訪問介護の特定事業所加算(Ⅰ)〜(Ⅴ)|算定要件・加算率と(Ⅰ)算定率10.6%の課題

訪問介護の特定事業所加算(Ⅰ)〜(Ⅴ)|算定要件・加算率と(Ⅰ)算定率10.6%の課題
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訪問介護の特定事業所加算は、職員の配置や研修、重度者への対応などを評価し、所定単位数に3〜20%を上乗せする加算です。(Ⅴ)は(Ⅰ)〜(Ⅳ)のいずれかと併算定でき、(Ⅰ)と組み合わせると合計23%になります。

令和6年度改定で基本報酬が引き下げられた訪問介護では、この加算を算定できるかどうかが事業所の収入に影響します。

実際の算定状況を見ると、令和7年10月サービス提供分で、加算(Ⅰ)を算定している事業所は10.6%、(Ⅱ)が33.9%、(Ⅲ)が0.4%、(Ⅳ)が0.3%です。(Ⅰ)〜(Ⅳ)のいずれも算定していない事業所は54.8%でした。

この記事では、告示の条文に沿って(Ⅰ)から(Ⅴ)の要件を区分ごとに整理したうえで、算定状況と令和9年度改定の議論を確認します。後半に、現場の立場からの意見を書きます。

この記事は、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第三号と、介護給付費分科会の資料をもとに作成しています(2026年11月時点)。割合の算出方法や記録の残し方など、運用上の細かい取扱いは解釈通知(老企第36号)とQ&Aで定められています。算定にあたっては、指定権者である都道府県・市町村の案内も必ず確認してください。

目次
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  1. 訪問介護の特定事業所加算の加算率と併算定のルール
  2. 訪問介護の特定事業所加算 区分ごとの組み合わせ
  3. 訪問介護の特定事業所加算 14の要件 の中身
    1. 訪問介護の特定事業所加算 共通の体制要件(1)〜(5)
    2. 訪問介護の特定事業所加算 看取りの体制要件(6)
    3. 訪問介護の特定事業所加算(Ⅴ)の体制要件(7)(8)
    4. 人材要件(9)〜(12)
    5. 重度者等対応要件(13)(14)
  4. 処遇改善加算(Ⅰ)イ・(Ⅰ)ロとの関係
  5. 令和6年度改定で変わったこと
    1. 訪問介護の特定事業所加算 報酬区分の変更
    2. 要件の変更
  6. 訪問介護の特定事業所加算は、実際にどれくらい算定されているのか(算定率)
  7. 訪問介護の特定事業所加算の算定を難しくしている要件は何か
  8. 令和9年度改定ではどう議論されているか
  9. 訪問介護の特定事業所加算は不確実な要素が算定を妨げている
    1. (Ⅲ)0.4%、(Ⅳ)0.3%という区分を、このまま残すのか
    2. 重度者等対応要件は、事業所の努力だけでは難しい
    3. 区分支給限度基準額との関係も難しいところ
    4. 処遇改善加算との連動は、 他の加算の算定ハードルまで上げる
    5. 特定事業所加算算定していない訪問介護事業所 54.8%の中身は、この集計だけでは分からない
  10. 訪問介護の特定事業所加算についてよくある質問
  11. まとめ
    1. 参考資料

訪問介護の特定事業所加算の加算率と併算定のルール

区分加算率
特定事業所加算(Ⅰ)所定単位数の20%を加算
特定事業所加算(Ⅱ)所定単位数の10%を加算
特定事業所加算(Ⅲ)所定単位数の10%を加算
特定事業所加算(Ⅳ)所定単位数の3%を加算
特定事業所加算(Ⅴ)所定単位数の3%を加算
  • 別区分同士の併算定は不可。ただし(Ⅴ)とそれぞれの加算は併算定可
  • (Ⅴ)は、特別地域加算、中山間地域等における小規模事業所加算、中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算とは併算定不可

(Ⅰ)+(Ⅴ)で23%、(Ⅱ)+(Ⅴ)で13%という組み合わせが成り立ちます。ただし(Ⅴ)は中山間地域等の3つの加算と重ねられないので、どちらを取るほうが有利かは事業所ごとに計算する必要があります。

