義肢装具士の年収と「つらい」理由|就職先・離職率・病院外で働く仕組み

義肢装具士の年収と「つらい」理由|就職先・離職率・病院外で働く仕組み
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義肢装具士は国家資格をもつ医療職です。ところが厚生労働省の令和5年(2023年)医療施設調査では、全国の病院で従事する義肢装具士は、常勤換算で80.9人です。 国家試験の合格者は累計6,610名にのぼります。

もちろん、累計合格者数と一時点の常勤換算従事者数は単純比較できません。それでも、この大きな違いは、義肢装具士の多くが病院そのものではなく、民間の義肢装具製作施設に所属しているという独特の働き方を理解する入口になります。

この数字のギャップは、義肢装具士という仕事の独特な働き方や、待遇を考えるうえでの大きな手がかりになります。この記事では、公的な統計・資料を軸に、理学療法士として現場で義肢装具士と関わってきた視点も交えながら、この職種の実像を整理します。

この記事の要点
  • 医療職でありながら大半が医療機関の外(民間の義肢装具製作施設)に所属し、契約先の病院に出向いて働きます
  • ネットでよく見る「平均年収454万円」は義肢装具士だけの統計ではありません。出典元がそう明記しています
  • 求人賃金や有効求人倍率も同じ理由で「参考値」です。義肢装具士だけの数値とは限りません
  • 離職率を示す公的統計は確認できません。ただし2026年9月、職能団体が離職者アンケートを開始しました
  • 学生を募集している養成校は全国に8校だけ。国家試験の合格率は直近で80.6%です
  • 切断原因として糖尿病などによる血管障害・悪性腫瘍が増えており、介護・高齢者医療との距離が近づいています
  • 仕事には公的制度が使える分野と、対象外になりやすい分野があります
目次
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  1. 義肢装具士は、医療職なのに病院にいない
    1. 病院における常勤換算従事者数は80.9人
    2. この構造が、待遇にも働き方にも効いてくる
  2. 義肢装具士の仕事内容 採型・製作・適合の3工程
    1. 義肢と装具は別のもの
  3. 年収と給料 公表データの読み方に注意が必要
    1. 厚生労働省のjob tagに掲載されている数字
    2. 求人賃金と求人倍率も「参考値」として読む
    3. 給料の上がり方には別の要素がある
  4. 義肢装具士は「つらい」と言われる理由を分解する
    1. 納期に追われる
    2. 「出向く」働き方の移動負担
    3. 有資格者にしかできない業務が集中する
    4. 効率化しにくい
    5. 勤務先によって条件の差が出やすい
    6. 離職率について、正直に書きます
    7. ただし2026年9月、業界が本格的な実態把握を始めました
  5. 就職先は3つに分かれる
  6. 公的制度が使える分野と、対象外になりやすい分野
    1. 義肢装具士の仕事に主に関わる3つの公的制度
    2. 公的制度の対象外になりやすい分野
  7. 将来性 仕事の中身が変わりつつある
    1. 技術の進化も大きい
  8. 資格を取るまでの道
    1. 国内の養成ルートは3つあるが、現在は実質1つ
    2. 学生を募集している養成校は全国に8校だけ
    3. 国家試験の合格率
  9. 介護の現場から見た義肢装具士
    1. 装具が合っていないことに最初に気づくのは、現場の職員
    2. この職種を知っておくと、支援の選択肢が増える
  10. よくある質問
  11. まとめ
    1. 参考資料

義肢装具士は、医療職なのに病院にいない

義肢装具士は、医療職なのに病院にいない

義肢装具士は、医療職なのに病院にいないという珍しい職種です。

病院における常勤換算従事者数は80.9人

厚生労働省の令和5年医療施設(静態・動態)調査は、全国の病院・診療所にいる職種別の従事者数を常勤換算で集計しています。令和5年10月1日現在の義肢装具士の数はこうなっています。

施設の種類義肢装具士(常勤換算)
病院(全国8,122施設)80.9人
うち一般病院80.9人
うち精神科病院0人
一般診療所(全国104,894施設)39.7人

