介護度進行予防とは 自立を目標に「障害」を見つけて余生のQOLアップを

介護度進行予防とは 自立を目標に「障害」を見つけて余生のQOLアップを
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介護予防に自立を目標、何が障害?問題志向型アプローチで介護度の進行予防と余生の質アップを!

近年、介護保険におけるサービスの質向上を考えるとき、「介護度進行予防」や「自立支援」という言葉をよく聞くようになりました。
私は医療人・リハビリ職としてはやや違和感があるこれらの言葉ですが、どちらもヘルスプロモーション(健康づくり)の概念がベースにあり、プロセスを意識して健康づくりをしましょうというもののようです。
介護予防と言われると、いまだに「体操」「体の機能訓練」が一般の認識ですが、改めて「自立度」「障害」についてざっくり考えてみたいと思います。この視点を持てるかどうかで、介護度の進行を予防できるかが大きく変わってくると、現場に長くいて感じています。

なお、この記事とセットで、将来を見すえた「予後予測」という考え方についても別記事で詳しく解説していますので、あわせて読んでいただけると理解が深まると思います。

介護度進行予防とは

介護度進行予防とは、その言葉のとおり、要介護状態がそれ以上重くならないように、あるいは少しでも軽くなるように予防していくことです。

高齢になると、加齢や疾患によって心身の機能は少しずつ低下していきます。フレイル(虚弱)やサルコペニア(筋肉の減少)、老年症候群といった状態は、放っておくと悪循環に陥り、要介護度がどんどん進んでいってしまいます。逆に言えば、どこに問題があるのかを見極めて適切に関われば、その進行を緩やかにしたり、一部を改善したりできる可能性があるということです。

介護度進行予防を考えるうえで、まず土台になるのが「自立とは何か」「その自立を邪魔しているものは何か」という視点です。ここを押さえておかないと、ただやみくもに体操や機能訓練をするだけになってしまいます。

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自立とは

一般的な自立

  • 自由にできるお金がある(経済的自立)
  • 自分ひとりで日常の行為や家事・活動をできる(身体的・活動的自立)
  • 誰かに頼らず、自己決定して生きている(精神的自立)

自立の反対は「依存」

  • 誰かの金銭援助・補助で支えられている
  • 誰かの言われるがまま、されるがままになっている
  • 誰かの助言や決定なしでは生きられない

こう並べてみると、自立とは単に「自分の体で動けること」だけを指すのではないと分かります。お金のこと、気持ちのこと、自己決定のこと——いろいろな側面があります。介護度進行予防を「体の機能訓練」だけで考えてしまうと、この大事な部分を見落としてしまうのです。

ちなみに、「自立支援」というと「自分の力でできるようにすること」だと思われがちですが、必ずしも本人が全部自分の力でやることだけが正解ではありません。福祉用具や人の手を借りてでも、その人が望む生活が送れているなら、それも立派な自立の形です。専門用語では「修正自立」などと表現されることもあります。

この点は自立支援のケアプラン 歩行安定ニーズの目標は筋力向上ではないでも触れています。

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自立と「障害」の関係

自立を考えるとき、その自立を邪魔している「障害」に注目します。ここでいう障害は、いわゆる身体障害だけを指すのではありません。もっと広い意味での「邪魔物」として捉えると、関わり方が変わってきます。

「障害」は身体面だけじゃない

障害は、障害物競走のように、進行する途中にある「邪魔物」のことだと考えてみてください。自立という前に進む道の途中に置かれている、乗り越えるべきものです。

「障害」は心理面にもある

障害は、身体的なものだけではありません。トラウマ、恐怖、未知の領域への不安、他人の目、前例がない——こうした心理的な「邪魔」も、その人の自立を妨げる立派な障害です。例えば「一度転んでから、怖くて歩けなくなった」という方は、体の機能以上に、恐怖という心理的障害が自立を止めていることがあります。

「障害」は、環境しだいで障害にならないこともある

そして大事なのが、障害は、創意工夫や社会福祉サービスの利用など、穴埋めや代償ができれば、障害にならないこともあるということです。段差があって歩けないなら手すりをつける、握力が弱いなら自助具を使う。環境を整えれば、同じ体の状態でも「できないこと」が「できること」に変わります。

自立支援のための問題抽出 自立を邪魔する身体面・心理面・環境面の障害を示した図

この「身体面・心理面・環境面」という3つの視点で障害を捉える考え方は、ICF(国際生活機能分類)の考え方とも通じます。ICFでは、その人の生活機能を「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の3つのレベルで捉え、それに「環境因子」「個人因子」が影響すると考えます。障害を身体だけで見ないという発想は、介護度進行予防の基本です。廃用症候群を防ぐためにICFで問題点を見つける具体例は廃用症候群を防ぐために ICFで問題点を見つけて介護予防で紹介しています。

