なぜ「できるADL」は「しているADL」にならないのか|介助量・環境・人手をコストで考える

なぜ「できるADL」は「しているADL」にならないのか|介助量・環境・人手をコストで考える
広告

リハビリの場面では立てる。手すりを持てばトイレにも行ける。評価上は「一部介助」と言っていい。

でも、実際の生活ではオムツのまま。

介護施設では、こういうことが珍しくありません。リハ職から見ると「できるのに、なぜやらないのか」と感じます。一方で、フロアを回している側から見ると「できるのは分かる。でも、そのタイミングで誰が行くのか」という話になります。

この記事で言いたいのは、現場の誰かを責めることではありません。

「できるADL」と「しているADL」の差は、本人の能力だけでは決まりません。環境、介助方法、そして呼ばれたときに対応できる人手によって決まります。つまり、その差はかなりの部分が“コスト”でできています。

このコストを計算してみると、自立支援が進まない理由は「介護職がやってくれないから」でも、「リハ職の伝え方が悪いから」でもなく、もっと構造的な問題として見えてきます。

もちろん、本人の尊厳や生活の価値をお金に換算したいわけではありません。むしろ逆です。尊厳ある生活を本当に続けるには、現場にどれくらいの時間・人手・環境整備が必要なのか。そこを見えるようにするために、あえてお金に置き換えて考えてみます。

「できる」のに、生活では「していない」ことがある

リハビリ室では立ち上がれる。平行棒の中なら歩ける。トイレ動作も、時間をかければ何とかできる。

でも居室に戻ると、車椅子のまま。移動は全介助。排泄はオムツ対応。

リハ職として関わっていると、この差がどうしても気になります。「ここまでできるなら、生活でもやった方がいいのでは」と思うわけです。実際、その感覚は間違っていません。生活のなかで動作を使わなければ、せっかく上がった能力も落ちていきます。

ただ、施設の管理やフロア運営の側に立つと、見え方が変わります。

トイレに行けるかどうかは、本人の能力だけで決まっていません。トイレまでの距離、手すりの位置、便座の高さ、車椅子を寄せるスペース、職員の介助方法、そして何より行きたいタイミングで職員が来られるかに左右されます。

この最後の部分が、いちばん難しいです。

リハビリの時間なら、利用者さん1人に対して職員1人がつきます。必要なら待てます。声もかけられます。少しふらついても、すぐ支えられます。でも生活場面では、同じ時間に他の人の食事介助、コール対応、入浴準備、記録、家族対応が重なります。

「できるADL」を「しているADL」にするには、この差を埋めなければなりません。

広告

FIMとBIで見えるもの、見えにくいもの

ADL評価の話をすると、FIMやBarthel Indexが出てきます。

FIMは、基本的には「実際にどれくらい介助が必要か」を見る評価なので、「しているADL」に近い感覚で使いやすいと思います。介助量がどれくらいか、見守りなのか、触れているのか、かなり細かく見ます。

一方で、少しややこしいのがBarthel Indexです。

BIは、日本のリハビリテーション領域では「できるADL」の評価として説明されることが多いツールです。一方で原著には、実際に要した介助の量と時間にもとづいて採点するという趣旨の記述があり、「しているADL」に近いという読み方もあります。つまり、BIがどちらを見ているのかは、そもそも一枚岩ではありません。

項目も点数も比較的シンプルで、食事、移乗、トイレ動作、歩行、更衣、排便・排尿などを大まかに把握しやすい評価です。その分、採点する人が「能力」を見ているのか「実際の生活」を見ているのかによって、同じ利用者さんでも点数が変わりうる余地が残ります。

だからこそ、ADL維持等加算のように制度上の評価に組み込まれると、現場ではそれが「本当にできる能力」なのか、「普段している状態」なのかが曖昧になりやすいのだと思います。

