バイタルサインは健康管理の上で、介護・看護・在宅医療・救急・保育など様々な場面で活用されています。バイタルサインは日本語で生命の徴候という意味合いがあり、これらを評価することをバイタルチェック(通称:バイタル測定)と言い、身体・精神状態の重要な徴候・値になります。
意識、呼吸、体温、サチュレーション(SpO2)、脈拍、血圧を測定する意味、正常値、平均値、異常時の対応、観察のポイント、記録内容などを一緒に復習しましょう!
このページの目次
バイタルサインとは
バイタルサインとは、からだの状態を示す基本的なサインのことです。
バイタルサインには、脈拍、血圧、体温、サチュレーション(SpO2)など測定機器で客観的な値が出るものと、意識、呼吸、表情など変化を観察するものがあります。
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脈拍とは(略語 P, Pluse)
バイタルサインの脈拍、心拍数とは
脈拍とは、心臓から送り出される血液の拍動(心拍)の回数を表すバイタルサインです。心臓がどのくらいどきどきしているかということです。
心拍数を臨床場面では手首の親指側にある橈骨動脈で測定しますが、血圧測定と同時に測定をすることも多いです。心臓の拍動が安定していないときなど、不整脈が発生します。
詳しくは、不整脈と徐脈についてでまとめています。
脈拍測定の意味
バイタルサインとしてのの脈拍測定では、1分間あたりの 脈拍=心臓の拍動数 の意味を表しています。
心拍数(脈拍)は、身体や脳が必要としている酸素量や、血管の圧、精神状態などが関与して自律神経により自動調整されます。
脈拍のバイタルチェックは、実用的には安静場面と運動場面で用いられます。高齢者などの運動・リハビリのための運動強度・心拍数・中止のめやすもご覧ください。
脈拍の平均値
バイタルサインの脈拍は、乳幼児では1分間に100回以上が平均値です。
高齢者では、脈拍60~80回が平均値です。脈拍は、夜になると減少する傾向があるため、60回を切っても問題はありませんが、日々のバイタルサインの記録を確認しておき、普段と違うかどうかで判断しましょう。
脈拍が異常値の時の対応
脈拍は、運動や緊張など、交感神経と副交感神経の状態で変化します。異常がありそうなときは、看護師などに実測してもらい適切な判断を仰ぎましょう。
運動や興奮などが無い状態で、除脈や頻脈が起きた場合、薬物の副作用、脱水、心臓の異常などの可能性があります。
不整脈の回数と合わせて観察をして、医療へ連絡してください。
除脈とは
除脈とは、脈拍60回未満の状態と定義されています。
頻脈とは
頻脈とは、脈拍100回以上の状態と定義されています。大人や高齢者では脱水の時に徐脈が発生しやすいです。
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サチュレーションとは(略語 SpO2、酸素飽和度)
バイタルサインの SpO2(サチュレーション・エスピーオーツー)
SpO2のことを、エスピーオーツーと読み、血液中に溶け込んでいる酸素の量を表すバイタルサインです。職場によっては、サチュレーションやサップという呼ぶ方をするところもあります。
サチュレーション測定の意味
血液中に溶け込んでいる酸素の量であり、%で示されます。サチュレーションは、指先などにクリップのように挟むパルスオキシメーターで測定します。
SpO2(酸素飽和度、サチュレーション)の測定・パルスオキシメーターの仕組み では、どのような仕組みでSpO2が測定されているかや、測定のポイントを紹介しています。
サチュレーション(SpO2)の平均値 正常値
健康であればSpO2は正常値である95%以上の値になりますが、呼吸器に異常があると、体内に取り入れる酸素が減ってしまうため、サチュレーションは低下します。
SpO2が異常値の時の対応
サチュレーションは通常95%以上ですが、それ以下の場合は酸欠状態です。低酸素の状態が続くと、意識消失や組織の壊死に繋がります。早急に連絡が必要です。
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血圧とは(略語 BP, Blood pressure)
血圧は、血管内の血液の有する圧力を表すバイタルサインで、成人の場合には上腕部にカフを巻き圧をかけ、聴診器で上腕動脈の脈拍を聴診して測定します。血圧は医療的には水銀柱血圧計と聴診器を用いて測定することが原則となりますが、実際の現場では電子血圧計で測定することが多いです。血圧は「BP」という略語が使用される場合があります。
血圧について詳しくは「バイタル測定方法と血圧変化の留意点、高齢者の血圧の測り方」もご覧ください。
バイタルサインの血圧の高い・低い・正常値・異常値を知っておこう
血圧測定の意味
血圧とは、血管内の血液の有する圧力のこと。血圧が高いときは、①どんどん血液が送りこまれている ②血管に血液が通りにくくなっている という状態です。
血圧が低いときは、①血管が破れたりゆるんだりしていることや(タイヤがパンクしている状態)、 ②心臓から血液が十分に送られてこない という状態が多いです。
血圧のコントロールは、首のあたりにある圧センサーなどで感知して自律神経の働きで自動的に行われます。このコントロールには、心臓の拍動数・1回拍出量、末梢血管抵抗などが関与します。
