2024年介護報酬改定で新設された「認知症チームケア推進加算」は、認知症ケアの質を高めるために重要な役割を果たしています。この加算を算定するためには、特定の要件を満たす必要があり、その中でも職員の資格や研修が重要なポイントとなります。本記事では、認知症チームケア推進加算の算定要件に焦点を当て、必要な資格や研修について詳しく解説します。
このページの目次
認知症チームケア推進加算とは?目的や考え方
認知症チームケア推進加算に関する基本的な考え方は、認知症のある入所者や入居者の尊厳を守りつつ、彼らに適切な介護を提供することに重点を置いています。この目的を達成するために、特定の要件を満たす職員が中心となり、複数の介護職員で構成されるチームが形成されます。このチームは、日常的に認知症の入所者や入居者に対して適切なケアを提供し、認知症に伴う問題行動(BPSD)の予防及び早期対応を行うことで、その重症化を防ぐことを目指しています。
チームは、入所者や入居者個々の状態に応じたケア計画を立て、BPSDの評価指標を用いて定期的に評価を行います。この評価に基づき、個別のケア計画を作成・実施することで、画一的なアプローチではなく、各入所者や入居者の特定のニーズに応じた介護を提供することを目指します。また、ケアの過程で入所者や入居者の尊厳が保持されるように留意することが求められます。
さらに、ケアの質を向上させるために、チームは対象者一人ひとりにつき月に一度以上、定期的なカンファレンスを開催します。これにより、BPSDを含む個々の状態を評価し、ケア計画の策定、振り返り、再評価、計画の見直しなどを行います。このプロセスは、認知症チームケア推進加算ワークシートや介護記録に詳細に記録され、日々のケアの場面で心身の状態や環境の変化が生じた際には、その都度カンファレンスを開催し、再評価やケア方針の見直しを行うことが推奨されています。このようにして、認知症チームケア推進加算は、認知症のある入所者や入居者に対する質の高いケアの提供を目指しています。
認知症ケア推進体制加算ワークシートは、「厚生労働省令和6年度介護報酬改定について」のページでダウンロードできます。
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認知症チームケア推進加算が対象の介護保険サービス・介護保険施設
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
- 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
- 介護老人保健施設(老健)
- 介護医療院
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認知症チームケア推進加算の単位数
認知症チームケア推進加算(Ⅰ) | 150単位/月 |
認知症チームケア推進加算(Ⅱ) | 120単位/月 |
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認知症チームケア推進加算の算定要件
認知症の行動・心理症状(BPSD)の発現を未然に防ぐため、あるいは出現時に早期に対応するための平時からの取組を推進する観点から、認知症チームケア推進加算が2024年の介護報酬改定で新設されました。
認知症チームケア推進加算(Ⅰ)の算定要件
- 事業所又は施設における利用者又は入所者の総数のうち、周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者の占める割合が2分の1以上。
- 認知症の行動・心理症状の予防及び出現時の早期対応に資する認知症介護の指導に係る専門的な研修を修了している者又は認知症介護に係る専門的な研修及び認知症の行動・心理症状の予防等に資するケアプログラムを含んだ研修を修了した者を1名以上配置し、かつ、複数人の介護職員からなる認知症の行動・心理症状に対応するチームを組んでいる。
- 対象者に対し、個別に認知症の行動・心理症状の評価を計画的に行い、その評価に基づく値を測定し、認知症の行動・心理症状の予防等に資するチームケアを実施。
- 認知症の行動・心理症状の予防等に資する認知症ケアについて、カンファレンスの開催、計画の作成、認知症の行動・心理症状の有無及び程度についての定期的な評価、ケアの振り返り、計画の見直し等を実施。
認知症チームケア推進加算(Ⅱ)の算定要件
- 事業所又は施設における利用者又は入所者の総数のうち、周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者の占める割合が2分の1以上。
- 対象者に対し、個別に認知症の行動・心理症状の評価を計画的に行い、その評価に基づく値を測定し、認知症の行動・心理症状の予防等に資するチームケアを実施。
- 認知症の行動・心理症状の予防等に資する認知症ケアについて、カンファレンスの開催、計画の作成、認知症の行動・心理症状の有無及び程度についての定期的な評価、ケアの振り返り、計画の見直し等を実施。
- 認知症の行動・心理症状の予防等に資する認知症介護に係る専門的な研修を修了している者を1名以上配置し、かつ、複数人の介護職員からなる認知症の行動・心理症状に対応するチームを組んでいる。
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認知症チームケア推進加算の対象者
認知症チームケア推進加算の対象者である「周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者」とは、日常生活自立度のランクⅡ、Ⅲ、Ⅳ又はMに該当する入所者等とされています。認知症高齢者の日常生活自立度は以下の記事で確認できます。
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認知症チームケア推進加算の算定に必要な研修内容
認知症チームケア推進加算(Ⅰ)で必要な研修内容
