令和9年度介護報酬改定は2027年6月1日施行の方向|理由と実務への影響

令和9年度(2027年度)の介護報酬改定は、いつから始まるのか。これまでは年度初めの4月1日が前提として語られてきました。
令和8年10月28日の社会保障審議会介護給付費分科会(第272回)で、厚生労働省の担当者が「現時点では来年6月1日の施行を念頭に準備を進めている」と述べたとされています。令和9年6月1日です。
この記事では、何がどう説明されたのかを整理したうえで、4月施行との違いが実務にどう出るのか、まだ決まっていないことは何かを確認します。後半に、現場の立場からの意見を書きます。
この6月1日という日付は、分科会での厚生労働省の説明として報じられたものです。当日の資料には記載がなく、議事録もまだ公開されていません(2026年11月2日確認)。厚労省の担当者自身が「来年度の予算編成過程を経て最終的に決定するもの」と前置きしています。確定ではありません。
令和9年度改定の議論の全体像は、こちらでまとめています。
厚労省が分科会で説明したこと
第272回の議題は、特定施設入居者生活介護、登録施設介護支援、地域区分、そして令和8年度調査の速報値でした。施行日はこの議題に含まれていません。委員からの質問に対する答えとして出てきたものです。
報道によると、日本医師会の委員が、令和6年度改定でサービスごとに4月と6月に施行時期が分かれ、事業所の事務負担が大きかったことを指摘し、今回の施行時期を質問しました。
これに対して厚労省の担当者は、施行時期を考えるうえで重要なこととして次の3点を挙げたと報じられています。
そのうえで「来年度の予算編成過程を経て最終的に決定するもの」としつつ、6月1日の施行を念頭に準備を進めていると述べた、という内容です。
「統一」という言葉が入っている点が、この説明のポイントだと思います。前回の改定で日付が分かれたことを前提にした言い方です。
令和6年度改定は、施行日が4つに分かれていた
前回の定期改定である令和6年度改定の施行時期は、厚労省の資料で次のように整理されています。
| 施行日 | 対象 |
|---|---|
| 令和6年4月1日 | 下記以外のサービス。処遇改善関係加算について事業所内での柔軟な職種間配分を認める改正 |
| 令和6年6月1日 | 訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所リハビリテーションの4サービス。処遇改善関係加算の加算率の引上げと、加算の一本化 |
| 令和6年8月1日 | 補足給付のうち、基準費用額の見直し |
| 令和7年8月1日 | 補足給付のうち、多床室の室料負担 |
医療系4サービスが6月1日になった理由は、資料に明記されています。令和6年度診療報酬改定が令和6年6月1日施行とされたこと等を踏まえたものです。令和6年度は診療報酬との同時改定でしたから、医療側の施行日に合わせた形です。
処遇改善関係加算の加算率引上げが6月1日になった理由は、別です。資料には「予算編成過程における検討を踏まえ」とあります。そして加算率の引上げが6月なので、加算の一本化も6月にそろえた。ただし職種間配分の柔軟化だけは4月から、という組み立てでした。
整理すると、令和6年度に医療系4サービスが6月施行となったのは、診療報酬改定の施行時期などを踏まえたものでした。一方、今回(令和9年度)の6月施行の理由として報道で説明されているのは、改定内容を理解する期間の確保、届出やシステム改修の準備、施行時期の統一という、介護現場の事務負担軽減を主眼に置いたものです。
令和8年度の期中改定も6月施行だった
今年度、令和8年度にも改定がありました。3年ごとの定期改定ではなく、処遇改善を早期に実現するための期中改定です。
| 施行日 | 内容 |
|---|---|
| 令和8年6月1日 | 処遇改善加算の拡充(改定率+1.95%) |
| 令和8年8月1日 | 食費の基準費用額の引上げ(改定率+0.09%) |
この期中改定が6月になった理由も、令和9年度の話とは別です。令和7年度補正予算で行われた補助金(介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業)の支援期間が2026年5月までで、その直後の6月から報酬に引き継ぐ形だったためです。


並べてみると、こうなります。
| 改定 | 施行日 | 6月になった理由 |
|---|---|---|
| 令和6年度(定期) | 4月1日/6月1日/8月1日ほか | 医療系4サービスは診療報酬改定が6月1日施行とされたこと等を踏まえ。処遇改善の加算率引上げは予算編成過程における検討を踏まえ |
| 令和8年度(期中) | 6月1日/8月1日 | 補助金の支援期間が5月までで、6月から報酬に引き継ぐため |
