視覚障害者が生活で困ること|15項目と場面別の工夫・相談先

視覚障害者が生活で困ること|15項目と場面別の工夫・相談先
広告

見えにくくなったとき、何に困るかは人によって違います。同じ「視覚障害」でも、中心が見えない方と、周辺が見えない方とでは、困る場面がまったく違います。まぶしさが強い方、暗いところだけ見えにくい方もいます。

この記事では、国の調査で「困難が大きく、現状への不満も強い」とされた15の項目を手がかりに、移動・読み書き・家の中・買い物・仕事といった場面ごとに、何に困り、どんな手立てがあるのかを整理します。

困りごとの背景には、見え方そのものに加えて、住まいや道路などの環境、機器やウェブサイトの使いにくさ、支援する人の不足など、いくつもの要素が重なっています。そのうえで調査が示しているのが、困りごとを軽減する制度や訓練の情報が届かず、支援につながるまでに時間がかかることも課題だという点です。この記事では、そこにも触れます。

この記事の要点
  • 「困ることランキング」に順位をつけた公的な調査は、見あたりません。ただし国の調査が困難度が高く不満も強い15項目を挙げており、これが実質的な答えになります
  • 15項目は移動6項目・読み書きや機器の操作5項目・参加4項目に分かれます
  • 同じ調査で訓練の前後を答えた102人では、訓練後にほとんどの項目で改善を感じた人が多くなっていました。「一人で歩ける場所ができた・増えた」「行動範囲が広がった」は6割を超えています
  • 一方で、手帳を取得してから相談につながるまでに3年以上かかった方が約47%でした。困りごとを軽減する制度や訓練の情報が届かず、支援につながるまでに時間がかかることも課題です
  • 補装具や日常生活用具の制度を知るまでに5年以上かかったという方が、2割から3割いました
  • 相談先は眼科(ロービジョンケア)と、市区町村の障害福祉の窓口です。治療が終わるのを待つ必要はありません。生活や仕事で困り始めた時点から、治療と並行して相談できます

視覚障害者が「困ることランキング」はあるのか

結論からお伝えすると、視覚障害のある方の困りごとに1位・2位と順位をつけた公的な調査は見あたりません。困る場面は見え方によって違うので、順位づけにあまり意味がない、という事情もあります。

ただし、それに近いものはあります。厚生労働省の平成29年度障害者総合福祉推進事業(日本視覚障害者団体連合が受託)で行われた全国調査です。この調査では、訓練を終えた(見込みを含む)視覚障害のある方に、日常生活や社会生活の項目ごとに「一人でできるか、できないか」と「その状況にどれだけ納得しているか」の2つを聞いています。

その結果、困難度が高く、現状への不満も強い傾向にあることが確認されたとされたのが、次の15項目です。

区分困難度が高く、不満も強いとされた項目
移動
(6項目)
屋外のよく知っている場所への移動/初めての場所や不慣れな場所への移動/交差点横断や信号判断/公共交通機関の利用/混雑した場所への移動/夜間の移動
読み書き・機器の操作
(5項目)
書類を読む/新聞、雑誌、書籍を読む/メモを取る/メールを書く/ホームページを見る、検索する
参加など
(4項目)
料理をする/趣味・余暇活動を楽しむ/仕事をする/他の視覚障害者との交流

出典:厚生労働省 平成29年度障害者総合福祉推進事業「視覚障害者が日常生活を送る上で必要な支援に関する調査研究」(社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合)

この15項目は「困る人が多い順」ではありません。困難度と不満の両方が高い項目として挙げられたものです。また平成29年度(2017年度)の調査であり、スマートフォンの普及など、その後に状況が変わっている部分があります。

この調査の回答者では、訓練後に改善を感じた人が多かった

同じ調査では、訓練の前後を答えた102人について、15項目の変化を集計しています。その結果、ほとんどの項目で「できる」「満足」と答えた人の割合が訓練後に増えていました。

訓練全体を振り返った回答では、「移動の安全性が向上した」「外出の頻度が増えた」「一人で歩ける場所ができた・増えた」「行動範囲が広がった」「定期的な外出先ができた」と答えた方が、通所・入所型でも訪問型でもいずれも6割を超えていました。

