高齢社会対策とは?「高齢者対策」より広い概念|分子は動かせない、では分母は

高齢社会対策とは?「高齢者対策」より広い概念|分子は動かせない、では分母は
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超高齢社会の話になると、議論はたいてい「増え続ける高齢者をどう支えるか」に向かいます。介護人材をどう確保するか、給付費をどう抑えるか、認知症にどう対応するか。どれも重要です。

ただ、高齢化率は65歳以上人口 ÷ 総人口という割り算です。分子である高齢者が増えることは、もう止められません。であれば、分母のほうに働きかける視点がもっとあってよいのではないか。この記事は、そんな問題意識から書いています。

そして調べてみると、この考え方は思いつきではなく、高齢社会対策基本法がすでに明確に打ち出している方向でした。

法律は「高齢者対策」より広い概念を定めている

1995年(平成7年)に制定された高齢社会対策基本法は、第1条で「高齢社会対策」を「高齢化の進展に適切に対処するための施策」と定義しています。内閣府はこの点について、次のように説明しています。

内閣府「高齢社会白書」より

「高齢社会対策」については、高齢社会対策基本法第1条において「高齢化の進展に適切に対処するための施策」と定義されているが、これは、高齢者を対象とするようないわゆる「高齢者対策」よりも広い概念である。

同法は前文で、雇用、年金、医療、福祉、教育、社会参加、生活環境といった社会のシステム全体を高齢社会にふさわしいものへと不断に見直していく必要があるとうたっています。高齢者向けのサービスを充実させることだけが高齢社会対策ではない、という立場です。

基本理念(第2条)として掲げられているのは次の3つです。

  • 国民が生涯にわたって就業その他の多様な社会的活動に参加する機会が確保される公正で活力ある社会
  • 国民が生涯にわたって社会を構成する重要な一員として尊重され、地域社会が自立と連帯の精神に立脚して形成される社会
  • 国民が生涯にわたって健やかで充実した生活を営むことができる豊かな社会

いずれも主語は「高齢者」ではなく「国民」であり、「生涯にわたって」という言葉が繰り返されています。法律が想定しているのは、高齢者を切り出して支援する社会ではなく、あらゆる世代がその年齢なりに参加できる社会です。

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分子は動かせない。では分母はどうか

あらためて数字を確認します。2025年の高齢化率は29.4%で過去最高、2050年には37.1%になると推計されています。

ここで見落とされがちなのは、65歳以上人口そのものは2040年代前半にピークを迎え、その後は減少に転じるという点です。実際、2025年の65歳以上人口は前年より5万人減りました。それでも高齢化率が上がったのは、総人口がそれ以上に減ったからです。

ここがポイント

これからの高齢化率の上昇は、「高齢者が増えるから」ではなく「それ以外の世代が減るから」という要因の比重が大きくなっていきます。つまり課題の中心は、高齢者対策から、若い世代がその地域で暮らし続けられるかどうかへと移っていきます。

高齢化率という指標を下げようと思えば、分子(高齢者)を減らすことはできませんから、分母(総人口)を維持するしかありません。出生率を上げること、若い世代の流出を止めること、外から人を迎えること。どれも簡単ではありませんが、少なくとも「高齢者をどうするか」だけを考えていても、この割り算の答えは変わらないのは確かです。

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地域では、悪循環が起きている

都道府県別に見ると、令和6年時点で高齢化率が最も高いのは秋田県の39.5%、最も低い東京都は22.7%です。すでに30%を超える道県は36にのぼります。

かつてのニュータウンや大規模団地、若い世代が離れていった地域では、次のような連鎖が起きています。

  • 若い世代が転出し、子どもが減る
  • 小中学校が統廃合され、子育て世帯にとっての魅力がさらに下がる
  • 商店や飲食店、娯楽施設が撤退し、生活の利便性が落ちる
  • 結果として、さらに若い世代が入ってこなくなる

この循環のどこにも「高齢者が悪い」という要素はありません。それでも高齢化率だけは上がり続けます。ここに高齢者向けサービスをいくら足しても、循環そのものは止まらないのです。

これから急激に高齢化するのは大都市圏

もうひとつ、見落とされがちな事実があります。今後2050年までの高齢化率の上昇幅を見ると、神奈川県が+9.0ポイント、埼玉県が+8.0ポイントと、首都圏で大きく上昇します。一方、すでに高齢化が進んだ島根県は+4.5ポイントにとどまります。

内閣府も「今後、我が国の高齢化は、大都市圏を含めて全国的な広がりを見ることとなる」と述べています。地方の問題として語られてきた高齢化は、これから都市の問題になります。しかも都市部では、高齢者の「割合」より「絶対数」が急増するため、施設や人材の不足という形で表面化します。

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「別の変数」に手を打っている自治体はある

人口減少に強い危機感を持つ自治体では、高齢者福祉と並行して、若い世代を迎える施策に取り組んでいます。移住者への住宅提供、子育て支援の手厚さ、働く場の確保といった取り組みです。

新型コロナウイルス感染症を経て、テレワークをはじめとする多様な働き方が広がり、家族との時間や暮らしの質を重視する価値観も可視化されました。地方で豊かに暮らすという選択が、以前より現実的になってきています。実際に、子育て支援策によって若年人口の増加や出生率の向上といった成果が出ている自治体もあります。