| 令和9年度(定期) | 6月1日を念頭(調整中) | 改定内容を理解する期間の確保、届出やシステム改修の準備、施行時期の統一(分科会での説明として報道) |
介護報酬改定は4月から、という前提は、すでに前回から崩れています。令和9年度についても、4月1日だけを前提にした準備では足りない段階に来ています。
6月1日施行だと、実務はどう変わるのか
ここは資料に書かれていることではなく、改定の施行日が6月1日になった場合に実務で起きることを、一般的な介護報酬の請求の仕組みから整理したものです。
6月施行となる項目は、6月提供分・7月請求分から
介護報酬は、サービスを提供した月の内容を翌月に請求します。6月1日施行となる改定項目は、原則として6月提供分から適用され、通常は7月に請求します。
ただし、全サービス・全項目が同じ日に変わるかは未確定です。令和9年4月・5月に提供したサービスの算定についても、地域区分や個別の加算などの適用時期を確認する必要があります。
入金の時期も分けて考えてください。6月提供分を7月に請求した場合、国民健康保険団体連合会からの支払いは通常8月です。具体的な支払日は、各都道府県の国保連が公表している支払日程で確認できます。
| 区別するもの | 6月施行の場合の一般的な流れ |
|---|---|
| 改定後の報酬で算定するサービス | 6月提供分から |
| 国保連への請求 | 7月 |
| 国保連からの入金 | 通常8月。具体的な支払日は各国保連の案内で確認 |
年度の途中で収入の前提が変わる
4月から翌年3月までを予算期間とする事業所では、6月施行となる改定項目について、改定前の2か月と改定後の10か月を分けて見込む必要があります。
前年度との比較をするときも、同じ条件での比較にはなりません。
答申から施行までの期間は長くなる
スケジュール案に示されているのは、令和9年1月頃の諮問・答申までです。1月頃に答申、6月1日に施行となれば、答申から施行までの期間は4月施行の場合より長くなります。
この間に、告示、解釈通知、Q&Aが順に出てきます。あわせて介護ソフトの改修、加算の届出、重要事項説明書や契約書の見直し、利用者への説明が必要になります。厚労省が挙げた「準備期間の確保」はこの部分です。
ただし、実際に準備へ使える期間は、告示・解釈通知・Q&Aやソフト改修版がいつ出るかによって変わります。スケジュール案に、告示や通知の公表日は示されていません。
6月の変更に向けて、利用者には事前に説明する
6月施行となる改定項目によって自己負担額が変わる場合は、変更内容と適用時期を事前に説明する必要があります。
居宅介護支援では、区分支給限度基準額に対する単位数の積み上げが変わる可能性があります。限度額に近い方のケアプランは、6月の切り替えに合わせて確認する作業が発生します。
まだ決まっていないこと
6月1日という日付そのものが調整中ですが、それ以外にも確認できていない点があります。
基準については、スケジュール案に「地方自治体における条例の制定・改正に要する期間を踏まえて、基準に関しては先行してとりまとめを行う」と書かれています。とりまとめを先行させるという話で、施行日については触れられていません。
地域区分は、同じ第272回で資料3として示されました。令和9年度以降の級地の設定方法について、次の案が出ています。
令和8年2月に行われた市町村への意向調査では、1,088自治体(62.5%)が「現行の上乗せ割合と変わらない」、438自治体(25.2%)が「現行よりも上乗せ割合が上がる」で、あわせて約9割が公務員の地域手当に準拠することに異論なしという結果でした。現行と同じ上乗せ割合(経過措置)を希望したのは140自治体(8.0%)です。
そのうえで気になるのが時期です。現行の級地の適用期間は令和6年度から令和8年度まで、つまり2027年3月31日までとされています。経過措置も令和8年度末まで延長された状態です。改定が6月1日施行になった場合、令和9年4月・5月の2か月をどの級地で算定するのか。資料3には適用時期の記載がありません。
ここからのスケジュール
第256回分科会(令和8年4月27日)の資料4に示されたスケジュール案です。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 令和8年4月〜夏頃 | 主な論点について議論、事業者団体等からのヒアリング |
| 令和8年10〜12月頃 | 具体的な方向性について議論 |
| 令和8年12月中 | 報酬・基準に関する基本的な考え方の整理・とりまとめ(基準は先行してとりまとめ) |
| - | 令和9年度政府予算編成 |
| 令和9年1月頃 | 介護報酬改定案の諮問・答申 |
改定率が見えるのは12月の政府予算案です。施行日が最終的に決まるのも、ここを経てからになります。