たとえばトイレ動作です。手すりがあって、職員が横について、少し待てば立位保持も下衣操作もできる。この場合、能力としては「一部介助」と言えるかもしれません。

でも実際の生活では、ナースコールを押してもすぐに職員が来られず、間に合わないことが続く。結局、日中もオムツ対応になっている。そうなると、「できるADL」としては一部介助でも、「しているADL」としては全介助に近い状態になります。

評価表の点数だけを見ると、このズレは見えにくいです。だからこそ、点数の変化だけでなく、生活場面で本当に何が起きているのかを見ないといけません。

広告

「しているADL」は、能力と環境と人手の合成で決まる

この「できる/している」という区別は、日本の現場だけの言い回しではありません。WHOのICF(国際生活機能分類)では、活動と参加を評価するときに「能力(capacity)」と「実行状況(performance)」という2つの評価点を使い分けます。能力は標準的な環境でどこまでできるか、実行状況は今いる環境で実際にどうしているか、を指します。

そしてICFは、この2つの差を生む要因として「環境因子」を構成要素に組み込んでいます。能力と実行状況の差を見れば、環境に何を足せば実行状況が改善するかが分かる、という考え方です。つまり「できるのに、していない」という状態は、本人の問題ではなく環境の問題として読むように、最初から設計されています。

この記事でやろうとしているのは、その環境因子に値段をつけてみることです。

「できるADL」と「しているADL」の差を生んでいるものは、大きく分けると3つあります。

変数中身お金に置き換えると
環境手すりの位置、ベッドや便座の高さ、動線、床材、照明、車椅子を寄せるスペース福祉用具・設備費・改修費
介助方法声かけ、支える位置、待つ時間、職員間で方法が統一されているか教育時間・申し送り・マニュアル化
マンパワー必要な時間に、必要な職員が、必要なだけ待てるか人件費・シフト上の余力

この3つは、どれもお金に置き換えられます。

手すりを付けるなら費用がかかります。介助方法を統一するなら、職員教育の時間が必要です。本人のタイミングに合わせてトイレ誘導をするなら、そこに行けるだけの人手が必要です。

つまり、「しているADLを上げる」というのは、無料ではありません。

ここを見ないまま、「できるのだから生活でもやりましょう」と言ってしまうと、介護現場からするときついです。言っていることは正しい。でも、その正しさを実行するだけの余力がない。こういうことが起きます。

極端に言えば、本人の自立度が低くても、毎回必要な介助を投入できれば「トイレで排泄している」という生活行為は成立します。ただし、それはADL自立度が高いという意味ではありません。生活行為として成立していることと、自立していることは別です。

このあたりを混ぜてしまうと、話がややこしくなります。

広告

では、トイレ誘導に変えるといくらかかるのか

ここからはモデル計算です。実測値ではありません。

時給は法定福利費込みで1,600円と仮定します。1分あたり約26.7円です。介助時間も、施設や利用者さんの状態によって当然変わります。あくまで「こうやって考える」という計算の枠組みとして見てください。

計算の考え方

一時費用 = 環境整備費 + 職員教育 + 移行期の追加介助

毎月の効果 = 介助時間の減少 + 物品費の削減 + 関連する加算

回収期間 = 一時費用 ÷ 毎月の効果

たとえば、オムツ全介助の方を、日中だけトイレ誘導に移行するケースで考えます。

現状 オムツ全介助の場合

日中はオムツ交換5回。1回8分として40分。そのうち1回は2人介助が必要で、もう1人分の8分を足します。夜間は交換2回で16分。

合計すると、職員の延べ時間は64分/日です。

移行後 日中トイレ誘導・夜間オムツの場合

日中はトイレ誘導6回。1回7分として42分。夜間はこれまでどおりオムツ交換2回で16分。

合計すると、職員の延べ時間は58分/日です。

この計算だけなら、1日6分の削減になります。月にすると180分、つまり3時間です。

月あたりの効果計算金額
介助時間の削減6分/日 × 30日 = 3時間
3時間 × 1,600円
4,800円
パッド代の削減日6枚 → 日2枚
4枚 × 60円 × 30日
7,200円
ADL維持等加算の目安ADL維持等加算(Ⅱ)60単位/月
1単位10円で単純計算
約600円
合計12,600円

