厚生労働省が提唱する「通いの場」とは 高齢者の介護予防に期待
 

高齢者の介護予防やフレイル対策として期待されている「通いの場」について、厚生労働省の示した捉え方や活動内容、事例などを紹介します。

「オンライン通いの場」というスマートフォンを使ったアプリがあるということや、通いの場の立ち上げ方、運営のポイントなどもまとめてみました。

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厚生労働省が提唱する「通いの場」とは?

通いの場とは、高齢者をはじめとする地域住民が主体となり、介護予防やフレイル予防等を目的とした、月1回以上の多様な活動の場や機会のことをいいます。通いの場は、体操や趣味の活動を行う住民同士のふれあいを通じて、利用される方々の生きがいや心の居場所、仲間の輪を拡げる拠点となります。

通いの場の定義とは

2023年2月現在において、通いの場の定義は明示されていないです。通いの場につきまして、法令上の定義はございませんが、国として使用している文章を以下2点ご紹介させていただきます。

<「通いの場」の捉え方>
①介護予防に資すると市町村が判断する通いの場であること
②住民が主体的に取り組んでいること
③通いの場の運営について、市町村が財政的支援を行っているものに限らないこと
④月1回以上の活動実績があるもの

厚生労働省 >1 介護予防について >通いの場の推進 >通いの場の類型化について(Ver.1.0)2021(令和3)年8月 >p5

通いの場は、地域の住民同士が気軽に集い、一緒に内容を企画し、ふれあいを通して「生きがいづくり」「仲間づくり」の輪を広げる場所です。地域の介護予防の拠点となる場所でもあります。

厚生労働省「通いの場」>ダウンロード・リンク集 >リーフレット(カラー) >2ページ左上

通いの場の運営主体・活動場所・活動内容

厚生労働省は、2021年8月に、多様な通いの場を展開するため、通いの場を「運営(誰が)、場所(どこで)、活動(何を)」の3つの視点から類型化することを発表しました。

通いの場の類型化 運営、場所、活動内容通いの場の類型化について (Ver.1.0) 2021(令和3)年8月, 厚生労働省

通いの場の類型化

運営
住民個人(有志・ボランティア等)
住民団体(自治会、NPO法人等)
行政(介護予防担当部局)
行政(介護予防担当部局以外)
社会福祉協議会
専門職団体
医療機関(病院、診療所、薬局等)
介護関係施設・事業所
民間企業

場所
個人宅・空き家
公民館・自治会館・集会所
公園
農園
学校・廃校
医療機関の空きスペース
介護関係施設・事業所の空きスペース
店舗の空きスペース・空き店舗

活動
体操(運動)
会食
茶話会
認知症予防
趣味活動
農作業
生涯学習
ボランティア活動
就労的活動
多世代交流

これらのように、行政機関だけでないインフォーマルサポートも合わせた運営により、地域のニーズに合わせた通いの場の展開が促進されることが期待されます。

通いの場の捉え方

通いの場に関する定義は明示されていませんが、上記の通いの場の類型化から、以下のような捉え方が示されています。

① 介護予防に資すると市町村が判断する通いの場であること

② 住民が主体的に取り組んでいること

③ 通いの場の運営について、市町村が財政的支援を行っているものに限らないこと

④ 月1回以上の活動実績があるもの

通いの場の類型化について (Ver.1.0) 2021(令和3)年8月, 厚生労働省

「通いの場」を運営する上で大切なことは、住民が主体となることです。普段高齢者を身近で見ている住民が、どこで何をするかを判断し、その手伝いや支援を行うことが期待されています。

オンライン「通いの場アプリ」もスタート

まだあまり浸透してきていませんが、厚生労働省はオンライン通いの場アプリをリリースして、コロナ禍でも身体活動、知的活動、社会活動を日常的に続けていけるように推進しています。

コロナ禍の中、高齢者にこそスマートフォンアプリを!