合わせて約121人です。参考までに、同じ調査で理学療法士は病院だけで88,925.5人、作業療法士は50,304.4人います。桁が3つ違います。

一方、義肢装具士国家試験の合格者は第1回から第39回までの累計で6,610名(2026年4月1日現在、公益財団法人テクノエイド協会)。職能団体である公益社団法人日本義肢装具士協会の正会員は2,290名(令和8年4月30日現在)です。

ただし、国家試験合格者の累計は現在の就業者数ではありませんし、日本義肢装具士協会も任意加入です。そのため、この2つの数字から現在働いている義肢装具士の実人数を推計することはできません。

では、どこで働いているのか

テクノエイド協会は、義肢装具士を「医療関連職の中で特殊な業務形態をとる職種」と説明しています。大半が医療機関に属さず、民間の義肢装具製作施設に所属し、契約している病院や更生相談所等に出向いて業務を行うのが一般的だとしています。

医療施設調査の対象は、医療法上の病院と診療所です。義肢装具製作施設そのものを数える調査ではありません。

ですから「約121人」という数字は、現在働いている義肢装具士全体の人数を示すものではありません。むしろ、民間の義肢装具製作施設がこの統計の対象に含まれていないこととあわせて、この職種の独特な就業構造を理解する材料として読むべき数字です。

この構造が、待遇にも働き方にも効いてくる

病院に直接雇用される場合は、その医療機関の給与・人事制度の中で働くことになります。一方、義肢装具士の多くは民間の義肢装具製作施設に所属しています。給与体系や勤務条件は事業所ごとに異なるため、同じ国家資格を持っていても、勤務先によって待遇や働き方に差が出ることがあります。

つまり「医療職としての国家資格」と「民間事業所の従業員としての働き方」が重なっている職種だということです。同じ資格でも勤務先によって条件が違う理由も、病院の中で働く医療職と感覚が合わない理由も、ここに集約されます。

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義肢装具士の仕事内容 採型・製作・適合の3工程

義肢装具士の仕事内容

義肢装具士法にもとづく業務は、大きく3つの工程に分かれます。

工程内容製作所内での担当
採寸・採型切断端の骨の形状や荷重のかかり方を観察し、凹型モデルを採る有資格の義肢装具士が担当する中核業務
製作・組立・仕上げ凸型モデルからソケットを作り、各部品を連結する製作専門の技術者が行うことも多い
試歩行・適合・調整実際に装着し、具合の悪いところを修正する有資格の義肢装具士が担当する中核業務

厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)は、この点をはっきり書いています。義肢装具製作施設で働いている人のうち、義肢装具士の有資格者だけが、依頼者に接して採型・適合・調整まで行うことができる。資格がなく、製作のみに携わっている人もいる、と。

テクノエイド協会も「義肢装具士と製作技術者の業務分担が進んでいる傾向にある」としています。「ものづくりがしたくてこの道に入ったのに、実際は患者さんと向き合う時間と調整業務が中心だった」という声が出てくる背景はここです。

義肢と装具は別のもの

名前が長いので混ざりやすいのですが、扱うものは2種類あります。

  • 義肢 切断によって四肢の一部を欠損した場合に、元の手足の形態または機能を復元するために装着・使用する人工の手足。上肢切断に用いる義手と、下肢切断に用いる義足に分かれます
  • 装具 四肢・体幹の機能障害の軽減を目的として使用する補助器具。頭部から足部まで部位別にさまざまなものがあります

さらに装具は、医学的治療の手段として使う「治療用装具」と、治療が終わって症状が固定した後に日常生活活動の向上のために使う「更生用装具」に分かれます。この区別は、後で出てくる「どの制度が使えるか」に直結します。

少なくとも私が関わってきた介護の現場では、義肢よりも装具を目にする機会のほうが圧倒的に多くありました。短下肢装具、膝装具、体幹装具、靴型装具。いずれも義肢装具士が関わる代表的な装具です。

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年収と給料 公表データの読み方に注意が必要

ここがこの記事でもっとも注意して書いた部分です。

厚生労働省のjob tagに掲載されている数字

厚生労働省のjob tagは、義肢装具士のページに次の統計を掲載しています(2026年9月時点)。

項目全国の数値出典
賃金(年収)454.2万円令和7年賃金構造基本統計調査
平均年齢37.6歳同
労働時間(月)159時間同
時間あたり賃金(一般労働者)2,266円同
求人賃金(月額)25.6万円令和7年度ハローワーク求人
有効求人倍率2.06同
就業者数163,750人令和2年国勢調査