訪問介護費の基本の単位数は、こちらで確認できます。

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訪問介護の特定事業所加算 区分ごとの組み合わせ

訪問介護の特定事業所加算の算定要件を14項目に分けて番号を振り、区分ごとに必要な組み合わせを整理したものです。番号は分科会資料の整理に合わせています。

区分共通の体制要件人材要件重度者等対応要件
(Ⅰ)+20%(1)〜(5)(9)と(10)(13)、または(6)+(14)
(Ⅱ)+10%(1)〜(5)(9)または(10)不要
(Ⅲ)+10%(1)〜(5)(11)または(12)(13)、または(6)+(14)
(Ⅳ)+3%(1)〜(5)(11)または(12)不要
(Ⅴ)+3%(1)〜(5)+(7)+(8)不要不要

訪問介護の特定事業所加算について、区分ごとの読み方のポイントは4つです。

第1に、体制要件(1)〜(5)は全区分で必須です。どの区分を狙うにしても、ここは満たす必要があります。

第2に、人材要件が2系統に分かれています。(9)(10)は介護福祉士の割合とサービス提供責任者の資格・経験で、(Ⅰ)(Ⅱ)が使います。(11)(12)は常勤のサービス提供責任者の上乗せ配置と勤続年数で、(Ⅲ)(Ⅳ)が使います。(Ⅱ)と(Ⅲ)は同じ10%ですが、求めている人材要件が違います。

第3に、重度者等対応要件が必要なのは(Ⅰ)と(Ⅲ)だけです。

第4に、ここがいちばん誤解されやすいところです。看取り体制の(6)は、一律に必須ではありません。重度者等対応要件は(13)利用者割合と(14)看取り実績の選択式で、(14)を選ぶ場合に(6)が必要になります。(13)の利用者割合で算定するなら、(6)は要りません。

告示の条文では、(6)と(14)は「イ(7)(二)」としてひとつの基準の中に a から e まで並んでおり、(13)は「イ(7)(一)」です。この2つが「次に掲げる基準のいずれかに適合すること」という関係になっています。

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訪問介護の特定事業所加算 14の要件 の中身

訪問介護の特定事業所加算 共通の体制要件(1)〜(5)

番号内容
(1)全ての訪問介護員等(登録型の訪問介護員等を含む)及びサービス提供責任者に対し、訪問介護員等ごと及びサービス提供責任者ごとに研修計画を作成し、当該計画に従い研修(外部における研修を含む)を実施又は実施を予定していること
(2)利用者に関する情報若しくはサービス提供に当たっての留意事項の伝達又は訪問介護員等の技術指導を目的とした会議を定期的に開催すること
(3)サービス提供責任者が、担当する訪問介護員等に対し、利用者に関する情報やサービス提供に当たっての留意事項を文書等の確実な方法により伝達してから開始し、サービス提供終了後に適宜報告を受けること
(4)全ての訪問介護員等に対し、健康診断等を定期的に実施すること
(5)緊急時等における対応方法が利用者に明示されていること

(1)と(4)で押さえておきたいのは、登録型のヘルパーも対象になることです。告示では「登録型の訪問介護員等(あらかじめ当該指定訪問介護事業所に登録し、当該指定訪問介護事業所から指示があった場合に、直接、当該指示を受けた利用者の居宅を訪問し、指定訪問介護を行う訪問介護員等)を含む」と定義されています。

訪問介護の特定事業所加算 看取りの体制要件(6)

(Ⅰ)・(Ⅲ)で(14)の看取り実績を選ぶ場合に必要になる要件です。告示ではaからdの4つに分かれています。

記号内容
a病院、診療所又は指定訪問看護ステーションの看護師との連携により、24時間連絡できる体制を確保し、かつ、必要に応じて指定訪問介護を行うことができる体制を整備していること
b看取り期における対応方針を定め、利用開始の際に、利用者又はその家族等に対して当該対応方針の内容を説明し、同意を得ていること
c医師、看護職員、訪問介護員等、介護支援専門員その他の職種の者による協議の上、当該事業所における看取りの実績等を踏まえ、適宜、看取りに関する対応方針の見直しを行うこと
d看取りに関する職員研修を行っていること

cの看護職員は、告示で「指定訪問介護事業所の職員又は当該指定訪問介護事業所と密接な連携を確保できる範囲内の距離にある病院、診療所又は指定訪問看護ステーションの職員に限る」とされています。

