髭剃り介助の手順とコツ 剃れない原因は当て方ではなく道具に

「男性の髭剃り、どうやったらいいのか分からないんです」
介護の現場で、これは本当によく聞く言葉です。
介護をしているのは女性が多いのに、剃られる側は男性です。自分の髭を剃った経験がある女性は、ほとんどいません。やり方もコツも、教わる機会がないまま現場に立っている人が大半だと思います。
ところが、介護のマニュアルや研修資料を見てみると、シェーバーの選び方をすっ飛ばして、いきなり「電気シェーバーを肌に垂直に当てる」といった話から始まります。
筆者は理学療法士として、また老人ホームやデイサービスの管理者として現場に関わってきましたが、正直に言うと、そもそも前提を変えないと、髭剃り介助はスムーズにできません。
この記事では、現場で経験したからこそ分かる髭剃り介助の手順とコツを、道具の前提から順番に解説します。あわせて、なぜ髭剃りがそこまで大事なのか、その人の髭へのこだわりはどこから来ているのか、そしてご家族が整容をどう見ているのかについても書いていきます。
介助する側に、髭を剃った経験がある人はほとんどいない
まず、ここが出発点です。
元気なうちは、髭剃りは自分でやるものです。だから女性は、お父さんや夫が髭を剃っている姿は見たことがあっても、お父さんのヒゲを剃ってあげたことがある、という人はまずいません。
電気シェーバーについては、こっそりお父さんの髭剃りを借りて、腋毛やすね毛などのムダ毛を剃ったことがある、という話はちらほら聞きます。ただ、それは髭を剃るのとはまったく別の作業です。
髭は、腕やすねの毛とは太さも硬さも生え方も違います。おまけに顔は凹凸だらけで、皮膚は薄く、下は骨です。しかも相手は動くこともあります。
つまり、どんなシェーバーがいいのかも、剃るときのコツも、経験として持ちようがないのです。これは介護職員だけの話ではなく、ご家族もまったく同じです。
「髭剃り介助のやり方が分からない」というのは、勉強不足でも怠慢でもなく、単純に経験がないからです。ここを責める話にしても何も進みません。
髭へのこだわりは、その人が生きてきた環境が作っている
髭剃りの話をしていて面白いなと思うのは、ご本人の髭へのこだわりが、その人の生きてきた環境から作られていることです。
「髭は必ず剃るものだ」と強く思っている男性は多くいます。ただ、その感覚をよくよく聞いてみると、もともと本人が生まれつき持っていた美意識というより、
こういったものが積み重なって、その人の中の「常識」と「剃らないといけない感覚」を作っています。
つまり髭へのこだわりは、その人が何十年も生きてきた環境の記録のようなものです。介護の現場で目の前にある髭は、その人の人生の一部でもあるわけです。
剃るのが当たり前だった人
毎朝きれいに剃ってから出かけるのが当たり前だった人にとっては、髭が伸びている状態は「だらしない自分」です。
本人がそれをうまく言葉にできなくなっていても、なるべくきれいに、ヒゲが伸びていない状態にしてあげたいというのは、介護する側の気持ちとしても自然だと思います。
おしゃれで伸ばしている人
一方で、今の高齢者世代には、おしゃれとして髭を伸ばしている人もいます。若い頃から口髭や顎髭を蓄えて、それが自分のスタイルだった人です。
この場合、おしゃれで伸ばしている人はそれはそれで尊重して、整えて介助するべきです。全部剃り落としてしまったら、その人らしさを消してしまうことになります。
「髭は剃るもの」も「髭は伸ばすもの」も、どちらもその人の価値観です。介助する側が勝手にどちらかに決めてしまわないことが、まず大事だと思います。
これはご本人に聞ければ一番ですが、答えられない場合はご家族に聞くしかありません。入所時の聞き取りに一項目入れておくだけで、あとの認識のズレがかなり減ります。
家族にとって、整容は「ちゃんと介護してもらえているか」の指標になっている