この表を上から下まで読んで、おかしいと思った数字があるはずです。就業者数163,750人。

先ほど見たとおり、国家試験の累計合格者数6,610名とは、桁が大きく異なります。

ここが決定的に重要です

job tagの義肢装具士のページには、「義肢装具士が属する主な職業分類(厚生労働省編職業分類の『その他の医療・看護・保健の専門的職業』等)に対応する統計情報です」と書かれています。

そして「統計データは、必ずしもその職業のみの統計データを表しているものではありません」という注記が添えられています。

つまり、454.2万円も163,750人も、義肢装具士だけを集計した数字ではありません。それぞれの統計で、義肢装具士が対応づけられている職業分類をもとに算出された数字です。

job tagは2026年8月28日にも、統計データの利用にあたっての留意事項をあらためて掲載しています。出典元が「この数字は他の職種と混ざっています」と明示しているのですから、「義肢装具士の平均年収は454万円です」と言い切ってしまうのは正確ではありません。

では何も分からないのか、というとそうでもありません。

求人賃金と求人倍率も「参考値」として読む

job tagの義肢装具士ページでは、令和7年度の求人賃金(月額)25.6万円、有効求人倍率2.06倍と表示されています。月別で見ると25.1万円から27.3万円の幅で推移しており、いずれの月も前年同月を上回っています。

ただし、これらも対応する職業分類をもとにした統計であり、義肢装具士だけの数値とは限りません。 job tagの留意事項は、賃金構造基本統計調査のデータだけでなく、ハローワーク求人統計データも含めた「統計データ」全体についての注記です。

そのため「義肢装具士の人手不足を直接示す数字」とまでは言えず、求人状況を見るための参考値として扱うのが適切です。年収の数字と同じく、そのまま引用するのは避けたほうがよいところです。

給料の上がり方には別の要素がある

job tagは「経験と熟練が重要であることから、年齢にかかわらず働くことができる。技術を磨いていけば独立して開業することも可能である」としています。

また、厚生労働省の技能検定である1級・2級義肢・装具製作技能士も、job tagに義肢装具士の関連資格として挙げられています。技能を客観的に示す資格のひとつです。

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義肢装具士は「つらい」と言われる理由を分解する

義肢装具士はつらい?

検索すると「義肢装具士 つらい」「辞めたい」という言葉がよく出てきます。感情論ではなく、構造として何がつらいのかを分けて考えます。

以下は、job tagなどで確認できる働き方をもとに、負担が生じやすい構造を整理したものです。実際の働き方や労働条件は勤務先によって異なります。

納期に追われる

job tagの「労働条件の特徴」に、はっきり書かれています。「納期に間に合わせるために、残業や休日出勤をする場合もある」。

これは構造的な問題です。装具は患者さんの入院期間やリハビリの進行に合わせて仕上げなければなりません。退院日が決まっていれば、そこが納期になります。しかも医師の処方があってから採型するので、着手は後ろにずれます。

「出向く」働き方の移動負担

契約している病院や更生相談所に出向いて、採型と適合を行う。この働き方は、移動時間が業務時間に上乗せされることを意味します。

午前に病院で採型、会社に戻って製作、午後に別の病院で適合という日もあります。地方では移動距離そのものが長くなります。

有資格者にしかできない業務が集中する

義肢装具製作施設では、依頼者に接して行う採型・適合・調整は有資格の義肢装具士が担います。一方、製作工程は製作専門の技術者が担うこともあります。ということは、事業所の中で義肢装具士の数が少ないと、採型と適合の予定がその人に積み上がっていく構造になります。

「一人で全部やっている」という感覚の正体は、全工程を一人でこなしているという意味ではなく、代わりのいない工程を一人で背負っているということだと思います。

効率化しにくい

job tagは、よく使う道具として「かなづち、のこぎり等の手動工具、ドリル等の電動工具」を挙げています。身体に合わせて削り、貼り、修正する作業は、一人あたりの処理量に上限があります。

