デイケア(通所リハビリテーション)での個別リハビリテーションと、デイサービス(通所介護)での個別機能訓練加算の違い、ケアプランの目標との連動、ADL評価、課題領域などの現状と考察について紹介します。
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通所リハビリテーションと通所介護の機能訓練の違いとは
ケアマネジャーなどがケアプランを立てるとき、「リハビリテーション」や「機能訓練」は利用者からの希望が多い部分です。
しかし実際にはデイケアでの個別リハビリテーションと、デイサービスでの個別機能訓練加算の違いはあいまいである場合が多いです。ケアマネジャーも通所リハビリテーションと通所介護の機能訓練の違いが分かりにくいだけでなく、事業者の方も理解ができていないまま、機能訓練指導員が配置されている場合も多くあります。この記事では、リハビリテーションと機能訓練の機能分化とその在り方に関する調査研究事業(H28年3月)を引用しながら、筆者であるおたきやま(理学療法士、介護支援専門員)の私見を交えて紹介していきます。
通所リハビリテーション(デイケア)の基本方針
通所リハビリテーション(デイケア)の個別リハビリテーションについては、介護保険法で以下のように定義されています。
指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準第110条
要介護状態になった場合においても、その利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ、自立した日常生活を営むことができるよう生活機能の維持又は向上を目指し、理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーションを行うことにより、利用者の心身の機能の維持回復を図るものでなければならない。
デイケアの個別リハビリテーションとは
デイケアの個別リハビリテーションについては、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が、医師の指示を受けて実施するものとなります。
デイケアでの個別リハビリテーションでは、医師の指示のもとで実施することから、医療的な管理や医学的リハビリテーションに近い内容で、生活期における在宅生活の継続を意識したリハビリテーションが展開されます。
特に医師を中心に理学療法士などが直接一人一人に提供するという点が特徴です。リハビリテーション視点のチームで医療・生活情報収集・計画・連携などのマネジメントが強みであり、介護報酬上もこの点を評価する仕組みが重視されてきています。
通所介護(デイサービス)の機能訓練の基本方針
要介護状態になった場合においても、その利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ、自立した日常生活を営むことができるよう生活機能の維持又は向上を目指し、必要な日常生活の世話及び機能訓練を行うことにより、利用者の社会的孤立感の解消及び心身の機能の維持並びに利用者家族の身体的及び精神的負担の軽減を図るものでなければならない。
デイサービスの個別リハビリテーションとは
デイサービスでの個別機能訓練については、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の他、看護師、准看護師、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師も機能訓練指導員の資格要件になっています。
デイサービスでの個別機能訓練は、身体機能向上や生活機能向上(ADL/IADL/趣味/活動など)に着目して行われるもので、必ずしも医師の指示を必要とする訓練ではありません。
同じ目的を持ったグループや、個別で行う場合など、提供方法にもいろいろあります。
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通所介護事業所の機能訓練指導員の資格、加算の現状
- 通所介護の機能訓練指導員の資格は「看護職員」が65.6%であった。「理学療法士」が 11.5%、「作業療法士」が6.1%、「柔道整復師」が10.7%であった。
- 業務形態は、「機能訓練指導員の職務に専従」が34.2%であった。
- 個別機能訓練加算ⅠとⅡの両方届出ありは11.5%、大規模では25.0%であった。
- 個別機能訓練加算ⅠとⅡの両方を届け出ている場合、理学療法士と作業療法士の両方 を配置している事業所が13.6%、理学療法士のみが30.3%であった。
通所介護の機能訓練指導員と加算算定割合
通所介護(デイサービス)で機能訓練加算を算定する事業所は全事業所の約半数程度にまで増えてきています。
