居宅介護支援 特定事業所加算「24時間連絡体制」輪番・転送・外部委託はどこまで認められるか

居宅介護支援 特定事業所加算「24時間連絡体制」輪番・転送・外部委託はどこまで認められるか
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居宅介護支援の特定事業所加算を算定するとき、13項目の要件のうち最後まで引っかかるのが(4)の24時間連絡体制だと思います。

人員は揃えられる。会議も研修計画も、事例検討会も回せる。地域包括からの困難事例も受ける。それでも、「24時間つながる体制をどう作るか」だけが解けない。そういう事業所は多いはずです。

そして、この加算は取らないという選択がしにくい。経営から見ると、収支が成り立つかどうかを左右する規模のお金です。

この記事では、要件(4)が実際にどこまで求められているのかを条文と通知で確認したうえで、なぜこれが現実的に満たせないのかを、算定率と事業所規模のデータから整理します。そのうえで、20年間ほとんど動かなかったこの要件が、いま見直しの対象になりつつある状況までまとめます。

特定事業所加算そのものの単位数や要件の全体像は、別記事にまとめています。

経営から見ると、この加算は「取らない」という選択肢がない

最初に金額を確認します。要件の重さを語る前に、事業所が何を賭けているのかをはっきりさせたいからです。

区分単位数利用者80人での月額年額
特定事業所加算(Ⅰ)505単位/月約40万4千円約485万円
特定事業所加算(Ⅱ)407単位/月約32万6千円約391万円
特定事業所加算(Ⅲ)309単位/月約24万7千円約297万円
特定事業所加算(A)100単位/月約8万円約96万円

1単位10円で計算しています。実際は地域区分で変わります。利用者数は、厚生労働省の調査で1事業所あたりの要介護者数が80.8人となっているため80人としました。

ここに、もう一つの数字を並べます。

居宅介護支援事業所の経営指標
  • 1事業所1か月あたりの費用額 約110万円
  • 収支差率(令和3年度決算・税引前) 4.0%
  • つまり1か月の利益は4万円台

月商110万円、利益4万円台の事業に、月30万円前後の加算が乗るかどうかという話です。

言い換えれば、平均的な居宅介護支援事業所は、特定事業所加算がなければ収支が成り立ちません。

これが、この記事の出発点です。制度上は任意の加算ですが、経営上は選択の余地がない。だから事業所は、要件(4)が厳しいと分かっていても取りに行きます。無理をしてでも24時間体制を組む理由は、善意でも使命感でもなく、ここにあります。

制度の建前では「加算を算定しないなら24時間連絡体制は不要」です。しかし実際には、収支のために取らざるを得ない加算の要件という形で、ケアマネジャーの夜間と休日が差し出されている。このねじれが20年続いています。

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要件(4)は、条文と通知でどこまで求められているのか

まず、正確なところを確認します。告示上の文言はこれだけです。

特定事業所加算 算定要件(4)

24時間連絡体制を確保し、かつ、必要に応じて利用者等の相談に対応する体制を確保していること

この要件は加算(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)(A)すべてに課されます。(A)だけは「連携でも可」という扱いです。

中身は留意事項通知(老企第36号)に書かれています。原文はこうです。

「24時間連絡可能な体制」とは、常時、担当者が携帯電話等により連絡を取ることができ、必要に応じて相談に応じることが可能な体制をとる必要があることを言うものです。(当該事業所の介護支援専門員が輪番制で対応すること等も可能)
なお加算(A)を算定する場合は、携帯電話等の転送による対応等も可能です。その際、連携先事業所の利用者に関する情報を共有することから、指定居宅介護支援等基準第23条の規定を遵守し、利用者又は家族に対し、当該加算算定事業所である旨及びその内容が理解できるよう説明を行い、同意を得ること。

指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の解釈通知(老企第36号 第3の11)

通知が明文で認めているのは、次の2つだけです。

やり方加算(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)加算(A)
事業所への夜間常駐不要不要
担当者が携帯電話等を持つ○ 明記○
当該事業所のケアマネによる輪番制○ 明記○
携帯電話等の転送による対応明文なし○ 明記
連携先事業所との体制確保明文なし○ 明記