変化は技術面だけではありません。「できないことに対する考え方や工夫の仕方が身に付いた」「気持ちが前向きになった」という回答も、いずれの訓練形態でも6割を超えていました。

これは訓練を利用した102人の、訓練前後の回答を比べたものです。視覚障害のある方全体を代表する調査ではなく、誰にでも同じ効果が得られるという意味ではありません。「この調査の回答者では、訓練後に改善を感じた人が多かった」という読み方になります。

一方で、訓練後も「できる」の割合が5割未満だった項目が3つあります。

項目訓練後に「できる」訓練後に「満足」
書類を読む41.2%41.2%
新聞、雑誌、書籍を読む49.0%54.9%
仕事をする46.1%54.9%

読み書きと就労は、支援する側にとっても積み残された課題だと報告書は指摘しています。

広告

視覚障害者が移動で困ること

15項目のうち6つが移動に関するものでした。見慣れた道でも、工事や駐輪、置き看板で状況が変われば難しくなります。初めての場所、交差点、混雑、夜間はさらに負荷がかかります。

困る場面主な手立て
知っている場所でも、障害物や工事で歩けない歩行訓練(白杖の使い方、ルートの作り方)
初めての場所、不慣れな場所に行けない同行援護(外出に同行し、移動の援護と情報提供を行う障害福祉サービス)
交差点の横断、信号がわからない音響式信号機、歩行訓練、同行援護
駅やバスの利用が不安駅係員の案内(事前連絡)、同行援護、ホームドア
人混みで白杖が使いにくい時間帯をずらす、同行援護
夜間や暗い場所で見えにくい照明と明暗差の調整、明るさに目が慣れるまでの時間を確保する、慣れた経路を選ぶ、必要に応じて歩行訓練や同行援護
まぶしさが強くて見えにくい遮光眼鏡(補装具費支給制度の対象となることがあります)。見え方に合うレンズの選定は眼科で相談してください

同行援護は、視覚障害により移動に著しい困難がある方が対象の障害福祉サービスです。外出時に同行して、移動に必要な情報を提供し、移動の援護などを行います。対象の判定には同行援護アセスメント調査票が使われ、障害支援区分の認定は必要ありません。

駅のホームからの転落

移動の不安として大きいのが駅のホームです。国土交通省「鉄軌道輸送の安全に関わる情報(令和6年度)」によると、令和6年度の状況は次のとおりです。

令和6年度全体うち視覚障害のある人
ホームからの転落件数
(列車等と接触せず、人身障害事故にならなかったもの)
2,390件61件
ホームから転落後の接触事故32件1件
ホーム上での接触事故96件1件

視覚障害のある方の転落件数の推移は、平成27年度94件、令和元年度61件、令和2年度38件、令和3年度28件、令和4年度60件、令和5年度57件、令和6年度61件です。

件数の増減だけで安全性の変化は判断できません。令和2年度・3年度は、鉄道の利用者数そのものが大きく減っています。利用頻度あたりのリスクは、件数だけでは読み取れません。

周囲の人ができること
  • まず声をかけて、必要かどうかを本人に聞いてください。「何かお手伝いできることはありますか」と尋ねるのが基本です
  • いきなり体や白杖に触れたり、腕を引っ張ったりしないでください。白杖は周囲の状況を知るための道具なので、引かれると情報が取れなくなります
  • 案内するときは自分の肘のすぐ上を握ってもらい、半歩前を歩きます。身長差が大きい場合などは、肩に手を置いてもらう方法もあります。段差や曲がり角は、その手前で言葉で伝えます
  • 「あっち」「そこ」では伝わりません。「2メートル先に3段の下り階段があります」のように、具体的に言葉にします
  • 点字ブロックの上に自転車や荷物、立て看板を置かないでください。白杖や足裏でたどる手がかりが切れてしまいます
  • その場を離れるときは「失礼します」と言ってから離れてください。黙って離れると、まだそこにいると思って話し続けてしまうことがあります

案内の仕方は、その方の見え方や慣れによって変わります。どうしてほしいかは、本人に確認するのが確実です。手引きの具体的な方法は、NEXT VISION「誘導法(手引き)」で図解されています。

広告

読み書きと情報で困ること

15項目のうち5つが、読み書きと機器の操作でした。そして前述のとおり、訓練後も「できる」が5割未満だった3項目のうち2つが、「書類を読む」(41.2%)と「新聞、雑誌、書籍を読む」(49.0%)です。ここは手が届きにくい領域だということです。