2019年末に発生した、新型コロナウイルス感染症は現在も世界的に流行を見せています。日本でも2020年4月に第1回目の緊急事態宣言が全国に発出され、その後も度重なる緊急事態宣言が続き、多くの人々が長期に渡り活動自粛を余儀なくされている状態です。

特に高齢者は今まで楽しみにされていた多くの活動する場が休止となってしまい、外出自粛から活動量が大幅に減少した状態になりやすく、要介護状態や認知機能低下のリスクが今まで以上に高まるという悪しき状況です。

また、要介護ではない高齢者も、コロナ自粛で筋力や心身の活力が低下し、健康な状態と要介護の中間に位置する虚弱な状態、いわゆる「フレイル」層の増加が心配されています。

国立長寿医療センターがオンライン「通いの場アプリ」開発に協力

コロナ禍中、いち早く対策を講じた機関があります。
その機関の名は「国立長寿医療センター」です。

国立長寿医療センターでは、コロナ禍における高齢者の活動量アップを目指していち早く対策を講じ、2020年5月には自宅に居ながら専門家のアドバイスに基づく運動や活動を実施できる「在宅活動ガイド2020」を発表しました。さらに同年6月には活動自粛が続く、本件「通いの場」を補完する機能として、スマートフォンアプリの「オンライン通いの場」の公開をスタートさせました。

※オンライン通いの場アプリは、2022年6月にリニューアルリリースされています。

オンライン通いの場アプリは2017年頃から開発は進められていましたが、新型コロナウイルス感染拡大による高齢者の生活不活発の問題が大きくなり、厚生労働省の新型コロナウイルス対策の第一次補正予算の補助金を得て、アプリの無償公開にいたったという経緯です。

オンライン通いの場アプリの特徴

オンライン通いの場アプリは、高齢者の方でも直感的に理解できる操作性を重視しており、介護予防に重要な3つの要素(身体活動、知的活動、社会活動)を含んだものになっています。

これらの3要素を備えたアプリは、「オンライン通いの場」が初めてだということです。

アプリのデバイスとしてスマートフォンを選んだ理由は3つあるといわれています。

  • 音声や文字画像のやり取りがスムーズ
  • センサーも付いているから検索機能としても万能
  • 通いの場以外の活動時間でもスマホは手にしている

2021年の調査では高齢者のスマートフォンの使用率は60代が8割、70代が4割と高い割合でスマートフォンが高齢者に普及していて、スマホはすでに高齢者にとって馴染みのあるデバイスのようです。(参考:株式会社NTTドコモモバイル社会研究所: ケータイ社会白書2021年版(外部サイト)

オンライン通いの場(アプリ)の注目コンテンツ

おさんぽ いつもの散歩がトレーニングコースに大変身します。今日はちょっと違ったコースで歩きたいなっていう時も、現在地からランダムでコースを自動作成できますので、自分の歩ける範囲・距離からいつもと違うコースで迷うことなく歩くことが可能。しかもスポーツゲーム感覚で。
コミュニケーション 同じ志を持った全国の仲間と手軽にインターネット上で交流が可能。あなたの興味関心や生活に合った仲間を見つけることができます。しかも交流方法はチャット形式でリアルタイムで接続でき、自分の顔を映さずに非対面でオンライン交流ができるのも魅力。
体操動画 日本全国の自治体が公開する地域色豊かな体操動画が、1000種類も揃っています。46都道府県のご当地体操もあり、いつでもゲーム感覚で挑戦することができます。認知症予防に効果的といわれている「コグニサイズ」も全40種類公開中。
脳を鍛えるゲーム 「じゃんけん・違和感クイズ・数字記憶・間違い探し・パズル」など、全8種類もの脳トレゲームを、どこでも楽しむことができます。難易度は3段階あり、直近3回分の成績を表示し過去の最高得点越えを目指しょう。
食事チェック 人工知能AI による料理自動判別機能を搭載しているので、今から食べるそのお料理にスマホカメラを向けて写真を撮るだけで、AIが品目を判別しカロリー計算。コンビニやスーパーの商品まで幅広く解析してくれます。その数およそ18000品目!
健康チェック 運動機能・栄養状態・口腔機能・閉じこもり・認知機能・気分など、6つの項目から総合的に今のあなたに合った適切な生活指針を提供してくれます。
ランキング オンライン通いの場アプリなら、毎週の利用活動状況をランキングで表示してくれるので、毎週ご自分の順位を確認することが可能。他のユーザーの活動状況も見られるので自分の活動を見直すきっかけにもなります。「全国・都道府県・市区町村」ごとに自身の活動状況をランキング表示もできるので、モチベーション維持にも繋がりますよね。