ただしここは変わりつつあります。job tagも「最近では一部に既製品化されているパーツを利用することも多くなっている」としています。また、3DスキャナやCAD、3Dプリンタを臨床業務に活用している例も報告されています。臨床の義肢装具士11名に対する2025年の調査では、業務の効率化や精度向上、患者負担の軽減が進む一方で、導入コスト、データ管理、技術習得が課題として挙げられています。

勤務先によって条件の差が出やすい

先に述べたとおり、所属先の多くは民間の義肢装具製作施設です。給与、残業の扱い、研修体制、資格取得支援。同じ国家資格でも、事業所ごとに条件が異なります。就職や転職を考えるときは、資格の話より勤務先の話のほうが実質的だということでもあります。

離職率について、正直に書きます

離職率を示す公的統計は確認できません

看護師のように職能団体が毎年調査している職種と違い、義肢装具士の離職率を継続的に集計した公的な統計は見当たりません。

雇用動向調査の離職率は産業別の集計なので、義肢装具士は「製造業」と「医療、福祉」に分かれて埋もれてしまいます。job tagの就業者統計も、前述のとおり他職種と混ざっています。

「義肢装具士の離職率は○%」という具体的な数字を見かけたら、出典を確認してください。推測や体験談を数字にしたものである可能性があります。

ただし2026年9月、業界が本格的な実態把握を始めました

ここがこの記事でいちばん新しい情報です。

2026年9月16日、公益社団法人日本義肢装具士協会が「義肢装具士離職者アンケート」を開始しました。 回答期限は令和8年10月9日です。

対象は、義肢装具士の資格をもち、義肢装具製作所・病院・医療機関・義肢装具関連企業・靴・足部関連・シーティング・福祉用具等の職場を定年退職以外の理由で退職した経験がある人です。設問は「退職に至った理由」「給与・待遇」「労働環境」「職場環境」「キャリア形成」など。

協会は調査の趣旨をこう説明しています。給与については「単に『給与が低い』という評価だけではなく、実際の給与水準や希望する給与水準、処遇が改善されていた場合に就業を継続した可能性等」を尋ねる。さらに、都市部と地方では給与水準だけでなく住宅費をはじめとする生活環境にも違いがあるため、地域差も把握して、地方における確保・定着に必要な条件を検討するとしています。

結果は日本義肢装具士協会・日本義肢協会・日本義肢装具教育者連絡協議会で共有され、必要に応じて厚生労働省等への提出資料にも反映されるとのことです。

つまり、義肢装具士の離職・定着をめぐる実態は、現在まさに詳しい把握が進められている段階です。ただし、このアンケートから義肢装具士全体の「離職率」が算出されるとは限りません。離職を経験した人を対象に、離職の要因を探る調査だからです。

重要なのは、職能団体自身が離職要因や人材定着を課題として調査し始めているということのほうです。なお協会は3年に一度『義肢装具士白書』を発刊しており、2026年3月には第5回の実態調査も実施されています。

数字がないことを数字があるように書かないほうが、判断材料としては誠実だと考えています。

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就職先は3つに分かれる

就職先働き方
① 義肢装具製作会社もっとも多いルート。契約先の病院・更生相談所に出向いて採型と適合を行い、自社で製作する
② 病院内の義肢装具製作部署病院の中に製作部署が設けられているところもある。数は少ない
③ メーカー・研究・教育・国際協力部品メーカー、研究機関、養成校の教員。障害者スポーツのサポートや途上国への国際支援活動を行う人もいる

③については、job tagが「障害者スポーツやレクリエーションのサポート、途上国への国際支援活動などを行う義肢装具士もいる」と明記しています。義肢装具の技術は国境を越えて通用するので、こうしたキャリアは実在します。

そして独立開業という選択肢もあります。job tagは「技術を磨いていけば独立して開業することも可能である」としています。義肢装具士では、経験と技術を積んだ先に独立開業というキャリアもあるということです。

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公的制度が使える分野と、対象外になりやすい分野

ここは求人サイトや体験談にはあまり出てこない話です。義肢装具士の仕事の枠組みそのものを決めているのは、実は制度です。

義肢装具士の仕事に主に関わる3つの公的制度

制度対象窓口
医療保険(治療用装具の療養費)症状固定前に、医師の指示で装具療法として使うもの加入している健康保険
補装具費支給制度(障害者総合支援法)身体障害者手帳を取得した後の、日常生活用の義肢装具市町村
労災保険仕事中・通勤中の事故による切断など労働基準監督署