バイタルサインとしての血圧測定の方法
バイタルサインとしての血圧測定の基本は、上腕での座位での測定ですが、日常場面での測定では手首式血圧計でバイタルチェックすることもあり得ますので、「手首式血圧計と上腕式血圧計の誤差や精度の違い」も予備知識としてどうぞ。
また、実際の介護看護場面ではベッド臥床のままで血圧測定などのバイタルチェックを行うケースもありますので「血圧測定は寝たまま臥位で有効?座位・立位との差や違いは?」も参考に変動因子や大尉による変化も考えておきましょう。
血圧の平均値、高血圧
20代の血圧の平均値は、収縮時血圧120mmHg/ 拡張期血圧75mmHg くらいです。
以下の表は、高齢者の血圧の平均値です。高齢者は血管が硬くなり、高血圧(収縮期血圧が140mmHg以上)気味の人が多くなります。
高齢者の血圧の平均値・正常値の割合
60歳代 | 70歳代 | |
平均値 (正常値) |
141/83 | 145/80 |
高血圧の割合 | 54% | 63% |
降圧剤有り の血圧平均 |
150/86 | 152/81 |
正常値の割合 | 24% | 19% |
血圧が異常な時の対応
上記の基準値はありますが、高血圧の人が降圧剤を飲んでいる場合や、その人にとっての平常血圧がとても低いという場合などもあります。
そのため、日々のバイタルチェックが必要になります。高齢者の多くが血圧の薬を飲んでいるため、飲み忘れがないかチェックします。
低血圧の場合には、脳に血が通わなくなる可能性があるため、仰向けに寝かせて足を高くします。
血圧の急激な変化は、血管の異常(脳梗塞・心筋梗塞など)をサインとなることがあるため、他の所見も観察します。
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意識レベルとは(覚醒状態)
意識レベルとは、声かけや刺激に普通に受け答えや判断ができる状態かを見るバイタルサインです。意識障害の原因は、脳血管障害やてんかんなどの脳の障害、血糖、呼吸(酸欠)、電解質異常など脳以外の要因もあります。
意識レベル・覚醒状態の観察方法
意識レベルと覚醒状態の観察には、患者が声掛けや刺激(タッチや揺り動かし)にどのように反応するかを評価する方法が用いられます。
意識・覚醒レベルを観察する意味
意識および覚醒レベルを観察することは、患者の神経学的状態を評価し、意識障害の有無やその程度を迅速に判定するために不可欠です。これにより、脳損傷、感染症、毒物曝露などの原因がある場合に早期に特定し、適切な治療を開始することが可能になります。また、患者の意識レベルの変化は病状の進行や改善を示す重要な指標となり、治療計画の調整に役立ちます。
覚醒レベルが異常な時の対応
意識レベル・覚醒レベルの評価方法は、Japan Coma Scale(JCS)というものがあり、 ①覚醒している ②刺激に応じて一時的に覚醒する ③刺激しても覚醒しない という点をみます。
また、世界的にはGlasgow Coma Scale(GCS)という意識レベルの評価指標があり、①開眼機能(目が開くか) ②言語機能(会話が成立するか) ③運動機能(言われたことが分かって身体を動かせるか) という点をみます。
これらの意識障害度合と合わせて普段と違う点、失禁している、痙攣している、その他のバイタルサインなども含めて観察し、おかしいと思ったら他のサインと合わせて連絡します。
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呼吸状態 breath
呼吸状態は、客観的に変化がわかりやすいバイタルサインなのですが、変動因子がいろいろあり、呼吸が乱れていると一口に言ってもその種類や状態は様々です。
呼吸状態観察ポイント
呼吸観察の意味
呼吸とは、口から肺へ酸素を取り入れて、体内で消費して二酸化炭素を放出することを表すバイタルサインです。または、細胞が酸素を取り入れて二酸化炭素を排出する代謝のことのことを指すこともあります。
呼吸は、体内の異常や精神状態の変化に合わせてすぐに変化が見られるバイタルサインです。呼吸の仕方や変化は多種多様なため呼吸数・呼吸の深さ・換気量などの数値的なもの以外にも、呼吸の特徴を大まかにみることも有効であることがあります。。
呼吸の診かたは「呼吸状態の評価と記録 バイタルサインの正常異常と観察」でも少し詳しくまとめています。
呼吸数の平均値
呼吸数の平均値は、成人で毎分15~20回です。呼吸数は体位や精神状態など様々な要因によっても変化します。
新生児の呼吸数は平均で毎分40回程度、幼児の呼吸数は平均で毎分20~30回、小学生くらいからは平均で毎分20回程度になってきます。
呼吸の基本的なリズム
呼吸のリズムは、上記の図のように、「吸気:呼気:休止期=1:1.5:1」が標準的だと言われています。呼吸1回は吸って吐いて1回です。
呼吸が異常な時の対応
呼吸器疾患や代謝疾患などがある場合、呼吸数は正常から外れている場合もしばしばあります。
普段は呼吸に問題のない人が、安静状態で20回以上の場合は異常の可能性があります。
呼吸の乱れは、肺や心臓の異常や、脳の異変などの可能性があります。もちろん精神状態や運動の状況、風邪などによる鼻づまりなども変動因子になります。
すぐに原因は特定できませんが、身体の異常で空気が吸えないか、ガスの交換がうまくいっていない状態なので、他のバイタルサインや、苦しさの有無と合わせて医療に報告します。
