介護業界でのカスハラとは?事例や対応方法

近年、介護業界でも深刻な問題として注目されている「カスタマーハラスメント(カスハラ)」。本来、利用者や家族との信頼関係を大切にしながら支援を行うべき介護の現場において、暴言や過剰な要求、個人攻撃などが職員の心身を追い詰める事態が起きています。この記事では、ケアマネジャーを対象に実施されたアンケート結果をもとに、介護現場で実際に起こっているカスハラの実態と、その対応方法について詳しく解説します。介護支援専門員、施設職員、経営者すべての立場において、カスハラへの正しい理解と備えが必要です。

カスタマーハラスメントとは何か

カスタマーハラスメント(略して「カスハラ」)とは、利用者やその家族などがサービス提供者に対して、社会通念を逸脱する不当な要求や言動を繰り返す行為を指します。通常のクレームや苦情対応と異なり、人格を否定するような発言、過度な業務外の要求、暴言や暴力、セクシャルハラスメントなどが含まれ、相手に精神的・身体的苦痛を与えるものが対象となります。

一般的には、接客業や医療業界で問題視されてきたこの問題は、介護業界でも深刻さを増しており、特に在宅ケアにおけるケアマネジャーや訪問介護職員、施設スタッフなどが被害を受けやすい現場となっています。

東京都のカスハラ防止条例での「カスタマーハラスメント」の定義

2025年4月1日に施行された東京都のカスハラ防止条例では、カスハラを「顧客等から就業者に対し、その業務に関して行われる著しい迷惑行為であって、就業環境を害するもの」と定義しています

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ケアマネジャーに対するカスハラの現実

ケアマネジャーの場合、直接ケアを行わけでなく、相談や調整がメインとなることから、業務の枠を超える要求や暴言、個人攻撃など、さまざまなカスハラの実態が明らかになっています。

たとえば、利用者家族から「税金を払っているんだから、やって当然だ」という発言を受けたケースや、深夜・早朝問わずメールが連発され、最後には「役立たず」と罵倒された例もありました。また、認知症の利用者からのセクシャルハラスメント的な行動も日常的に報告されており、業務に伴う精神的負荷が大きいことがうかがえます。

さらに深刻なのは、金銭や相続などの問題を背景とした家族間のトラブルに巻き込まれるケースです。ケアマネジャーに証人になってほしいと迫る親族もおり、利用者が亡くなった後もトラブルが続くなど、職務外のストレスが長期間にわたることも珍しくありません。

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施設スタッフ・介護職員に対するカスハラの事例

介護施設に勤務する職員や訪問介護職員もまた、カスハラの被害を受けやすい立場です。

施設に入所していた利用者を在宅復帰させた際、家族から施設全体への不満をぶつけられ、上司の支援も得られずに精神的に追い詰められて休職・退職に至った例もあります。また、異性の家族からの高圧的な態度や、電話口での恫喝により、訪問すること自体が怖くなる状況も発生しています。

中には、法律職に就いている家族が法令を盾にしながら介護保険制度の枠を超える要求を突きつけてくるなど、立場の優位性を悪用するケースも確認されています。

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介護現場でカスハラが発生する背景と構造

介護は「生活に深く関わる」支援であるがゆえに、利用者や家族の感情が爆発しやすい場でもあります。高齢者本人の病状や家族の介護疲れ、経済的な負担など、さまざまなストレスがケア提供者に向けられやすいという構造的な背景があります。

さらに、どこまでを介護サービスを提供する事業者に要求して良いのか分かりにくいという部分もカスハラが発生しやすい原因です。よくあるケースとしては、介護施設や老人ホームに入居する際に「安心して生活できるように様々な支援をします」という漠然とした内容のパンフレットをみたり説明を聞いたりして入所し、期待値と提供される内容に大きく乖離がある状態で施設側としてはカスハラだと思ってしまうことがあります。何を提供し、何ができないのかを具体的に説明せずに、介護事業者側が曖昧な説明や営業トークをしていることにより、結果的にカスハラが発生してしまうこともあります。

また、介護職が「優しい人」「なんでもやってくれる人」と誤認されがちな文化や、「断る=冷たい人」といった社会的イメージも、過剰な要求を助長する要因になっています。

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現場での対応方法と予防策はある?

