予後予測とは?意味と脳卒中・がん・高齢者の疾患別予後予測ツール【医療・看護・リハビリ】

予後予測とは?意味と脳卒中・がん・高齢者の疾患別予後予測ツール【医療・看護・リハビリ】
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予後予測とは何か、その意味と、医療・看護・リハビリテーションの現場で使われる代表的な予後予測ツールについて解説します。脳卒中後の歩行自立度を予測する二木の予後予測・石神の予後予測、がん終末期の生命予後を予測するPaPスコア・PPI、肝不全のMELDスコアなど、疾患や目的に応じたツールを整理して紹介します。医師・看護師・リハビリ専門職の方が、予後予測という医療用語の全体像をつかめる内容を目指しました。

予後予測とは

予後予測とは、病気やけがが今後どのような経過をたどるか、医学的な見通しを立てることをいいます。「予後(よご)」とは、病気や治療の経過についての見通しのことを指す医療用語です。

予後予測は、基本的にはまず医師が、これまでの多くの症例や臨床データ、各種の検査結果などに基づいて評価します。そして、その予後予測をもとに、治療方針やリハビリテーションの計画、退院後の生活の見通し、必要な介護サービスなどが組み立てられていきます。つまり、予後予測は医療やケアのあらゆる意思決定の出発点になる、とても重要なものです。

「生命予後」と「機能予後」

予後予測には、大きく分けて2つの方向性があります。

  • 生命予後 あとどのくらい生きられるか、生存期間についての見通し。がんの終末期などで特に重視されます。
  • 機能予後 体の機能や日常生活動作(ADL)がどこまで回復・維持できるか、という見通し。脳卒中後の歩行自立度の予測などが代表例です。

どちらを重視するかは、その人の疾患や状態、そして医療・ケアの目的によって変わります。回復を目指す時期には機能予後が、人生の最終段階では生命予後が、より重要になってきます。

なぜ予後予測が必要なのか

予後予測は、単に「先を占う」ためのものではありません。適切な予後予測があるからこそ、次のようなことが可能になります。

  • 現実的で意味のある治療・リハビリの目標を設定できる
  • 限られた時間や資源を、本当に大切なことに使える
  • 本人・家族が心の準備をし、これからの生き方を選べる
  • 退院先や必要なサービス、住環境の調整を早めに進められる

特にリハビリテーションでは、予後予測なしに闇雲に訓練をしても効果は上がりません。どこまで回復が見込めるのか、どの機能を代償手段でおぎなうべきなのかを見極めることが、質の高い支援の前提になります。予後予測を踏まえた介護度進行予防や自立支援の考え方は介護度進行予防とは 自立を目標に「障害」を見つけて余生のQOLアップをでも解説しています。

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脳卒中の予後予測(機能予後)

脳梗塞や脳出血などの脳卒中では、後遺症として麻痺が残ることが多く、「どこまで歩けるようになるか」という歩行自立度の予後予測が、リハビリの現場で特に重視されます。代表的なツールを紹介します。

二木の予後予測(二木の早期自立度予測基準)

二木の予後予測は、医師・医療経済学者である二木立(にき りゅう)氏が、1982年に発表した、脳卒中患者の最終的な自立度を早期に予測するための基準です。脳卒中リハビリの予後予測として、日本で最もよく知られ、現在も広く使われている基準です。

入院時・発症2週・1か月といった時期ごとに、年齢・麻痺の程度・基礎的ADL(食事、尿意の訴え、寝返りなど)などの因子を組み合わせて、最終的な自立度を予測します。最終自立度は「屋外歩行自立」「屋内歩行自立」「ベッド上生活自立」「全介助」の4段階に分類されます。二木氏の報告では、入院時に自立歩行できない患者のうち、7割は入院時に、8割は入院後2週時に、9割は1か月時に、最終自立度が予測可能であったとされています。

どういう場合にどんな予後と予測されるのか(イメージ)

