往診と訪問診療の違いとは?仕組み・制度・点数・費用まで徹底比較【2026年最新】

「先生に往診をお願いします」「訪問診療の予定はいつですか」
介護の現場でこうした言葉が日常的に使われていますが、実はこの2つの言葉、意味が全く違います。
正直に言うと、介護施設の職員やケアマネジャーであっても、この2つの言葉を区別せずに、実際には違った使い方をしているのを現場でよく耳にします。「今日は往診の日だから」と言っているその訪問が、制度上は「訪問診療」だったり、逆に「訪問診療をお願いした」と言いつつ実際は緊急の「往診」だったりすることも珍しくありません。
言葉の使い方を間違えたところで日常会話としては大きな問題になりませんが、この違いは制度上の枠組み・算定できる点数・利用者の自己負担額に直結する、れっきとした医療保険制度上の区分です。
この記事では、介護現場で正確に理解しておきたい、往診・訪問診療・居宅療養管理指導の違いを、定義から点数・費用感まで整理します。
往診と訪問診療の違い 一番大事な結論から
最初に結論をお伝えします。往診と訪問診療の違いは、ひとことで言うと「計画されているかどうか」です。
| 訪問診療 | 往診 | |
|---|---|---|
| 訪問のきっかけ | あらかじめ計画されたスケジュール | 患者・家族からの突発的な要請 |
| 頻度・周期 | 原則週3回まで(疾病等により例外あり)、定期的・継続的 | 不定期。要請があったときのみ |
| 目的 | 病状の安定維持、進行予防、計画的な医学管理 | 急な体調変化への対応、対症療法、緊急対応 |
| 主な診療報酬 | 在宅患者訪問診療料、在宅時医学総合管理料等 | 往診料(緊急・夜間・深夜加算あり) |
訪問診療とは、あらかじめ計画された日時に医師が患者の自宅や施設を訪れ、定期的に診療を行うことです。毎週○曜日の○時というように計画を立て、1〜2週間に1回程度の割合で定期的に訪問し、診察・処置・薬の処方・相談・管理指導などを行います。治療は疾病進行の予防・状態の維持が主な目的で、長期的・継続的な医学管理が前提です。
往診とは、患者の病状が急に悪化した場合などに、患者・家族等からの要請を受け、医師が必要と判断して患者のもとへ行き診療を行うことです。突発的・緊急的な要請に対して、救急車を呼ぶほどではないがすぐに医師に診てもらいたいというときに、かかりつけ医などに診療を要請するもので、基本的には臨時の診療です。治療内容は対症療法や、看取り場面での対応が主になることが多いです。
なぜ介護現場で言葉が混同されやすいのか
介護施設の現場で混同が起きやすい理由として、以下のようなことが考えられます。
特にケアプラン作成や介護記録においては、この区別が曖昧なまま記載されると、後から「いつ、どのような目的で医師が訪問したか」が追いにくくなります。ケアマネジャーや介護職員が正確な言葉で記録することは、利用者の医療情報を正しく多職種で共有するうえでも重要です。
訪問診療の診療報酬と点数
訪問診療では、主に以下の診療報酬が算定されます。
在宅患者訪問診療料
訪問診療における診療報酬のメインとなる点数です。同一建物居住者(同じ建物で同じ日に複数の患者を訪問診療した場合)であるかどうかで点数が変わります。
| 区分 | 同一建物居住者以外 | 同一建物居住者 |
|---|---|---|
| 在宅患者訪問診療料1 | 888点 | 213点 |
| 在宅患者訪問診療料2 | 884点 | 187点 |
有料老人ホーム等に併設される保険医療機関が、その施設に入居している患者に訪問診療を行った場合は、原則として在宅患者訪問診療料(Ⅱ)152点が算定されます。住宅型有料老人ホーム・特養・特定施設に入居している方の在宅医療では、施設に併設・関連する医療機関が関与するケースも見られます。
なお、在宅患者訪問診療料は「訪問1回ごとの診療」に対する評価です。実際の医療費では、このほかに初診料・再診料、医学管理料、検査、処置、薬剤料、各種加算などが組み合わさる場合があります。そのため、訪問診療を受けた際の窓口負担は、訪問診療料の点数だけで決まるわけではありません。
在宅時医学総合管理料(在医総管)
在宅時医学総合管理料(在医総管)は、通院が困難な患者に対して、包括的かつ計画的な医学管理を継続的に提供することに対する診療報酬です。訪問診療の場面では、訪問1回ごとの「在宅患者訪問診療料」とあわせて、月単位の医学管理として在医総管が関係してくることがあります。
在医総管の点数は、在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院かどうか、機能強化型かどうか、病床の有無、月1回訪問か月2回以上訪問か、単一建物診療患者数、患者の状態、処方せん交付の有無などによって細かく分かれています。そのため、単純に「在支診なら何点」「それ以外なら何点」と一律に説明できるものではありません。