この3つは、対象や支給の仕組みが異なります。補装具費支給制度では、こども家庭庁・厚生労働省の告示「補装具の種目、購入等に要する費用の額の算定等に関する基準」で、基本価格・製作要素価格・完成用部品価格が定められています。医療保険の治療用装具の支給額も、この購入基準をもとに算定されます。

つまり義肢装具士が扱うものの多くは、公的制度で支給額を算定するための基準が国の告示等で定められています。 公的制度の対象となる領域では、一般の商品と同じように販売価格だけで収益構造を考えられる仕事ではありません。ここは仕事の性格を大きく左右します。

費用と制度の詳細は、こちらで整理しています。

公的制度の対象外になりやすい分野

一方で、公的制度が届きにくい領域もあります。

  • スポーツ用・競技用の義肢 趣味や競技専用のものは原則として補装具費支給制度の対象外です。ただし、教育上・職業上の必要が認められる場合には例外的に判断される余地があり、自治体が独自の補助制度を設けている例もあります
  • 動物用の義肢装具 犬や猫の義足をつくっている製作所が国内にありますが、人向けの公的支給制度はありません。費用は基本的に自費となりますが、民間のペット保険による補償の有無は契約内容によります
  • 美容・装飾目的の加工 医学的な必要性を超える範囲の装飾は対象外です

この「保険外」の領域では、公的制度の対象となる義肢装具とは異なる設計やニーズに対応する仕事もあります。競技用義足は競技特性に合わせた設計が求められますし、動物用義肢には人向けの支給基準がそもそも存在しません。ただし収益構造は、公的制度の対象となる領域とはまったく別になります。

義足・義手の費用と、制度の対象外になる場面については、こちらで詳しく整理しました。

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将来性 仕事の中身が変わりつつある

この職種の将来性を考えるうえで、いちばん大事な指摘がjob tagの「労働条件の特徴」に書かれています。

切断の原因が変わってきている

四肢切断の主たる原因は、かつては労働災害や交通事故による負傷など外傷によるものが大多数を占めていました。

しかし現在では、糖尿病などによる血管障害、悪性腫瘍が急速に増えているとされています。高齢化社会を迎え、今後も義肢装具士が果たす役割は大きくなると見込まれる、というのがjob tagの見方です。

これは義肢装具士の仕事が、介護・高齢者医療の側に近づいてきているということです。

外傷による切断者に義足をつくる場合と、糖尿病や末梢動脈疾患を背景に下肢切断に至った方に義足をつくる場合では、検討すべき課題が異なることがあります。後者では、次のような点が加わることがあります。

  • 心機能や腎機能に制約がある場合には、歩行に使えるエネルギーが限られる
  • 反対側の足にも血流障害がある場合には、荷重のかけ方に配慮が必要になる
  • 認知機能の低下がある場合には、自分での着脱・管理が難しくなる
  • 透析治療を受けている場合には、通院のしやすさが設計条件に入ってくる
  • そもそも義足で歩くのか、車椅子で生活するのかという選択が先にある

といった検討が必要になります。義肢装具の技術だけでは足りず、生活全体を見る力が求められる領域です。

技術の進化も大きい

もうひとつの変化は技術です。筋電義手では、令和3年度に殻構造義手の型式に「電動式」が追加され、それまで特例扱いだったものが基準内の補装具になりました。AI技術を用いたパターン認識で複数の動作を切り替えるシステムや、国産の5指独立駆動の義手も、厚生労働省の補装具等完成用部品に登録されています。

研究段階の話ではなく、制度に乗った実用の話だという点が重要です。

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資格を取るまでの道

国内の養成ルートは3つあるが、現在は実質1つ

義肢装具士法第14条第1号から第3号には、国内の学校・養成所を経る受験資格として3つのルートがあります。

  • 大学に入学できる者で、文部科学大臣が指定した大学または厚生労働大臣が指定した養成所で3年以上修得した者
  • 大学・高等専門学校等で1年(高専は4年)以上修業し、指定科目を修めた者で、養成所で2年以上修得した者
  • 義肢・装具の製作に係る技能検定合格者で、養成所で1年以上修得した者

