住所地特例とは 対象施設の種類と介護保険サービス利用の具体例
 

住所地特例について、区市町村をまたいだ老人ホームなどへの入所・入居(住民票の移動)の具体例を挙げてデイサービスや地域密着型サービス等の利用や、保険者・国保連請求処理はどうなるかなど分かりやすく解説します。

住所地特例とは

住所地特例とは、今までの住まいと違う市町村にある対象施設(特養、老健、有料老人ホームなど)に入所・入居して介護保険サービスを利用する場合に、住民票の場所を変更してもその前に住んでいた市町村が保険者を続ける制度です。

要介護認定の申請は住民票のある市区町村に行いますが、住所地特例の対象施設に引っ越しした場合には、申請時点で保険者になっていた市区町村が保険者のままになります。

住所地特例の対象施設

介護保険では、住民票に記載されている住所地の区市町村が被保険者となることが原則で「住所地主義」と言います。しかし、それでは介護保険施設がたくさんある区市町村の介護費用負担が重くなってしまい、区市町村間に財政上の不均衡を生じてしまいます。そのため、住所地特例対象施設に入所・引っ越しして住民票を移した場合は、移転前の区市町村を保険者とする住所地特例が設けられています。移転前の住所地の区市町村の被保険者とされた人のことを「住所地特例適用被保険者」と言います。

住所地特例対象施設

介護保険施設(特養、老健など)

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、介護療養型医療施設が住所地特例の対象施設です。

特定施設・介護付き有料老人ホーム

介護付き有料老人ホーム、養護老人ホーム(行政による措置施設で市町村主体の老人福祉法施設)、軽費老人ホームが住所地特例の対象施設です。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)-2015年から

2014年の介護保険法改正で、有料老人ホームに該当するサービス付き高齢者向け住宅は住所地特例の対象施設に加わりました。

住所地特例対象者の総合事業・地域密着型サービスの利用

特定施設や老人福祉施設は住所地特例対象施設ですが、入居定員30人未満の有料老人ホーム・軽費老人ホーム・特別養護老人ホーム(地域密着型介護老人福祉施設、地域密着型特定施設)は住所地特例対象施設ではありません
2015年(平成27年)4月からは住所地特例施設に住民票があっても、地域密着型サービス(認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、夜間対応型訪問介護など)と、介護予防・日常生活支援総合事業と地域支援事業(要支援者など)を利用する場合は、現住所の市町村の指定を受けたサービスを利用できるようになりました。
例えば、保険者と違う市町村にあるサービス付き高齢者向け住宅に入居して、住民票をその施設に移した場合、住民票がある市町村のデイサービスや訪問介護などの利用も介護予防ケアマネジメントで位置づけたうえで可能です。念のため、保険者である市町村に状況を伝えたうえでサービスの利用が可能か確認することをお勧めします。尚、サービス利用費の請求は介護保険被保険者証に記載されている保険者を確認の上、通常と変わらずに国保連に請求を行い、国保連側で保険者の区市町村に割り振り処理される形になっています。

生活保護の対象者が居住地外の介護施設などに入所する場合も住所地特例の対象

生活保護制度では、居住地を所管する自治体が保護の実施責任を負うことを原則としています。一方、生活保護対象者が介護施設に入所する場合には、居住する市区町村ではない所在地の施設となることもあり住民票を移動させることもあります。生活保護の生活保護の対象者だとしても、施設が所在している自治体に財政負担が集中しないように、施設に入所前の居住地を所管する実施機関が保護の実施責任を負うという居住地特例が適応されます。

住所地特例制度の具体例

住所地特例制度をわかりやすくイメージしやすいように、2つ具体例を紹介します。

東京都足立区 から 埼玉県さいたま市 の有料老人ホームに入所して住所変更した場合の具体例

住所地特例の例 住民票を2回変更した場合

有料老人ホームは住所地特例対象施設なので、足立区からさいたま市に住民票を移しても介護保険の保険者は足立区のままです。
その後、さいたま市から川口市の特別養護老人ホームに入所して再び住民票を変更した場合も、特養は住所地特例対象施設なので足立区が保険者のままです。

所地特例施設を移転・転居で保険者はどこになるか

自宅から別の市町村の住所地特例施設に入所した例

自宅で生活していた要介護認定の方が、在宅生活困難となり違う市町村の住所地特例施設に入所した場合、保険者は入所前に住民票があった市町村になります。

別の市町村の住所地特例施設を2回以上移った例

例えば、特別養護老人ホームの空きがなく、つなぎで住所地特例の有料老人ホームに入所して住民票をそちらに移したとします。
そして、別の市町村の住所地特例対象の老人ホームに入居できることになり、また住所をそちらに移したとします。
この場合も介護保険の保険者となるのは住所地特例対象施設に入所する前の住所の市町村です。
住所地特例対象施設をいくつ転居してもその前の住所が保険者になります。ただし、その間で住所地特例施設でない親戚の家などに住民票を置いた場合はその住所地の地町村が保険者となります。

国民健康保険(国保)・後期高齢者医療制度にも住所地特例が適用

国民健康保険(国保)の被保険者が転出をして住所地特例対象施設に直接入所する場合は、引き続き転出前の区市町村の国保に加入することになります。
国保は住民登録されている市町村で加入いただくことが原則ですが、住所地特例に該当する施設に入居・入院する場合は、転出先の市区町村で新たに国保に加入する必要はありません。

「後期高齢者医療制度」とは

都道府県ごとに後期高齢者医療広域連合が保険者となり、75歳以上の方と65歳以上で障害認定を受けた方を被保険者とする医療保険制度です。

国民健康保険(国保)の住所地特例対象施設

  • 病院または診療所
  • 児童福祉法に規定する児童福祉施設
  • 障害者総合支援法に規定する障害者支援施設
  • 独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園の設置する施設
  • 老人福祉法に規定する養護老人ホームまたは特別養護老人ホーム
  • 介護保険法に規定する特定施設または介護保険施設

住所地特例は、医療費・介護費が増大する中、保険者のリスク分散の仕組み

いかがでしたか?
今回紹介した住所地特例の仕組みは、介護・医療費が増加する中で、地町村間の不均衡を調整するためにあるものです。
老人ホームなどに引っ越しした場合でも、介護保険費を支払っているのは元の住所の地方公共団体となっていることが多くあります。
普段は気にしないですが、市町村、都道府県、国家で不均衡がないようなお金の流れになるよう、いろいろな制度と歴史がありますね。
老人ホームの種類や介護保険サービスの利用などについては以下の記事でも紹介しています。