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体温とは(英:BT, body temperature, 独:KT, Körpertemperatur)
体温は、身体の温度を表すバイタルサインです。介護看護現場だけでなく、風邪気味の時など一般家庭でもよく行われるバイタルチェックの一つです。
医療機関や介護施設などでは、体温のことを医療略語でBT(ビーティー、body temperatureの略)やKT(ケーティー、Körpertemperatur)と言い、カルテや介護記録などでもこれらの略語(隠語)で記述してあることがあります。
体温の高い・低いと測定のポイント
体温測定の意味
体温は、身体の温度のことです。周囲の温度 と 体内で作られる熱エネルギー で変化します。
普段は平均的な体温である36度代程度に常に調整されていますが、エネルギーをたくさん使う時は上昇します。体温測定は炎症や感染など、体内の異常などの指標になります。
通常の体温計で測定する温度は「皮膚温」といい、体の奥の方の体温は「深部温度」と言い皮膚温度より高いです。皮膚温度は外気で冷やされています。
体の成分の多くは、体温程度の温度ではしっかりと循環しますが、冷えるとになると脂が固まるのと同じような状態になりますので不調が出ます。
免疫力は体温が高い状態の方が活性化されます。詳しくは「発熱(微熱・高熱)・体温調整 バイタルサインを深める」でも紹介しています。
体温の平均値
日本人成人の体温の平均値は36.6℃から37.2℃のあいだです。朝の方が低く、夕方高くなる傾向があります。
体温は、人により差がありますので、その方の平熱を知っておく必要があります。
高齢者の体温の平均は35℃後半から36℃代、幼児・子供は少し高く37℃前後と言われます。
体温が高温の時(発熱時)の対応
体温が上がるときは、身体の中で炎症が起きている場合があります。
深部体温が36℃を下回ると震えが出ると言われます。
発熱と言っても、体温によって呼び方が決まっています。
- 微熱 37.0℃~37.9℃
- 中等度熱 38.0℃~38.9℃
- 高熱 39.0℃以上
風邪に代表されますが、感冒症状(くしゃみ、鼻水、発熱、倦怠感など)や、炎症反応(腫脹、発赤、熱感、疼痛)が無いかを合わせてチェックして、医療に報告します。
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バイタルチェックを測定する場面や測定根拠
バイタルサインを測定することの意義は多岐にわたります。介護や医療の業界では、目の前の人の生命活動という非常にたくさんの情報を客観的に把握することが求められる場面があります。この記事では主要6項目を紹介していますが、これらの項目は全身状態を把握するには最も効率的で一般的なためです。ここで、バイタルチェックの意義と、バイタルサインを測定したことが根拠として扱われる場合について少し考えてみます。
- 体の状態を把握し、健康管理に活かすため
- 通院の判断や診断や経過観察の補助情報のため
- 治療の経過や投薬効果などを追うため
- 外出をする前、運動をする前、入浴する前など、環境や活動量の変化がある前に、体調が安定していることを確認するため
- 事故や急変が起きた時に、状態把握やその後の経過を観察する目安にするため
事故や急変のときバイタルチェック
介護、医療の業界では、心停止・呼吸停止・意識障害などの急変や事故など普段と違うことが起きてしまったときには責任が問われる場面があります。
その時、例えばバイタルサインで正常ではなかったのに報告や相談をせず、その後にさらに病状が悪化してしまった場合や、救急車が来た時にどんな経過なのかを伝えられないなど、ご利用者や連携先も困りますし、場合によっては訴訟などのリスクになります。
些細な事故でもバイタルサインを測定するとともに、事故により体に生じそうな事項について確認して、報告・相談・連絡した旨を記録して、経過についても身元引受人含め報告・連絡・相談していくことが大切です。これらが事故後の経過の把握であり、事故後の責任ある対応にもつながります。
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救急の時には119番通報して救急車を呼びましょう
救急車を呼ぶべきか、それとも病院に直接向かうべきか。多くの人がこのような緊急時の判断に迷った場合には、救急安心センターの電話相談サービス「#7119」を利用しましょう。
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バイタルサインは介護や健康管理の基本
バイタルサイン・バイタルチェックの意味について復習しましたが、これは仕事だけでなく自分や家族などの健康管理にも役立ちます。
生きているサインであるバイタルサインは、見て、聞いて、触れて、観察してみて直観的に「ちょっと普通じゃない状態かも…」と思ったことを、測定機器で裏付ける意味もあります。バイタルサインについては、教養としても知っておいて損は無いかと思います。
ケアマネジャーの転職は、ケアマネ専門の転職サイトを利用しよう
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