詳細な判定表は原著(二木立「脳卒中リハビリテーション患者の早期自立度予測」リハ医学19巻, 1982年)や成書に譲りますが、どんな考え方で予測するのか、イメージをつかんでいただくために、予測の方向性をいくつか例示します。

  • 良い予後(屋外歩行自立)が見込まれる例 入院時にすでに介助なしでベッド上での起き上がり・座位保持ができる、比較的若い(おおむね50代以下)、麻痺が軽い(麻痺側の下肢を伸ばしたまま持ち上げられる程度)といった条件がそろう場合は、屋外歩行まで自立できる可能性が高いと予測されます。
  • 屋内歩行レベルにとどまると見込まれる例 同じように起き上がり・座位保持ができても、年齢が高い場合や、麻痺が重い(麻痺側の下肢を自力で持ち上げられない程度)場合は、屋外までは難しくても屋内歩行の自立が目標になる、といった予測になります。
  • 厳しい予後(全介助)が見込まれる例 高齢で、遷延性の意識障害や重い認知症、両側の麻痺、高度の心疾患などがあり、食事・尿意の訴え・寝返りといった基礎的ADLがほとんどできない場合は、全介助にとどまる可能性が高いと予測されます。逆に、高齢でもこれらの重い合併症がなく、基礎的ADLがいくつか可能であれば、より良い自立度が期待できると判断されます。

ポイントは、「年齢」「麻痺の重さ」だけで決めるのではなく、「起き上がれるか」「座っていられるか」「食事・尿意・寝返りといった基礎的な生活動作ができるか」を重視して組み合わせるところです。発症2週時、1か月時と、時間が経つほど確度の高い予測ができるようになっていきます。

特別な機器を使わず、臨床の場で簡便に評価できるのが大きな利点です。一方で、時期ごとの評価が必要なため、発症から1か月以上経った回復期以降では、そのままでは使いにくいという面もあります。

また、二木の早期自立度予測基準の発表は1982年と古く、t-PAなどの急性期治療が進歩した現在の患者層でそのまま当てはまるかは検証も行われており、あくまで目安として使うことが大切です。

石神の予後予測

石神重信氏らが提唱した予後予測は、より簡便に、主に座位保持能力などから歩行の予後を予測しようとするものです。例えば、初診時にベッド上で足を床につけた状態で端座位をとらせ、両手を膝の上に置いて15秒以上座位を保持できるかどうか、といった評価を用います。

どういう場合にどんな予後と予測されるのか(イメージ)

石神の予後予測の考え方は、ざっくり言うと「早い段階で座位が保てるかどうか」が、その後の歩行の可否を分ける大きなサインだという発想です。予測の方向性のイメージを例示します。

  • 良い予後が見込まれる例 発症から間もない時期に、支えなしで端座位を保持できる場合は、比較的早期に歩行が自立する可能性が高いと予測されます。実際、発症3日以内に座位保持が可能だった群は、4週以内に歩行が自立して退院したという研究報告もあります。
  • 予後がやや厳しいと見込まれる例 同じ時期に座位保持ができない場合は、歩行自立に至る割合が下がり、自立できても監視や介助つきのレベルにとどまる方が多くなる、という予測になります。ただし座位がとれない場合でも一定割合は歩行自立に至るため、「座れない=歩けない」と断定するものではありません。
  • さらに踏み込んだ評価 座位保持ができるようになった段階で、端座位のまま麻痺側の足で踏み込む動作(麻痺側下肢にどれだけ力が入るか)を確認し、麻痺側下肢の支持性から歩行の予後をより細かく見ていく、という使い方もされています。

急性期の患者を対象とした報告では、9割弱の確率で予測が可能であったとされています。ベッドサイドで数分あればできる評価なので、急性期の早い段階から見通しを立てたいときに向いています。二木の基準と同様に、簡便に使える急性期向けの予後予測として知られています。座位保持能力の評価そのものについては座位保持能力の評価基準も参考になります。

重回帰分析などを用いた予後予測

近年は、統計手法である重回帰分析などを用いて、より多くの因子から数量的に予後を予測しようとする研究も進んでいます。年齢、麻痺の程度、認知機能、発症からの日数など、複数の要因を数式に当てはめて、回復の程度を予測する試みです。