事業所としては、12月のとりまとめで中身を把握し、1月の答申で単位数を確認し、告示と通知を待つ流れです。告示や通知がいつ出るかは、このスケジュール案には書かれていません。
事業所がいま確認しておくこと
6月1日は確定したわけではありません。4月施行への備えは残しつつ、6月施行だった場合の計画も用意しておく、という進め方が現実的です。
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| 令和9年度の事業計画 | 4月・5月の2か月と、6月から翌年3月までの10か月で、収入の前提が変わる可能性があります。年度で一本にせず、分けて見込みを立てておきます |
| 賃上げの時期 | 賃上げの原資となる報酬の引上げも6月からとなる場合、4月・5月提供分には今回の改定による増収がありません。4月から賃上げする場合の財源と、入金までの資金繰りを確認します |
| 介護ソフトの改修 | 改修版の提供時期やテスト期間をベンダーに確認します |
| 加算の届出 | 算定開始前に必要な届出期限を確認します。サービス・加算ごとに期限が異なります |
| 利用者・家族への説明 | 自己負担額が変わる時期に向けて、事前に説明します。重要事項説明書や契約書の見直しも、同じ時期にそろえます |
| 4月1日施行のものと混同しない | 改正法の原則施行は令和9年4月1日です。特定地域サービスの創設や夜間対応型訪問介護の廃止は、報酬改定とは別に施行日が定められています |
とくに注意したいのは最後の行です。制度改正と報酬改定は別物で、施行日も別です。「2027年4月から全部変わる」と理解していると、準備の順番を間違えます。
令和9年は、3つの日付が並びます
令和9年に動くものは、介護報酬改定だけではありません。
| 日付 | 何が始まるか | 確定の度合い |
|---|---|---|
| 令和9年4月1日 | 社会福祉法等の一部を改正する法律の原則施行。特定地域サービス・特定地域居宅サービス等事業の創設、夜間対応型訪問介護の廃止と定期巡回・随時対応型訪問介護看護への統合、電子資格確認の導入など | 改正法で施行期日が定められています |
| 令和9年6月1日 | 介護報酬改定 | 分科会での説明として報道。予算編成過程を経て最終決定 |
| 令和9年12月1日 | ケアマネジャーの更新制の廃止と新しい法定研修体系 | 介護保険部会の資料で施行日とされた案 |
改正法の原則施行は4月1日、報酬改定は6月1日の見込み、ケアマネの研修体系は12月1日の案。自事業所に関係する改正が重なれば、同じ年に複数回の準備が必要になります。
特定地域サービスのように、法律で枠ができて報酬と基準はこれから、というものもあります。新設サービスについては、制度の施行日とあわせて、報酬・基準の適用時期や経過措置を個別に確認する必要があります。



ここからは、私がこれをどう見ているかです
ここまでは、確認できる情報と、それを踏まえた実務上の留意点を整理しました。ここから先は、介護の現場にいる立場からの意見です。
4月施行には、ずっと無理がありました
6月施行そのものは、現場にとってありがたい話です。
これまでの4月施行は、1月に答申、2月から3月に告示と解釈通知、4月1日に施行という流れでした。その間に、介護ソフトの改修版を待ち、加算の届出を出し、重要事項説明書と契約書を直し、利用者に説明する。年度末の繁忙期と重なります。
Q&Aが施行後に追加されて、算定の考え方が後から変わることも何度もありました。4月に始めたものを、6月のQ&Aで修正する。準備期間が足りないまま走り出すのが当たり前になっていました。2か月増えるなら、その分はまともに準備ができます。
「できる限り統一」と言ったことを守ってほしいです
気になるのは、ここです。
令和6年度改定は、4月1日・6月1日・8月1日と日付が分かれました。処遇改善加算については、加算率の引上げと一本化が6月、職種間配分の柔軟化が4月。同じ加算の中でも日付が違いました。あのときの現場の混乱を思い出すと、施行日が増えることのコストは相当なものです。
今回「できる限り統一」と言葉にしたのですから、処遇改善だけ別、基準だけ別、補足給付だけ別、という形は避けてほしいです。6月1日に全部そろえる。それができるなら、2か月遅れることの意味は十分にあります。
逆に、6月に後ろ倒しにしたうえで日付がまた分かれるなら、日付ごとに対応する負担は残ります。準備期間を延ばすだけでなく、この負担も減らしてほしいです。
もうひとつ言いたいのは、情報が出る時期です。施行日だけを6月に動かしても、告示や通知が出る日まで後ろにずれたら、現場の準備期間は増えません。日付を遅らせるだけでなく、必要な情報をいつまでに出すのかも示してほしいです。
