HDS-Rとは?(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)やり方、点数・項目の解釈、カットオフ値

HDS-Rとは?(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)やり方、点数・項目の解釈、カットオフ値

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HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)は、日本で広く用いられている認知機能のスクリーニング検査です。短時間で実施でき、道具がほとんど要らず、ベッドサイドでも行いやすい点が特徴です。合計30点満点で、一般に20/21点が「疑いの有無」を判断する目安(カットオフ)として扱われます。

ただし、HDS-Rは「診断そのもの」ではありません。検査結果は、病歴、ADL/IADL、せん妄・うつ・薬剤の影響、感覚障害、神経学的所見、画像検査などと合わせて解釈するのが前提です。

HDS-Rで確認する認知機能の範囲

HDS-Rは、見当識、近時記憶(記銘・想起)、注意・計算、言語(呼称)などを中心に評価します。9項目で構成され、合計点だけでなく「どの領域で落ちているか」を読むことが臨床的に重要です。

HDS-Rは記憶領域の比重が大きく、アルツハイマー型認知症で早期から低下しやすいエピソード記憶のスクリーニングに向きやすい一方、視空間認知や構成、書字などの課題は含まれません。MMSEのように動作性課題(書字・図形模写など)を含む検査とは、得意分野が少し違います。

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HDS-Rの所要時間と事前準備

所要時間は概ね5〜10分が目安です。

実施前の準備としては、静かな環境、眼鏡・補聴器の使用確認、疲労や疼痛の調整、検査の目的を短く説明して不安を下げることが実務上とても効きます。せん妄が疑わしい急性期(発熱、脱水、夜間不穏、急な認知変動など)では、スクリーニングとしての妥当性が落ちやすいので、まず身体状態の評価が優先です。

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HDS-Rを行う時の事前の準備

HDS-Rは「簡易検査」ですが、実施環境と準備の質が結果に大きく影響します。

まず大前提として、聴覚の確認を行います。
聞き取りづらい状態で検査を始めると、認知機能ではなく聴覚障害を評価してしまうためです。テレビや周囲の会話音がない、静かで落ち着いた環境を整えます。

準備物としては、

  • HDS-Rの評価用紙
  • 相互に関連のない5つの物品(例:時計・鍵・鉛筆・くし・歯ブラシ)

を用意します。物品は意味的に関連しないものを選ぶことが重要です。

また、即時再生から遅延再生まで最低1分間あける必要があるため、
検査が早く進みすぎないよう、必要に応じてフリートークなどで時間調整する意識も持っておきます。

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HDS-R 10項目の進め方と質問例

① 年齢の見当識

お歳はいくつですか?

評価のポイント

  • ±2歳までを正答とします
  • 数え年で答える場合があるため、厳密に1年違いで減点しません
  • 生年月日を言えても、年齢が言えなければ正答にはしません

② 日付の見当識(年・月・日)

今日は何年の、何月、何日ですか?

評価のポイント

  • 年・月・日をそれぞれ独立して採点
  • 一部のみ正答でも、その部分は得点として扱います

③ 場所の見当識

私たちが今いるところはどこですか?

補助質問(5秒程度待ってから)

家ですか? 病院ですか? 施設ですか?


評価のポイント

  • 選択肢の中から正しく選べれば得点
  • 即答できなくても、ヒント後の反応を観察することが大切

④ 即時再生(3語記銘)

これから言う言葉を、あとでまた聞きますので覚えてください。

提示語例

「さくら」「ねこ」「でんしゃ」

進め方

  • はっきりした発音で提示
  • 被検者にそのまま繰り返してもらう

評価のポイント

  • 1語につき1点
  • 事前に後で聞くと伝えることが記銘を助ける

⑤ 計算(100−7)

100から7を引いてください。そこからまた7を引いてください。

重要な注意点

  • 1回目のみ計算式を言ってもよい
  • 2回目以降は「93からは?」など答えを示唆してはいけない

評価のポイント

  • 最初に誤った時点で打ち切り
  • ワーキングメモリの評価が目的

※MMSEとの違いとして、HDS-Rでは最初の計算式提示は可である

⑥ 逆唱(数字の逆再生)

今から言う数字を、逆から言ってください。
たとえば『1・2・3』なら『3・2・1』です。

進め方

  • 一定の間隔で数字を提示
  • 正答なら次の桁へ

評価のポイント

  • 誤った時点で終了
  • 4桁は誤答時点で実施しない

⑦ 遅延再生(3語想起)

先ほど覚えていただいた3つの言葉を思い出してください。

評価の進め方

  • ヒントなしで想起:1語3点
  • 想起できない場合のみヒントを使用

ヒントの出し方(重要)

  • 「植物がありましたね」
  • 思い出せたら次に「動物がありましたね」

→ 複数のヒントを同時に出さない

⑧ 視覚記憶(5物品再生)

導入

これから5つの物を見せます。あとで何があったか聞きます。

進め方

  1. まずは視覚情報のみで提示
  2. それでも難しければ
     ・1つずつ手に取らせ
     ・「これは何ですか?」と確認
  3. その後、隠して再生を求める

評価のポイント

  • 順番は問わない
  • 正答1つにつき1点

⑨ 言語流暢性(語想起:野菜)

知っている野菜の名前を、できるだけたくさん言ってください。

評価のポイント

  • 同じ言葉を繰り返しても遮らない
  • と流れを見る

臨床的観察として

「根菜」「夏野菜」などのヒントで反応が変わるかを見ると、言語機能・想起の特性把握に役立つ(※採点外)

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9項目の構成と配点(一覧)

HDS-Rは9項目、30点満点です。
下の表は、学習・臨床で理解しやすいように「狙っている認知領域」と「解釈の視点」を添えて整理したものです(質問文そのものの逐語は避けています)。