訪問介護の特定事業所加算(Ⅴ)の体制要件(7)(8)

番号内容
(7)通常の事業の実施地域の範囲内であって、厚生労働大臣が定める中山間地域等の地域(平成21年厚生労働省告示第83号)第二号に規定する地域に居住している利用者に対して、継続的に指定訪問介護を提供していること(当該利用者の居宅の所在地と最寄りの指定訪問介護事業所との間の距離が7キロメートルを超える場合に限る)
(8)利用者の心身の状況又はその家族等を取り巻く環境の変化に応じ、随時、訪問介護員等、サービス提供責任者その他の関係者が共同し、訪問介護計画の見直しを行っていること

(7)には距離の条件があります。対象となるのは、利用者の居宅と最寄りの指定訪問介護事業所との距離が7kmを超える場合です。自事業所からの距離ではなく「最寄りの事業所」からの距離である点に注意してください。地域への該当だけでなく、距離と継続的なサービス提供の実績を確認する必要があります。

(7)の中山間地域等は、中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算と同じ告示(平成21年厚生労働省告示第83号)第二号の地域です。

人材要件(9)〜(12)

番号内容使う区分
(9)訪問介護員等の総数のうち介護福祉士の占める割合が100分の30以上、又は介護福祉士、実務者研修修了者、介護職員基礎研修課程修了者及び1級課程修了者の占める割合が100分の50以上(Ⅰ)(Ⅱ)
(10)全てのサービス提供責任者が3年以上の実務経験を有する介護福祉士又は5年以上の実務経験を有する実務者研修修了者・介護職員基礎研修課程修了者・1級課程修了者であること。ただし、基準上1人を超えるサービス提供責任者を配置することとされている事業所においては、常勤のサービス提供責任者を2名以上配置していること(Ⅰ)(Ⅱ)
(11)基準上配置することとされている常勤のサービス提供責任者が2人以下の事業所であって、基準上配置することとされているサービス提供責任者を常勤により配置し、かつ、基準を上回る数の常勤のサービス提供責任者を1人以上配置していること(Ⅲ)(Ⅳ)
(12)訪問介護員等の総数のうち、勤続年数7年以上の者の占める割合が100分の30以上であること(Ⅲ)(Ⅳ)

見落としやすい点が2つあります。

(10)にはただし書きがあります。基準上1人を超えるサービス提供責任者の配置が必要な事業所では、全員の資格・実務経験を満たすだけでは足りず、常勤のサービス提供責任者を2名以上配置していることが求められます。

(11)は対象となる事業所が限定されています。基準上配置することとされている常勤のサービス提供責任者が2人以下の事業所が対象です。基準上必要な常勤のサービス提供責任者が3人以上の事業所は、(11)を使って(Ⅲ)(Ⅳ)を算定することはできません。

なお(9)(12)の割合は、単純な在籍人数ではなく、所定の期間について常勤換算方法で算出します。算出方法は解釈通知で定められていますので、届出の前に必ず確認してください。

重度者等対応要件(13)(14)

番号内容
(13)前年度又は算定日が属する月の前3月間における利用者の総数のうち、要介護4・要介護5である者、日常生活に支障を来すおそれのある症状若しくは行動が認められることから介護を必要とする認知症である者、たんの吸引等(社会福祉士及び介護福祉士法施行規則第1条各号に掲げる行為)を必要とする者の占める割合が100分の20以上であること
(14)前年度又は算定日が属する月の前3月間において、①医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがないと診断した者であり、②看取り期における対応方針に基づき、利用者の状態又は家族の求め等に応じ、訪問介護員等から介護記録等を活用し行われるサービスについての説明を受け、同意した上でサービスを受けている者(その家族等が説明を受け、同意した上でサービスを受けている者を含む)が1人以上であること

(13)の認知症に関する対象は、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ・Ⅳ・Mに該当する方です。認知症の診断がある方をすべて算入するわけではありません。

どちらも確認する期間は「前年度又は算定日が属する月の前3月間」です。当年度に新たな実績がないだけで直ちに算定できなくなるわけではありません。看取り実績の取扱いについては、令和6年度改定のQ&A(Vol.6)に前年度の実績による算定の例が示されています。

