介護施設・老人ホーム入所の電動シェーバーの選び方、髭剃りできないのはシェーバーが原因かも

「うちのお父さん、施設で髭剃りもしてもらえてないみたい」
介護施設や老人ホームに入居している家族について、こうした不満を訴えるご家族はそこそこいらっしゃいます。きちんと整容(身だしなみを整えること)をしてほしいという気持ちは、とてもよくわかります。
しかし、現場で介護をしてきた立場から正直にお伝えすると、「髭剃りができない」原因の多くは、介護職員の怠慢ではなく、持ち込まれているシェーバーそのものにあることが少なくありません。
この記事では、介護現場での実体験をもとに、要介護者の髭剃り介助に本当に役立つ電動シェーバーの選び方を解説します。
持ち込まれるシェーバーが「旅行用の簡易タイプ」であることが多い
ご家族が施設に持ってきてくださるシェーバーを見ると、旅行のときに鞄に入れて持っていくような、小型で簡易的なシェーバーであることがよくあります。こうした簡易タイプは、毎日きちんと自分で髭を剃っている人が、出張先などでサッと使う分には十分なのですが、要介護者の髭剃り介助には正直まったく向いていません。
なぜ向いていないのか。それを理解するには、介護施設での髭剃りが「毎日同じようにできるわけではない」という現実を知る必要があります。
介護施設では「数日剃れずに伸びてしまう日」が必ず出てくる
介護施設や老人ホームでは、人員体制や入居者の体調、入浴やリハビリのスケジュールなど、さまざまな事情があり、どうしても2〜3日髭剃りができずに間が空いてしまう日が出てきます。そうすると、髭は数ミリの長さに伸びてしまいます。
ここが重要なポイントです。数ミリ伸びてしまった髭は、普通のシェーバーのヘッド(網刃)では非常に剃りにくいのです。網刃は、短い髭を浮かせて剃るための構造になっているため、伸びた髭は網の中にうまく入らず、何度往復させてもなかなか剃れません。一生懸命時間をかけて剃ろうとしても、介護職員もご本人も疲れてしまい、肌への負担も大きくなります。
特に高齢者の髭は、若い人のようにまっすぐではなく、へなへなと柔らかく曲がっていたり、カールしていたりすることが多く、こうした髭は網刃のヘッドでは本当に剃りにくいのです。どれだけ高性能なシェーバーであっても、伸びた髭・曲がった髭をヘッドだけで剃るのは至難の業です。
伸びた髭を剃るには「キワゾリ刃(トリマー)」が必須
では、伸びてしまった髭をどう剃るのか。答えは、キワゾリ刃(トリマー)です。
キワゾリ刃とは、シェーバーの本体に付いている、バリカンのような小さな刃のことです。多くの電動シェーバーでは、本体の側面や背面にスライド式で出てくる構造になっています。もともとはもみあげや髭の輪郭を整えるための機能ですが、介護の現場では「伸びてしまった長い髭を、まず短く落とす」ために非常に重宝します。
伸びた髭に対しては、まずキワゾリ刃(トリマー)で長めの髭をある程度の長さまで落としてから、ヘッド(網刃)で仕上げる、という二段階の手順を踏みます。これなら、伸びてしまった髭でもスムーズに剃ることができ、ご本人にも介護職員にも負担が少なくて済みます。
ところが、ご家族が持ち込むシェーバーには、このキワゾリ刃(トリマー)が付いていないものが非常に多いのです。キワゾリ刃が付いていないと、伸びてしまった髭に対する打つ手がほとんどなくなってしまいます。これが、「髭剃りをしてもらえていない」と感じる状況を生む大きな原因のひとつです。
伸びた髭に対して現場でやってはいけないこと
キワゾリ刃が付いていないシェーバーしかない場合、現場では困った事態になります。ここで、やってはいけない・避けるべき対応についても触れておきます。
ハサミで顎や首をチョキチョキ切る
当然ながら、介護職員がハサミを使って顎や首周りの髭を切るのは、危険であり現実的ではありません。少しでも動かれたら大けがにつながります。
共用のバリカンや眉毛シェーバーを使い回す