ポイントは主語です。通知は「当該事業所の介護支援専門員が輪番制で対応すること等も可能」と書いています。緩和の対象は、あくまで自事業所のケアマネジャーの間での持ち回りです。

そして転送による対応が明文で認められているのは、加算(A)を算定する場合だけです。(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)には転送についての記載がありません。

居宅介護支援事業費の特定事業所加算を取得した事業所は、毎月 「所定の記録」を策定しなければこととされていますが、その様式は以下のように標準様式があり、毎月、作成し、2年間保存しなければならないこととなっています。

その標準様式にも「24時間連絡できる体制を確保し、かつ、必要に応じて利用者等の相談に対応する体制を確保している」ことの記録と、さらに「具体的な方法」を記述する項目が設けられています。(現在は自治体単位で様式は若干異なっていると思いますが、おそらく所定の記録の様式の中には24時間連絡できる体制についての項目があるはずです)

居宅介護支援における特定事業所加算にかかる基準の遵守状況に関する記録(所定の記録)標準様式
居宅介護支援における特定事業所加算にかかる基準の遵守状況に関する記録(所定の記録)標準様式

平成18年4月介護報酬改定関係Q&A( Vol.2)厚生労働省

この様式は厚生労働省が示したものではありますが古いものになります。今は各自治体のホームページなどで、特定事業所加算算定に関する所定の様式の標準様式がダウンロードできるようになっているところが多いのでそちらから最新版をダウンロードしていただく方が良いと思います。

ここから、要件(4)が厳しい理由が3つ出てきます。順に見ていきます。

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厳しさ① 輪番を組める規模の事業所が、そもそも少ない

「輪番制も可能」という緩和は、一定の人数がいて初めて意味を持ちます。では実際の事業所規模はどうか。

ケアマネの配置人数事業所の割合1人あたりの当番日数(月30日)
1人22.6%30日(輪番が成立しない)
2人21.9%15日
3人19.7%10日
4人15.2%7.5日
5人以上20.6%6日以下

1人と2人で44.5%です。

1人事業所に輪番はありません。2人なら月の半分が当番です。3人でも10日。1事業所あたりのケアマネジャーは常勤換算2.8人ですから、平均的な事業所では月10日前後の当番が回ってくる計算になります。

ここで重要なのは、当番の日は自分が担当していない利用者からの電話も受けることになる点です。顔も状況も知らない利用者の家族から、夜中に相談が来る。結局「担当のケアマネから折り返します」と言うしかない場面が多く、そこで解決するわけでもありません。

この構造については、株式会社ウェルネス香川の壷内令子氏が的確に整理されています。

自分が担当していない利用者・家族からの相談・連絡にも対応する必要があります。対応が難しい場合は、結局のところ担当のケアマネジャーにつなぐことになります。
また、ケアマネジャーの人数が少なければ、当番の回数が多くなってしまいます。ケアマネジャーの人数が多ければ、当番の回数は少なくなりますが、利用者の人数も多いため相談・連絡の頻度も高くなりがちです。

介護ニュースJoint「【壷内令子】24時間の連絡体制でケアマネは負担増 居宅介護支援の特定事業所加算は時代に合わせた見直しを」2024年11月5日

人数を増やしても負担は減らない。ここが厄介なところです。

加算(Ⅰ)の算定率1.3%が示すもの

算定率を見ると、規模の壁がはっきり出ています。

区分必要な人員(常勤専従)算定率(事業所ベース)
特定事業所加算(Ⅰ)主任ケアマネ2名+ケアマネ3名=5名以上1.3%
特定事業所加算(Ⅱ)主任ケアマネ1名+ケアマネ3名=4名以上20.2%
特定事業所加算(Ⅲ)主任ケアマネ1名+ケアマネ2名=3名以上13.0%
特定事業所加算(A)主任ケアマネ1名+常勤1名+非常勤1名0.8%
合計(要件(4)を負っている事業所)約35%

出典は厚生労働省「介護給付費等実態統計」(令和4年3月サービス提供分)です。

加算(Ⅰ)は1.3%。年間485万円の加算が取れるにもかかわらず、100事業所に1つしか算定していません。5名を常勤専従で揃えられる事業所が、それだけ少ないということです。

主力は(Ⅱ)の20.2%と(Ⅲ)の13.0%。つまり3〜4名規模の事業所が、月10日前後の当番を回して要件(4)を満たしているのが実情です。

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厳しさ② 「必要に応じて」の範囲が、20年間示されていない