なお(13)のたんの吸引等については、告示で「当該指定訪問介護事業所が社会福祉士及び介護福祉士法附則第27条第1項の登録を受けている場合に限る」とされています。たんの吸引等を必要とする利用者を算入する際は、事業所の登録要件にも注意が必要です。登録喀痰吸引等事業者・登録特定行為事業者の登録区分と、算入の取扱いを指定権者の案内で確認してください。

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処遇改善加算(Ⅰ)イ・(Ⅰ)ロとの関係

実務上、ここを知らないと判断を間違えます。

告示の第四号(訪問介護費における介護職員等処遇改善加算の基準)では、介護職員等処遇改善加算(Ⅰ)イの要件のひとつとして「訪問介護費における特定事業所加算(Ⅰ)又は(Ⅱ)のいずれかを届け出ていること」が定められています。

令和8年6月以降、訪問介護の介護職員等処遇改善加算(Ⅰ)イ・(Ⅰ)ロでは、特定事業所加算(Ⅰ)または(Ⅱ)の届出が要件のひとつになっています。特定事業所加算(Ⅲ)〜(Ⅴ)だけでは、この要件を満たしません。なお、処遇改善加算の算定には、ほかの要件も満たす必要があります。

(Ⅰ)ロは、(Ⅰ)イの要件をすべて満たしたうえで、ケアプランデータ連携システムの利用または社会福祉連携推進法人への所属が加わる区分です。どちらに進むにしても、入口は特定事業所加算(Ⅰ)または(Ⅱ)の届出です。

なお、令和8年度は、申請時点でケアプランデータ連携システムを利用していなくても、加入・利用を誓約することで要件を満たす取扱いがあります。その場合は、令和9年3月末までに利用し、実績報告書で利用実績を報告する必要があります。

特定事業所加算の加算率だけでなく、処遇改善加算の区分の違いも収入に効きます。実際の影響額を計算するときは、この連動を入れて見てください。

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令和6年度改定で変わったこと

訪問介護の特定事業所加算 報酬区分の変更

改定前改定後
(Ⅰ)20%(Ⅰ)20%
(Ⅱ)10%(Ⅱ)10%
(Ⅲ)10%(Ⅲ)10%
(Ⅳ)5%廃止
(Ⅴ)3%(Ⅳ)3%(旧(Ⅴ)が(Ⅳ)に)
-(Ⅴ)3%(新設)

番号が1つずれています。現在の(Ⅳ)は改定前の(Ⅴ)で、改定前の(Ⅳ)はもうありません。改定前の資料や様式を参照するときは注意が必要です。

要件の変更

  • 改定前の(6)「サービス提供責任者ごとに作成された研修計画に基づく研修の実施」を(1)に統合
  • (6)看取りの体制、(7)中山間地域等への継続的なサービス提供、(8)訪問介護計画の随時見直し、(14)看取り期の利用者への対応実績を新設
  • 改定前の「要介護3〜5である者、日常生活自立度(Ⅲ、Ⅳ、M)である者、たんの吸引等を必要とする者の占める割合が100分の60以上」という要件を削除
  • (11)常勤のサービス提供責任者の上乗せ配置を(Ⅲ)・(Ⅳ)に追加
  • (12)勤続年数7年以上の割合を(Ⅲ)に追加

改定の趣旨は、資料で3つ挙げられています。看取り期における対応を適切に評価する観点から重度者対応要件に看取り期の要件を追加すること、中山間地域等で移動距離等を要し事業運営が非効率にならざるを得ない場合があることから継続的なサービス提供を新たに評価すること、重度要介護者等への対応における改定前の要件を実態を踏まえて見直すことです。

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訪問介護の特定事業所加算は、実際にどれくらい算定されているのか(算定率)

第271回介護給付費分科会(令和8年10月19日)の資料1に、訪問介護の特定事業所加算についての算定状況が掲載されています。令和7年10月サービス提供分の任意集計です。

区分事業所数(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)(Ⅳ)(Ⅰ)〜(Ⅳ)なし
全体35,58610.6%33.9%0.4%0.3%54.8%
都市部19,13510.6%31.9%0.4%0.3%56.9%
都市部・中山間地域等以外10,91310.4%32.5%0.5%0.4%56.2%
中山間地域等5,53811.3%43.2%0.4%0.4%44.8%