どうにもならないとき、施設にある共用のバリカンや電動眉毛シェーバーなどを使い回したくなる場面もありますが、これは衛生面で大きな問題があります。肌に直接当たる刃を複数の入居者で使い回すのは、感染リスクの観点から望ましくありません。「ちゃんと髭を剃ってください」とおっしゃるご家族でも、「伸びて剃れないので共用の髭剃りを使い回しますね」と言われたら、いい気持ちはしないはずです。
T字カミソリ(替刃式カミソリ)で剃る
伸びた髭を剃るのに、T字カミソリ(いわゆる替刃式のカミソリ)を使えばよいのでは、と思われるかもしれません。しかし、介護職員がT字カミソリで髭剃り介助を行うことには、出血や感染のリスクという大きな課題があります。特に、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)を服用している高齢者は、わずかな傷でも出血が止まりにくく、皮膚も薄く傷つきやすいため、カミソリ負けや出血のリスクが高くなります。
このT字カミソリによる髭剃り介助のリスクについては、各自治体の見解も含めて以下の記事で詳しくまとめています。介護現場で「カミソリで顎が血だらけになりながら介助していた」という声も実際にあり、安全のためにも電気シェーバーを使うことが基本です。
なお、髭剃り介助そのものが医行為(医療行為)にあたるのかという点については、皮膚に異常のない人に対して安全な方法で行う電気シェーバーでの髭剃りは、原則として介護職員が行ってよい行為とされています。医行為とそうでない行為の線引きについては医行為ではない具体例、介護職員ができることもあわせてご参照ください。
ネットの「高齢者おすすめシェーバー」は実態に合っていないことが多い
「高齢者 電気シェーバー おすすめ」などで検索すると、たくさんの紹介ページが出てきます。しかし、その多くは実際に要介護者の髭剃り介助を体験したことがないまま書かれているように見えるものが多く、結果として「とにかく安いもの」「コスパがいいもの」「軽くてコンパクトなもの」ばかりが推薦されている傾向があります。
自分で毎日髭を剃れる元気な高齢者であれば、それでもよいかもしれません。しかし、本当の意味での要介護者、つまり自分で髭剃りができず介助が必要な人にとっては、選ぶべきポイントがまったく違ってきます。
また、家電量販店や通信販売では、海外メーカーの高級電気シェーバーが強くおすすめされていることがよくあります。毎日自分で剃る人にとっては確かに使い勝手のよい製品だと思いますが、要介護者の介助用として考えると、値段が高い割には正直なところ微妙な場合があります。高価格帯のモデルが、必ずしも介護現場で使いやすいとは限らないのです。
介護現場の実感 ヘッドの剃り味は高くても安くても大差ない
いろいろなメーカーの髭剃りを、高いものから安いものまで、介護の中で実際に使ってきた立場から正直にお伝えすると、最近のシェーバーは、ヘッド部分(網刃)の剃りやすさ自体は、高くても安くてもそれほど大きな差を感じません。技術が成熟して、ある程度の価格帯であれば、どれもそれなりにきちんと剃れます。
だからこそ、要介護者向けに選ぶときに重視すべきは「ヘッドの剃り味の良さ」ではなく、介護の現場で本当に役立つ機能が付いているかどうかなのです。
要介護者の電動シェーバー選び 最低限おさえたい3つのポイント
これまでの内容を踏まえて、自分で髭剃りができない要介護者のために、介助する側として「最低でもこれは選んでおいてほしい」というポイントを3つにまとめます。
①キワゾリ刃(トリマー)が付いていること

これが最も重要です。
前述の通り、施設では数日髭が伸びてしまう日が必ず出てきます。そのときにキワゾリ刃がなければ、もう打つ手がありません。逆に言えば、キワゾリ刃さえ付いていれば、伸びた髭にも対応でき、介助の負担が大きく減ります。
要介護者用のシェーバーを選ぶなら、キワゾリ刃(トリマー)付きは絶対条件と言ってよいと思います。
②洗浄・お手入れが簡単なこと(水洗いできるとなお良い)

複数のスタッフが介助に関わる介護現場では、衛生管理がとても大切です。
剃った後の髭くずをサッと洗い流せる水洗い対応のものや、ヘッドが簡単に外せて掃除しやすいものは重宝されます。お手入れが面倒だと、清潔に保つのが難しくなり、結果的に使われなくなってしまいます。口腔ケアなどと同じく、整容も清潔の保持が基本です(口腔ケアとあわせて日々のケアの一部として考えたいところです)。