生活の場面でいうと、こういうことが起きます。

  • 役所や銀行からの郵便物が読めない。期限のある手続きを見落とす
  • 申込書や同意書に自分で記入できない。署名欄の位置がわからない
  • 薬の袋や説明書が読めず、飲む量とタイミングが確認できない
  • 家電や給湯器の表示が読めない。タッチパネルは手触りで区別できない
  • ウェブサイトの手続きが進められない。画像だけのボタンやPDFは読み上げられないことがある

手立てとしては、拡大読書器や音声読書器、パソコンやスマートフォンの読み上げ機能、点字、サピエ図書館(点字・録音図書のネットワーク)、代読・代筆の支援があります。拡大読書器や点字ディスプレイは日常生活用具給付等事業の対象になることがあります。

日本視覚障害者団体連合が2022年に行った情報機器の調査(当事者853人)では、「ICT機器やソフトウェアを使い始めるための初期設定が難しい」が62.1%、「音声出力が不十分(必要な情報を読み上げないなど)」が61.2%でした。

この2つは、性質の違いがあります。初期設定の難しさは、設定や操作の支援によって困難を軽減できる場合があります。一方、音声出力が不十分という問題には、機器やアプリ、ウェブサイトの側が読み上げに対応していないことが関わっており、操作の練習だけでは解消できず、提供側の改善が必要な場合もあります。同じ調査では、ホームページの読みにくさや手続きの難しさといった環境面の問題を挙げた方が83.0%にのぼりました。設定と操作の支援と、機器・アプリ・ウェブサイト側の改善の、両方が必要です。

スマートフォンについては、iPhoneのVoiceOver、AndroidのTalkBackという読み上げ機能が標準で入っています。視覚障害があるとスマートフォンが使えない、ということはありません。ただし、使い始めるところで支援があるかどうかで、その後が大きく変わります。

広告

家の中と食事で困ること

15項目には「料理をする」が入っています。実際の場面では、次のようなことが起こります。

場面困ること主な手立て
調理包丁、火加減、焦げの確認、調味料の判別生活訓練、音声タイマー、触ってわかる印をつける、IHの活用
食事皿の位置と中身がわからない時計の文字盤にたとえて位置を伝える(クロックポジション)
服薬薬の袋と錠剤の区別一包化、服薬カレンダー、薬剤師への相談
洗濯・掃除汚れの残りやボタンの表示がわからない生活訓練、家電の操作部に触ってわかる印をつける
温度・体調体温計や血圧計の数字が読めない音声体温計、音声血圧計(日常生活用具の対象となることがある)

参考として、厚生労働省の令和4年生活のしづらさなどに関する調査(有効回答14,079人)では、日常生活のしづらさについて「自分ではできない(全部介助が必要)」と答えた割合が高かったのは買い物17.8%、洗濯15.0%、お金の管理15.0%、食事の支度や後片付け14.5%、薬を管理する14.1%でした。

この数字は視覚障害に限定したものではありません。身体障害・知的障害・精神障害などを含む回答者全体の割合です。視覚障害のある方だけを取り出した数字ではない点にご注意ください。

同居するご家族や支援者ができる、環境の整え方
  • 物の定位置を決めて、動かさない。見えにくい方は記憶と手の感覚で物を探します。「片づけたつもり」が、探せない原因になります
  • 配置を変えたときは、必ず言葉で伝える。家具の位置、ゴミ箱、掃除機のコード、椅子の出し具合まで。黙って変えないことが、転倒の予防になります
  • その方に合う照明の明るさと、物との色の差(コントラスト)を確かめる。明るすぎてまぶしい方もいれば、暗いと見えにくい方もいます。白い皿に白いごはんは見えにくく、濃い色の器に替えるだけで変わることがあります
  • 何がどこにあるかを言葉にする。食事なら「手前の右にお味噌汁、奥の左に煮物です」のように伝えます