カスハラに対処するには、まず職場内での明確なルールと対応フローが必要です。ケアマネジャーや介護職員が一人で抱え込まない体制づくりが何よりも重要です。

「地域包括との連携で問題を解決」「上司の説明により理解を得た」といった声もあり、組織的な対応が有効であることがわかります。また、協会や自治体、弁護士との連携も重要です。県の協会からの助言や弁護士との連携で精神的に救われたという声もありました。

さらに、「何でもケアマネが対応すべき」という誤解を払拭するために、業務範囲を明確に説明する姿勢も求められます。特に、新規の支援開始時に「できること」と「できないこと」を伝えることは、後々のトラブル予防にもつながります。

加えて、職員自身のメンタルケアも重要です。管理者や主任ケアマネジャーが自身のストレスを抱え込みながら支援を継続しているケースもあり、定期的なカウンセリングや内部でのフォロー体制の充実が望まれます。

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カスタマー・ハラスメント防止条例

東京都や北海道ではカスタマーハラスメント防止条例が施行されました。内容としては、カスハラに対して事業者や就業者、自治体でカスタマー・ハラスメント防止施策を進めていきましょうという内容となっています。

東京都カスタマー・ハラスメント防止条例(2025年4月施行)

東京都は、全国で初めてカスハラ防止条例を制定し、2025年4月1日に施行しました。この条例では、カスハラを「顧客等から就業者に対し、その業務に関して行われる著しい迷惑行為であって、就業環境を害するもの」と定義し、顧客に対してカスハラを行わないよう求めています。また、事業者には防止措置を講じる努力義務が課されています。罰則規定はありませんが、都は防止指針を策定し、事業者や就業者に対して具体的な対応策を示しています。

東京都カスタマー・ハラスメント防止条例では、禁止規定に違反した場合の罰則規定はなく、行為の内容によっては、この条例にかかわらず、法律に基づく処罰等を受ける可能性があるという内容となっています。

北海道カスタマー・ハラスメント防止条例(2025年4月施行)

北海道でも、東京都と同様にカスハラ防止条例が2025年4月1日に施行されました。この条例は、カスハラを禁止し、事業者や事業者団体に対して防止措置を講じる努力義務を課しています。また、道内の市町村や関係機関と連携して「北海道カスタマーハラスメント対策推進協議会」を設置し、カスハラ防止に向けた取り組みを進めています。

東京都の動きを見て、その他の自治体でもカスハラ防止条例について検討が進められています。

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カスハラ対策は、組織内の認識や対応の統一から

介護業界におけるカスタマーハラスメントは、単なる苦情対応ではなく、職員の働く意欲や精神的健康を脅かす重大な問題です。現場任せにせず、組織全体で支え合うことが不可欠です。特に、対策としては過剰な要求や従業員が追い込まれるような状況を作らないようなことが大切です。そのために、事業者内でどんなサービスは提供できる内容で、どんなことは断るのか、何が追加料金になるのかなどの情報共有や明文化が有効です。

カスハラが起きる多くのケースで、聞いていた話と違う、○○さんからはこんな風に説明を受けたというように、事業者側が期待値を高めたために利用者や家族からの不満が生じて、有言不実行なのは責任感が無い、誠実な対応をして欲しいと高圧的に追い詰めてくるような傾向があります。介護事業は、本来であれば福祉的な役割ですが、近年は介護事業の経営者はビジネスとして顧客獲得に勤しみ、従業員はどんな営業トークをしているかは知らないで与えられたことを行う、利用者側はお客様というような立場になりつつあり、特に利用者に直接的に関わる従業員がカスハラを受ける状況になりやすいです。利用者や家族への説明の段階で、これはできるこれはできないということを明示しておくことや、営業トークで何でもできますと話したりしすぎないことが、カスハラ対策の基本です。

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カスハラと詐欺の合間

営業トークで何でもできますと話したりしていて、利用者や家族から利用する前はできると言っていたのになんでやってもらえないんですか?と不満を口にしたこともカスハラ扱いされることもあります。

似たようなクレーム事例だったとしても、すべてをカスハラで片付けてしまうと再発防止も踏まえた対策にはならず、顧客の権利や、厳しい指摘や要求に至った経緯も踏まえた上で考える必要があります。

営業トークで「できます」と言ってしまったことについては利用者や家族が悪いわけではなく、組織内で認識を統一できていなかったり、営業ノルマが厳しいことにより嘘をつかなくてはならない状況になってしまっていたりするという問題があります。カスハラだと考えるにあたっては、まず何でそのような言動に至ったのか、こちらの落ち度はなかったのかをしっかりと検証することで、また同じようなことが起きることを防ぐことができます。

顧客が誤認を起こすような表現やパンフレットなどの案内を一つ一つ改善していくことが、カスハラ対策として大切です。できると伝えたことができないのならば詐欺のようなものですし、追加料金なくできますと言っていたことが追加料金になるならば、顧客としては話が違うと訴えることも当然と言えば当然です。

「当然これはやってもらえると思っていた」「このくらいのサービスは当然だと思っていた」という期待値があるからこそ、顧客側はその期待値まで要求してくるわけなので、契約を行う時などに何も聞いてこないような人としても、認識や期待値を確認してできることはできないことなどの十分に理解し合うようにしましょう。

 

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