③握りやすく、介助する側も使いやすい形状であること
介助で使う場合、剃るのはご本人ではなく介護職員や家族です。手にしっかりフィットして握りやすく、肌に当てる角度を調整しやすいものが扱いやすいです。小さすぎる旅行用タイプは、介助には不向きなことが多いです。
地震ですメーカーで言えば、パナソニックやフィリップスなどで、キワゾリ刃(トリマー)が付いていて、洗浄・掃除が簡単なモデルが現場では使いやすいと感じています。高価格帯の最上位モデルである必要はなく、これらの条件を満たした中価格帯のもので十分実用的です。
髭剃りは「身だしなみ」だけでなく「その人らしさ」を支えるケア
髭をきれいに剃ってさっぱりとした顔になると、ご本人の表情が明るくなることがよくあります。整容は単なる見た目の問題ではなく、その人の尊厳や、これまで大切にしてきた生活習慣を支える大切なケアです。ご家族が面会に来たときに、清潔感のある顔で迎えられることは、ご本人にとってもご家族にとっても、とても意味のあることだと思います。
なお、髭剃りだけでなく整髪やカットが必要な場合は、施設に来てもらう訪問理美容のサービスもあります。デイサービスなどでの理美容の取り扱いについては通所介護(デイサービス)とデイケアの「理美容」の取り扱いもご参照ください。
もし「施設で髭剃りをしてもらえていない」と感じることがあったら、頭ごなしに介護職員を責める前に、一度、持ち込んでいるシェーバーにキワゾリ刃(トリマー)が付いているか、お手入れがしやすいものかを確認してみてください。適切なシェーバーを用意するだけで、髭剃りの状況がぐっと改善することは、現場では本当によくあることです。
要介護者の髭剃りにおすすめの電動シェーバー
ここからは、ポイント(キワゾリ刃付き・お手入れ簡単・握りやすい)を満たした、要介護者の髭剃り介助に実際におすすめできる電動シェーバーを紹介します。
各ショップで購入する時には、ちゃんと機能が付いていることを確認してください。
似たようなモデルで機能が違っていることが多いので気をつけて購入しましょう。
安心のパナソニック製品。本体は日本製。
販売価格1万円くらいで、必要な機能と安心が手に入る!
丸みを帯びた刃面が肌に均一密着して、剃り残しや肌負担を軽減。
長い髭やもみあげも剃れる「シャープトリマー」付き。ACアダプター充電。
1万円以下で、世界シェアNo.1のフィリップス。
ポップアップトリマー(キワゾリ刃)付き。本体丸洗い。
USB充電なので、スマホの充電器とも併用できる。通常の替刃交換は2年に1回程度でメンテナンスしやすい。
各ショップで購入する時には、ちゃんと機能が付いていることを確認してください。
似たようなモデルで機能が違っていることが多いので気をつけて購入しましょう。
ちなみに、ブラウンのシェーバーは男性には人気が高いですが、実際に介護施設の中で色々なメーカーのものを使ってみると、値段が高い割にはそこまで剃れないと分かりました。また、とても高級なモデルを購入して持ってきてくれている場合でも、キワゾリ刃がないモデルだと、伸びてしまっているひげは剃れないので、結局中途半端な状態になってしまいます。
もし今まで使っていた髭剃りにキワゾリ刃がついていればそれを使ってもオッケーだと思います!
男性にとって髭剃りはほぼ毎日の日課になりますので、旅行用のシェーバーとかでは厳しいです。介護職員も時間が限られているので、剃れないシェーバーで剃り切れないで中途半端になってしまうのは結構ストレスです。どうせなら、綺麗に剃ってさっぱりしたいのですが、道具のせいでできないのは辛いものです。髭剃りに関しては、介護の中でもどの機種を使うかで出来栄えや手間が大きく変わる業務の一つになので、ご家族にもご理解いただき使いやすいものを選んでいただきたいです。
男性用の電動シェーバーを選ぶ際には、値段が高ければいいというわけではなく、ここで紹介したような機能に着目して選んでみてくださいね!