どれも費用はかかりません。制度や道具の手続きを待っている間にも始められることです。

広告

視覚障害者が買い物とお金で困ること

買い物は、移動と読み書きの困りごとが重なる場面です。

  • 商品の棚の位置がわからない。陳列が変わると前回の記憶が使えない
  • 値札、賞味期限、成分表示が読めない
  • 似た形の容器を取り違える(シャンプーとリンス、調味料など)
  • セルフレジのタッチパネルが操作できない
  • 紙幣の種類がわかりにくい。硬貨は手触りで区別できますが、紙幣は難しい

手立てとしては、同行援護での買い物、紙幣の識別(新しい日本銀行券には識別マークがあり、スマートフォンの識別アプリもあります)、財布の仕切りで分ける、ネットスーパーや宅配の利用などがあります。セルフレジは、有人レジや店員の呼び出しで対応できる店舗が増えています。

広告

視覚障害者が仕事で困ること

15項目のなかで、訓練後も「できる」が5割未満だった項目のひとつが「仕事をする」(46.1%)でした。報告書は、就労支援は視覚障害リハビリテーションが十分に対応できていない長年の課題だとしています。

そのうえで、報告書が挙げている現実的な方向がこれです。

新規に就職するより、いま勤めている職場に戻る(復職する)ほうがハードルは低い。そのためには、離職する前の早いタイミングで訓練機関につながる流れをつくることが重要である——このように述べられています。

働いている間に見えにくくなった方へ

仕事を辞めてしまう前に、相談してください。調査報告書が指摘しているのは、離職してから動き始めると選択肢が狭くなるということです。

相談先には、眼科(ロービジョンケア)、市区町村の障害福祉の窓口、ハローワークの専門援助部門、地域障害者職業センター、視覚障害者の訓練施設や当事者団体があります。パソコンの読み上げソフトの習得や、職場での配慮の相談につながることがあります。

なお、同じ調査では「フルタイムで就労中」であることを理由に機能訓練を利用できない場合があることも課題として挙げられています。断られた場合でも、訪問での訓練を行っている事業所など、別の選択肢がある地域があります。あきらめる前に、複数の窓口にあたってみてください。

広告

制度や訓練の情報が届かず、支援につながるまで時間がかかる

場面ごとの困りごととは別に、同じ調査がもうひとつ示しているのが、支援につながるまでに時間がかかっているという課題です。使える制度や訓練があっても、その情報が本人に渡っていないことがあります。

医療機関や役所から、情報が渡っていない

先ほどの平成29年度の調査では、比較的最近になって訓練施設につながった視覚障害のある方110人に、医療機関や役所からどんな情報提供や紹介を受けたかを聞いています。

どこから調査で示されたこと
医療機関
(眼科)
身体障害者手帳の申請方法の情報提供を受けたのは約5割
何も情報をもらえなかった方が約3割
関係機関を全く紹介してもらえなかった方が約4割
訓練施設や生活上の困りごとの相談窓口を紹介されたのは2割弱
役所受けられるサービスについての情報提供は5割以下
補装具や日常生活用具についての情報提供は約3割
何も情報をもらえなかった方が約2割
関係機関についてどこも紹介してもらえていない方が半数以上

そして、手帳を取得してから相談につながるまでの期間はこうなっていました。

  • 1年未満 21.8%
  • 1年以上3年未満 11.8%
  • 3年以上10年未満 24.5%
  • 10年以上 22.7%
  • 相談後に手帳を取得(更新) 14.5%

3年以上経ってから相談につながった方が約47%です。報告書は「訓練施設につながるまでにかなりの時間を要する現状」と表現しています。

ここで注目したいのは、紹介を受けた方は、実際にその関係機関に行っている割合が高かったという点です。報告書は「適切な情報提供があればつながる可能性は高くなっていた」としています。支援につながっていないことを本人の意欲だけの問題として捉えず、情報提供や紹介の体制も見直す必要があるということです。

この調査の回答者はすでに訓練施設につながった110人です。今もつながっていない方は、この調査に含まれていません。実際に情報が届いていない方の状況は、この数字からは見えない点にご注意ください。

制度を知るまでに5年以上かかった人が2〜3割

日本視覚障害者団体連合が平成29年度に行った、補装具と日常生活用具の実態調査(当事者の有効回答939人)でも、似た傾向が出ています。

まず制度への満足度です。給付を受けた経験のある方のうち、補装具は「満足」「やや満足」が288人(39.4%)に対し「やや不満」「不満」が410人(56.2%)、日常生活用具は「満足」「やや満足」が247人(33.6%)に対し「やや不満」「不満」が473人(64.4%)でした。