一方で、最初に必要な費用もあります。

一時費用内容金額
環境整備縦手すり、可動式手すり、設置費など70,000円
職員教育介助方法の統一
30分 × 20人 × 時給1,600円
16,000円
移行期の追加介助慣れるまで+10分/日 × 90日24,000円
合計110,000円

一時費用110,000円に対して、毎月の効果が12,600円。単純に割ると、回収期間は約8.7か月です。

ここまでなら、「やった方がいい」という結論になります。利用者さんにとっても、オムツからトイレに移れる意味は大きいです。施設側にも、介助時間と物品費の削減があります。

ただ、ここで終わらないのが排泄ケアです。

広告

抜けやすいのは「呼ばれたらすぐ行ける」コスト

トイレ誘導は、食事や入浴と違って、本人のタイミングに左右されます。

行きたいときに行けなければ間に合いません。間に合わなければ失禁します。失禁すれば、衣類交換、清拭、リネン交換、記録、場合によっては皮膚トラブルの対応まで出てきます。

つまり、トイレ誘導を生活として成立させるには、定時の介助時間だけでなく、呼ばれたときに動ける余力が必要になります。

この余力が高い。

20床のフロアで、日中12時間に追加の余力を持たせるとします。時給1,600円で計算すると、0.3人分の余力でも月172,800円。0.5人分なら月288,000円です。

上乗せする余力フロア月額入居者1人あたり先ほどの効果12,600円との差
0.3人分172,800円8,640円+3,960円
0.5人分288,000円14,400円▲1,800円

ここで一気に見え方が変わります。

0.3人分の余力で回るなら、まだ成立します。でも0.5人分が必要なら、さっきまで黒字だったものが赤字になります。

もちろん、実際に0.3人や0.5人の職員を雇うという意味ではありません。シフトの組み方、兼務、フロア間応援、コール対応の優先順位などを含めて、日中帯にそのくらいの余力を持てるか、というモデル計算です。

ただ、現場の感覚としてはここが本質に近いと思います。自立支援が成立するかどうかは、本人の能力だけではなく、必要なタイミングに職員が動けるかで決まります。そしてこれは、臨床判断であると同時に、かなり経営判断です。

広告

一人なら成立する介助や見守りも、フロア全体では話が変わる

もう少し嫌な計算をします。

20床すべてがオムツ全介助のフロアがあったとします。1人あたり現状64分/日なので、フロア全体では1,280分/日です。

ここから、何人かを日中トイレ誘導に移行します。定時ケアだけ見れば、1人あたり6分/日ずつ減ります。ただし、随時対応の緩衝として、移行者1人あたり10分/日を見込むことにします。

トイレ誘導へ移行した人数定時ケア随時緩衝合計現状比
0人1,280分0分1,280分±0分
5人1,250分50分1,300分+20分
10人1,220分100分1,320分+40分
15人1,190分150分1,340分+60分
20人1,160分200分1,360分+80分

定時ケアだけなら、移行するほど時間は減ります。でも、本人のタイミングに合わせる随時対応を前提にすると、移行するほど総時間は増えます。

ここです。

「1人だけならできたのに、フロア全体でやろうとすると回らない」ということがあります。逆に、「全体で方針を決めないと、1人だけ頑張っても定着しない」ということもあります。

どちらも現場の怠慢ではなく、構造の問題です。

広告

定時誘導は、妥協ではなく合理解でもある

こう考えると、多くの施設が定時誘導に落ち着く理由も見えてきます。

本人の尿意に完全に合わせるわけではない。だから、理想的な意味での自立とは少し違います。でも、排泄パターンを見ながら時間を決めて誘導すれば、オムツ対応よりは生活動作に近づきます。そして随時対応の緩衝をかなり減らせます。