要件の後半は「かつ、必要に応じて利用者等の相談に対応する体制を確保していること」です。

通知はこれを「必要に応じて相談に応じることが可能な体制をとる」と言い換えているだけで、何が「必要」なのかは一切示していません。

実地指導で「体制が確保されていない」と言われない水準がどこなのか、事業所側からは分かりません。結果として、現場は安全側に振るしかなくなります。全部出る。全部聞く。それが唯一の確実な満たし方だからです。

夜中にケアマネジャーが対応できることは、実は少ない

現場で夜間にかかってくる電話を整理すると、こうなります。

夜間に起きること本来の連絡先ケアマネにできること
急変した救急、主治医、訪問看護ほぼない
転倒して動けない救急ほぼない
薬のことを聞きたい薬局、主治医ほぼない
サービス事業所が来ない当該サービス事業所翌朝の確認
制度や手続のことを知りたい市区町村(日中)翌日でよい
介護がつらい、話を聞いてほしい—話を聞く

命に関わる場面では、ケアマネジャーに電話しても事態は動きません。「救急車を呼んでください」と言うのが精一杯で、判断の重みだけがこちらに乗ります。

制度や手続の相談は、本来は保険者である市区町村の仕事です。しかし役所は夜間に開いていません。

結果として残るのが、表のいちばん下です。実際に受ける電話の多くはここだと思います。

壷内氏も、この曖昧さを問題にしています。

これは具体的に何を指しているのでしょうか。真の緊急時のことなのか、それとも他の困りごとの相談も含むということでしょうか。それは本当に、休日や夜間にも対応しなければならない相談なのでしょうか。利用者宅への訪問時や業務時間内を活かせば、十分に対応できる相談も多いのではないかと思います。
利用者・家族も、24時間連絡できるなら時間を気にせず「とりあえず今聞いてみよう」と考えるでしょう。

介護ニュースJoint「【壷内令子】24時間の連絡体制でケアマネは負担増」2024年11月5日

「24時間つながる」という体制を作ると、相談のハードルそのものが下がります。昼間に聞けば済むことが、夜に来るようになる。そして一度そうなった関係を、あとから戻すことはできません。

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厳しさ③ 外部委託も法人内の一次受けも、明文では認められていない

ここが実務でいちばん知りたいところだと思います。

併設の施設に一次受けしてもらう。オンコール代行サービスを使う。法人内の他部署で受ける。これらが認められるなら、要件(4)は一気に軽くなります。

しかし、加算(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)について、これを明文で認めた規定はありません。

通知が書いているのは「当該事業所の介護支援専門員が輪番制で」までです。転送と連携が出てくるのは加算(A)の部分だけで、しかもその(A)は算定率0.8%にとどまっています。

連携で要件を満たせる唯一の区分が、ほとんど使われていない。100単位という単位数の低さもありますが、制度が用意した逃げ道が機能していない状態です。

ケアマネ協会の要望が、認められていないことの証拠になっている

2026年7月7日、日本介護支援専門員協会が自民党の「日本ケアマネジメント推進議員連盟」の総会に、来年度の介護報酬改定に向けた要望書を提出しました。その中身がこれです。

協会が見直しを求めているのが、「24時間の連絡体制を確保する」という算定要件だ。(中略)具体的には、多くのケアマネジャーが勤務時間外でも携帯電話を持って対応にあたっている現状を再考すべきという。例えば、併設されている関連施設で相談をいったん受け付けたり、オンコール代行の事業所が最初に対応にあたったりするなど、より柔軟な運用ルールを認めることを提案している。

介護ニュースJoint「【居宅介護支援】特定事業所加算の24時間体制の見直しを ケアマネ協会、自民議連に要望」2026年7月8日

業界団体が議員連盟にわざわざ持ち込んでいるということは、現行ルールでは認められないという認識が共有されているということだと思います。

逆に言えば、要望が通るまでは、この運用はグレーのままです。

運用の可否は、最終的に指定権者(都道府県・市町村)の判断になります。
法人内での一次受けやオンコール代行を検討する場合は、必ず事前に保険者へ確認してください。
「他の事業所でやっているから大丈夫」は、実地指導では通りません。

