SBAR(エスバー)での報告の仕方とは?状況・背景・評価・提案の4項目

看護師などが医師や上司に患者・利用者の状態を報告するとき、「何から伝えればいいかわからない」「うまく伝わらなかった」という経験はないでしょうか。特に急変時や緊急の場面では、焦りもあって情報が抜けたり順序がバラバラになってしまいがちです。
そんなときに使えるのがSBAR(エスバー)という報告のフレームワークです。Situation(状況)・Background(背景)・Assessment(評価)・Recommendation(提案)の頭文字をとったもので、この4項目に沿って報告することで、聞き手が判断しやすい簡潔な情報伝達ができるようになります。
5W1Hや、 SOAPなど、記録や情報共有を行う時には型がいくつかありますが、それぞれメリットや向き不向きがあります。フレームワークとしてそれぞれ覚えておくと、言語化して伝える時に役立ちます。
SBARとは何か、どこで生まれたのか
SBAR(エスバー)はもともとアメリカ海軍が原子力潜水艦での情報伝達手段として開発したツールです。その後航空業界でも活用され、2002年にカイザーパーマネンテが医療安全の技法として医療現場に導入したことで広まりました。現在は世界中の医療機関で使われており、英国の王立内科医協会(RCP)でも重症患者のケア引き継ぎにSBARを使うことを推奨しています。
日本でも医療安全対策として多職種が研究をもとに作成した「TeamSTEPPS(チームステップス)」というプログラムの中核ツールの一つとして位置付けられています。「分かりやすく相手に伝えること」は医療安全に直結するという考え方から生まれたコミュニケーション技法です。
元々が軍隊や航空業界など、組織の中で簡潔に重要な情報を伝達する方法として生まれたものなので、今回は医療の側面からSBARを紹介しますが、特に業種は問わず活用できるフレームワークだと思います。
SBARの4つの項目
SBARは以下の4項目で構成されています。
| 項目 | 英語 | 内容 |
|---|---|---|
| S | Situation(状況) | 今、何が起きているのか |
| B | Background(背景) | どのような経緯でこの状況になったのか |
| A | Assessment(評価) | 何が問題だと考えるか(報告者自身のアセスメント) |
| R | Recommendation(提案) | どうしてほしいか、何が必要か |
S Situation(状況)
「今何が起きているか」を最も重要な1文で伝えます。聞き手が最初に把握すべき事実を端的に伝えることが重要で、長々と説明するのではなく「○○さんの血圧が急に下がっています」「意識レベルが低下しています」のように、緊急度が伝わる一言から始めます。
B Background(背景)
その状況に至った経緯や関連する情報を簡潔に伝えます。既往歴、現在の治療内容、服薬状況、直近のバイタルの変化など、判断に必要な文脈情報です。「手術後3時間が経過しており、術前からバイタルに変動がありました」のように、状況の背景を補足します。情報が多すぎると逆効果になるので、判断に必要な情報に絞ることがポイントです。
A Assessment(評価)
報告者自身が「何が問題だと思うか」を伝えます。SBARの中でも最も難しい部分であり、「間違えたらどうしよう」という不安から省略されがちです。しかし、患者に最も近く関わっている看護師・介護職の判断や気づきが医師の迅速な行動を支える重要な情報になります。正解を述べることより、自分がどう評価しているかを伝えることが大切です。「脱水または感染悪化の可能性があると考えています」のように、自分の見立てを言葉にします。
R Recommendation(提案)
「何をしてほしいか」「何が必要か」を率直に伝えます。医師に来てほしいなら「すぐに診にいらしてください」、検査をしてほしいなら「採血と心電図の準備をしておきますか」と具体的に提案します。また医師の指示が出た後には「次の状態変化時のコール基準はどうしますか」のように確認まで行うと、その後の対応がスムーズになります。
SBARを使った報告の具体例
実際にSBARを使った報告例をみてみましょう。
85歳男性、幸一さん(仮名)。既往歴に心房細動があり、ワーファリンを内服中。ソ径ヘルニア手術のため1週間前からワーファリンを中止していました。手術当日の朝、病室に行くと幸一さんはベッドに横たわってぼーっとしています。声をかけると言葉がはっきり出ず、手足の動きも悪い様子です。
| 項目 | 報告の内容例 |
|---|---|
| S(状況) | 「○○病棟の看護師△△です。85歳男性の幸一さんについてご報告します。意識レベルが低下しており、言葉がはっきり出ず、手足の動きが悪い状態です」 |