私としては、通所介護では作業療法士の活躍できる機会が多いと思っていますが、機能訓練指導員の雇用を行う事業主や管理者は作業療法士の専門領域や成果についての理解不足があるように感じています。介護保険における機能訓練はただ身体機能向上をするだけでなく「生活機能向上」だと言われていますが、理学療法士がメインだと身体機能回復に着眼点が偏ってしまう傾向があります。
通所介護施設の場合には、理学療法士と作業療法士の双方を配置できている施設はごくわずかであり、配置されている機能訓練指導員の能力や考え方のみが実際のサービスに反映される形になってしまいます。
自立した日常生活を営むことができるよう生活機能について、リハビリテーションの専門家の立場から様々な知見を得ながら進めていけるのは通所リハビリテーション(デイケア)であると思います。
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機能訓練とケアプランの目標との連動、ADL評価、課題領域
- ケアプランの目標は、通所リハでは「心身機能の向上」が51.6%、通所介護では32.7% であった。また、通所介護では「社会参加支援」が26.0%、通所リハでは18.7%であった。 なお「介護負担軽減」は通所リハで22.1%、通所介護で18.1%であった。(図表23)
- 利用者のアセスメントにおいて、ADL評価指標を活用している比率は、通所リハの利用者では76.7%、通所介護の利用者では27.3%であった。(図表24)
- ADLの将来見通しについて無回答だった割合は、通所介護で9.0%であった。(図表25)
- 最も優先順位が高い課題は、通所リハでは「基本的動作」が58.6%であった。 (図表26)
ADLの予後予測と生活機能訓練
図表25 ADLの将来見通しについて無回答だった割合は理学療法士・作業療法士は3%でしたが、看護職員・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師では10%越えでした。
この点、ケアマネジャーとしては、在宅生活が継続できるかの瀬戸際、もしくは在宅生活におけるADL(生活機能)の維持向上を行うための知見を得たい場合には、理学療法士(PT)作業療法士(OT)がいる施設を利用することが望ましいという結果ではないかと思います。その他職種では、その場限りのトレーニングや健康体操的なものはできても、ADLや生活機能評価に基づく根拠あるプログラム遂行と将来予測は難しいのではないかと思います。
理学療法士と作業療法士の違いについては、「理学療法士(PT)と作業療法士(OT)の資格の定義の違いと実際の仕事」で詳しく紹介しています。
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機能訓練実施計画の作成者別 最も優先順位が高い課題、実施訓練プログラム
- 個別機能訓練加算Ⅰの場合、計画作成者が理学療法士では、最も優先順位が高い課題は「基本的動作」が54.9%で、実施している訓練は「機能回復訓練」が93.9%であった。 (図表27,28)
- 個別機能訓練加算Ⅱの場合、計画作成者が作業療法士では、最も優先順位が高い課題は「基本的動作」が54.5%で、実施している訓練は「機能回復訓練」が88.6%、「応用的 動作訓練」が22.7%、「社会適応練習」が18.2%であった。(図表29,30)
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機能訓練についておたきやまの考察
機能訓練実施計画書を作成するとき、基本的にはご本人や家族のニーズや居宅での生活状況などの情報と、ケアマネジャーが作成しているケアプランの方針に沿って目標やプログラムを立案していきます。ケアマネジャーの知見において、「筋力低下を防ぐ」「廃用予防」などを機能訓練に求めているような位置づけになると、生活機能へのアプローチがしにくくなります。
この点は機能訓練指導員にも問題があり、ケアマネジャーに専門職として予後予測や将来的な介入成果を含めて評価・モニタリングをして、しっかりと対等に伝えてプラン内容について意見を反映すべきと思います。
このリハビリテーションと機能訓練の機能分化とその在り方に関する調査研究の結果でも、機能訓練指導員の配置が行えている事業所は約半数になってきていますが、事業者が機能訓練をどう捉えているかには理解度の差があるように認識しています。事業所によっては、トレーニングマシンをたくさん用意して、そのマシンの係のように機能訓練指導員を位置付けてしまっているという話も聞きます。マッサージをする係として位置付けている事業所もあります。
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デイサービスの機能訓練の役割