老人ホームやデイサービスの管理者をしていて実感したのは、ご家族から指摘を受けることが多いのは、髭剃り・爪・服の汚れだということです。
医療的なことやリハビリの中身、記録の質、職員の配置といったものは、ご家族からは見えにくいですし、良し悪しも判断しづらいと思います。
でも、面会に来て顔を見た瞬間に分かるものがあります。
- 髭剃りをしてもらっているかどうか
- 爪を切ってもらっているかどうか
- 汚れた服を着ていないかどうか
この整容面が、家族から見ると、しっかりと介護してもらえているかどうかの重大指標になっている。そういう印象を強く持っています。
これは理屈ではなく、感覚の話です。「今までもヒゲをきれいに剃っていたから剃ってあげてほしい」という気持ちもあれば、ひげが伸びている人はなんとなくいやという女性のご家族もいます。
その感覚は否定できるものではありませんし、否定しても仕方がありません。むしろ、整容が家族の評価軸になっているという構造を、施設側が理解しておくことのほうが実務的です。
毎日の申し送りやカンファレンスで髭剃りの話が出ることは少ないと思いますが、家族対応という観点で見ると、実はかなり効率のいい部分です。
前提を変えないと、髭剃り介助はスムーズにできない
ここからが本題です。
髭剃り介助がうまくいかない一番の原因は、当て方や角度ではなく、そもそも使っているシェーバーで、その髭が剃れないことです。
5ミリくらいまで伸びると、どんなに高級なシェーバーでもヘッドでは髭を剃れない

これは別の記事でも紹介していますが、大事なことなので繰り返します。
どんなに高級な電気シェーバーを買っても、5ミリくらいまでヒゲが伸びると、普通のヘッドでは剃れません。
特に、少しパーマがかかったみたいになっている首の部分や、首から顎にかけて伸びたひげは、超高級なシェーバーでもヘッド部分では剃れません。
理由ははっきりしています。シェーバーのヘッド部分は、短い状態のヒゲを想定して深剃りすることを考えている設計だからです。網刃の穴に髭が入って、内刃で切る構造なので、長く伸びて寝てしまった髭は、そもそも穴に入りません。
「密着」「剃り残しなし」「3Dヘッド」といったキャッチコピーは、あくまで毎日剃っている人の短い髭が前提です。
介護が必要な状態だと、伸びた髭が残るのは避けられない
介護が必要な状態だと、毎日完璧にひげ剃りをし切ることは難しいこともあります。体調が悪い日、入浴やリハビリで時間が取れない日、拒否が強い日、人手が足りない日。そうやって数日空くと、髭は数ミリ伸びます。
つまり、伸びたひげが残っている状態は、介護現場では例外ではなく前提です。
その髭をハサミなどで切るのは危険なので、介護職員はヘッド部分で頑張って剃ろうと挑戦します。でも、長いひげを剃るような機械ではないので、剃れないんです。
何度も往復させると、時間はかかるし、肌は赤くなるし、ご本人も職員も疲れます。それでいて仕上がりは中途半端です。
キワゾリ刃(トリマー)があれば、二段階で剃れる
ここで効いてくるのがキワゾリ刃(トリマー)です。

キワゾリ刃は、バリカンやまつ毛トリマーのような構造になっている刃で、多くのシェーバーでは本体の側面や背面からスライドで出てきます。もともとはもみあげや髭の輪郭を整えるための機能です。
これがあると、長いひげをまず短くすることができて、短くした後だったら電気シェーバーのヘッド部分の刃でスムーズに剃れます。
この二段階を知っているかどうかだけで、髭剃り介助の負担はまったく変わります。逆に言うと、キワゾリ刃が付いていないシェーバーしか手元にない場合、伸びた髭に対する打つ手がほとんどありません。
ですから、介助のコツを覚える前に、まずキワゾリ刃(トリマー)が付いている機器を用意してもらうことが先です。ここが前提を変えるという意味です。
シェーバーの選び方そのものについては、別の記事で詳しく書いています。ご家族に説明するときは、こちらを見てもらうと早いです。