介護の側から見ても、これは他人事ではありません。

その地域に若い世代が住んでいなければ、介護の担い手も確保できないからです。実際、65歳以上の就業者のうち「医療」「福祉」で働く人は115万人と10年前の約2.3倍に増えており、介護は高齢者に支えられている産業でもあります。

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だからと言って移民や外国人労働者で母数を増やすのはどうなのか

母数を増やすためには若い世代も含めた人口が増えなければならないわけですが、日本ではあらゆる条件が重なりなかなか出生率が上がらない状況になっています。日本に限らず先進国が直面している課題ですが、学問を学び教養をつけて多様な価値観に触れ、さらに経済的な見通しが暗い状況も続き、出産や子育ての難しさや責任感からなかなか結婚や出産が進みません。

一方で、外国からの労働者や、色々な事情で日本にやってきた外国籍の人などが、日本で出産してたくさんの子供をもうけているというケースも最近は目にすることが増えました。日本人の感覚からすると日本語も喋れず、周りの人とも十分なコミュニケーションが取れない状況の中でたくさんの子供を育てることには困難さや申し訳なさのような感情が湧くものですが、そのあたりは文化の違いもあり感覚が違うように思います。

日本語が話せない人や文化・価値観が違う人でも、若い世代が増えればよいかというと賛否あると思いますが、現状では受け入れる方向に政府が舵をとってきたため、増加しています。確かにこのような政策をとっていけば母数は多少増えるのかもしれませんが、日本の文化やマナー、ルールが薄れていくことは間違いないため、私としてはもっと慎重にあるべきと考えています。数字だけでみたら就労人口が増えてよく見えるのかもしれませんがね。

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介護の現場からできること

とはいえ、人口政策は個々の事業所が動かせるものではありません。現場のレベルで「分母に働きかける」とすれば、次のような形になると考えています。

  • 支援が必要な期間を短くする 平均寿命と健康寿命の差は男性で約8.5年、女性で約11.6年あります。フレイルの段階で気づいて手を打てば、この期間は縮められます。要介護状態の人が減れば、地域全体で必要な支援の総量が変わります
  • 高齢者を「支えられる側」に固定しない 通いの場の運営や介護助手など、元気な高齢者が担い手になる場面は増えています。65〜69歳の半数以上がすでに働いている時代に、65歳で線を引く発想自体を見直す時期に来ています
  • 医療的な価値観を押し付けすぎない 日本では、介護予防や健康診断の類が多く、少しでも異常値や兆候があると、予防的に服薬したり、医学的観点から生活を変えるよう促したりしがちです。そして、定期受診をしてまた異常を見つけて調整してということが繰り返され、それが生活を委縮させる方向に進みやすいです。介護現場でも健康面の異常を察知すると医療機関につなげがちで、医療機関側は当然に病気がないか見つけるのでどんどん医療の沼にはまります。延命などの段階にになると真剣に医療の付き合い方を考えだしますが、その前にも考えていきたいテーマです。
  • 働き続けられる職場をつくる 介護職が定着する職場は、若い世代がその地域に住み続ける理由のひとつになります。処遇改善や生産性向上の取り組みは、地域の人口を保つ施策でもあります
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まとめ

超高齢社会への対応は、高齢者向けサービスを充実させることだけではありません。高齢社会対策基本法が「高齢者対策よりも広い概念」と定義しているとおり、雇用も教育も生活環境も含めた社会全体の見直しが本来の趣旨です。

高齢化率という割り算の分子は、もう動かせません。動かせるのは分母のほうです。若い世代がその地域で暮らし続けられるか、多様な世代がそれぞれに役割を持てるか。高齢者福祉と同時に、そちらを考えることが、結局は高齢者自身の暮らしを支えることにつながると考えています。

数値としての高齢化率や、超高齢社会という用語の定義については、以下の記事で解説しています。

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参考資料

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2024年・2025年・2026年
介護保険・介護報酬改定の情報

令和8年度(2026年)障害福祉サービス等報酬改定の概要と変更点まとめ

2026年(令和8年)介護報酬改定の全体像についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

介護報酬改定2026年(令和8年度)まとめ|いつから・変更点・対象サービスをわかりやすく解説

令和6年~8年 地域区分(介護)区市町村の等級一覧(2024年4月~)

介護保険区分支給限度基準額一覧(要支援・要介護)

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New! 令和8年(2026年)介護報酬改定

New!令和8年(2026年)介護報酬改定介護報酬改定後の介護保険サービスごとの介護報酬・単位数

 介護保険の居宅サービス介護給付費単位数(対象:要介護)

地域密着型サービスの単位数改定内容

介護予防サービス(対象・要支援)

介護予防・日常生活支援総合事業費(要支援・事業対象者)の改定内容

施設サービス等介護給付費単位数の改定内容

      2026年(令和8年度)・2024年 介護報酬改定で特徴的な加算・制度

      利用者負担軽減の仕組みの改定

      補足給付(負担限度額認定)に関わる見直しは、以下のとおりです。

      令和6年8月1日施行 基準費用額の見直し

      令和7年8月1日施行 多床室の室料負担
      令和8年8月1日施行 食費基準費用額の1,445円→1,545円、低所得者の食費負担限度額の段階別変更

       

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