項目(領域)主に見ている機能配点の目安どこが落ちると何を疑うか(考え方)
年齢の見当識自己情報、注意、見当識1失点が続くと、全般性の注意低下・見当識低下の入り口として確認
時間の見当識(年月日・曜日など)見当識、記憶、注意4早期から乱れやすく、せん妄やうつ状態でもぶれやすいので状況評価が必須
場所の見当識見当識2自宅内でも迷う、外出で迷子などがあれば臨床像と照合
即時記銘(言葉の記憶)記銘(登録)3ここが弱いと注意障害・聴覚理解の影響もあり得る。提示の仕方に注意
計算 / 注意課題注意・作業記憶2うつ・不安、疲労、教育歴の影響が出やすい。エラーの質を観察
逆唱(ワーキングメモリ)注意・作業記憶1単純な失敗でも不安で崩れる。見当識や記憶と合わせて総合判断
遅延再生(少し時間をおいて想起)近時記憶(想起)6ここが落ちるのはADのスクリーニングとして重要。ヒントの扱いを統一
物品の記銘・想起/呼称記銘、想起、言語5失点が多いと記憶障害の可能性。呼称が強く落ちる場合は失語も念頭
語の流暢性(カテゴリ流暢性)前頭葉機能、検索5反応が極端に乏しい場合は前頭葉機能低下や意欲低下も含めて検討

※項目の存在・30点満点・所要時間・カットオフなどの基本情報は、公的団体が公開しているツールシートや解説資料でも確認できます。

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点数の読み方 合計点より「落ち方」を見る

HDS-Rの合計点は、あくまで「スクリーニングとして疑いがあるか」を見る入り口です。点数で重症度分類を機械的に決めるより、どの領域が落ちているかを見て、病型や鑑別、追加評価に繋げるほうが臨床的に価値が高いという立て付けが重要です。

典型的に、遅延再生や近時記憶が目立って低下していれば、エピソード記憶障害を中核とする病態を疑いやすくなります。一方で、注意・計算や流暢性が強く崩れる場合は、せん妄、うつ、前頭葉機能低下などの別軸の要因も必ず並行評価します。

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カットオフ値(20/21点)の使い方

HDS-Rは30点満点で、一般に20点以下を「認知症の疑い」として扱う運用が広く行われています。
文献・解説では「21/20(20/21)」が最も妥当性が高いカットオフとして扱われる、という説明も見られます。

ここで大事なのは、カットオフは「診断確定」ではなく、見落としと過剰拾い上げのバランスを取るための運用値だという点です。特に教育歴、うつ症状、疼痛、睡眠不足、難聴、失語、せん妄の有無で点数は大きく動くため、点数だけを単独で結論にしない姿勢が必要です。

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MMSEとの違い

MMSEは世界的に広く使われ、見当識、記銘、注意、想起、言語に加えて、書字や図形模写などの動作性課題も含む11項目構成です。

一方HDS-Rは口頭中心で、準備物が少なく実施しやすい反面、視空間認知や構成の評価は弱くなります。

臨床での使い分けとしては、書字や図形模写が困難な身体状況(片麻痺、巧緻運動障害、視力問題)がある場合には、MMSEの点が認知機能以外で下がりやすいので、HDS-Rのほうが現実的な場面が増えます。逆に、視空間や構成の評価が必要なときは、MMSEだけでなく時計描画など別検査を併用するほうが筋が良いです。

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HDS-R以外の認知機能検査

HDS-RとMMSEは有名ですが、臨床や研究では目的に応じて他の検査も併用されます。たとえば軽度認知障害の拾い上げに寄せたいならMoCA、前頭葉機能をより見たいならFAB、視空間・遂行機能の手早いチェックなら時計描画(CDT)など、役割が違います。検査の選択は、患者背景と「何を知りたいか」で決めるのが基本です。

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スコアの信頼性を下げる要因

HDS-Rは簡便な分、条件が揃わないとスコアの再現性が落ちます。せん妄や抑うつ、鎮静薬・抗コリン薬、低酸素、感染、脱水、睡眠不足は、認知症そのものより強く点数を動かすことがあります。医学生や若手看護師のうちは、スコアが低いときほど「今の状態で検査して良い状況か」を一度立ち返る癖をつけると、臨床でのミスが減ります。

介護保険分野でHDS-Rが活用される場面

介護保険の加算の中でもHDS-Rが算定する時の基準の1つになっているものがあります。
例えば、認知症短期集中リハビリテーション実施加算では、「MMSE (Mini Mental State Examination) 又はHDS-R (改訂長谷川式簡易知能評価スケール)において概ね5点~25点に相当する者」と示されているので、この加算を算定する時には実施することとなります。

老健入所 認知症短期集中リハビリテーション実施加算の算定要件

通所リハ(デイケア) 認知症短期集中リハビリテーション実施加算の算定要件

訪問リハ 短期集中リハビリテーション実施加算の算定要件

その他、例えば認知症加算などの認知症に関連する加算や、科学的介護推進体制加算では評価スケールとして「認知症高齢者の日常生活自立度」や「認知症行動障害尺度(DBD13)」が用いられている傾向があります。

まとめ

HDS-Rは、短時間で認知機能低下の疑いを拾い上げる強力な入口で、20/21点を目安に運用されます。
一方で、HDS-Rだけで診断はできず、合計点よりも「どの項目が落ちているか」「その落ち方は病態と整合するか」を丁寧に見ることが、医療者としての使い方です。

MMSEは動作性課題を含むなど構造が違うため、目的と患者背景に応じて使い分け、必要に応じて他検査も併用するのが現場では安全です。

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