完全随時対応、定時誘導、オムツ全介助。この3つを並べると、こうなります。

排泄支援の位置づけ

自立度が高い 完全随時対応 > 定時誘導 > オムツ全介助

コストが高い 完全随時対応 > 定時誘導 > オムツ全介助

定時誘導は、理想を諦めた雑なケアではありません。もちろん、ただ時間で連れていくだけなら雑になります。でも、排泄パターンを見て、本人の能力とフロアの動きに合わせて組めているなら、かなり現実的な答えです。

現場の「その時間なら行ける」は、冷たい言葉ではありません。制度や人員配置のなかで、どうにか生活を成立させようとした結果でもあります。

広告

食事と移動では、また計算が変わる

排泄は随時性が高いので、コストが跳ね上がりやすいです。では、他のADLではどうでしょうか。

たとえば食事です。全介助から、セッティングと見守りで食べられる状態に移れた場合、時間削減は比較的素直に出ます。食事の時間はある程度決まっているので、排泄のような「呼ばれたらすぐ行く」コストが小さいからです。

この場合は、姿勢調整、食器の位置、滑り止めマット、先割れスプーンや自助具の選び方が効きます。人を増やすより、環境や道具を変えた方が安く済むこともあります。

一方で移動は、また別の難しさがあります。

車椅子全介助から歩行器で見守りに移れれば、介助時間は減るかもしれません。ただし、転倒リスクが上がります。転倒すれば、本人の痛みや不安はもちろん、家族説明、事故報告書、受診対応、場合によっては入院やADL低下まで起きます。

移乗や歩行の自立支援は、時間だけでは評価できません。リスクをどう見るかまで含めて考える必要があります。

広告

加算はこのコストを埋められるのか

自立支援やADL改善を評価する加算はあります。たとえば、ADL維持等加算、排せつ支援加算、自立支援促進加算、生産性向上推進体制加算などです。

ただ、ここでも少し冷静に見た方がいいです。

加算単位数の目安1単位10円で見た月額
ADL維持等加算(Ⅰ)30単位/月約300円
ADL維持等加算(Ⅱ)60単位/月約600円
排せつ支援加算10〜20単位/月約100〜200円
自立支援促進加算特養等 280単位/月
老健 300単位/月
約2,800〜3,000円
生産性向上推進体制加算10〜100単位/月約100〜1,000円

※単位数はサービス種別や算定区分によって異なります。たとえば自立支援促進加算は、令和6年度改定で特別養護老人ホーム・地域密着型特養・介護医療院が280単位/月、介護老人保健施設が300単位/月に分かれました。ここでは、施設系サービスで考えるときの目安として単純化しています。また、1単位10円で計算していますが、実際の金額は地域区分で変わります。

ADL維持等加算については、もう一つ注意が必要です。これは、1人の利用者さんがトイレ誘導に移れたから、その人の分だけすぐ60単位増える、という性格の加算ではありません。評価対象期間、ADL値、ADL利得、LIFEへの提出など、事業所・施設全体としての要件があります。

それでも、あえて金額感を見ると分かります。自立支援を評価する仕組みがあっても、1人あたりでは月数百円から数千円規模です。一方で、さきほど見た随時対応の余力は、入居者1人あたり月8,000円から14,000円くらいになることがあります。

加算だけで人員の余力をまかなう設計には、なっていません。

そして、もう一つややこしい問題があります。自立支援がうまくいって要介護度が下がると、施設の基本報酬は下がる方向に働きます。

もちろん、現場が意図的に重度化を望んでいるという話ではありません。そんなことを言いたいわけではありません。ただ、制度上は「自立支援に投資した結果、将来の収入が下がる」という逆向きの力があることは否定できません。