| B(背景) | 「心房細動の既往があり、ワーファリン内服中の方です。本日ソ径ヘルニアの手術予定のため、1週間前からワーファリンを中止していました」 |
| A(評価) | 「抗凝固薬の中止期間中に、脳梗塞が起きている可能性があると考えています」 |
| R(提案) | 「すぐに診にいらしてください。CT等の画像検査の準備をしておきましょうか」 |
この流れで報告することで、医師が必要な情報を一度で把握でき、すぐに判断・行動に移せるようになります。
SBARを使うメリット
SBARを使った報告には、以下のようなメリットがあります。
SBARの弱点 Aが最も難しい
SBARの4項目の中で、現場で最も難しいのがA(Assessment)です。
S(状況)とB(背景)だけでも患者の状態を伝えることはできます。しかし医師にとって最も助かるのは、現場で患者に接している看護師・介護職が「何が問題だと考えているか」を伝えてくれることです。
「医師に意見を言うのはおこがましい」「間違っていたらどうしよう」という不安からAを省略してしまうケースが多く報告されていますが、正解を述べることが目的ではありません。自分がどう評価しているかを伝えることで、医師の判断が格段にスムーズになります。
アセスメント力を高めるためには、フィジカルアセスメントのスキルを日頃から磨いておくことが前提になります。バイタルサインの変化の意味や、「なんかおかしい」という気づきを言語化できるかどうかが、SBARを機能させるための土台です。
逆に、自分が行った評価であることや提案であることが明確になっておらず、まるで客観的情報や事実のように記録されていたら、情報を読み取る人としては混乱が生じたり間違った認識をしてしまうわけです。
I-SBARとI-SBAR-C(アイエスバーシー)とは
SBARにはいくつかの発展形があります。
I-SBAR(アイエスバー)は、SBARの前に「Identify(自己紹介・患者の特定)」を加えたものです。「○○病棟の看護師△△です。○○さんについてご報告します」という形で、自分が誰で誰の報告をするかを最初に宣言します。訪問看護など、所属の異なる医師に電話で報告する場面では特に重要とされています。
I-SBAR-C(アイエスバーシー)はさらに「Confirm(復唱確認)」を加えたものです。医師から指示を受けた後、「○○の指示ですね、確認します」と復唱することで口頭指示の誤りを防ぎます。電話での報告で特に有効な手順です。
| バリエーション | 追加項目 | 主な活用場面 |
|---|---|---|
| SBAR | なし | 院内での基本的な報告 |
| I-SBAR | Identify(自己紹介) | 訪問看護・電話での医師への報告 |
| I-SBAR-C | Identify+Confirm(復唱) | 口頭指示・電話指示の確認が必要な場面 |
介護現場でのSBARの活用
SBARは看護師だけのツールではありません。介護施設でも利用者の状態変化を看護師や医師に報告するときに活用できます。
介護職員がドクターコールやオンコールを行う場面や、施設看護師への申し送りの場面でも、SBARに沿って報告することで「何が起きているのか」「何をしてほしいのか」が明確に伝わります。特に夜間の急変時など、焦りやすい場面でこそSBARの枠組みが役立ちます。
「体温が38.5度あります」という事実だけの報告より、「38.5度の発熱があります(S)。昨日から食欲がなく、尿の混濁も見られています(B)。尿路感染が疑われます(A)。往診をお願いできますか(R)」と伝える方が、医師・看護師が即座に判断できます。
全ての報告や連絡をSBARで行うとなると構えてしまいますが、簡潔に必要な情報を伝えるという意味で上記のようにSBARの構造で組み立てて伝えると、とても分かりやすく無駄がないと思います。
介護施設などで看護職員の人が医療機関と連携するときにも、「発熱している」という情報だけで連携するよりも、食欲や尿混濁最近の様子などのバックグラウンドがある方が良いですよね。介護職員の場合は、状況と背景が伝えられることが最も大切なので、無理してアセスメントや提案まで行う必要はないと思います。
医療機関側の情報収集としては、SBARに近い形でまとめていくことが多いので、相手が必要としている形になるべく合わせていくというのもチーム医療・連携の中では大切です。
まとめ
SBARは、Situation(状況)・Background(背景)・Assessment(評価)・Recommendation(提案)の4項目で報告を構造化するコミュニケーションツールです。もともとは軍や航空業界で使われていたフレームワークが医療の現場に取り入れられ、世界中に広まりました。
事実を伝えるだけでなく「自分はこう思う」を伝える文化が定着することで、チーム医療の質と医療安全の水準が上がっていきます。普段の報告から少しずつSBARの型を意識してみるとよいかもしれません。