この集計は訪問介護の特定事業所加算(Ⅰ)から(Ⅳ)までを対象としたもので、(Ⅴ)の算定状況は示されていません。54.8%は「(Ⅰ)〜(Ⅳ)のいずれも算定していない事業所の割合」です。

資料では「特定事業所加算Ⅰ・Ⅱの取得率については、それぞれ概ね1割程度、3〜4割程度であり、Ⅰ〜Ⅳいずれかの加算を取得している事業所は、4〜5割程度となっている」「地域別では、中山間地域等における取得率はその他の地域よりも取得率が高い傾向が見られる」とまとめられています。

中山間地域等の取得率が高いのは、(Ⅱ)が43.2%と高いためです。(Ⅰ)は11.3%で、都市部の10.6%とほとんど差がありません。

なお、令和7年度介護事業経営概況調査では、訪問介護の収支差率は9.6%、赤字事業所の割合は35.1%でした。

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訪問介護の特定事業所加算の算定を難しくしている要件は何か

同じ資料に、算定要件のうち満たすことが難しいものを聞いた調査結果が載っています。令和8年度老人保健健康増進等事業「中山間・人口減少地域における訪問介護のサービス提供体制確保のあり方に関する調査研究事業」(浜銀総合研究所)の速報値で、516事業所の回答です。

満たすことが難しい要件(項目名は要約)割合
たんの吸引等を必要とする利用者や看取り期の利用者に対応できる職員の確保・育成55.2%
要介護4・5、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ・Ⅳ・M、たんの吸引等を必要とする利用者の割合((Ⅰ)・(Ⅲ)関係)53.3%
看取り期の利用者への対応実績((Ⅰ)・(Ⅲ)関係)35.9%
病院・診療所・訪問看護ステーションの看護師との24時間連絡体制等の確保(看取り要件関係)35.3%
看取り期の利用者への対応方針の策定及び職員研修の実施(看取り要件関係)35.1%
訪問介護員等及びサービス提供責任者ごとの研修計画の作成と計画に基づく研修の実施25.8%
介護福祉士の割合、または介護福祉士・実務者研修修了者等の割合の確保23.3%
中山間地域等に居住する対象利用者への継続的なサービス提供実績21.3%
サービス提供責任者からの文書等による指示、訪問介護員等からの報告及びこれらの記録17.1%
勤続年数7年以上の訪問介護員等の割合の確保((Ⅲ)の人材要件関係)15.9%
利用者に関する情報やサービス提供上の留意事項の伝達等を目的とした会議の定期的な開催14.0%
基準を上回る数の常勤のサービス提供責任者の配置((Ⅲ)・(Ⅳ)関係)13.0%
すべてのサービス提供責任者について、所定の資格及び実務経験要件を満たす人材を確保すること11.8%
利用者の状況変化等に応じ、ケアマネジャー・医療関係職種等と共同して、訪問介護計画を随時見直すこと9.5%
登録ヘルパー等を含む訪問介護員等への健康診断等の定期的な実施7.9%
緊急時等における対応方法の利用者への明示7.0%
特に難しい要件や課題はない10.5%

この項目名は論点が分かるように要約しています。資料の設問表示には現行の算定基準と異なる数値があるため、この結果をそのまま現行要件の未達成率として読むことはできません。算定要件は、告示に基づく前掲の一覧で確認してください。

並びを見ると、重度者の受入れや看取りへの対応に関する項目で、難しいと答えた割合が高くなっています。上位5項目はすべて(Ⅰ)・(Ⅲ)に関わるものです。

一方で、健康診断の実施は7.9%、緊急時等における対応方法の明示は7.0%、訪問介護計画の随時見直しは9.5%でした。

この調査は中山間・人口減少地域を対象としたもので、全国の事業所を代表するものではありません。また、前の節の地域別算定率は介護保険の給付実績の集計で、この調査とは別の母集団です。2つを同じ回答対象として読むことはできません。

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令和9年度改定ではどう議論されているか

第271回分科会の資料1で、訪問介護の論点として立っているのは次の3つです。

論点主な中身
論点① 地域の協働化による介護サービスの提供体制の構築地域の多様な主体との協働、定期巡回・随時対応型訪問介護看護との連携促進(令和9年度から夜間対応型訪問介護と統合)、サービス提供責任者の負担軽減(初回加算の見直し。現行の算定率は52.0%)
論点② 安定的な事業運営のための報酬の在り方中山間・人口減少地域における移動コストへの対応を含め、経営の予見性を高められる報酬設計
論点③ 住まいの形態に合わせたサービス提供に係る報酬の在り方戸建てと集合住宅のサービス提供実態の違いを踏まえ、現行の同一建物減算による評価に代えて報酬区分の見直しを検討