ここを見ないまま、「自立支援が大事です」「ADLを上げましょう」とだけ言っても、現場は動きにくいと思います。

広告

それでも、計算する意味はある

ここまで読むと、「ケアを金額で測るのか」と感じる方もいると思います。

その違和感は、かなり正しいです。

本人にとって、トイレで排泄できる意味は、月いくらという話ではありません。自分でズボンを上げること。トイレに座ること。オムツではなく、便器で排泄すること。そこには尊厳があります。家族の受け止めも違います。本人の意欲も変わります。

だから、計算だけで「やる」「やらない」を決めるのは危険です。計算は、やらない言い訳にも使えてしまいます。

それでも私は、計算した方がいいと思っています。

なぜなら、金額にしてこなかったから、現場の頑張りに丸投げされてきた部分があるからです。

「自立支援をしましょう」では、稟議は通りません。「この人を日中トイレ誘導に移すには、初期費用11万円と、日中帯の余力が月0.3人分必要です。ただしパッド代と介助時間を合わせると、9か月程度で回収できます」と言えた方が、話は前に進みます。

気合いでやるより、ずっと現実的です。

要介護認定の際に使われる「要介護認定等基準時間」の1分間タイムスタディも、考え方としては似たような形で行っているので、介護施設や介護サービス事業所でも介護の手間が何分ほどかかるかという観点でコストを計算していくというのは理にかなっていると思います。

リハ職の役割は「必要な余力を減らすこと」かもしれない

この計算をすると、リハ職の役割も少し違って見えてきます。

「できるADL」を上げることは大事です。ただ、それだけでは「しているADL」には届きません。生活で実行するためには、環境、介助方法、人員の余力が必要です。

では、リハ職に何ができるのか。

一つは、必要な人手を減らすことです。

たとえば、立ち上がりの手すりの位置を変える。便座の高さを調整する。車椅子の置き方を統一する。声かけを短くする。介助者がどこを支えるかを決める。本人に待ってもらう時間を減らす。

こういう細かい調整で、1回の介助が10分から7分になることがあります。2人介助が1人介助になることもあります。随時対応が必要だったものが、定時誘導で回ることもあります。

環境整備には一時費用がかかります。職員教育にも時間がかかります。でも、人件費は毎月かかり続けます。そう考えると、介助方法の統一や環境調整は、かなり費用対効果の高い投資です。

見守りセンサーや排泄予測支援機器も、単なる便利グッズではありません。呼ばれたらすぐ行くしかなかったケアを、予測して動けるケアに変える可能性があります。つまり、待機コストを下げる投資として見ることができます。

リハ職の仕事は、本人の能力を上げることだけではないと思います。その能力が生活で使われるために、どれくらいの環境と人手が必要かを見積もり、その必要量をできるだけ小さくすること。そこまで含めて、自立支援なのだと思います。

現場では、こう使える

この考え方は、カンファレンスでも使えます。

たとえば「トイレ動作を一部介助にする」という目標を書くとします。そのときに、動作能力だけを書くのではなく、必要な体制まで書きます。

カンファで確認したいこと
  • 1回の介助に何分かかるか
  • 1日何回必要か
  • 定時誘導でよいのか、随時対応が必要なのか
  • 2人介助が必要な場面はあるか
  • 手すりや福祉用具で介助量を減らせるか
  • 失敗したときのやり直しコストはどれくらいか
  • 誰が、どの時間帯に対応するのか

個別機能訓練計画や自立支援のケアプランにも、本人の目標だけでなく、必要な体制を書いた方がいいと思います。

「トイレ動作の一部介助を目指す」だけでは、現場は動きにくいです。

「日中3回は定時誘導。移乗は右側手すり使用。下衣操作は見守り、立位保持が崩れる場合のみ骨盤を軽く支持。1回7分以内を目安。失禁が続く場合は時間帯を再評価」と書いてあれば、かなり動きやすくなります。

そして管理者に提案するときは、「加算が取れます」だけでは弱いです。加算だけでは、人件費を埋めきれないことが多いからです。

それよりも、回収期間で話した方が通りやすい場面があります。

「手すりと教育で初期費用は11万円。ただし、介助時間と物品費が月1.2万円下がるので、9か月前後で回収できます。さらに皮膚トラブルや失禁対応が減れば、実際の効果はもう少し大きいかもしれません」