参考:オンライン通いの場アプリ説明書(PDF)

通いの場に期待される効果

通いの場には、介護予防やフレイル予防に直結する取り組みや、自分と楽しみ方が似た仲間とアクティビティを通じて楽しむことができるため、通いの場を利用される高齢者の人々には次のような効果が期待されています。

社会参加への意欲が高まる

通いの場に参加する高齢者一人ひとりが主体となるので、自分の役割や生きがい、楽しさを見出すことができます。

生活に色が生まれメリハリある1日を送れる

定期的に通いの場を開催することで、参加される高齢者は外出スケジュールを自分で決めるようになるため、日々の生活にメリハリが生まれます。さらに外出して人に会うことが多くなると「身だしなみ」にも気を配ることができるようになります。

閉じこもり防止につながる

一人暮らしの高齢者であっても、気軽に立ち寄れる場所や、同じ目的意識を持った仲間と交流できることで、住宅以外の自分の居場所ができます。これにより閉じこもり防止につながります。また、仲間同士でお互いに気を掛け合うようになれば見守りとしての効果も期待できます。

介護・認知症・フレイル予防になる

通いの場に参加することで活動量がアップするため、介護予防・フレイル予防につながります。
また通いの場では、仲間と談笑したり様々な学びのプログラムで脳を活性化させて認知症予防も期待できます。

通いの場を立ち上げる方法・補助金はある?

このような通いの場についてですが、市町村や住民、地域の組織などが主体となって運営されるものですが、立ち上げる際、どのようなことに留意する必要があるのか、以下の6つを参考にして下さい。

1.目的と方針の明確化

まずは、通いの場を立ち上げる目的や方針を明確化することが大切です。どのような人々を対象にするのか、どのような活動を行うのか、何を目指すのかを明確にすることで、メンバーの共感を得ることができます。

2.仲間の募集

目的や方針が明確になったら、一緒に活動をしてくれる仲間を募集します。
地域の掲示板やSNSなどを活用して、募集要項を発信しましょう。
既存のコミュニティや団体に呼びかけることも効果的です。

3.開催場所の決定

開催場所は、通いやすく、集まりやすい場所が望ましいです。
地域の公共施設や社会福祉協議会の施設を利用することもできます。
費用がかかる場合があるため、事前に確認が必要です。

4.予算の確保

通いの場の運営には、活動費が必要です。
市区町村や社会福祉協議会で補助金が出ている場合がありますので、活用することをおすすめします。
また、メンバーからの参加費を設定することも視野に入れて良いでしょう。

5.保険の加入

通いの場で事故やトラブルが発生した場合に備えて、保険に加入してみてはいかがでしょう。
市区町村、社会福祉協議会にぜひ相談してみてください。

6.運営の進め方

通いの場の運営には、役割分担やルールの設定が必要です。
例えば役員を選出し、会議を開いて運営方針や活動内容などを話し合う機会を持ちましょう。
コミュニケーションを大切にし、メンバーの声を反映させることが重要です。