| 点数に影響する主な要素 | 内容 |
|---|---|
| 医療機関の届出区分 | 在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院、機能強化型、在支診以外など |
| 訪問回数 | 月1回の訪問か、月2回以上の訪問か |
| 単一建物診療患者数 | 同じ建物で管理している患者数が1人、2〜9人、10〜19人、20〜49人、50人以上など |
| 患者の状態 | 重症度、難病、末期がん、人工呼吸器使用、医学管理の必要性など |
| 処方せん交付の有無 | 院外処方か院内処方かによって点数が異なる場合がある |
特別養護老人ホーム・有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・認知症対応型共同生活介護事業所など、一定の施設に入居して療養している患者については、在宅時医学総合管理料ではなく「施設入居時等医学総合管理料」が算定される区分になります。特別養護老人ホームや軽費老人ホーム(ケアハウス)に入居中の方の在宅医療は、この点数体系が適用される点に注意が必要です。なお、軽費老人ホームについては、点数表上の対象区分に該当する施設かどうかを個別に確認する必要があります。
2024年度診療報酬改定では、単一建物診療患者の人数区分が「10人以上」から「10〜19人」「20〜49人」「50人以上」へと細分化され、人数が多い区分ほど低い点数になるよう見直されています。高齢者施設やサービス付き高齢者向け住宅など、同一建物内で複数の患者を診療する場合には、単独の自宅に訪問する場合と比べて点数が大きく異なることがあります。
※診療報酬の点数は、医療機関の届出区分、患者の状態、訪問回数、同一建物内の診療患者数、施設種別、加算の有無などによって変わります。本記事では制度理解のための代表的な区分を示しており、実際の請求額は医療機関の明細書や各保険者の案内をご確認ください。
往診の診療報酬と点数
往診では、訪問診療とは別の「往診料」が算定されます。往診料は、患者や家族等からの求めを受け、医師が必要性を認めて患家へ赴いた場合に算定されるものです。定期的・計画的に行われる訪問は、原則として往診ではなく訪問診療として扱われます。
往診料は1回の診療につき1回の算定が可能で、必要性があれば1日に2回以上算定されることもあります。また、往診料は訪問診療料とは異なり、初診料または再診料等とあわせて算定されるため、緊急加算や夜間・深夜加算が重なると、1回あたりの医療費が高くなることがあります。
往診には、訪問のタイミングや医療機関の届出区分に応じて以下のような加算があります。
| 加算の種類 | 時間帯・場面 | 点数の目安 |
|---|---|---|
| 緊急往診加算 | 緊急に往診が必要と判断された場合 | 325点〜850点 |
| 夜間・休日往診加算 | 夜間:午後6時〜午前8時。ただし深夜を除く/休日 | 405点〜1,700点 |
| 深夜往診加算 | 午後10時〜午前6時 | 485点〜2,700点 |
夜間や深夜の急変時に往診を依頼すると、これらの加算が上乗せされるため、日中の訪問診療より点数が高くなる傾向があります。看取り期の対応では、在宅ターミナルケア加算など、死亡前後の診療体制や医療機関の届出区分に応じた加算が算定されることもあります。看取りとは 死と看取り介護の課題と厚労省ガイドラインもあわせてご参照ください。
距離と滞在時間の共通ルール
在宅患者訪問診療料と往診料には、共通する以下の条件があります。
16キロメートルという距離制限は、在宅医療を提供する医療機関の対応エリアを考えるうえでの一つの基準になります。新しく在宅医を探す際、この距離内にある医療機関かどうかも確認のポイントです。ただし、地域の医療資源や患者の状態によって例外的な扱いが認められる場合もあります。
利用者の自己負担額はどう変わるか
訪問診療・往診ともに医療保険(後期高齢者医療制度を含む)の適用対象です。自己負担割合は年齢や所得によって異なります。70〜74歳は原則2割、現役並み所得者は3割です。75歳以上の後期高齢者医療制度では原則1割ですが、一定以上所得者は2割、現役並み所得者は3割となります。
訪問診療は、計画的・継続的な医学管理(在医総管・施設総管等)の点数が毎月発生することがあるため、月単位で見ると一定の費用がかかります。一方往診は、利用したときだけ点数が発生する仕組みのため、頻度が少なければ費用も少なく済みますが、夜間・深夜の緊急往診となると加算によって1回あたりの負担が大きくなることがあります。