介護施設・老人ホーム入所の電動シェーバーの選び方、髭剃りできないのはシェーバーが原因かも
キワゾリ刃が付いていて、介護現場で使いやすい電気シェーバー

前提の話をしたところで、実際にどれを選べばいいのかを挟んでおきます。
いろいろなメーカーの髭剃りを、高いものから安いものまで介護の中で実際に使ってきた立場から言うと、ヘッド部分の剃り味そのものは、高くても安くてもそれほど差を感じません。技術が成熟しているので、ある程度の価格帯ならどれもきちんと剃れます。
差が出るのは、キワゾリ刃が付いているかどうか、水洗いできるかどうか、介助する側が握りやすいかどうかです。ここを満たしていれば、最上位モデルである必要はありません。
各ショップで購入する時には、ちゃんとキワゾリ刃(トリマー)が付いているか確認してください。
似たようなモデルで機能が違っていることが多いので気をつけて購入しましょう。
販売価格1万円くらいで、介護場面に必要な機能がそろいます。長い髭やもみあげも剃れる「シャープトリマー」付き。丸みを帯びた刃面が肌に均一に密着するので、たるんだ皮膚にも当てやすいです。水洗いできて、ACアダプター充電。
施設で毎日使うことを考えると、この価格帯で日本製というのは説明しやすいところでもあります。
1万円以下で、ポップアップトリマー(キワゾリ刃)付き。本体丸洗いができるので、髭くずの片付けが楽です。回転式なので、たるんだ皮膚や凹凸のある顔にも追従しやすい特徴があります。USB充電なので、スマホの充電器と併用できるのも施設では地味に助かります。
もし今まで使っていた髭剃りにキワゾリ刃が付いていれば、それをそのまま使ってもらって大丈夫です。買い替えありきの話ではありません。まずは手元のシェーバーの側面や背面を確認してみてください。
髭剃り介助の手順
ここからが実際の手順です。道具がそろっている前提で書きます。
① 姿勢と明るさを整える
意外に軽視されがちですが、ここで仕上がりの半分が決まります。
暗い居室でベッドの足元から手を伸ばして剃る、というのが一番剃り残しが出るパターンです。
② 今日はどこまでやるかを決める
顔全体を見て、髭の伸び具合と本人の状態を確認します。
体調が悪い日や拒否が強い日に、無理に完璧を目指す必要はありません。今日は首だけ、明日は顎周り、という分け方でもいいと思います。中途半端に全体をこすって肌を荒らすより、一区画をきれいに終わらせるほうが結果的にきれいです。
また、口髭や顎髭を残す人の場合は、どこまで残すのかを剃り始める前に確認します。剃ってしまってからでは戻せません。
③ 伸びた髭は、先にキワゾリ刃で短くする
数日空いて伸びている場合は、いきなりヘッドを当てないでください。まずキワゾリ刃です。
ここでの目的は「きれいに剃ること」ではなくヘッドで剃れる長さまで落とすことです。仕上げはヘッドの仕事なので、ここで頑張りすぎないほうが早く終わります。
④ ヘッドで剃る 皮膚を張るのがすべて
高齢者の顔は、皮膚がたるんでいます。たるんだままヘッドを当てても、髭は網刃の穴に立ち上がってきません。
ここが、若い人が自分で剃るのと決定的に違うところです。自分で剃るときは無意識に口をすぼめたり顎を上げたりして皮膚を張っていますが、介助される側はそれをしてくれません。
「垂直に当てる」というマニュアルの記述は間違いではありません。ただ、垂直に当てるより先に、皮膚を張ることのほうがはるかに重要です。ここを教えないまま角度の話だけしても、現場では再現できません。
肌に押しつけると、薄くなった高齢者の皮膚は簡単に傷つきます。
スキンテア(皮膚裂傷)のリスクがあるので、圧をかけずに回数で剃るのが基本です。
皮膚が薄い方の場合、シェーバーでも表皮が剥けることがあります。スキンテアの見分け方と発見時の対応は、こちらにまとめています。
スキンテアとは?発見時の処置手順・STAR分類・褥瘡との違い・予防策【記録例文つき】