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この要件は2006年から、ほとんど変わっていない

特定事業所加算が創設されたのは平成18年(2006年)4月です。根拠は平成18年3月14日の厚生労働省告示第124号。24時間連絡体制は、創設時から要件に入っていました。

時期加算全体の動き要件(4)の動き
2000年4月介護保険制度スタート(加算なし)—
2006年4月特定事業所加算 創設(500単位)この時点で要件に含まれる
2009年4月区分を分割、(Ⅱ)を新設変更なし
2018年4月(Ⅳ)を新設変更なし
2021年4月(A)を新設、(Ⅳ)は医療介護連携加算として独立(A)に限り転送・連携を明文化
2024年4月単位数引き上げ、要件(13)を追加変更なし

他の要件は改定のたびに調整されてきました。逓減制に合わせて利用者数の要件が動き、インフォーマルサービスの要件が追加され、区分も増えました。

そのなかで、要件(4)だけが20年間、実質的に手をつけられていません。唯一の動きが2021年の加算(A)で、それも算定率0.8%です。

創設時の議論の記録を探したが、見つからなかった

この要件がどう決まったのかを知りたくて、平成17年(2005年)の社会保障審議会介護給付費分科会の議事録を、厚生労働省のアーカイブから直接あたりました。

回開催日議題「特定事業所」「24時間」
第30回2005年10月4日ケアマネジメントについて0件0件
第36回2005年12月7日既存サービスの報酬体系に関する議論等の整理(案)0件0件
第37回2005年12月13日平成18年度介護報酬改定に関する審議報告(案)0件0件
第38回2005年12月28日介護報酬制度の見直しについて0件0件

ケアマネジメントを正面から議題にした第30回でも、審議報告案を審議した第37回でも、特定事業所加算という言葉自体が議事録に出てきません。

具体的な要件が公の文書に現れるのは、2006年1月26日の諮問以降、告示と通知の形です。

確認した範囲について
上記は各回の「議事録」を検索した結果です。各回の配布資料(PDF)までは確認できていません。
資料の中では触れられていた可能性があります。「議事録上は見当たらない」という事実としてお読みください。

加算全体の趣旨は通知に書かれています。

常勤かつ専従の主任介護支援専門員及び介護支援専門員が配置され、どのような支援困難ケースでも適切に処理できる体制が整備されている、いわばモデル的な居宅介護支援事業所であることが必要となります。

老企第36号 第3の11(特定事業所加算の基本的取扱方針)

「モデル的な事業所」。この一語が要件(4)の根拠になっているのだと思いますが、なぜモデル的な事業所は24時間つながっていなければならないのかを説明した記録は見つけられませんでした。

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なぜ20年も動かなかったのか ここからは私の見方です

ここからは推測です。資料の裏づけはありません。

要件(4)が動かなかった理由は、動かす必要がなかったからだと思います。制度の側から見ると、この要件はうまく機能しているように見えるはずです。

制度の側から見た要件(4)
  • 夜間の相談の受け皿が、追加予算なしで確保できる
  • 加算は経営に直結するので、事業所は文句を言いながらも算定しに来る
  • 約35%の事業所が算定しているので、制度は「回っている」ように見える
  • 緩めれば、利用者側からは安心の後退に映る

行政が24時間の相談窓口を作れば人件費がかかります。外部に委託すれば委託料がかかります。

ところが、加算の要件にしてしまえば、追加の予算なしで同じものが手に入ります。しかも算定するかどうかは事業所の任意という建前なので、誰にも強制していない形になる。

実際には、収支のために取らざるを得ない。この「任意なのに実質強制」という構造が、20年間の沈黙を支えてきたのだと思います。

そして負担は、事業所の経費ではなくケアマネジャー個人の生活時間で払われました。当番の日は酒も飲めない、遠出もできない、子どもの行事にも身が入らない。それが月10日前後。20年です。

現場から声が上がっていなかったわけではありません。上がっていたけれど、加算を取っている当事者が声を上げる構造になっていなかったのだと思います。要件が厳しいと言えば「では算定をやめれば」という話になり、それは月30万円を捨てるという意味になるからです。

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2026年10月のカスハラ対策義務化と、正面から衝突している