制度を知るまでの期間と、制度への不満の理由は次のとおりです。

項目人数割合回答対象(分母)
制度を知るまでに5年以上かかった(補装具)173人23.7%補装具の給付を受けた経験のある方
730人
制度を知るまでに5年以上かかった(日常生活用具)216人29.4%日常生活用具の給付を受けた経験のある方
734人
補装具についての情報が入手しにくい144人35.1%補装具に「やや不満」「不満」と答えた方
410人
補装具の制度を知る機会が少ない111人27.1%補装具に「やや不満」「不満」と答えた方
410人
日常生活用具の品目や耐用年数等の情報がなかなか手に入らない146人30.9%日常生活用具に「やや不満」「不満」と答えた方
473人

上の割合の分母は、当事者調査の有効回答939人ではありません。設問ごとに回答対象が異なります。回答者全体に対する割合としては読まないでください。各設問の正確な集計条件は、報告書本体の集計表でご確認ください。

一方、自治体側への調査では、身体障害者手帳の交付の際に本人に伝えていると答えた自治体が、補装具で994箇所(80.5%)、日常生活用具で961箇所(77.8%)ありました。

当事者調査と自治体調査は、同じ地域の本人と自治体を突き合わせたものではないため、直接の比較はできません。ただし両方の結果を並べると、伝えたつもりの情報が実際に届いているかを確認する必要性が示唆されます。

自治体自身も困っています。「職員が定期的に異動するため、専門的知識を習得するのが難しい」と答えた自治体が、補装具で1,079箇所(87.4%)ありました。窓口の担当者が制度に詳しいとは限らないという前提で臨んだほうが現実的です。

このページで紹介している日本視覚障害者団体連合の2つの調査は、いずれも平成29年度(2017年度)に実施されたものです。その後、制度の運用や相談体制が改善している地域もあります。現在の状況はお住まいの市区町村でご確認ください。

広告

どこに相談すればよいか

相談を始めるのに、治療が終わるのを待つ必要はありません。生活や仕事で困り始めた時点から、治療と並行してロービジョンケアを相談できます。見え方に合わせた道具の調整や、読み書きの工夫、職場での配慮は、治療の経過とは別に進められるものです。

先ほどの調査では、情報提供を受けたいタイミングとして「眼科で見え方の改善が見込めないと言われたとき」(65.5%)、「行政機関で身体障害者手帳の申請をしたとき」(42.7%)が多く挙がっていました。これは「その時点でも確実に情報がほしい」という回答であって、そこまで相談を待つという意味ではありません。

情報が渡されなかった場合は、こちらから聞きにいくことになります。相談先を整理します。

相談先相談できること
眼科(ロービジョンケア)見え方に合わせた道具の相談、手帳の診断書、関係機関の紹介。ロービジョンケアを行っている眼科かどうかを確認してください
市区町村の障害福祉の窓口身体障害者手帳の申請、補装具費支給制度、日常生活用具給付等事業、同行援護などの障害福祉サービス
スマートサイト都道府県ごとに作られている、眼科から福祉や訓練につなぐための相談先リスト。眼科や自治体で入手できることがあります
視覚障害者情報提供施設(点字図書館)点字・録音図書、用具の相談、生活の相談。調査では対応の幅が広い機関のひとつでした
当事者団体調査では最も対応率が高かった相談先。制度の利用、日常生活の工夫、歩行以外の訓練まで幅広く対応
相談支援事業所障害福祉サービスの利用計画。ただし調査では「視覚障害への対応に慣れた職員がいない」との回答も4割ありました
地域包括支援センター65歳以上の方。介護保険のサービスと組み合わせる場合

調査では、視覚障害に関係する機関どうしは互いの情報を持っているとされています。どこか一つにつながれば、必要に応じて別の機関を紹介してもらえる可能性が高いということです。まずは相談しやすいところから始めて構いません。

手帳の申請は早めに、ただし手帳を待たずにできることもある

補装具費支給制度や日常生活用具給付等事業、同行援護などを使うには、原則として身体障害者手帳が必要です(政令で定める難病の場合は別の扱いがあります)。該当しそうであれば、早めに主治医に相談してください。