特定事業所加算そのものの見直しは、この3つの論点には特に入っていません。算定状況と「満たすことが難しい要件」のデータは参考として示されている位置づけです。

一方で、委員からの意見としては出ています。資料に整理されたものから引きます。

訪問介護における特定事業所加算の算定状況について、重度者対応要件が算定のハードルを上げていると考えられる。今後のサービス提供体制確保に向け、事業所の運営安定化を図るため、重度者の要件を緩和し、現在の加算(Ⅱ)を算定している事業所の多くが加算(I)に移行できるようにすべきである。

第271回介護給付費分科会 資料1「これまでの分科会における主なご意見」より

ほかに、サービス提供責任者の配置要件についてICTの活用を前提に撤廃・緩和するなどの措置を求める意見、特定事業所加算についても地域の状況や事業所の規模に応じた緩和が必要だという意見があります。

関係団体からは、全国介護事業者連盟が、特定事業所加算について他サービスの「サービス提供体制強化加算」と同様に区分支給限度基準額の対象外としてほしいと要望しています。

令和9年度改定の全体像と施行日の見通しは、こちらでまとめています。

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訪問介護の特定事業所加算は不確実な要素が算定を妨げている

ここまでは、告示と資料で確認できることでした。ここから先は、介護の現場にいる立場から、訪問介護の事業所に関わる人から聞く話をいくつか紹介します。

(Ⅲ)0.4%、(Ⅳ)0.3%という区分を、このまま残すのか

(Ⅲ)と(Ⅳ)は、(Ⅱ)とは異なる人材構成の事業所を評価する区分です。介護福祉士の割合では届かないけれど、常勤のサービス提供責任者を上乗せ配置している、あるいは勤続年数7年以上の職員が3割いる。そういう事業所を拾うための区分です。

ただ、算定率は合わせて0.7%です。

対象となる事業所が少ないのか、要件を満たしにくいのか、加算率が負担に見合わないのか。(11)は、基準上配置することとされている常勤のサービス提供責任者が2人以下の事業所に対象が限られています。区分を残すなら、その理由を分けて検証しないと、本当は何がネックなのか見えにくいです。

令和9年度改定では報酬体系の整理・簡素化も議論のテーマに挙がっています。0.7%という数字は、検証の入口として十分だと思います。

重度者等対応要件は、事業所の努力だけでは難しい

委員の意見にあった「重度者対応要件が算定のハードルを上げている」という指摘は、現場の実感と一致します。

(13)が求めているのは、利用者の構成です。要介護4・5の方、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ・Ⅳ・Mに該当する方、たんの吸引等を必要とする方が、合わせて2割以上という要件です。

通所介護などでも、中重度者ケア体制加算のように、利用者全体に対して、どれぐらい重度の利用者がいるかということが算定の要件になっている加算がありますが、介護保険の事業者としては基本的に特別な理由がない限り利用者を拒否することができない立場にあるので、重度の人をコントロールして受け入れるということは現実的に困難なことです。ただでさえ重度者を優先して入れたりすることができないだけでなく、ケアマネジャーからの依頼で成り立つ事業で、利用者の構成を事業所が選べるわけではありません。

構造として考えると、同一グループ内に居宅介護支援事業所があり、融通すれば利用者の構成を調整できる、という話になります。ただ、要介護度を見て紹介先を選ぶようなことは、居宅介護支援に求められる公正中立なケアマネジメントとは相容れません。制度がそういう動きを誘発しかねない要件になっていること自体が、問題なのだと思います。

(14)の看取り実績についても、看取りの体制を整えても、所定の実績確認期間に対象となる利用者への対応実績がなければ、看取り実績による要件は満たせません。体制整備と実績の確保は、分けて考える必要があります。

そのうえで、(6)のaからdを用意するのは相応の準備です。看護師との24時間連絡体制、対応方針の策定と説明・同意、多職種での協議と方針の見直し、職員研修。調査で看取り要件関係の3項目がいずれも35%前後だったのは、ここの重さを示しているのだと思います。

