う制度ではない

介護保険は公費50%を前提に設計された制度です。「保険料より給付が多いのはおかしい」という見方は、制度の建て付けとは合いません。社会保障は、支払った額に応じて受け取る仕組みではなく、リスクを社会全体で分散させる仕組みだからです。

また、市町村には介護給付費準備基金が1兆1,054億円積み上がっており、保険者に資金を貸し付ける財政安定化基金の貸付残額は令和6年度末で2億円まで減っています。保険料の収納率も99.4%と高い水準です。少なくとも令和6年度末時点の保険者財政だけを見れば、直ちに破綻する状況とはいえません。危機を煽ることと、冷静に持続可能性を検討することは別のことです。

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現場の私たちにできること

制度全体を動かすのは政策の仕事ですが、給付費11.2兆円は、一件一件のケアプランと請求の積み重ねでできています。現場でできることもあります。

  • 目的と期限をもったケアプランにする 「なぜこのサービスが必要か」「いつまでに何を目指すか」を書ける状態にしておく。説明できないサービスは、見直しの対象になります
  • 効果を測って記録する LIFEへの提出は事務作業として捉えられがちですが、「このサービスに効果があった」と数字で示せる材料になります(フィードバックの活用しにくさという課題は残っています)
  • 限度額いっぱいのプランを疑ってみる 区分支給限度額を使い切ることが目的化していないか。保険給付になじまない部分は保険外サービスで担うという選択肢もあります
  • 費用を利用者と共有する 多くの方は、窓口で支払う1〜3割分だけを見ています。10割の金額と、そのうち7〜9割が保険料と税でまかなわれていることを伝えるだけでも、受け止め方は変わります

4つめは特に大切だと感じています。負担と給付の距離が遠いことが費用意識を薄れさせるのなら、その距離を少しでも縮められるのは、日々説明する立場にいる人間です。

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負担が重いと感じたときに使える制度

制度全体の話とは別に、目の前の利用者の支払いが厳しいときに使える仕組みがあります。費用の記事として、あわせて整理しておきます。

よくある質問

Q
介護保険の費用は「13兆円」と聞いたことがありますが?
A

どの範囲を指すかで数字が変わります。介護保険事業状況報告(年報)の令和6年度実績では、給付費11兆1,826億円、利用者負担を含む費用額12兆952億円、介護保険特別会計の歳出合計12兆2,834億円です。これに地域支援事業費や利用者負担まで含めた「総費用」で語る資料もあり、そちらではより大きな数字が示されます。数字を見たら、まず範囲を確かめてください。

Q
保険料収納額2.6兆円に対して11.2兆円も給付しているのは使いすぎでは?
A

2兆5,862億円は、65歳以上の第1号被保険者から市町村が集めた保険料だけの額です。40〜64歳の第2号被保険者の保険料は医療保険料に上乗せして徴収され、支払基金交付金3兆1,446億円として別に入っています。両方を合わせた保険料は約5兆7千億円で、残りは国・都道府県・市町村の公費です。介護保険はもともと公費50%・保険料50%で設計されているため、「保険料の4倍を給付している」という読み方は制度の建て付けと合いません。

Q
高齢者が増えているのだから費用が増えるのは当然では?
A

それだけでは説明がつきません。第1号被保険者数は25年で1.60倍ですが、給付費は3.45倍です。認定率が11.0%から19.7%へ上がったことと、1人あたり給付費が2.15倍になったことが差を生んでいます。ただし、第1号被保険者数はすでに横ばいで、増えているのは認定率の高い75歳以上の層です。今後は「人数が増えるから」ではなく「年齢構成が変わるから」費用が伸びる局面に入ります。

Q
軽度者へのサービスを削れば財政は改善しますか?
A

数字の上では効果は限定的です。要支援1・2は認定者の29.0%を占めますが、居宅・地域密着型・施設サービスの給付費では2.9%にすぎません。要介護2までの軽度全体でも同じ基準で35.7%で、残る64.3%は要介護3以上に使われています。加えて、在宅サービスは1人あたり月8万円台、施設サービスは20万〜37万円台ですから、軽度への支援を削って重度化・施設入所が早まれば、かえって費用が増える可能性もあります。

Q
介護保険の財政はもう破綻寸前なのですか?
A

令和6年度末時点では、市町村の介護給付費準備基金が1兆1,054億円積み上がっており、保険者に資金を貸し付ける財政安定化基金の貸付残額は2億円まで減っています。保険料の収納率も99.4%と高い水準です。直ちに破綻するという状況ではありません。ただし、これは3年ごとに保険料を引き上げて収支を合わせてきた結果でもあります。持続可能性の問題は、破綻するかどうかではなく、負担をどこまで引き上げ続けられるかにあります。

まとめ

令和6年度の介護保険の給付費は11兆1,826億円、利用者負担を含む費用額は12兆952億円でした。制度開始から25年で3.45倍です。第1号被保険者は3,584万人で頭打ちになった一方、認定者は721万人、受給者は月平均620万人へと増え続けています。

財源は公費50%・保険料50%。制度設計上、65歳以上の第1号被保険者が負担する保険料は23%、40〜64歳の第2号被保険者が負担する保険料は27%で、残りは国・都道府県・市町村の公費です。負担と給付の距離が遠く、費用への意識が働きにくい構造になっています。

負担はこれ以上増やしにくく、介護報酬も人材確保のために下げにくい。残された選択肢は、給付されているサービスの中身を精査し、効果を説明できるようにしていくことだと筆者は考えます。

ただし、それは「軽度者を切る」という単純な話ではありません。人数の3分の2を占める軽度者に使われているのは、居宅・地域密着型・施設サービスの給付費ベースで35.7%。同じ基準では、金額の3分の2近くが要介護3以上に流れています。在宅を支える月8万円のサービスを削った結果、月30万円の施設入所が早まるなら、財政的にも本人の生活にとっても得るものはありません。

問われているのは、削るか削らないかではなく、一件一件のサービスについて「これは必要だ」と数字と言葉で説明できるかどうかです。それは、制度を運用している私たち自身の仕事だと思っています。

参照資料

2024年・2025年・2026年
介護保険・介護報酬改定の情報

令和8年度(2026年)障害福祉サービス等報酬改定の概要と変更点まとめ

2026年(令和8年)介護報酬改定の全体像についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

介護報酬改定2026年(令和8年度)まとめ|いつから・変更点・対象サービスをわかりやすく解説

令和6年~8年 地域区分(介護)区市町村の等級一覧(2024年4月~)

介護保険区分支給限度基準額一覧(要支援・要介護)

New! 令和8年(2026年)介護報酬改定

New!令和8年(2026年)介護報酬改定介護報酬改定後の介護保険サービスごとの介護報酬・単位数

 介護保険の居宅サービス介護給付費単位数(対象:要介護)

地域密着型サービスの単位数改定内容

介護予防サービス(対象・要支援)

介護予防・日常生活支援総合事業費(要支援・事業対象者)の改定内容

施設サービス等介護給付費単位数の改定内容

      2026年(令和8年度)・2024年 介護報酬改定で特徴的な加算・制度

      利用者負担軽減の仕組みの改定

      補足給付(負担限度額認定)に関わる見直しは、以下のとおりです。

      令和6年8月1日施行 基準費用額の見直し

      令和7年8月1日施行 多床室の室料負担
      令和8年8月1日施行 食費基準費用額の1,445円→1,545円、低所得者の食費負担限度額の段階別変更

       

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