ただしテクノエイド協会は、現在は2番目と3番目に対応する大学・養成所がないとしています。実質的には1番目のルート、つまり高校卒業後に3年以上通う道だけです。

このほかに、外国の学校を卒業した場合や外国の免許を持っている場合に、厚生労働大臣の認定を受けるルートもあります。国家試験の受験資格はこの3つだけではない、という点は押さえておいてください。

学生を募集している養成校は全国に8校だけ

区分校数所在地
大学(私立)3校埼玉県さいたま市、新潟県新潟市、広島県東広島市
養成所(国立)1校埼玉県所沢市
養成所(私立)4校東京都新宿区、愛知県名古屋市、兵庫県三田市、熊本県熊本市
合計8校—

※テクノエイド協会の養成校一覧には9校が掲載されていますが、北海道科学大学保健医療学部義肢装具学科は、2024年4月入学生を最後に学生募集を停止しています。進学先として検討できるのは、現在8校です。

理学療法士や作業療法士の養成校が各県に複数あるのと比べると、規模がまったく違います。近くに学校がない地域のほうが多いということでもあります。これは職業として知られていない理由のひとつでしょう。

国家試験の合格率

直近の合格状況は次のとおりです。

回受験者数合格者数合格率
第35回18112468.5%
第36回20016281.0%
第37回19415479.4%
第38回18613371.5%
第39回18615080.6%

第39回は令和8年2月20日に実施され、130点満点で78点以上が合格という基準でした。受験者は毎年200人前後、合格率は直近5回では68.5〜81.0%で推移しています。

試験科目は臨床医学大要、義肢装具工学、義肢装具材料学、義肢装具生体力学、義肢装具採型・採寸学、義肢装具適合学。医学と工学の両方を問われる構成です。

なお試験の実施は、厚生労働大臣の指定を受けた指定試験機関として公益財団法人テクノエイド協会が行っています。

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介護の現場から見た義肢装具士

最後に、介護・リハビリの現場で働く立場から書いておきたいことがあります。

装具が合っていないことに最初に気づくのは、現場の職員

短下肢装具が当たって皮膚が赤くなっている。ベルトの締め方がいつも違う。靴が履きにくくなっている。装具を嫌がるようになった。

こうした変化に最初に気づくのは、毎日着脱を手伝っている介護職員です。しかし義肢装具士は施設の職員ではないので、現場から直接つながる導線がありません。

相談の入口は、次のいずれかになります。

  • 装具を処方した医師 治療用装具の不適合や、身体状況の変化がある場合の相談先です。なお補装具費支給制度による修理では、市町村の障害福祉担当や製作した義肢装具製作所が相談窓口になる場合もあります
  • 製作した義肢装具製作所 装具の内側や付属品にメーカー名が入っていることが多いので、そこから連絡できます
  • 身体障害者更生相談所 補装具費支給制度に関わる判定を行う機関です。市町村の障害福祉担当を通じて相談します

我慢して使い続けると、皮膚潰瘍や転倒につながります。「合っていないかもしれない」という段階で動けるかどうかで、その後が変わります。

この職種を知っておくと、支援の選択肢が増える

糖尿病や血管障害を背景とした切断への対応は、今後さらに重要になると考えられます。そのとき「義足をつくる」という選択肢を検討できるかどうかは、支援者側が義肢装具士という職種と制度を知っているかどうかに左右されます。

「高齢だから義足は無理」と、年齢だけで決めつけるべきではないと思います。一方で、義足を使うことが常に最善とも限りません。全身状態、身体機能、生活環境、本人の希望を踏まえ、義足歩行や車椅子など複数の選択肢を検討することが大切です。

私は現場で、義足が適応になるかどうかを検討する機会そのものが十分に持たれないケースに出会うことがあります。義肢装具士という職種を知っていれば、「一度専門職に相談してみる」という選択肢を持てます。