認知症チームケア推進加算(Ⅰ)の要件にある「認知症の行動・心理症状の予防及び出現時の早期対応(以下「予防等」という。)に資する認知症介護の指導に係る専門的な研修を修了している者又は認知症の行動・心理症状の予防等に資する認知症介護に係る専門的な研修及び認知症の行動・心理症状の予防等に資するケアプログラムを含んだ研修を修了している者」とは、「認知症介護実践者等養成事業の実施について」及び「認知症介護実践者等養成事業の円滑な運営について」に規定する「認知症介護指導者養成研修」を修了し、かつ、認知症チームケア推進研修(認知症である入所者等の尊厳を保持した適切な介護、BPSD の出現・重症化を予防するケアの基本的考え方を理解し、チームケアを実践することを目的とした研修をいう。以下同じ。)を修了した者を指す。
認知症チームケア推進加算(Ⅱ)で必要な研修内容
認知症チームケア推進加算(Ⅱ)の要件にある「認知症の行動・心理症状の予防等に資する認知症介護に係る専門的な研修を修了している者」とは、「認知症介護実践者等養成事業の実施について」及び「認知症介護実践者等養成事業の円滑な運営について」に規定する「認知症介護実践リーダー研修」を修了し、かつ、認知症チームケア推進研修を修了した者を指す。
認知症チームケア推進研修とは
認知症チームケア推進研修とは、認知症である入所者等の尊厳を保持した適切な介護、BPSD の出現・重症化を予防するケアの基本的考え方を理解し、チームケアを実践することを目的とした研修をいうと定義されています。
具体的な研修内容としては、以下で紹介しているように厚生労働省介護報酬改定Q&Aで示されました。
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認知症チームケア推進加算について厚生労働省Q&A
研修内容は、以下に示す認知症の人へのケアに関する内容を含むものとする。
・BPSD のとらえかた
・重要なアセスメント項目
・評価尺度の理解と活用方法
・ケア計画の基本的考え方
・チームケアにおける PDCA サイクルの重要性
・チームケアにおけるチームアプローチの重要性
また、研修の実施主体は、認知症介護研究・研修センター(仙台、東京、大府)であり、全国の介護職員を対象として研修を実施する予定としているが、各都道府県・指定都市が実施主体となることや、各都道府県・指定都市が実施している認知症介護実践リーダー研修に上記の研修内容を追加して実施することは差し支えない。
なお、各都道府県・指定都市において上記の研修を認知症介護実践リーダー研修に追加して実施する場合には、認知症チームケア推進研修の研修内容が含まれた研修を修了した旨を修了証に記載するなど明確になるよう配慮されたい。
貴見のとおり。
本加算(Ⅰ)では、現行の認知症介護指導者養成研修の修了とともに、認知症チームケア推進研修を修了する必要がある。同様に、本加算(Ⅱ)では、認知症介護実践リーダー研修の修了とともに、認知症チームケア推進研修を修了する必要がある。
本加算は、BPSD の予防等に資する取組を日頃から実施していることを評価する加算であるため、本加算の対象者である「周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者」に対し、BPSD の予防等に資するチームケアを実施していれば、算定が可能である。
貴見のとおり。
ただし、配置要件となっている者が複数のチームに参加する場合であっても、各々のチームにおいて、本加算において求められる計画の作成、BPSD の評価、カンファレンスへの参加等、一定の関与が求められる。
本加算の対象である入所者等に対して、本加算の対象となるサービスを直接提供する職員を指す。なお、職種については介護福祉士以外であっても差し支えない。
認知症チームケア推進加算は、本来認知症ケアが目指す方向性を示す対応を求めたものではあるが、施設・事業所内の入所者等の認知症の症状は、様々であることが想定される。そのため、例えば、認知症専門ケア加算を算定している対象者が施設・事業所内に居る場合でも、認知症の症状が不安定で、認知症チームケア推進加算に基づくケア提供が、より望ましいと認められる場合は、認知症専門ケア加算から認知症チームケア推進加算に切り替えていただくことは、差し支えない。
各施設・事業所においては、各加算趣旨及び各入所者等の認知症の症状に鑑み、適切な対応をお願いしたい。
具体的には、下記のとおりであり、認知症チームケア推進加算算定にあたり、必ず作成が求められる。
・別紙様式:認知症チームケア推進加算に係るワークシート
・介護記録等:介護日誌や施設サービス計画書、認知症対応型共同生活介護計画書等を示す。
なお、介護記録等については、入所者等の状態の評価、ケア方針、実施したケアの振り返り等を丁寧に記載されることが重要であり、例示した介護記録等以外のものを使用しても差し支えないほか、この加算のみのために、新たな書式を定めることは必要ない。
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まとめ
認知症対応型共同生活介護、介護保険施設における平時からの認知症の行動・心理症状の予防、早期対応の推進をする認知症チームケア推進加算を解説しました。認知症の高齢者が増える中で認知症の理解の深い職員と、その認知症に関する知見をチームで共有してケアに活かすという体制が求められています。
令和6年度介護報酬改定では、4月に変更となる内容と、6月に変更になる内容があります。例えば、訪問介護費の場合、基本報酬部分は4月から、処遇改善加算等は6月から変更という2段階での変更が生じることがあります。詳細は各記事に添付している厚生労働省のサイトからご確認ください。 補足給付(負担限度額認定)に関わる見直しは、以下のとおりです。 令和6年8月1日施行 基準費用額の見直し 令和7年8月1日施行 多床室の室料負担 2024年4月・6月介護報酬改定の情報
令和6年~8年 地域区分(介護)区市町村の等級一覧(2024年4月~)
介護保険区分支給限度基準額一覧(要支援・要介護)
2024年介護報酬改定後の介護保険サービスごとの介護報酬・単位数
介護保険の居宅サービス介護給付費単位数(対象:要介護)
地域密着型サービスの単位数改定内容
介護予防サービス(対象・要支援)
介護予防・日常生活支援総合事業費(要支援・事業対象者)の改定内容
施設サービス等介護給付費単位数の改定内容
2024年(令和6年)介護報酬改定で特徴的な加算・制度
利用者負担軽減の仕組みの改定
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