実際に、二木モデル・石神モデルと、重回帰分析を用いた新しいモデルの精度を比較した研究もあります。ある研究では、急性期脳卒中患者を対象に3つのモデルの歩行予後予測の精度を比較し、それぞれに感度・特異度の特徴があることが示されています。どのモデルにも一長一短があり、時期や目的に応じて使い分けたり、複数を組み合わせて総合的に判断したりすることが大切です。

予後予測を「決めつけ」に使わない

ここで一つ、現場の者として強調しておきたいことがあります。予後予測はあくまで統計的な確率であって、目の前のその人の運命を決めるものではありません。「予測上、歩行自立は難しい」という結果が出たからといって、簡単に諦めたり、本人・家族に軽々しく伝えたりすべきではありません。予測を、支援を組み立てるための材料として使うのか、可能性を狭める道具にしてしまうのかは、使う側の姿勢しだいです。

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がん終末期・緩和ケアの予後予測(生命予後)

がんの終末期など、人生の最終段階では、「あとどのくらいの時間が残されているか」という生命予後の予測が重要になります。残された時間を本人・家族がどう過ごすか、輸液や鎮静といった医療をどうするか、といった意思決定に直結するからです。代表的なツールを紹介します。

PaPスコア(Palliative Prognostic Score)

PaPスコアは、進行がん患者の月単位の生命予後を予測する、代表的な指標です。イタリアで開発されました。医師による主観的な予後予測(臨床的予後予測)に、パフォーマンスステータス、食欲不振、呼吸困難、白血球数、リンパ球の割合といった客観的な因子を加えて点数化し、合計得点から予後を予測します。

主治医の主観的予測を客観的因子で補正することで、精度を高めているのが特徴です。ただし、得点に占める主治医の主観の比重が大きいため経験の浅い医師には使いにくい面があることや、血液検査が必要である点が、使用場面を選ぶところです。

PPI(Palliative Prognostic Index)

PPIは、日本でよく使われる生命予後予測の指標で、血液検査が不要で、症状や身体所見だけで評価できるのが最大の特徴です。そのため、採血が難しい在宅の場面でも簡便に使えます。

PPIは、次の5つの指標に点数をつけて合計します。

  • PPS(Palliative Performance Scale/歩行・活動・ADL・経口摂取・意識レベルなどから見た全身状態)
  • 経口摂取量
  • 浮腫(むくみ)
  • 安静時の呼吸困難
  • せん妄の有無

合計得点が6点を超える場合、3週間以内に亡くなる可能性が高いとされ、その予測精度は感度80%、特異度85%程度と報告されています。採血不要で在宅でも使える手軽さから、緩和ケアの現場で広く活用されています。なお、評価に含まれるせん妄浮腫(むくみ)は、終末期に現れやすい重要な症状です。

PiPSモデル・その他の指標

このほかにも、病歴・症状・血液検査から生存確率を計算するPiPSモデルや、血液検査値を中心とした生物学的予後スコア(BPS)など、さまざまな予後予測ツールが開発されています。それぞれ、必要な情報や予測できる期間、精度に違いがあるため、状況に応じて使い分けられています。

これらの予後予測は、本人・家族の目標設定や、医療者の意思決定、ホスピス・緩和ケアへの紹介のタイミングを考えるうえで役立ちます。人生会議(ACP)ホスピス・緩和ケア看取りの場面とも深く関わってきます。

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その他の疾患別の予後予測

「脳卒中やがん以外にも、疾患ごとに今後の経過を見通すための指標があります。

厳密には『重症度分類』と呼ばれるものも含まれますが、臨床現場で予後を考える目安としてよく使われるものをいくつか紹介します。

肝不全・肝疾患 MELDスコア、Child-Pugh分類

肝硬変や肝不全など、終末期の肝疾患では、MELDスコア(MELD-Naスコア)が90日死亡率の予測などに用いられます。血清ビリルビン、クレアチニン、INR(血液凝固の指標)などから算出します。また、肝硬変の重症度を評価するChild-Pugh分類も、肝機能の予後を考えるうえでよく使われます。これらは肝移植の適応を判断する際の指標としても重要です。

