科学的介護(LIFE)フィードバックや入力負担、語られない課題

 

2021年の介護報酬改定では、科学的介護推進のための情報システムを本格的に運用するスタートの年になっていますが、LIFEに対する闇の部分について本音を語ってみたいと思います。様々な介護保険サービスの事業所に対して、厚生労働省の科学的介護情報システム(LIFE)への情報提出を求める加算が新設され、厚生労働省のこのシステムへの登録申請を早くするように促すなど、かなり前のめりになって推進を始めています。

科学的介護情報システムの批判を許さない状況ではありますが、現実味立ち返り本当にこの状況でスタートさせて成立するのかは疑問が残ります。

ほとんどの介護の専門家や官僚は、科学的介護はすごい仕組み、革命だ!、挑戦だ!など精神論で早く行うよう口を揃えていますが、現時点で本当にこの仕組みが上手くいくのかという疑問に思う点と、設計的な課題について考えてみたいと思います。

現実を見ればおかしなところがたくさんあり、事業所が負担を覚悟して真面目に協力しても何が得られるのか、問題点はたくさんあります

現場に連携しろと強いるわりにシステムは縦割りですし、後処理を考えずにとにかくデータを出させることまでしか考えていないので、科学できる構造を準備できているようには思いません。正直このLIFEがスタートすることについては、2021年4月時点からすでにやばい感じがしていますし、このままスタートしても疑問点ばかりでサーバーや問い合わせ窓口がパンクする可能性も十分はらんでいます。データを出せ出せ言っていますが本当にデータを提出するための窓口が整っているのかさえ疑問です。

介護保険サービスは、制度に左右されるビジネスなので立法と行政に従うしかないのですが、国から押し付けられて言われるがままにやっていてもやり損な仕事もありますのでちゃんと自分で考えていかなければおかしな業界になります。

このページの目次

科学的介護情報システム(LIFE)とは

科学的介護情報システム「LIFE」とは、利用者の情報や介護サービス提供に関する内容のデータを厚生労働省へ提出することと、データ解析によるフィードバックの活用によって、科学的に裏付けられた介護の実現を目指しサービスの質の向上を図る取り組みをするためのシステムです。

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介護事業者には負担が大きすぎる情報提出項目・提出頻度

システムで機械的にこのデータを処理するので細かく項目の条件を指定することは仕方ないことですが、科学的介護情報システムへのデータを提出する時には細かくデータの項目や提出方法や提出頻度が定められています。

現段階では何も明かされていないLIFEからの「フィードバック」

厚生労働省側は一貫して「データの提出とその後に示されるフィードバックを活用すること」と述べるのみで、具体的にどんなフィードバックが得られるのかということは全く分かっていません
そのような中でも、提出しなければならない情報の項目は多岐にわたり、医療機関でしか知り得ないような情報も多く含まれています。また厚生労働省が乱発させている各種加算でアセスメントする項目も、似てるようで少しずつ違うという非効率な状況になっていて、データをちゃんと提出するとなると想定以上の手間がかかることになります。

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科学的介護をするならば前提になるデータが正確であることが重要

科学的介護の推進に関わるデータ提出項目を見てみると、医師や歯科医師と連携して情報収集した上で正確な情報を出すようにと示されている項目が多くあります。
厚生労働省側としては、特定の疾患を抱えている人の要介護度の変化などを統計的に出したいなど思惑は分かります。しかしそれを介護施設で情報収集という形で行わせるのは、かなり無理がありますし、なぜなのか不思議に思ってしまいます。

シンプルに正確な情報を求めるなら適切な機関に提出してもらえばよいのでは?

  • 医療情報:病院や診療所、歯科、薬局と情報を取りまとめている国民健康保険団体連合会(国保連)
  • 要介護状況に関わる情報:認定調査票や主治医意見書、要介護認定に関わる情報を取りまとめている自治体
  • 介護の詳細・介護サービスの提供状況:介護保険サービス事業者

科学的介護情報システム「LIFE」は情報収集と情報入力の業務負担を考慮していない

厚生労働省は介護事業者の業務効率化を目指していると言ってはいますが、実態はかなりの事務の負担増加になっています。

介護の事業者側が医療の情報を一生懸命収集させられるという負担を強いられるよりは、法律や組織を整備して病院などの医療機関から提出されたデータ、自治体の持っているデータを介護保険サービス事業者でしか取得できないデータとつなぎ合わせて処理する方が明らかに効率的であり確実な情報です