医療費が高額になった場合は、高額療養費支給制度の対象になることがあります。月々の医療費の自己負担が一定額を超えた場合に申請できる制度なので、在宅医療の費用が心配な場合はこちらもご確認ください。
居宅療養管理指導との違い 介護保険と医療保険の境界線
もう一つ混同しやすいのが「居宅療養管理指導」です。これは訪問診療・往診とは制度上の根拠が異なる、介護保険のサービスです。
| 訪問診療・往診 | 居宅療養管理指導 | |
|---|---|---|
| 制度の根拠 | 医療保険(診療報酬) | 介護保険 |
| 担当者 | 医師 | 医師・歯科医師・薬剤師・管理栄養士・歯科衛生士等 |
| 主な目的 | 診察・治療・処方 | 療養上の管理・指導、ケアプランへの情報提供 |
| 区分支給限度額への影響 | 対象外(医療保険のため) | 対象外(居宅療養管理指導は区分支給限度額に含まれない) |
居宅療養管理指導は、医師・歯科医師・薬剤師・管理栄養士などが、通院困難な利用者の自宅を訪れて心身の状況や環境を把握し、療養上の管理・指導を行うサービスです。医療職が健康管理や薬剤指導を提供するとともに、介護支援専門員(ケアマネジャー)に対して介護計画の策定に必要な情報提供も行います。
実務上は、医師が訪問診療を行った際に、その医師(または医療機関)が併せて居宅療養管理指導を行うケースも多くあります。つまり同じ訪問の中で、医療保険の訪問診療料と介護保険の居宅療養管理指導費が、それぞれ別の制度から算定されているということです。これが「先生が来てくれている」というひとつの体験の裏側にある、実際の制度の複雑さです。
居宅療養管理指導の対象者・職種ごとの内容・算定要件については居宅療養管理指導とは 対象者や各職種の内容、算定要件など、最新の単位数は居宅療養管理指導費 単位数一覧で詳しく解説しています。
介護施設入居者の場合の注意点
介護施設に入居している方の医療提供の仕組みは、施設の種類によって異なります。
- 特別養護老人ホーム(特養) 配置医師による健康管理が基本。配置医師以外の医師による診療が必要となる場面もありますが、在宅と同じように自由に訪問診療・往診が行われるわけではなく、施設種別や医療保険上の取扱いに注意が必要
- 介護老人保健施設(老健)・介護医療院 施設内の医師・配置医師が医学的管理を担う。通常の在宅患者訪問診療料の対象となる在宅療養とは扱いが異なり、介護保険施設サービス費に医療提供の費用が包括されている部分が大きい
- 特定施設(介護付き有料老人ホーム等) 外部の医療機関による訪問診療・往診が行われることが多い。在宅医療の枠組みに近い形で医療提供が行われるが、施設や協力医療機関の体制確認が重要
- 住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅 在宅と同様に、外部のかかりつけ医による訪問診療・往診を受ける形が基本。施設入居時等医学総合管理料の対象となる場合がある
特養では配置医師による健康管理が基本となりますが、配置医師だけで対応できない医療ニーズが生じる場面もあります。配置医師以外の医師が診療する場合には、医療保険上の取扱いや施設側の体制を確認することが大切です。
老健や介護医療院では、施設内の医師による医学的管理が前提となっており、外部の医師による訪問診療・往診という発想がそのまま当てはまらない場合があります。一方、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、在宅と同じ仕組みに近い形で訪問診療・往診が行われるため、入居前に「どの医療機関が訪問診療に来てくれるのか」「急変時の往診体制はどうなっているのか」を確認しておくことが安心材料になります。
ケアマネジャー・介護職員が知っておきたい実務的なポイント
最後に、介護現場で働く方が押さえておくとよいポイントをまとめます。
在宅医療の制度・加算の全体像については在宅医療の制度・加算、医療連携の居宅介護支援の介護報酬もあわせてご参照ください。在宅療養支援診療所の届出要件や、入院時情報連携加算・退院退所加算など、ケアマネジャーが医療連携の場面で押さえておきたい加算について解説しています。
まとめ
訪問診療は「計画された定期訪問」、往診は「患者・家族等からの要請を受けた臨時訪問」という違いがあり、それぞれ算定される診療報酬も別の枠組みになっています。さらに介護保険の居宅療養管理指導も組み合わさることで、「先生が家に来てくれる」という一つの体験の裏側には、複数の制度が組み合わさっていることになります。
言葉の違いを正確に理解しておくことは、利用者・家族への説明をわかりやすくするだけでなく、ケアプラン作成や記録の精度を高め、急変時の対応をスムーズにすることにもつながります。