⑤ 仕上げは、本人に鏡で見てもらう
剃り終わったら、必ず手で触って確認します。目で見るだけでは剃り残しは分かりません。顎の下と首は、手のひらで下から上へなでると残りが分かります。
そして可能なら、鏡を渡して本人に見てもらってください。
これは仕上がりの確認という意味もありますが、それ以上に、髭剃りを「されるもの」から「自分のこと」に戻す意味があります。「ここがまだ残ってる」と言ってもらえたら、それは十分に主体的な参加です。
剃った後は、乾燥しやすいので保湿をします。普段使っていた化粧水やアフターシェーブローションがあれば、それを使うのが一番喜ばれます。
⑥ 後片付けと衛生管理
シェーバーも消耗品です。剃れないのは職員のせいではなく、刃が寿命というケースもかなりあります。買い替えのタイミングも施設として決めておくといいと思います。
剃り残しが出やすい場所と、その対処
剃り残しが出る場所はほぼ決まっています。ここだけ押さえておけば、仕上がりはかなり変わります。
| 場所 | 剃りにくい理由 | 対処 |
|---|---|---|
| 首(喉ぼとけの周り) | 皮膚がたるみ、髭が寝ている。生えている向きもばらばら | 顎を上げてもらい、片手で皮膚を上に引き上げて張る。伸びていればキワゾリ刃から。上下だけでなく横方向にも当てる |
| 顎の下(エラから顎先) | 骨と皮膚の段差でヘッドが浮く | 顔を横に向けてもらい、下から上へ。空いた手で皮膚を横に引いて段差をなくす |
| 鼻の下 | 凹凸があってヘッドが入らない | 「んー」と口をすぼめてもらう。上唇を軽く下に伸ばして平らにする |
| 口角・唇のきわ | 皮膚が薄く、動くので痛がりやすい | 皮膚を横に引いて平らにし、短時間で。押しつけない |
| 顎先 | 曲がった髭が残りやすい | 上下左右、逆方向からも当てる。ここは最後に時間をかける |
| もみあげ・頬骨の上 | 骨が出ていて痛がる。輪郭がぼやける | 圧を弱くする。輪郭はキワゾリ刃で整えると早い |
| 耳たぶの下 | 見落としやすい | 明るいところで、耳を軽く持ち上げて確認する |
特に首は、剃り残しが出るのはほぼここと言っていいくらいです。ご家族が「ちゃんと剃ってもらえていない」と感じるのも、たいてい首です。時間がないときこそ、首を優先してください。
やってはいけないこと
伸びた髭に困ったときに、現場でつい手が出そうになるものを挙げておきます。
ハサミで顎や首の髭を切る
危険なので、やめてください。少しでも顔を動かされたら大けがになります。伸びた髭を短くするのはキワゾリ刃の役割です。
施設の共用バリカンや眉毛シェーバーを使い回す
どうにもならないときにやりたくなりますが、肌に直接当たる刃を複数の入居者で使い回すのは、感染管理の面から避けるべきです。
「ちゃんと髭を剃ってください」とおっしゃるご家族でも、「伸びて剃れないので共用の髭剃りを使い回しますね」と言われたら、いい気持ちはしないはずです。
T字カミソリで剃る
制度上、介護職員が髭剃り介助を行うこと自体は認められています。ただし、T字カミソリは出血と感染のリスクが大きく、各自治体の通知でも「できるだけ避けるように」とされています。
特に、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)を飲んでいる方は、わずかな傷でも血が止まりにくくなります。
このあたりの経緯と各自治体の見解は、こちらに詳しくまとめています。
なお、皮膚に異常のない方に電気シェーバーで行う髭剃りは、原則として介護職員が行ってよい行為とされています。医行為との線引きについては、こちらもあわせてご覧ください。
嫌がられたとき、拒否されたとき
顔は、体の中でもっとも他人に触られたくない場所のひとつです。認知症のある方であればなおさら、いきなり顔に機械を当てられれば身構えます。