介護事業者は、提供している介護サービスのことや、介護や自立度の観点からの評価結果などをデータ化して提出するだけならば意味は分かります。
しかし、介護事業者だけでは把握することが難しい色々な項目を介護事業者に情報収集させてそれをデータとして厚生労働省が指定した様式で入力させて、本当にこれで科学的介護に繋がるのかはかなり疑問が残ります。なぜなら、元になるデータの信憑性が怪しいからです。

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個人情報やマイナンバーに関する法律や組織を整備すれば科学的介護は躍進する

介護の事業者やケアマネジャーが情報収集できる医療的な情報はごく一部です。入院日は退院日、治療経過などを詳しく確認することなど困難なケースも多々あります。そのような中でも医療的なデータの提出を求められるのならば、適当に入力してしまうこともあげます。最低限介護サービスを提供する時のリスクになるような疾患などについては可能な限り確認しますが、絶対に医療情報を必要と言う条件であるならば情報収集の負担は計り知れません。

医療機関と介護サービス事業者の間で利用者の情報をやり取りすることを重要ではあります。しかし、医療費や介護保険の公費のデータを両方取りまとめている機関が既に持っているデータで利用者の情報を使ってくれれば、少なくとも医療的なデータは医療機関から国保連に提出するのデータに少し改変を加えるだけで容易に取得でき、確実な情報であるはずです。介護事業者が伝言ゲームで収集したような情報に比べれば確実な情報です。

マイナンバーの活用でLIFEへのデータ提出が不要になる可能性も

厚生労働省などは全くこの方針を示していませんが、今後医療保険の被保険者証や介護保険の被保険者証がマイナンバーと紐付けされることが示されており、マイナンバーをキーに医療機関の病気などの情報と、介護保険で提出された情報はつなぎ合わせることができるはずなのです。
おそらく個人情報の関係なので現段階ではこの医療保険と介護保険の紐付けができないのだと思いますが、介護事業者が提出してくる疾患の情報や服薬の情報など、一生懸命データを入力したとしても確実な情報ではない可能性が高いです。

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行政の縦割り 介護の課題は国家課題と認識し行政横断の議論を深めた方が良い

おそらく厚生労働省が介護保険を管轄して科学的介護を推進し、総務省はマイナンバーカードや個人情報を管轄しているという縦割りの行政のせいでこの仕組みが進まないのではないかと思います。

これ以上介護事業者の従業員への負担を増やしてはいけません。そうでなくても今回の介護報酬改定で余計な書類の作成などを求められているサービスも多数あります。

そのような中でこのような雑務をして加算を取得しないと介護報酬は下がる一方です。
科学的介護推進に関わるデータ提出についても、おそらく現場の入力負担などがあまり現実的には考えずに設計されたのではないかと思います。
介護の現場にばかり負担を強いるのではなく、立法機関、行政機関で垣根を越えて工夫をしながら、本来すべき業務にしっかり集中でき余計な事務作業による時間外労働なども発生しないような介護保険サービスの制度設計をしっかりとして頂けると、介護の業界はもっと良いものになると思います。
マイナンバーの利活用についてが活発に議論され始めていますので、もしかするとこの記事で述べてきたことが近いうちに実現して介護事業者が提出しなければいけないデータは最小限になるかもしれません。今回の科学的介護の問題は、介護業界で長年課題視されている「行政機関の指定する書類を揃えなくてはいけないこと」「同じ情報の書き写し」作業などをさらに強調したという状況です。
科学的介護も業務効率化や働き方改革も国が示す方向性ですが、それぞれがちゃんと噛み合って推進されていくよう今後の真剣に注目していきたいですね。

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科学的介護はいくらでもいいとこどりできる

科学的介護を推進している理由には、介護報酬の引き下げの理由づくりや、ケアマネージャーなどの職務や報酬の削減などもも加味されていると思います。

「提示されたデータからこのような結果が示されました」ということで、そのデータをもとに介護報酬の調整が行われると思います。2021年の介護報酬改定でも介護支援専門員が担当できる利用者の人数をICT活用をしている場合などに緩和する仕組みが取り入れられたりしていることから、本当に科学できているかは抜きに、示された結果の都合の良い部分をもとにケアマネジメントの業務などは徐々に人工知能やシステムに置き換えて行こうと言う思惑も見え隠れします。

 

科学的介護情報システム(LIFE)の情報

    科学的介護推進体制加算のLIFE提出

    個別機能訓練加算(Ⅱ)のLIFE提出

    LIFEとうまく付き合うために

     

     

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    区分支給限度基準額一覧(要支援・要介護)

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