2026年10月1日から、カスタマーハラスメント対策が事業主の義務になりました。改正労働施策総合推進法にもとづくものです。

その指針は、事業主があらかじめ定めておくべき対処の内容として、こう書いています。

可能な限り労働者を一人で対応させないこと。また、必要に応じて当該労働者に代わって管理監督者等が対応すること。

事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和8年厚生労働省告示第51号)

さらに同じ指針は、「職場」に顧客の自宅、電話、SNS等を含むと明記しています。自宅で受けた深夜の電話も、法律上は職場で起きたことです。

一方で要件(4)は「常時、担当者が携帯電話等により連絡を取ることができ」る体制を求めます。

深夜、自宅で、一人で、顔も知らない家族からの電話を取る。カスハラ指針が避けろと言っている状態そのものです。管理監督者が代わることも、複数名で対応することも、構造上できません。

こうした状況は、ケアマネジャーに本来業務以外の仕事をするよう強いるきっかけになったり、カスタマーハラスメントを引き起こす土壌になったりもしています。

介護ニュースJoint「【壷内令子】24時間の連絡体制でケアマネは負担増」2024年11月5日

介護報酬の側が「24時間つながれ」と言い、労働法制の側が「一人で対応させるな」と言う。この二つが同じ事業所の中で同時に走っています。管理者としては、どちらを守っても、もう一方に違反します。

この矛盾は、令和9年度改定に向けた議論で、要件(4)を動かす最大の材料になると思います。20年間ものを言わなかった側に、初めて法的な根拠ができたからです。

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今後どうなる見通しか

Jointの報道によれば、国の審議会でも他の団体が算定要件の緩和を求めています。令和9年度改定に向けて、この要件が論点のひとつになる見込みです。

想定される方向中身私の見立て
連携先での一次受けを認める加算(A)の転送・連携規定を(Ⅰ)〜(Ⅲ)にも広げるいちばん通りやすい
法人内・併設施設での一次受けを認める協会の要望どおり明文化可能性あり
オンコール代行の利用を認める外部事業者への委託を許容個人情報と目的に沿っているのかの論点で慎重論が出そう
「必要に応じて」の範囲を明確化対応すべき内容を通知で例示あってほしいが期待薄
要件(4)そのものを削除(4)を廃止もともとの目的があいまいなので、冷静に考えればありうる。ただ、日本介護支援専門員協会が法人内・併設施設での一次受けを認める案で、廃止を主張していないことから望み薄。

要件そのものが消えることは、まずないと思います。「モデル的な事業所」という位置づけを崩すことになりますし、利用者側から見れば安心の後退に映るからです。

現実的なのは一次受けの柔軟化でしょう。加算(A)に前例があるので、それを他の区分に広げるのが筋として通りやすい。

ただ、それで本当に楽になるのかは別の話です。一次受けを誰かに任せても、「担当のケアマネにつないでください」と言われれば、結局は同じところに戻ります。当番制の問題と同じ構造が残ります。

本当に効くのは、むしろ「必要に応じて」の範囲を国が示すことだと思います。「夜間に対応すべきはこれ、翌営業日でよいのはこれ」という線引きが通知に一行でも入れば、事業所は利用者にそう説明できるようになる。いまは説明する根拠がないので、全部受けるしかありません。

とはいえ、国が線引きをすれば「線の外側で何かあったとき誰が責任を取るのか」という問題が生じます。だから20年間、誰も書かなかったのだと思います。

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よくある質問

Q
事業所の固定電話をケアマネの携帯に転送する運用で、要件(4)を満たしますか。
A

通知が「携帯電話等の転送による対応等も可能」と明記しているのは加算(A)を算定する場合です。加算(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)には転送についての記載がありません。ただし(Ⅰ)〜(Ⅲ)でも「常時、担当者が携帯電話等により連絡を取ることができ」る状態が求められているため、自事業所のケアマネジャーの携帯に転送し、その担当者が対応できる状態であれば、実質的に要件を満たすと解される余地はあります。外部や他部署への転送は別問題です。判断に迷う場合は保険者に確認してください。

Q
併設の特養や老健の夜勤者に一次受けしてもらうのは認められますか。
A

加算(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)については、これを明文で認めた規定がありません。日本介護支援専門員協会が2026年7月に「併設されている関連施設で相談をいったん受け付ける」運用を認めるよう要望していることが、現行では認められていないことの裏づけになります。加算(A)であれば連携による体制確保が可能ですが、その場合も利用者・家族への説明と同意が必要です。