拒否があるときは、髭剃りそのものが嫌なのではなく、何をされるのか分からないことが怖い場合が多いです。
無理に押さえて剃るのは、たとえ善意でも身体拘束や不適切ケアの側に近づきます。今日剃れなくても、明日剃れればいいという前提を、チームで共有しておくことが大事です。
声のかけ方については、こちらも参考になると思います。
自分で剃れる人には、剃ってもらう
ここまで介助の話をしてきましたが、大前提として、本人が剃れるなら本人に剃ってもらうのが一番です。
髭剃りは、Barthel IndexやFIMでいう「整容」の項目に含まれます。毎日行う動作で、上肢の運動にもなり、鏡を見るので身だしなみへの意識も保たれます。介助してしまえば3分で終わりますが、それはできるADLを、していないADLに変えてしまう行為でもあります。
とはいえ、時間がない中で「見守りで待つ」というのは、口で言うほど簡単ではありません。待つことにも人手というコストがかかります。このあたりの構造については、別の記事で具体的に計算してみています。
できるADLとしているADLの差を、介護現場のコストで計算してみた記事はこちら
現実的な落としどころとしては、
このあたりが現場では回りやすいと思います。全介助か全自立かの二択にしないことです。
施設・事業所として決めておきたいこと
管理者の立場から見ると、髭剃りは個人の技術の問題ではなく、仕組みの問題です。ここを整理しておくと、家族からの指摘はかなり減ります。
| 決めること | 具体的な内容 |
|---|---|
| 入所時の説明 | キワゾリ刃(トリマー)付きの電気シェーバーを用意してもらう。旅行用の簡易タイプは避けてもらう。消耗品なので買い替えが必要なことも伝えておく |
| 本人の希望の記録 | 剃るのか、整えるのか。残す部位はどこか。センター方式やアセスメントシートの整容欄に必ず書く |
| 頻度の目安 | 何日に1回行うかを決める。毎日が難しいなら「最低でも2日に1回」など現実的な線を引く |
| 担当と時間帯 | 入浴日の前後、朝の整容の時間など、業務の流れの中に固定する。「気づいた人がやる」にすると誰もやりません |
| 道具の管理 | 本人のシェーバーであることの表示、髭くずの処理、替刃の交換時期の管理 |
| 家族への共有 | 剃った日を記録に残す。面会時に「昨日剃りました」と一言添えるだけで印象が変わります |
特に効果が大きいのは、業務の流れの中に固定してしまうことです。髭剃りは「余裕があればやること」に分類されがちですが、そこに置いた瞬間に、余裕がない日が続けばやらないことになります。
入浴介助の前後に組み込む、朝の整容の時間に組み込むなど、他の業務に紐づけてしまうのが確実です。
また、髭剃り以外の整容や理美容が必要な場合は、訪問理美容のサービスもあります。デイサービスなどでの理美容の取り扱いはこちらをご覧ください。
髭剃り介助のよくある質問
毎日が理想ですが、介護が必要な状態で毎日完璧に剃り切るのは現実的でないこともあります。大事なのは頻度を決めておくことです。「2日に1回」と決めておけば、伸びる長さの上限が決まるので、キワゾリ刃で対応できる範囲に収まります。何も決めずにいると、気づいたら1週間空いていた、ということが起きます。
カミソリで剃る場合は、温めて髭を柔らかくすると剃りやすくなります。ただし乾式(ドライ)の電気シェーバーの場合は、肌や髭が濡れていると滑ってしまい、かえって剃りにくくなることがあります。防水でウェット剃りに対応しているモデルなら問題ありません。お使いのシェーバーがどちらのタイプかを確認してください。乾式なら、蒸しタオルは剃った後の拭き取りに使うほうが向いています。
電気シェーバーは刃が直接肌に触れない構造なので、T字カミソリに比べれば出血のリスクはかなり低くなります。ただし、押しつけて何度もこすれば皮膚は傷つきます。圧をかけずに、回数で剃るのが基本です。出血した場合は圧迫して止血し、止まりにくいときは看護職員に報告してください。
