介護事業所の「人員基準欠如減算」とは?介護給付費原則3割減算の内容・届出・猶予期間

介護事業所の「人員基準欠如減算」とは?介護給付費原則3割減算の内容・届出・猶予期間
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介護事業所では、介護保険法上の運営基準で定められた人員を下回ると「人員基準欠如減算」が適用され、介護給付費が原則3割減額されます。急に職員がやめてしまい、残った職員に負担がかかり、その後に立て続けに退職が続くということも近年は増えています。

人手不足が慢性化している介護現場では、退職者が出た際に減算を避けようと採用に奔走するケースが多く、事業経営に直結する重要な制度です。

令和8年6月(2026年6月)の算定分から、「突発的で想定が困難な事象によるやむを得ない事情」が生じた場合に限り、一定の要件を満たした事業所については減算適用を猶予できる特例が新設されました

この記事では、人員基準欠如減算の基本的な仕組みと、この新しい猶予期間特例について整理します。

人員基準欠如減算とは

人員基準欠如減算とは、介護事業所・施設において介護職員・看護職員・ケアマネジャー等の配置数が、運営基準上満たすべき員数を下回っている状態が続く場合に、介護給付費を原則3割減算する制度です。

対象サービスは、通所系・多機能系・入所系・居住系サービスで、訪問介護や居宅介護支援(ケアマネ事業所)も含まれます。減算は利用者全員の介護給付費に適用されます。

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欠如の程度と減算適用タイミング

減算が適用されるタイミングは、欠如の程度と職種によって異なります。

介護職員・看護職員の場合

欠如の程度減算が始まる時期
人員基準上必要な員数から1割を超えて減少した場合欠如が生じた翌月から減算。人員基準欠如が解消された月まで適用。
人員基準上必要な員数から1割の範囲内で減少した場合欠如が生じた翌々月から減算。ただし、翌月末日までに基準を満たした場合は減算されない。

ケアマネジャーの場合

介護支援専門員(ケアマネジャー)が欠如した場合は、欠如が生じた月の翌々月から減算が適用されます。ただし翌月末日までに補充できた場合は減算されません。

適用フロー(イメージ)

人員基準欠如減算適用の例

引用:やむを得ない事情における人員欠如に係る特例的な取扱い(報告) 第255回社会保障審議会介護給付費分科会 資料3(令和8年3月30日)

1割超の欠如(介護・看護職員)1割以下の欠如(介護・看護職員)・ケアマネ
4月欠員発生欠員発生
5月減算適用開始猶予(翌月末まで補充すれば減算なし)
6月減算継続補充できなければ減算適用開始
人員補充後補充した月に解消、翌月から減算解除補充した月に解消、翌月から減算解除
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減算の幅は「原則3割」

減算の幅は原則として所定単位数の3割です。分科会の議論では「3割は大きすぎる」「欠員が出ると経営破綻につながりかねない」という事業者側の声が上がっており、特に人材確保が困難なケアマネジャー分野で問題視されています。

一方、「猶予期間を延ばすと残った職員の負担がさらに増加し、連鎖退職を招く」「サービスの質・安全性への影響が懸念される」という慎重意見もあり、現行制度は1割以下の欠如についての翌々月適用(実質1〜2か月程度の猶予)が基本となっています。

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人員基準欠如になったら何をするのか

人員基準欠如減算で介護事業所の方が最も気になるのは「欠員が出たとき、実際に何をどの順番でやればいいのか」という点だと思います。届出が必要なのか、国保連への請求はどうするのか、補充できたときはどうするのかをまとめます。

届出は必要 勝手に減算して終わりにはできない

人員基準欠如が発生した場合、都道府県知事(または市区町村)への届出が必要です。届出をせずに自己判断で減算請求を行っても、行政から見れば「体制変更の報告がない」状態のままであり、後の運営指導・監査で問題になります。

届出なしで通常の単位数のまま請求し続けた場合は不正請求となり、報酬返還を求められます。逆に届出なしで減算請求していた場合も、体制変更の手続きを適正に行っていないとして指摘されるケースがあります。