今後出現する障害を予測する

介護予防・介護度進行予防の効果を高めるために、もう一歩踏み込みたいのが「これから現れる障害を予測する」という視点です。

  • 今後生活を続けていく中で現れる可能性がある、身体面・精神面・社会面・環境面の問題を予測して、その障害が現れないように前もって調整する。
  • 障害が現れることが確実な場合は、その障害を避けて代償できる手段を、あらかじめ考えておく。

問題が起きてから対応するのではなく、起きる前に手を打つ。これができると、介護度の進行をぐっと抑えられます。そのために欠かせないのが、次に説明する「予後予測」の考え方です。

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予後予測という考え方

予後予測という言葉は、医療ではよく使われるのですが、簡単に言うと「将来どうなるか」を見通すことです。医療では、たくさんの症例や臨床データから、その疾患がどのような経過をたどるのかが、ある程度示されています。

大腿骨骨折の例

手術をして、患部が順調に良くなれば、2か月くらいで多少歩行できてくる、といった見通しが立ちます。骨折の部位や手術の方法によって、骨が癒合するまでの期間や、力を入れてよい時期などは、およそ予測が可能になっています。骨折部位ごとの治癒期間の目安は骨折の治癒過程と骨折部位による骨癒合期間の目安で解説しています。

脳卒中の例

後遺症の程度や受傷部位にもよりますが、半年くらいは麻痺そのものの回復の可能性があるとされます。その後も、失われた機能を、別の部分の機能でおぎなっていくことができます。パーキンソン病のように進行性の疾患であれば、また違った経過をたどります。

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骨折と予後予測、リハビリ・機能訓練の自立支援の視点

骨折を例に、予後予測を踏まえた自立支援の視点を挙げてみます。骨がくっつくのを待つだけでなく、その間に何をするかが、その後の介護度を大きく左右します。

  • 拘縮、筋力低下、肺炎などの合併症や機能低下を防ぐ
  • 「病院慣れ」させない(安静にしすぎて動かなくなるのを防ぐ)
  • トイレ動作、入浴、歩行など、実生活で行わなければならない動作や活動を取り入れる
  • 今まで続けてきたことや、意欲を持っていることに取り組むための支援をすることまで含めて考える

特に大切なのが、安静にしすぎて動かない期間が長くなることで起きる機能低下(廃用症候群)を防ぐことです。骨折そのものは治っても、その間に体全体が弱ってしまい、かえって介護度が進んでしまう、というのは現場でよくある残念なパターンです。

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予後予測(将来の余生プラン)と自立支援

問題点の把握と予後予測なしの自立支援ではダメ

ICF(国際生活機能分類)で、その人全体をありのままに捉えるようになりましたが、「将来どうなるか」という視点では、その前の時代のICIDH(国際障害分類)的な問題点抽出の手法も、実は役に立ちます。どちらの考え方も、長所と短所を留意しておけば有効活用できます。ICFの活用についてはICFを活用して生活機能向上を目指すケアプランの作り方もご覧ください。

予後予測をするときには、次の3つの視点でその人を見ていきます。

疾患(病気・怪我)の特性

整形外科系、中枢神経系、循環器系、呼吸器系など、疾患によって弱っている部分がそれぞれ違います。医師・看護師・療法士と相談して、将来どのような経過をたどるのか、どんな症状が、どのくらいの期間で現れるのか、その予防方法は何か、を相談していきます。

個人の特性

性格、年齢、仕事、社会的役割、今までのADL(日常生活動作)の変化など、その人の経歴や生活歴による特性です。同じ疾患でも、その人がどう生きてきたかによって、たどる経過も、目指すゴールも変わってきます。

環境の要因

建物や住環境の状態、介護する人の力量や頻度、世間体、所属しているコミュニティの風習など、その人を取り巻く環境です。どんなに本人が頑張っても、環境が整っていなければ自立は難しく、逆に環境しだいで大きく変わります。

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問題点を意識しつつ、利用者全体を見て、余生のQOLも考える

ここでは、いろいろな視点・考え方を、うわべだけですが紹介しました。今まで見ていなかった部分を見るようになると、今までの関わり方と、がらりと変わるかもしれません。

介護度進行予防というと、つい「筋力をつける」「歩けるようにする」という体の話に偏りがちですが、本当に大切なのは、その人の自立を邪魔している障害が何なのかを、身体・心理・環境の面から見つけ出し、予後を見すえて先回りして手を打つことです。そして最終的に目指すのは、介護度の数字を良くすることそのものではなく、その人の余生の質(QOL)を高めることだと思います。

体を良くすることは手段のひとつであって、目的ではありません。QOL(生活の質・人生の質)という視点や、リハビリテーションが本来目指すものを忘れずに、その人らしい生活を支えていきたいですね。両手引き歩行のように、良かれと思ってやったことが逆に自立を妨げる例(両手引き歩行介助は介護度悪化に注意)もあるので、関わり方ひとつが介護度進行予防を左右するということを、心に留めておきたいところです。

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