以上が、「通いの場」の立ち上げ方、運営方法の基本的な流れです。地域の特性や参加者のニーズに合わせて、運営方法を柔軟に変えていくことが大切です。

通いの場の事例

通いの場の活動事例をいくつか紹介します。

岐阜県各務原市
「農福連携事業」
高齢者が農作業体験を通して心身のリハビリを行い、社会参加への促進を期待する。仲間との共同作業で交流を深め、生涯現役で活躍できる社会を目指す。
滋賀県栗東市
「栗東100歳大学」
65歳以上の高齢者が、基礎科目と専攻科目を受講し、講義や実習、フィールドワークなどを通して、自分自身の学びや地域社会への貢献を目指す。
静岡県菊川市
「孫子庵」
高齢者が手芸やお菓子作りなどの手作り体験を通じて、自分自身の楽しみを見つけ、社会参加を促進。孫のように接してくれるスタッフに支えられながら、新しい仲間との出会いも楽しめる。
鹿児島県指宿市
「むくの家」
高齢者が、卓球やゲーム、手芸などの活動を楽しみ、仲間との交流を深める。また、若者との交流を通じて、世代間の理解を深めることも目的とする。
兵庫県神戸市
「介護予防カフェ」
民間企業と連携し、コーヒーを通じて地域の高齢者が集い、コミュニティ形成を促進する。高齢者同士の交流が深まり、互いに支え合えるようになることを目指す。
東京都中野区
「ららぽーと中野」
商業施設内に設置された「アクティブシニアセンター」で、高齢者が体操や料理教室などの様々なプログラムを楽しむ。施設内のショッピングやグルメを楽しんだり、地域の情報交換も行いながら、社会とのつながりを持つことを目指す。
神奈川県大和市
「社交場」
高齢者が、音楽鑑賞や読書、手芸などの活動を通じて交流を深める。地域のボランティアや大学生がスタッフとして参加し、高齢者の孤独や孤立を防止することを目的とする。
北海道北見市
「まちかど交流ステーション」
路上生活者や高齢者が集い、地域住民との交流を行う。ステーション内でのお茶会や手芸、地域の清掃活動などを通じて、社会復帰への支援を目的とする。

通いの場への参加率

「通いの場」は、2013年度に全国で約4.3万カ所(参加率2.7%)あったのが、2019年度には約12.9万カ所(6.7%)に増加しました。
このまま順調にいくかと思われましたが、2020年度、新型コロナウイルスの影響で参加率は約11.4万カ所(5.3%)に減少してしまいました。

厚生労働省が介護保険の地域支援事業について実施要綱を改正し、高齢者の「通いの場」への参加率を2025年までに8%に引き上げることを目標とすると明記しています。

再開や参加を促すためにはさらなる取り組みが必要です。

アフターコロナとなった今、運営側は新型コロナウィルスの感染防止に配慮しながら「通いの場」の取り組みを積極的に進め、参加者に安心・安全な環境の提供を行っていくことが期待されています。

まとめ

今回は、厚生労働省が提唱する「通いの場」についてお話させていただきました。

「オンライン通いの場」というスマートフォンを使ったアプリがあるということや、通いの場の立ち上げ方、全国各地で開かれている事例もご紹介いたしました。

高齢者にとって、社会参加や健康維持、認知症予防、閉じこもり防止など、多くのメリットがある「通いの場」。

通いの場を立ち上げる際には、目的や方針の明確化、仲間の募集、開催場所の決定、予算の確保、保険の加入、運営の進め方などに留意しましょう。

新型コロナウイルスの影響で参加率が減少した期間は長かったのですが、2023年に入り活動を再開する団体、自治体も増えてきました。

運営側は感染防止対策をしつつ、参加者に安心・安全な環境を提供していくことが大切です。

通いの場を通して、地域一丸となり運営する人も参加される人も日々の生活に、新しい明るい色を取り入れましょう。

 

参考資料

介護予防について | 厚生労働省 老健局 老人保健(PDF)

一般介護予防事業等の 推進方策に関する検討会 (第3回) 資料2-(PDF)

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