提出が必要な書類

通常の人員基準欠如の場合、以下の書類を都道府県(または市区町村)の介護保険担当窓口に提出します。

  • 介護給付費算定に係る体制等に関する届出書
  • 介護給付費算定に係る体制等状況一覧表
  • 勤務形態一覧表(求められる場合)

様式や提出方法(電子・郵送・窓口持参)は自治体によって異なります。急に欠員が出た場合は様式を探す前に、まず都道府県または市区町村の担当窓口に電話で状況を伝えて確認するのが最も確実です。

国保連への請求はどうするか

届出が受理された後、請求ソフトなどで減算を組み入れて、減算後の単位数(基本報酬×70/100)で国保連に請求します。欠如の程度と職種に応じた適用開始月(翌月または翌々月)から減算請求に切り替えます。

令和8年6月以降に突発的特例の届出(別紙様式7)が受理された場合は、猶予期間中は通常の単位数で請求できます。

人員が補充できたときの手続き

補充ができた月に人員基準が解消されれば、翌月から通常の単位数に戻せます。

このときも体制変更の届出が必要です。補充完了を行政に届け出ることで、翌月から通常請求に切り替えられます。届出を忘れると、補充後も減算請求を続けることになり、今度は過少請求の状態になってしまいます。

実務フロー 欠員発生から補充完了まで

ステップやること
欠員が発生・確定した時点1割超の欠如か1割以内かを確認する。突発的事情か計画的退職かを確認する
すぐに都道府県または市区町村の介護保険担当窓口に連絡・相談する
欠如発生月の翌月まで体制等届出書を提出する。突発的特例を使う場合は別紙様式7と求人票の写しも提出する
減算適用月から減算後の単位数(×70/100)で国保連請求に切り替える(特例猶予中は通常単位数のまま)
人員補充ができた月再度、体制変更の届出書を提出する
補充翌月から通常の単位数での国保連請求に戻す

届出書の提出が遅れたり、補充後の届出を忘れたりするケースが実務では起きやすいです。欠員が出た時点でまず担当窓口に相談し、手続きの期限と必要書類を確認することが、余計なトラブルを防ぐ一番の近道です。

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令和8年6月から新設 突発的欠如の猶予期間特例

令和8年5月8日、厚生労働省老健局から「やむを得ない事情における人員欠如に係る特例的な取扱い」が通知され、令和8年6月の算定分から適用されています(介護保険最新情報Vol.1502、令和8年5月8日)。

この特例は、診療報酬(医療)での見直しと足並みをそろえた改正で、「突発的で想定が困難な事象によりやむを得ない事情」が生じた場合に、一定の要件を満たす事業所について減算の適用を猶予できるものです。

特例の概要

  • 特例を適用できるのは1年に1回に限る
  • 猶予期間は人員欠如が発生した月の翌々月まで(3か月を超えない範囲)
  • 対象は1割の範囲内で減少した場合に限る(1割を超える欠如には適用されない)
  • 介護・看護職員が対象。ケアマネジャーも対象となる(第255回介護給付費分科会資料より)

特例を受けるための4つの要件

以下のa〜dすべてに該当することが条件です。

  • a ハローワークまたは無料職業紹介事業を活用していること
    公共職業安定所(ハローワーク)、または都道府県ナースセンター・福祉人材センター等の無料職業紹介事業を活用して、職員の確保に取り組んでいること。
  • b 民間職業紹介事業者を利用する場合は適正認定事業者を含めること
    民間の有料職業紹介事業者を使う場合は、「医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者認定制度」による適正認定事業者を含めること。
  • c 採用情報をウェブサイト等で積極的に公表していることが望ましい
    ハローワーク等の活用に加えて、事業所自身のウェブサイト等で採用情報を公表するなど、積極的な確保活動をしていることが望ましいとされています。
  • d 残った職員に過度な業務負担とならないよう、適正な労働時間管理を行い体制整備に努めること
    欠員が生じていても、他の職員への業務集中を防ぐための労働時間管理を行うことが前提となっています。