ただし、相談や訓練のすべてに手帳が必要なわけではありません。眼科でのロービジョンケア、視覚障害者情報提供施設や当事者団体への相談、自治体の委託事業として行われている訓練などには、手帳の有無を問わないものがあります。申請中であっても相談は始められます。手帳が出るまで待つ必要はありません。

広告

視覚障害のある方はどれくらいいるのか

厚生労働省の令和4年生活のしづらさなどに関する調査(令和6年5月公表)によると、在宅の身体障害者手帳所持者は415万9千人(推計値)で、そのうち視覚障害は27万3千人(6.6%)と推計されています。

調査年身体障害者手帳所持者 総数うち視覚障害
令和4年4,159千人273千人(6.6%)
平成28年4,287千人312千人(7.3%)

ただしこれは手帳を持っている方の推計値です。手帳の基準には該当するけれど申請していない方、基準には届かないけれど生活に支障がある方は含まれません。実際に見えにくさで困っている方の数は、これより多いと考えられます。

視覚障害の原因となる病気には、緑内障、網膜色素変性、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性などがあります。多くは人生の途中で起こるもので、生まれつきの方ばかりではありません。

広告

よくある質問

Q
視覚障害者が生活で困ることの1位は何ですか。
A

順位をつけた公的な調査は見あたりません。困る場面は見え方によって大きく違うためです。中心が見えない方と周辺が見えない方では、困る場面が入れ替わります。それに最も近いのが、厚生労働省の平成29年度の調査で挙げられた15項目です。移動が6項目、読み書きや機器の操作が5項目、参加などが4項目で、移動に関する困りごとが最も多くの項目を占めています。ただしこれは「困る人が多い順」ではなく、困難度と不満の両方が高い項目として挙げられたものです。

Q
視覚障害があるとスマートフォンは使えませんか。
A

使えます。iPhoneにはVoiceOver、AndroidにはTalkBackという画面読み上げ機能が標準で入っており、文字の拡大や色の反転もできます。ただし、日本視覚障害者団体連合が2022年に行った情報機器の調査(当事者853人)では、「初期設定が難しい」が62.1%、「音声出力が不十分」が61.2%でした。初期設定の難しさは、設定や操作の支援によって困難を軽減できる場合があります。視覚障害者情報提供施設や当事者団体がスマートフォン教室を開いていることがあるので、設定と最初の練習は支援を受けることをおすすめします。一方、音声出力が不十分という問題には、アプリやウェブサイトの側が読み上げに対応していないことが関わっており、操作の練習だけでは解消できず、提供側の改善が必要な場合もあります。

Q
歩行訓練はどこで受けられますか。費用はかかりますか。
A

障害福祉サービスの自立訓練(機能訓練・生活訓練)として受ける方法と、自治体の委託事業や施設の独自事業として受ける方法があります。自立訓練を使う場合は、市区町村への申請と障害福祉サービス受給者証が必要で、利用者負担は世帯の所得に応じた上限額が設定されています。一方、委託事業などには手帳の有無を問わないものや、費用がかからないものもあります。

ただし、実施している事業所の数は全国的に多くなく、地域差があります。日本ライトハウスが全国の生活訓練実施機関の一覧を公開しており、連絡先だけでなく訓練内容・利用条件・申込方法まで掲載されています。まずはこの一覧か、市区町村の障害福祉の窓口、お住まいの都道府県のスマートサイトでご確認ください。

Q
働きながらでも訓練は受けられますか。
A

受けられる場合があります。ただし平成29年度の調査では、機能訓練事業所が対応が難しいとした条件のなかに「フルタイムで就労中」「高校・大学・盲学校在学中」が挙がっており、市町村の判断で利用できないことがあると報告されています。一方、訪問を中心に訓練を行っている事業所では、これらの条件でも対応した実績があります。報告書は、在職中・在学中であっても必要な訓練を受けられる制度設計が望ましいと述べています。一つの窓口で断られても、別の選択肢がある地域があります。市区町村の障害福祉の窓口、視覚障害者情報提供施設、当事者団体に相談してみてください。