こう言えた方が、現場の提案として強いです。

自分の施設で計算するための簡単なシート

最後に、ざっくり計算するための空欄を置いておきます。数字は施設ごとにかなり変わります。むしろ、変わって当然です。

項目自施設の数字
現在の介助時間   分/日
移行後の介助時間   分/日
増減した時間   分/日
職員の人件費単価   円/時
物品費の増減   円/月
環境整備費   円
職員教育にかかる時間・費用   円
移行期の追加介助   円
随時対応のための余力   円/月
関連する加算   円/月
毎月の差額   円/月
回収期間   か月

この表を埋めてみると、「やった方がいいけれど、今の体制では無理」なのか、「環境整備だけでかなり変わる」のか、「随時対応ではなく定時誘導なら成立する」のかが見えてきます。

見えれば、話し合えます。

見えないままだと、だいたい「リハ職は理想ばかり言う」「介護職はやってくれない」「管理者はお金の話ばかりする」で止まります。

それは、もったいないです。

まとめ

「できるADL」と「しているADL」は、同じではありません。

リハビリ場面ではできる。でも生活ではしていない。そこには、本人の能力だけでなく、環境、介助方法、人手、タイミング、リスクが関わっています。

だから、「できるのになぜやらないのか」と責めても、あまり前には進みません。必要なのは、その差を埋めるために何が必要で、何分かかり、いくらかかるのかを見えるようにすることです。

計算してみると、1人では成立する支援が、フロア全体では成立しないことがあります。定時ケアだけなら時間が減るのに、随時対応の余力を入れると時間が増えることもあります。加算はありますが、それだけで人員余力をまかなえるほど大きくはありません。

自立支援が進まない理由は、現場の怠慢だけではありません。むしろ、現場はかなり頑張っています。問題は、頑張りに必要なコストが見えないまま、理念だけが降りてくることです。

リハ職にできることは、本人の能力を上げることだけではないと思います。その能力が生活の中で使われるように、必要な人手・時間・待機をできるだけ小さくすること。環境を整え、介助方法をそろえ、フロアで回る形に落とし込むこと。

「できるADL」を「しているADL」に変えるには、気合いではなく設計が必要です。

そして、その設計をするために、たまには時間と金額で考えてみてもいいのではないでしょうか。

参照資料

2024年・2025年・2026年
介護保険・介護報酬改定の情報

令和8年度(2026年)障害福祉サービス等報酬改定の概要と変更点まとめ

2026年(令和8年)介護報酬改定の全体像についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

介護報酬改定2026年(令和8年度)まとめ|いつから・変更点・対象サービスをわかりやすく解説

令和6年~8年 地域区分(介護)区市町村の等級一覧(2024年4月~)

介護保険区分支給限度基準額一覧(要支援・要介護)

New! 令和8年(2026年)介護報酬改定

New!令和8年(2026年)介護報酬改定介護報酬改定後の介護保険サービスごとの介護報酬・単位数

 介護保険の居宅サービス介護給付費単位数(対象:要介護)

地域密着型サービスの単位数改定内容

介護予防サービス(対象・要支援)

介護予防・日常生活支援総合事業費(要支援・事業対象者)の改定内容

施設サービス等介護給付費単位数の改定内容

      2026年(令和8年度)・2024年 介護報酬改定で特徴的な加算・制度

      利用者負担軽減の仕組みの改定

      補足給付(負担限度額認定)に関わる見直しは、以下のとおりです。

      令和6年8月1日施行 基準費用額の見直し

      令和7年8月1日施行 多床室の室料負担
      令和8年8月1日施行 食費基準費用額の1,445円→1,545円、低所得者の食費負担限度額の段階別変更

       

      この記事が気に入ったら
      フォローしよう
      最新情報をお届けします
      あなたへのおすすめ