ほとんどの場合、押しつけすぎか、同じ場所を往復しすぎです。剃れないからと力を入れると、髭ではなく皮膚を削ることになります。剃れないときは力ではなくキワゾリ刃に戻ってください。剃った後の保湿も忘れずに。それでも赤みが続く場合は、刃の寿命の可能性もあります。
ご本人の希望が明確なら、それが優先されます。おしゃれとして伸ばしてきた方であれば、剃るのではなく整える介助に切り替えます。キワゾリ刃で長さをそろえ、輪郭をはっきりさせるだけでも印象は変わります。ただし、ご家族の希望と食い違うことがあるので、その場合は本人の希望であることを説明し、記録に残しておいてください。
まず、持ち込まれているシェーバーにキワゾリ刃が付いているかを確認してください。付いていない場合、伸びた髭には打つ手がないので、職員が怠けているわけではないことを説明できます。そのうえで、キワゾリ刃付きのものへの買い替えをお願いするのが建設的です。頭ごなしに「やっています」と返すより、道具の話に持っていくほうが話が進みます。
まとめ
髭剃り介助がうまくいかない理由は、技術の前に道具にあります。
5ミリ伸びた髭は、どんなに高級なシェーバーでもヘッドでは剃れません。まずキワゾリ刃(トリマー)で短くしてから、ヘッドで仕上げる。この二段階が前提です。
そして剃るときは、角度より先に皮膚を張ること。剃り残しはほぼ首に出ます。
髭へのこだわりは、その人が生きてきた環境が作ったものです。剃るのが当たり前だった人もいれば、おしゃれで伸ばしてきた人もいます。どちらもその人の一部なので、介助する側が勝手に決めない。
ご家族にとっては、髭剃り・爪・服の汚れといった整容が、しっかり介護してもらえているかどうかの重大指標になっています。これは感覚の話なので、正しいか正しくないかを議論しても仕方がありません。むしろ、そういう見られ方をしているという前提で仕組みを作るほうが早いです。
髭剃りは、道具と手順を変えるだけで結果が変わる、数少ない業務のひとつだと思います。
現場で「剃れない」と困っている方、家族から指摘を受けて悩んでいる管理者の方、そしてお父さんの髭をどうしたらいいか分からないご家族に、少しでも届けばと思います。
キワゾリ刃が付いていて、介護現場で使いやすい電気シェーバー

いろいろなメーカーの髭剃りを、高いものから安いものまで介護の中で実際に使ってきた立場から言うと、ヘッド部分の剃り味そのものは、高くても安くてもそれほど差を感じません。技術が成熟しているので、ある程度の価格帯ならどれもきちんと剃れます。
差が出るのは、キワゾリ刃が付いているかどうか、水洗いできるかどうか、介助する側が握りやすいかどうかです。ここを満たしていれば、最上位モデルである必要はありません。
各ショップで購入する時には、ちゃんとキワゾリ刃(トリマー)が付いているか確認してください。
似たようなモデルで機能が違っていることが多いので気をつけて購入しましょう。
販売価格1万円くらいで、介護場面に必要な機能がそろいます。長い髭やもみあげも剃れる「シャープトリマー」付き。丸みを帯びた刃面が肌に均一に密着するので、たるんだ皮膚にも当てやすいです。水洗いできて、ACアダプター充電。
施設で毎日使うことを考えると、この価格帯で日本製というのは説明しやすいところでもあります。
1万円以下で、ポップアップトリマー(キワゾリ刃)付き。本体丸洗いができるので、髭くずの片付けが楽です。回転式なので、たるんだ皮膚や凹凸のある顔にも追従しやすい特徴があります。USB充電なので、スマホの充電器と併用できるのも施設では地味に助かります。
もし今まで使っていた髭剃りにキワゾリ刃が付いていれば、それをそのまま使ってもらって大丈夫です。買い替えありきの話ではありません。まずは手元のシェーバーの側面や背面を確認してみてください。