Q
家族が見えにくくなりました。まず何をすればよいですか。
A

順番に片づける必要はありません。並行して進めてください。やることは大きく3つです。①眼科で見え方の状態と今後の見通しを確認し、あわせてロービジョンケアを相談する ②市区町村の障害福祉の窓口で、身体障害者手帳の対象になるか、使える制度は何かを確認する ③日々の生活での工夫(照明、物の定位置、家電に触ってわかる印をつけるなど)を始める。手帳が出るのを待ってから支援につなぐ、という順番にすると、その間の生活が止まってしまいます。

大切なのは、ご家族が代わりにやってあげる形で固定しないことです。日本視覚障害者団体連合の調査では、「家族に晴眼者(見える人)がいると対象にならない品目がある」と答えた当事者が222人(46.9%)いました。報告書は「本人が一人で使用することを前提とすべきで、家族が代わって見てくれることを前提とした給付の考え方は見直してほしい」としています。ご本人が自分でできる状態をつくることが、結果的にご家族の負担も減らします。

Q
道で視覚障害のある方を見かけたとき、声をかけてもよいですか。
A

声をかけて構いません。「何かお手伝いできることはありますか」と尋ね、必要かどうかを本人に判断してもらうのが基本です。断られても気にする必要はありません。慣れた道を一人で歩いている最中かもしれないからです。

避けたいのは、いきなり体や白杖に触れること、腕を引っ張ることです。白杖は周囲の状況を知るための道具なので、引かれると情報が取れなくなります。案内するときは自分の肘のすぐ上を握ってもらい、半歩前を歩きます(身長差が大きい場合などは、肩に手を置いてもらう方法もあります)。段差や曲がり角はその手前で言葉で伝え、「あっち」ではなく「2メートル先に3段の下り階段があります」のように具体的に伝えてください。その場を離れるときは「失礼します」と声をかけてから離れます。

Q
盲導犬はどうすれば利用できますか。
A

盲導犬は身体障害者補助犬のひとつで、都道府県などが行う給付事業の対象になっています。給付の目安は身体障害者障害程度等級表で1級またはこれに準ずる程度とされていますが、詳しくは区市町村の障害福祉の窓口でご確認ください。盲導犬を使うには歩行の訓練と共同訓練が必要で、すべての方に向いているわけではありません。白杖での歩行訓練、同行援護、盲導犬のどれが合うかは、生活の仕方によって変わります。

まとめ

視覚障害のある方が生活で困ることは、順位がつけられるようなものではありません。見え方によって、困る場面が入れ替わるからです。それでも国の調査は、移動・読み書き・参加の15項目で困難と不満が大きいことを示しています。

そして同じ調査では、訓練の前後を答えた102人のうち、訓練後に改善を感じた人が多くなっていました。「行動範囲が広がった」「気持ちが前向きになった」は、いずれの訓練形態でも6割を超えています。誰にでも同じ効果があるという意味ではありませんが、訓練が選択肢になりうることは知っておいてよいはずです。

もうひとつの課題は、その訓練や制度にたどり着くまでに時間がかかっていることです。手帳を取得してから相談につながるまでに3年以上かかった方が約47%、制度を知るまでに5年以上かかった方が2割から3割いました。

情報は、黙っていても届かないことがあります。眼科を受診したとき、手帳を申請したとき、その場で「他に使える制度や訓練はありますか」「どこに相談すればよいですか」と聞いてください。調査は、紹介を受けた方の多くが実際にその機関につながっていたことも示しています。

この記事で紹介した調査結果は、厚生労働省「令和4年生活のしづらさなどに関する調査」、厚生労働省 平成29年度障害者総合福祉推進事業「視覚障害者が日常生活を送る上で必要な支援に関する調査研究」(日本視覚障害者団体連合)、日本視覚障害者団体連合「視覚障害者のための日常生活用具と補装具の給付及び貸与の実態調査事業」(平成29年度)、日本視覚障害者団体連合「視覚障害者の情報機器の活用に関する実態調査」(令和4年3月)、国土交通省「鉄軌道輸送の安全に関わる情報(令和6年度)」によるものです。制度の内容や相談体制は地域によって異なり、調査の実施後に変わっている部分もあります。実際の手続きや利用できるサービスは、お住まいの市区町村の障害福祉の窓口でご確認ください。治療や見え方に関することは、眼科の主治医にご相談ください。

2026年6月障害福祉サービス報酬改定 単位数情報

 令和8年(2026年)介護保険介護報酬改定情報はこちら

 

 

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします
あなたへのおすすめ