賃上げの原資と実施時期をどう考えるか
一方で、割り切れない部分もあります。
令和9年度改定の柱は、物価と賃金の上昇を報酬に反映することです。基本的な視点の案でも、経営の安定と、他職種と遜色のない処遇改善が最初に挙げられています。
仮に賃上げの原資となる報酬の引上げも6月からであれば、4月・5月のサービス分には、その増収がありません。4月から賃上げする事業所は、この期間の財源を別途確保する必要があります。
さらに、6月提供分の国保連からの入金は通常8月です。収支の見込みと、実際の入出金の予定は分けて考える必要があります。6月から算定できることと、6月にお金が入ることは別です。
令和7年度の介護事業経営概況調査では、全サービス平均の収支差率は4.7%、赤字事業所の割合は37.5%でした。この状況で、改定による増収がない4月・5月の賃上げ分を、別の財源で賄える事業所がどれだけあるか、という話です。
準備期間が必要なのは分かります。でも、そのために職員の賃上げまで待たせていいのでしょうか。報酬の引上げが6月からになるなら、4月・5月をどう支えるのかもセットで考えてほしいです。事業所が先に負担すれば済む、という話にはしてほしくありません。
年度と改定がずれることの地味な負担
もうひとつ、あまり語られないことがあります。
4月を起点に事業計画や昇給の予定を組んでいる事業所では、6月施行となる改定項目について、年度途中で収入の前提が変わります。前年度と比べるときにも、その違いを考える必要があります。
これは制度の良し悪しではなく、単純に手間です。小さな事業所ほど、この手間が重く出ます。
そして、令和9年は4月に制度改正、6月に報酬改定、12月にケアマネの研修体系という3つの日付が並びます。自事業所に関係するものが重なれば、別の書類と別の説明が必要になります。ひとつずつは小さくても、同じ年に重なれば、現場の体力は確実に削られます。
それでも、早めに言ってくれたことは評価します
今回の説明は、委員の質問に答えたものです。資料に書いて出したものではありません。
それでも、10月の段階で「6月1日を念頭に」と言葉にしたのは大きいです。4月を前提に動いていた事業所は、ここで計画を組み替えられます。12月のとりまとめや1月の答申の段階で初めて分かるのとは、準備の余裕がまったく違います。
決まっていないことを決まっていないと言いながら、方向だけ早めに示す。こういう出し方は、現場としては助かります。あとは、12月の予算編成を経て、どこまでこの通りに進むかです。
令和9年度改定の施行日についてよくある質問
まだ決まっていません。令和8年10月28日の介護給付費分科会で、厚生労働省の担当者が「現時点では来年6月1日の施行を念頭に準備を進めている」と述べたと報じられています。同時に「来年度の予算編成過程を経て最終的に決定するもの」とも述べています。確定するのは、令和9年度政府予算編成を経てからです。
報道によると、厚労省の担当者は、施行前に改定への理解を深めること、各種の届出やシステム改修などに必要な準備期間を確保すること、施行時期を「できる限り統一」して介護現場の事務負担を軽減することが重要だと説明しています。なお令和6年度改定で医療系4サービスが6月1日施行になったのは、令和6年度診療報酬改定が6月1日施行とされたこと等を踏まえたものです。
6月1日施行となる改定項目は、原則として6月提供分から適用され、通常は7月に請求します。国保連からの入金は通常8月です。ただし、全サービス・全項目が同じ日に変わるかは未確定です。4月・5月提供分の算定についても、地域区分や個別の加算などの適用時期を確認する必要があります。
「できる限り統一」という説明はありましたが、全サービス共通になると確定したわけではありません。令和6年度改定では、医療系4サービスと処遇改善関係加算の加算率引上げが6月1日、その他が4月1日、補足給付の基準費用額が8月1日と分かれていました。今回も一部が別の日になる可能性は残ります。
別です。社会福祉法等の一部を改正する法律(令和8年法律第51号)は、原則として令和9年4月1日施行で、改正事項ごとに例外があります。介護報酬改定は単位数や算定要件を定めるもので、介護給付費分科会で議論されています。ケアマネジャーの更新制の廃止と新しい研修体系は、令和9年12月1日を施行日とする案が示されています。
令和9年度政府予算編成の過程で決まります。スケジュール案では、令和8年12月中に報酬・基準に関する基本的な考え方の整理・とりまとめが行われ、令和9年1月頃に介護報酬改定案の諮問・答申という流れです。単位数が分かるのは答申の段階です。
まとめ
4月施行への備えは残しつつ、6月施行だった場合の計画も用意しておく段階です。12月のとりまとめと予算編成で動きがありますので、その時点でこの記事も更新します。