Q
ケアマネが3名の事業所では、どのくらいの当番になりますか。
A

単純に月30日を3名で割ると、1人あたり月10日です。1事業所あたりのケアマネジャーは常勤換算2.8人、配置人数では1人が22.6%、2人が21.9%というのが全国の実情ですから、平均的な事業所では月10日前後の当番になります。2名の事業所なら月15日です。

Q
当番の日の待機時間に、手当や残業代は必要ですか。
A

これは介護報酬ではなく労働基準法の問題です。実際に電話を受けて対応した時間は労働時間にあたり、時間外労働として割増賃金の対象になります。待機そのものが労働時間にあたるかどうかは、その拘束の程度によって判断が分かれます。手当の有無や金額は事業所ごとの取り決めになりますので、就業規則や賃金規程を確認してください。加算収入があることを前提に、待機手当を制度化している事業所もあります。

Q
要件(4)はいつからある要件ですか。
A

2006年(平成18年)4月からです。平成18年3月14日の厚生労働省告示第124号で特定事業所加算が創設され、その当初から要件に含まれていました。その後、区分の追加や単位数の見直しは何度も行われていますが、要件(4)の内容自体は2021年に加算(A)の転送・連携規定が入った以外、実質的に変わっていません。

まとめ

特定事業所加算は、月商110万円・利益4万円台という居宅介護支援の経営において、月30万円前後を左右する加算です。取らないという選択は現実的にありません。

その対価として求められるのが要件(4)です。そして要件(4)は、

  • 輪番を組める規模の事業所が少ない(1〜2人で44.5%)
  • 「必要に応じて」の範囲が20年間示されていない
  • 外部委託も法人内の一次受けも明文では認められていない

という三重の厳しさを抱えたまま、2006年からほとんど手をつけられていません。制度が用意した逃げ道である加算(A)は、算定率0.8%です。

夜中の電話でケアマネジャーにできることは、実はほとんどありません。救急車を呼ぶ判断の重みだけが乗ってきて、医療のことも薬のことも答えられず、できるのは話を聞くことくらいです。それでも全部出るしかないのは、どこまでやれば要件を満たすのかが示されていないからです。

2026年7月、ようやく業界団体が見直しを求めました。20年目です。そして2026年10月には、カスハラ対策で「労働者を一人で対応させるな」という義務が事業主に課されました。制度が自分自身と矛盾しはじめたのが、いまの局面です。

令和9年度改定で、一次受けの柔軟化は入るかもしれません。ただ本当に必要なのは、夜間に対応すべき相談の線引きを国が示すことだと思います。それがない限り、一次受けを誰に任せても、最後は担当ケアマネジャーの携帯が鳴ります。

参照資料

2024年・2025年・2026年
介護保険・介護報酬改定の情報

令和8年度(2026年)障害福祉サービス等報酬改定の概要と変更点まとめ

2026年(令和8年)介護報酬改定の全体像についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

介護報酬改定2026年(令和8年度)まとめ|いつから・変更点・対象サービスをわかりやすく解説

令和6年~8年 地域区分(介護)区市町村の等級一覧(2024年4月~)

介護保険区分支給限度基準額一覧(要支援・要介護)

New! 令和8年(2026年)介護報酬改定

New!令和8年(2026年)介護報酬改定介護報酬改定後の介護保険サービスごとの介護報酬・単位数

 介護保険の居宅サービス介護給付費単位数(対象:要介護)

地域密着型サービスの単位数改定内容

介護予防サービス(対象・要支援)

介護予防・日常生活支援総合事業費(要支援・事業対象者)の改定内容

施設サービス等介護給付費単位数の改定内容

      2026年(令和8年度)・2024年 介護報酬改定で特徴的な加算・制度

      利用者負担軽減の仕組みの改定

      補足給付(負担限度額認定)に関わる見直しは、以下のとおりです。

      令和6年8月1日施行 基準費用額の見直し

      令和7年8月1日施行 多床室の室料負担
      令和8年8月1日施行 食費基準費用額の1,445円→1,545円、低所得者の食費負担限度額の段階別変更

       

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