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よくある質問

Q
義肢装具士の平均年収はいくらですか。
A

厚生労働省のjob tagには年収454.2万円(令和7年賃金構造基本統計調査)と掲載されていますが、これは義肢装具士だけの数字ではありません。 job tag自身が「義肢装具士が属する主な職業分類(その他の医療・看護・保健の専門的職業 等)に対応する統計情報」であり「必ずしもその職業のみの統計データを表しているものではありません」と明記しています。同じページの就業者数が163,750人となっているのに対し、義肢装具士国家試験の合格者は累計6,610名にすぎないことからも、混在は明らかです。同じページにはハローワーク求人統計として求人賃金(月額)25.6万円、有効求人倍率2.06倍(いずれも令和7年度)も表示されていますが、この留意事項は求人統計を含む「統計データ」全体についてのものなので、こちらも義肢装具士だけの数値とは限りません。参考値として見るにとどめ、実際の給与は求人票で個別に確認するのが確実です。

Q
義肢装具士の離職率はどのくらいですか。
A

義肢装具士に限定した離職率の公的統計は確認できません。 雇用動向調査の離職率は産業別の集計であり、義肢装具士は「製造業」と「医療、福祉」に分散してしまいます。job tagの就業者統計も他職種と混在しています。したがって「離職率○%」という具体的な数字を見かけた場合は、出典を確認することをおすすめします。ただし2026年9月16日、公益社団法人日本義肢装具士協会が「義肢装具士離職者アンケート」を開始しました(回答期限は令和8年10月9日)。退職に至った理由、給与・待遇、労働環境、キャリア形成などを調査し、離職防止・人材定着の基礎資料にするとしています。都市部と地方の地域差も把握対象です。つまり、実態把握はまさに現在進行中の段階だといえます。

Q
義肢装具士は病院で働けますか。
A

働けますが、数はごく少ないのが実情です。令和5年医療施設調査では、病院における義肢装具士の常勤換算従事者数は80.9人、一般診療所で39.7人にとどまります。テクノエイド協会も、義肢装具士は「大半が医療機関に属さず、民間の義肢装具製作施設に所属し、契約している病院や更生相談所等に出向き業務を行うのが一般的」と説明しています。病院内に義肢装具製作部署が設けられている施設もありますが、多数派ではありません。医療職でありながら医療機関の外で働くという点が、この職種のいちばんの特徴です。

Q
義肢装具士の資格を取るにはどうすればいいですか。
A

義肢装具士法には、国内の学校・養成所を経る受験資格として3つのルートが定められていますが、テクノエイド協会によれば現在は「高校卒業後に指定された大学または養成所で3年以上学ぶ」ルートだけが実際に機能しています。(このほかに、外国の学校卒業者や外国免許保有者が厚生労働大臣の認定を受けるルートもあります。)学生を募集している養成校は全国8校(大学3校、養成所5校。うち国立1校)で、所在地は埼玉県さいたま市・所沢市、東京都新宿区、新潟県新潟市、愛知県名古屋市、兵庫県三田市、広島県東広島市、熊本県熊本市です。なおテクノエイド協会の一覧には9校が掲載されていますが、北海道科学大学は2024年4月入学生を最後に募集を停止しています。卒業後に国家試験を受け、合格して厚生労働大臣の免許を受けると義肢装具士になれます。第39回国家試験(令和8年2月実施)は受験186名・合格150名で、合格率80.6%でした。

Q
義肢装具士の将来性はどうですか。
A

job tagは「高齢化社会を迎え、今後も義肢装具士が果たす役割は大きくなると見込まれる」としています。理由として挙げられているのが切断原因の変化です。かつては労働災害や交通事故による外傷が大多数でしたが、現在は糖尿病などによる血管障害、悪性腫瘍が急速に増えているとされます。つまり仕事の対象が高齢者にも広がっており、介護・高齢者医療との距離が近づいています。技術面では、筋電義手が令和3年度に特例扱いから基準内の補装具になり、AIによるパターン認識を用いた制御システムや国産の多指駆動義手が補装具等完成用部品に登録されるなど、進歩が続いています。なおjob tagには令和7年度の有効求人倍率2.06倍という数字も掲載されていますが、これも対応する職業分類にもとづく統計であり、義肢装具士だけの数値とは限らないため、参考値として見てください。