区分支給限度基準額との関係も難しいところ

事業者連盟の要望にあった区分支給限度基準額の話は、あまり語られませんが重い論点です。

区分支給限度基準額内に収まる場合は、限度額超過を理由にサービス量を調整する必要はありません。ただし、加算分も通常の利用者負担の対象になります。限度額に近い使い方をしている方では、超過分の全額自己負担を避けるために、サービス量の調整が必要になることがあります。

職員配置や支援体制を評価する加算が、限度額に近い利用者にはサービス量の調整につながり得る。この両者をどう両立させるのか、制度として説明してほしいです。サービス提供体制強化加算が限度額の対象外である一方で、訪問介護の特定事業所加算がどう扱われるかは、算定にあたって必ず確認しておくべき点です。

処遇改善加算との連動は、 他の加算の算定ハードルまで上げる

記事の中ほどに書いた、処遇改善加算(Ⅰ)イ・(Ⅰ)ロの要件に特定事業所加算(Ⅰ)または(Ⅱ)の届出が入っている点です。

特定事業所加算(Ⅰ)・(Ⅱ)を届け出られないと、処遇改善加算(Ⅰ)イ・(Ⅰ)ロにも進めません。人材を確保するための賃上げ支援に、人材の配置・資格・経験の要件が入口として置かれている。この順番で、人が採れない事業所をどう支えるのかは問いたいところです。

特定事業所加算算定していない訪問介護事業所 54.8%の中身は、この集計だけでは分からない

(Ⅰ)〜(Ⅳ)のいずれも算定していない訪問介護事業所が54.8%ありますが、未算定の理由は、この集計だけでは分かりません。要件が足りないのか、届出をしていないのか、限度額や利用者負担を考えて取らない判断をしているのか、区別できません。

自事業所で取得を検討する場合は、共通の体制要件(1)〜(5)と、各区分の人材要件のどこが不足しているかを確認する必要があります。(Ⅱ)は体制要件(1)〜(5)と人材要件(9)または(10)で10%です。重度者等対応要件は要りません。まずここが届くかどうかを見るのが、現実的な順番だと思います。

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訪問介護の特定事業所加算についてよくある質問

Q
加算(Ⅰ)を算定するには、必ず看取りの体制が必要ですか?
A

いいえ。(Ⅰ)の重度者等対応要件は、(13)利用者割合と(14)看取り実績の選択式です。(13)で算定する場合、看取りの体制要件(6)は必要ありません。(14)の看取り実績を選ぶ場合に、(6)を併せて満たす必要があります。

Q
加算(Ⅰ)と(Ⅱ)は何が違うのですか?
A

(Ⅱ)は体制要件(1)〜(5)と人材要件(9)または(10)で10%です。(Ⅰ)は人材要件が(9)と(10)の両方、さらに重度者等対応要件(13)または(6)+(14)が必要で20%です。(Ⅱ)から(Ⅰ)に上がるには、人材要件を両方満たしたうえで、重度者等対応要件をクリアする必要があります。

Q
(Ⅴ)はどんな事業所が対象ですか?
A

体制要件(1)〜(5)に加えて、(7)と(8)を満たす事業所です。(7)には距離の条件があります。通常の事業の実施地域の範囲内であって、厚生労働大臣が定める中山間地域等の地域(平成21年厚生労働省告示第83号)第二号に規定する地域に居住している利用者に対して継続的に訪問介護を提供していること、かつ、その利用者の居宅と最寄りの指定訪問介護事業所との距離が7キロメートルを超える場合に限られます。自事業所からの距離ではなく「最寄りの事業所」からの距離である点に注意してください。

Q
重度者等対応要件や看取り実績は、いつの期間で確認しますか?
A

(13)(14)のいずれも「前年度又は算定日が属する月の前3月間」で確認します。当年度に新たな実績がないだけで直ちに算定できなくなるわけではありません。看取り実績の取扱いについては、令和6年度改定のQ&A(Vol.6)に前年度の実績による算定の例が示されています。

Q
複数の区分を同時に算定できますか?
A

別区分同士の併算定はできません。ただし(Ⅴ)は、それぞれの加算と併算定できるとされています。なお(Ⅴ)は、特別地域加算、中山間地域等における小規模事業所加算、中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算とは併算定できません。