届出の方法と期限

特例を受けるためには、都道府県知事に対して届出が必要です。

  • 届出期限 人員欠如が発生した日の属する月の翌月までに速やかに提出する
  • 添付書類 報告する時点で有効な求人票の写しを必ず添付すること
  • 届出様式 「別紙様式7」(通所系・訪問系等)または「別紙様式14」(入所・居住系等)に記載する

様式には、事業所名・住所・介護保険事業所番号、欠員となった職種(介護職員・看護職員・介護支援専門員等)、人員欠如の発生月、やむを得ない事情の概要、職員確保の取組状況(ハローワーク利用・民間紹介事業者の利用・適正認定事業者の利用・労働時間管理の状況)、過去に同様の届出をしたことがあるかどうかを記載します。

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「突発的で想定が困難な事象」とはどのような場合か

通知・Q&Aによれば、以下のような場合が該当するとされています(診療報酬の疑義解釈に準じた解釈)。

  • 感染症の拡大により看護・介護職員が出勤できない状況が増加した場合
  • 職員や家族の突発的な体調不良等により1か月を超える不在が見込まれる場合
  • 自己都合による急な離職が複数重なった場合

単純な人手不足や計画的な退職が見込まれていた場合は「突発的」に該当しないとみられます。「やむを得ない事情であること」を届出書に具体的に記載することが求められます。

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特例に関する注意点

この特例はあくまで人材確保に向けた取り組みを前提とした「猶予」であり、欠員状態が続くことを容認するものではありません。

分科会の議論では、猶予期間の延長に反対する立場から「欠員状態のまま期間が伸びれば残った職員の負担が増加し、連鎖退職を招く悪循環になりかねない」という指摘もありました。特例を活用する場合でも、できる限り早期に人員を補充することが事業所・施設の責務です。

また、1年に1回という回数制限があるため、同じ事業所が毎年繰り返し届出をすることはできません。恒常的な人員不足は特例の対象外であり、根本的な採用・定着の改善が求められます。

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まとめ

人員基準欠如減算のポイントを整理します。

  • 人員基準上必要な員数を下回ると、原則3割の介護給付費減算が適用される
  • 1割超の欠如は翌月から、1割以内の欠如とケアマネ欠如は翌々月から減算(翌月末補充で免除)
  • 令和8年6月算定分から、突発的な欠如の場合に限り猶予期間特例が新設(1年1回・翌々月まで)
  • 特例を受けるにはハローワーク等の活用、求人票添付の届出が必要
  • 1割を超える欠如・計画的退職は特例対象外

人材確保が困難な状況が続く中で、今回の特例は現場の現実にある程度歩み寄った改正といえます。ただし特例はあくまで「猶予」であり、早期採用・定着に向けた取り組みを積み重ねることが事業所・施設の安定経営につながります。

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参照資料

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2024年・2025年・2026年
介護保険・介護報酬改定の情報

令和8年度(2026年)障害福祉サービス等報酬改定の概要と変更点まとめ

令和6年~8年 地域区分(介護)区市町村の等級一覧(2024年4月~)

介護保険区分支給限度基準額一覧(要支援・要介護)

New! 令和8年(2026年)介護報酬改定

New!令和8年(2026年)介護報酬改定介護報酬改定後の介護保険サービスごとの介護報酬・単位数

 介護保険の居宅サービス介護給付費単位数(対象:要介護)

地域密着型サービスの単位数改定内容

介護予防サービス(対象・要支援)

介護予防・日常生活支援総合事業費(要支援・事業対象者)の改定内容

施設サービス等介護給付費単位数の改定内容

      2026年(令和8年度)・2024年 介護報酬改定で特徴的な加算・制度

      利用者負担軽減の仕組みの改定

      補足給付(負担限度額認定)に関わる見直しは、以下のとおりです。

      令和6年8月1日施行 基準費用額の見直し

      令和7年8月1日施行  多床室の室料負担

       

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