Q
義肢装具士と理学療法士・作業療法士はどう違いますか。
A

役割が違います。義肢装具士は医師の指示のもとで義肢装具を採型・製作し、身体に適合させることを業務とします。理学療法士・作業療法士は、その義肢装具を使って動作や生活動作の練習を行う立場です。義足を作るのが義肢装具士、その義足で歩く練習をするのが理学療法士、という分担になります。実際の現場では、装具のチェックアウト(適合確認)や歩容の評価を一緒に行うことが多く、連携の密度が高い関係です。テクノエイド協会も、義肢装具士は「生体と器械のインターフェイスの部分を担う専門職」であり、医師・理学療法士・作業療法士等と情報交換しながら業務を行うと説明しています。

Q
利用者の装具が合っていないようです。どこに相談すればよいですか。
A

義肢装具士は施設の職員ではないため、現場から直接連絡する導線がないことが多いです。相談の入口は3つあります。ひとつは装具を処方した医師で、治療用装具の不適合や身体状況の変化がある場合の相談先です。なお補装具費支給制度による修理では、市町村の障害福祉担当や製作した義肢装具製作所が相談窓口になる場合もあります。ふたつめは製作した義肢装具製作所で、装具の内側や付属品に製作所名が入っていることが多く、そこから連絡できます。みっつめは身体障害者更生相談所で、補装具費支給制度に関する判定を行う機関です。市町村の障害福祉担当を通じて相談します。皮膚が赤くなっている、当たって痛がる、着脱を嫌がるといった変化は放置せず、早めに相談してください。潰瘍や転倒につながります。

まとめ

押さえておきたい6点
  • 医療職だが医療機関の外で働く。令和5年時点で、病院における常勤換算従事者数は80.9人、診療所で39.7人です
  • 採型と適合は、製作所では有資格者が担当する中核業務。製作は無資格の技術者も担えます
  • 「平均年収454万円」は他職種と混在した数字。出典元がそう明記しています
  • 求人賃金・求人倍率も同じ注記の対象。参考値として読んでください
  • 離職率の公的統計は確認できません。ただし2026年9月、職能団体が離職者アンケートを開始しました
  • 切断原因として血管障害・悪性腫瘍が増加。仕事が高齢者側にも広がっています

この記事を書きながら強く感じたのは、義肢装具士という職種についての情報が、想像以上に整理されていないということでした。年収の数字ひとつとっても、出典元が「他の職種と混ざっています」と明記しているものが、そのまま「義肢装具士の平均年収」として流通しています。

この職種を目指す人にとっても、現場で連携する立場にとっても、まず「医療機関の外にいる医療職である」という構造を押さえることが、いちばん理解の助けになると思います。待遇の幅、納期のプレッシャー、独立開業という選択肢、そして公的制度では支給額の算定基準が定められている世界。すべてがそこから説明できます。

なお、この記事は公表されている統計や公的資料をもとにした一般的な整理です。具体的な労働条件や就職先の状況は、求人票や養成校、日本義肢装具士協会などで個別にご確認ください。

参考資料

2024年・2025年・2026年
介護保険・介護報酬改定の情報

令和8年度(2026年)障害福祉サービス等報酬改定の概要と変更点まとめ

2026年(令和8年)介護報酬改定の全体像についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

介護報酬改定2026年(令和8年度)まとめ|いつから・変更点・対象サービスをわかりやすく解説

令和6年~8年 地域区分(介護)区市町村の等級一覧(2024年4月~)

介護保険区分支給限度基準額一覧(要支援・要介護)

New! 令和8年(2026年)介護報酬改定

New!令和8年(2026年)介護報酬改定介護報酬改定後の介護保険サービスごとの介護報酬・単位数

 介護保険の居宅サービス介護給付費単位数(対象:要介護)

地域密着型サービスの単位数改定内容

介護予防サービス(対象・要支援)

介護予防・日常生活支援総合事業費(要支援・事業対象者)の改定内容

施設サービス等介護給付費単位数の改定内容

      2026年(令和8年度)・2024年 介護報酬改定で特徴的な加算・制度

      利用者負担軽減の仕組みの改定

      補足給付(負担限度額認定)に関わる見直しは、以下のとおりです。

      令和6年8月1日施行 基準費用額の見直し

      令和7年8月1日施行 多床室の室料負担
      令和8年8月1日施行 食費基準費用額の1,445円→1,545円、低所得者の食費負担限度額の段階別変更

       

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