Q
令和6年度改定前の(Ⅳ)と、いまの(Ⅳ)は同じものですか?
A

違います。改定前の(Ⅳ)(5%)は廃止され、改定前の(Ⅴ)(3%)が現在の(Ⅳ)になりました。そのうえで新しい(Ⅴ)(3%)が設けられています。改定前の資料や様式を参照するときは注意が必要です。

Q
居宅介護支援の特定事業所加算とは別のものですか?
A

別です。名前は同じですが、要件も評価の形も違います。居宅介護支援の特定事業所加算は(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)(A)の4区分で、加算率ではなく単位数(519単位・421単位・323単位・114単位)で設定されています。主任介護支援専門員と介護支援専門員の配置人数が軸です。

居宅介護支援の特定事業所加算は、こちらで扱っています。

まとめ

  • 加算率は(Ⅰ)20%、(Ⅱ)10%、(Ⅲ)10%、(Ⅳ)3%、(Ⅴ)3%です。(Ⅴ)は(Ⅰ)〜(Ⅳ)のいずれかと併算定でき、(Ⅰ)との組み合わせで23%になります
  • 体制要件(1)〜(5)は全区分で必須です。人材要件は(9)(10)系が(Ⅰ)(Ⅱ)、(11)(12)系が(Ⅲ)(Ⅳ)に分かれます
  • 重度者等対応要件が必要なのは(Ⅰ)と(Ⅲ)で、(13)利用者割合か(14)看取り実績の選択式です。(14)を選ぶ場合に看取りの体制要件(6)が必要になります。(13)で算定するなら(6)は要りません
  • (13)(14)の確認期間は、いずれも前年度又は算定日が属する月の前3月間です
  • (Ⅴ)の(7)には、利用者の居宅と最寄りの指定訪問介護事業所との距離が7キロメートルを超えるという条件があります
  • (10)には、基準上1人を超えるサービス提供責任者の配置が必要な事業所では常勤のサービス提供責任者を2名以上配置するというただし書きがあります。(11)は、基準上の常勤のサービス提供責任者が2人以下の事業所が対象です
  • 介護職員等処遇改善加算(Ⅰ)イ・(Ⅰ)ロの要件には、特定事業所加算(Ⅰ)又は(Ⅱ)のいずれかを届け出ていることが含まれています。(Ⅲ)〜(Ⅴ)だけでは満たせません
  • 令和7年10月サービス提供分の算定状況は、(Ⅰ)10.6%、(Ⅱ)33.9%、(Ⅲ)0.4%、(Ⅳ)0.3%で、(Ⅰ)〜(Ⅳ)のいずれも算定していない事業所が54.8%です。(Ⅴ)の算定状況は、この集計では示されていません
  • 令和9年度改定では、特定事業所加算そのものの見直しは論点として立っていませんが、委員から重度者対応要件の緩和を求める意見が出ています

(Ⅱ)までは体制の整備と人材の構成で届きます。(Ⅰ)に上がるところで、利用者の構成、または看取りの体制・実績という、事業所が自力で動かしにくい要件が立ちはだかる。この加算の形は、そうなっています。

令和9年度改定で動きがあれば、この記事も更新します。

参考資料

介護保険・介護報酬改定の最新情報

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補足給付(負担限度額認定)に関わる見直しは、以下のとおりです。

令和6年8月1日施行 基準費用額の見直し
令和7年8月1日施行 多床室の室料負担
令和8年8月1日施行 食費基準費用額の1,445円→1,545円、低所得者の食費負担限度額の段階別変更

【現行】令和8年(2026年)介護報酬改定

令和8年度(2026年)障害福祉サービス等報酬改定の概要と変更点まとめ

2026年(令和8年)介護報酬改定の全体像についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

介護報酬改定2026年(令和8年度)まとめ|いつから・変更点・対象サービスをわかりやすく解説

令和8年(2026年)介護報酬改定介護報酬改定後の介護保険サービスごとの介護報酬・単位数

 介護保険の居宅サービス介護給付費単位数(対象:要介護)

地域密着型サービスの単位数改定内容

介護予防サービス(対象・要支援)

介護予防・日常生活支援総合事業費(要支援・事業対象者)の改定内容

施設サービス等介護給付費単位数の改定内容

      2026年(令和8年度)・2024年 介護報酬改定で特徴的な加算・制度

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