デイサービスの機能訓練の役割は利用者の社会的孤立感の解消及び心身の機能の維持並びに利用者家族の身体的及び精神的負担の軽減を図るものでなければならないとなっています。この意味を理解することは非常に難しく、理解しても実際にどのようにデイサービス運営に反映したらよいかは難しい部分です。特に、近年の規制緩和で参入したばかりのデイサービスなどでは、介護保険事業であるデイサービスでも「営業活動」を行って、「わかりやすいセールスポイント」を作らないと「お客さん」が来ないと考えています。
もちろん差別化は必要ですが、地域の介護を支えるためには、うちの売りはマシントレーニングだ!脳トレだ!というパッケージ型のものでなく、幅広い利用者のニーズとともに柔軟に内容を変えていける個別性をできるだけ重視した方が貢献度が高いです。介護保険施設の第一のお客さんは「国と自治体」です。そのガイドラインに従い、利用者の健康寿命を延ばし、介護負担を軽減するという国家的ニーズのために、あらゆる生活機能に着目して、あらゆる手段で個別介入をしていくことが理想的です
木を見て森を見る、利用者と家庭を見て地域を見る
機能訓練加算の要件に、利用者の居宅訪問とチェックシートなどによる記録が課せられています。これは、通所したときに行う機能訓練内容と、実際の在宅生活でのADLや家庭でのニーズが合致するようにという意味で盛り込まれました。
在宅でのADLチェック、家屋評価などを行う雰囲気は少しずつできてきました。家と利用者を見るだけでなく、介護負担軽減の視点から、家庭のニーズを把握するとよりよい機能訓練になり、通所介護施設としての存在意義も増します。
機能訓練指導員を雇用して、機能訓練を行っていく事業者は、お客さんをとることに必死にならず、地域で存在意義のある施設になれるように人・お金・時間を使い、運営方針を自分たち都合から地域の利用者の都合にシフトしていけるようにお願いしたい所存です。
参考資料:リハビリテーションと機能訓練の機能分化とその在り方に関する調査研究事業
社保審-介護給付費分科会 第128回(H28.3.30)
調査の目的
介護保険施設や通所リハビリテーション、通所介護で提供されるリハビリテーションや機能訓練について、その機能と役割を明確化されることが求められている。本調査では、リハビリテーションと機能訓練において、利用者の特性 や事業者の特性、サービス提供の目標や提供内容等及びその効果等サービスの実態を把握する。
調査方法
通所リハビリテーション事業所(以下、通所リハ)・通所介護事業所(以下、通所介護)等(3頁参照)のうち、無作為 に抽出した事業所に対し、質問紙を用いた郵送調査を行った。利用者を対象とした調査も実施、調査対象の利用者は、各事業所において、事業所種類ごとに一定の抽出率で無作為に抽出した。利用者調査は、利用者本人が記入する調査票と施設・事業所の担当職員が記入する調査票の2部構成とし、個別の番号で突合してデータセットとした。
調査結果概要
通所リハで、リハビリテーションマネンジメント加算Ⅱを届け出ている事業所は37.7%で、大規模事業所型Ⅱでは65.5%であった。また、同加算Ⅱを届け出ている場合、理学療法士と作業療法士の両方を配置している割合が68.2%であった。
○ 通所介護で、機能訓練指導員が有する資格は「看護職員」が65.6%、「理学療法士」が11.5%、「作業療法士」が 6.1%、「柔道整復師」が10.7%であった。
○ 通所介護で、個別機能訓練加算ⅠとⅡの両方を届け出ている事業所は11.5%、大規模事業所では、25.0%であっ た。両方を届け出ている事業所では、理学療法士と作業療法士の両方を配置している割合が13.6%であった。
○ 利用者の主たる傷病は、通所リハは「脳卒中」が43.4%、通所介護は「認知症」が22.4%であった。通所リハの利用 期間は「12か月以上」が69.7%、通所介護は69.8%であった。
○ ケアプランの目標は、通所リハの利用者では「心身機能の向上」が51.6%、通所介護では32.7%であった。また、通 所介護では「社会参加支援」が26.0%、通所リハでは18.7%であった。 なお「介護負担軽減」は通所リハで22.1%、通 所介護で18.1%であった
○ ADLのアセスメントで評価指標を用いている割合は、通所リハの利用者では76.7%、通所介護では27.3%であった。
○ 通所リハでは、90.4%が指示医と連携しているが、通所介護では、医師と連携しているのは17.2%であった。
○ 通所リハではサービス利用開始時に比べて障害高齢者の日常生活自立度が「向上」した利用者は26.6%、通所介 護では12.4%であった。
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