パーキンソン病 Hoehn-Yahr重症度分類

パーキンソン病では、Hoehn-Yahr(ホーン・ヤール)重症度分類が、病気の進行度を評価する指標として広く使われます。ステージ1(片側のみの症状)からステージ5(車椅子・寝たきり)まで5段階で評価し、進行の程度や必要な支援を考える目安になります。進行性の疾患であるため、現在のステージから今後の経過を見通し、先回りしてケアを組み立てることが大切です。パーキンソン病の経過についてはパーキンソン病とは?原因、初期症状から末期症状、治療方法やリハビリで詳しく解説しています。

アルツハイマー型認知症 FAST(Functional Assessment Staging)

アルツハイマー型認知症の進行度を評価する指標として、FAST(ファスト:Functional Assessment Staging)がよく用いられます。認知機能の低下に伴う生活機能(ADL)の障害の程度を、ステージ1(正常)からステージ7(重度の認知症)までの7段階で評価するものです。着衣や入浴の自立度、排泄の失敗といった「生活上の変化」から進行度を判定できるのが特徴です。

厳密には進行度の分類ですが、臨床では予後予測の重要な目安として使われます。

特に、ステージ7(言葉がほとんど出ない、歩行や食事が自力でできない状態)に至ると、生命予後が年単位から月単位へと近づいている一つのサインとなります。この段階を見据えて、胃ろうなどの人工栄養をどうするか、看取りをどこで行うかといった、人生の最終段階の話し合い(ACP)を進めるタイミングを計るうえで非常に重要な指標になります。

COPD(慢性閉塞性肺疾患) BODE index

COPD(慢性閉塞性肺疾患)では、BODE index という指標が予後予測に用いられます。B(BMI=体格指数)、O(気流閉塞=1秒量などの呼吸機能)、D(呼吸困難の程度)、E(運動能力=6分間歩行距離)の4項目を組み合わせて評価し、生命予後の予測に役立てます。呼吸だけでなく、栄養状態や運動能力も含めて総合的に見るのが特徴です。COPDの経過やリハビリについてはCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の原因・検査・治療・リハビリ生活もご覧ください。

骨折 骨癒合期間の目安

高齢者に多い骨折では、骨折の部位や手術方法によって、骨が癒合するまでのおおよその期間が分かっています。これも一種の予後予測で、いつから体重をかけてよいか、いつごろ歩行練習を始められるかといったリハビリ計画の土台になります。詳しくは骨折の治癒過程と骨折部位による骨癒合期間の目安をご覧ください。

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予後予測を活かすために大切なこと

ここまで、疾患別・目的別の代表的な予後予測ツールを紹介してきました。最後に、これらを現場で活かすうえで大切だと思うことをまとめます。

まず、予後予測は確率であって断定ではないということです。どのツールにも感度・特異度があり、外れることもあります。数字を絶対視せず、あくまで参考として、目の前のその人をよく観察することが基本です。

次に、予後予測はチームで共有してこそ活きるということです。医師が立てた予後予測を、看護師・リハビリ専門職・介護職・ケアマネジャー、そして本人・家族が共有することで、みんなが同じ方向を向いてケアを組み立てられます。リハビリ専門職や介護職が、医師に予後の見通しを確認しながら関わることも大切です。

そして、予後予測は、諦めるためではなく、限られた時間や機能をどう活かすかを考えるために使うものだということです。「回復は難しい」という予測が出たとしても、それは終わりではなく、「では、その人がその人らしく過ごすために何ができるか」を考える出発点になります。予後を見すえたうえで、本人の望む暮らしや余生の質(QOL)を支えていく——それが予後予測の本当の目的だと思います。

※本記事は予後予測の概要をまとめた一般的な情報です。各予後予測ツールの詳細な評価方法や適応、実際の予後の判断については、必ず主治医などの専門職にご確認ください。

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