介護場面では下肢筋力や歩行能力の維持向上のために、歩行介助や歩行補助具を使用して歩行の機会を保つことが取り組まれます。

歩行能力が低下して転倒リスクや膝折れリスクがある場合や、認知症などでうまく誘導できないときなどに、両手引き歩行介助で介護者が誘導することもあります。両手引き歩行介助で手を引っ張ると、後ろに寄りかかっているように感じるときは要注意です。
手引き歩行介助を行うと、後ろに寄りかかっているように感じたり、円背の方はおしりや腰が後ろに出る姿勢を助長する事があります。
介助者としては、要介護者が後ろにもたれかかったり、重心が後ろに残っていて重くて誘導しにくいので、「もっと胸を張ってしっかり歩いてください」と声をかけたりはしていないでしょうか?この記事では、理学療法士の立場から、歩行に介助が必要な方の介助歩行を行うときに、ぜひ押さえて欲しい注意点とポイントを紹介していきます。

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両手引き歩行介助で失われる機能はいろいろ

両手引き歩行介助のメカニズム

手引き歩行介助は、視覚障がい者など、道案内的な要因で行われる場合はやむを得ないのですが、だれでも構わず行ってしまう場合は要注意です。

ごく普通に移動していれば備わっている機能を、介助者が使わせないようにして廃用を起こさせる可能性が大きい介助方法です。

重心をコントロールする機能

人のからだは、引っ張られると体は無意識に均衡を保とうと後ろに重心を移します(作用反作用)
歩くこととは、重心を移動させて、進行先に足を出す反復ですが、受動的になると自分で重心の位置を意識しなくなります。 後方重心や円背変形の進行 →尻もち転倒リスク要因

特に、普段シルバーカー歩行を行っている人を、介護場面では両手引き歩行してしまうとなると、普段は押し車を前に押しているのに、介助歩行の時は手を引っ張られるという重心の使い方の混乱が起き、歩行や立位が不安定になることがあります。

足を運ぶ運動機能

歩行時に前に引っ張る介助をしてしまうと、介助なしの歩行と違う足運びになります →足が出にくい →つまづき・転倒リスク要因

安全を確認して進行方向を選ぶ機能

前方から介助すると、介助者におまかせで周りを確認しなくなります。若い人でもカーナビに頼っていたら道を覚えないということがあります。同様ですね。
また、引っ張ってくれると思うと、自分から動くという意欲が減退します。
楽したいという気持ち、おまかせコースでいいやという気持ち、介護職員に引っ張られるという屈辱などいろいろな意味でです。
どの道を通っているか、近道や安全な通り道はどこか、知り合いはいないかなど、自分でどう動くか考えなくなります。 →認知・遂行機能低下、自発性低下

両手引き歩行介助は依存的な動きが習慣化して介護なしで移動できなくなるかも

介助者が、要介護者の両手を引っ張って誘導するという介助方法は、よっぽど丁寧でご自身の重心移動を尊重する方法で行わないと、円背変形の悪化や、しりもち転倒のリスクを高めてしまいます。
使わなければ廃用になるということが介護業界では通念となってきましたが、自分で前側に重心を移そうとしない日々が続けば、その能力が衰えます。
引っ張ってもらって歩く癖がつくと、手すりを持つときも引っ張りますし、シルバーカーを押そうとしても後ろに転びやすくなります。

精神的にも、なんとなく引っ張ってもらえた方が楽なので、自分から動くよりも介護者に声をかけられて引っ張ってもらうのを待つ傾向が強くなることがあります。

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シルバーカー利用者を両手引き介助すると、介助者がいないときの転倒を誘導している

シルバーカー歩行
シルバーカーを使っている方は、前にあるシルバーカーを押しているから歩けています。
このような方に対して、引っ張る介助をしてしまうと、シルバーカーを押す機能も低下します。
なんとなく後ろによろけそうな感じの歩き方になり、中期的にはシルバーカーの使用は危険だという状態になることもあります。

基本的な歩行介助の介助者の位置は、「すぐ隣で」一緒に歩む(側方介助)

杖をつく方の側方からの介助歩行
歩行をする主体は利用者です。その舵取りや重心の移動を妨げてしまうと非常にもったいないです。
目の前に人が立っている状態で歩くって、気分良くないですよ。

本人が主体で歩行していることを尊重することが自立支援の歩行介助

本人が歩いていることを遮らないことが最も自立支援で大切です。

介護者が誘導から支えまですべて行ってしまえば時間が短縮できて楽ですが、せっかく歩行を行っているならばそれの主体性を尊重して支援することは大切です。

上のイラストのように、すぐ隣で介助を!これを「側方介助」や「片脇介助」などと言いますが、職場によって様々ですね。

ただし、介助量についてはすべての人が両手引きや前方に引っ張る介助を行ってはいけないというわけではなく、理学療法士や作業療法士などのアセスメントのもと、必要な介助をおこなっていき、定期的に歩行状態や歩行能力を評価して適切な歩行方法を職員や本人で情報統一していくことが大切です。

機能訓練で両手引き歩行をするとむしろ歩行能力が低下

手引き歩行介助のいろいろなデメリットを紹介してきました。

歩かないよりはましだと言われれば確かにそうかもしれないですし、認知症や視覚障害で誘導という要素がないと目的を果たせない場合もあります。
しかし、多くの場合、両手引きで引っ張られていく介助を受けているのは早くトイレやお風呂に連れていきたいという業務の都合が理由のことが多いです。
この流れで、「機能訓練」「リハビリ」として両手引き歩行で引きずりまわす(言い方は悪いですが)という事もあります。

残存機能や本当の自立度は過介助の中では気付けない

もしも両手引きを行う場合は、立位バランスが相当悪い、不随意運動がある、視覚や認知機能の障害で方向が定まらないなど、両腕を支えないとリスクが高い理由があることが条件になるかと思います。歩行介助ですべて補うよりも、麻痺などが原因の場合には補装具などで機能を補うケースもあります。(医師の判断、専門職の助言があった方が良いです。)

ケースバイケースですが、両手引き歩行介助以外の介助方法はないかと考えてみると、その方の本当の歩行能力が見えてくるかもしれませんよ!

リハビリテーションで残存機能を見つけたり、その方の伸びしろがどこになるのかを考えるときには、介助を最小限にしてどうしているかを観察することが重要です。

むしろ、過介助で動いている中からは、残存機能や潜在能力には気付けず、潜在能力は過介助の中に埋もれたままになってしまいます。

介助なしで動いてみたら、「あれこんなに動ける方だったの?」となることもしばしばあります。もし理学療法士や作業療法士の方がいたら相談してみてください。

専門職がいない場合は、医師や看護師に相談してみましょう。中には骨折後などで足に荷重することが制限されていたり、別の医療的な理由まどで移動方法に禁忌事項があることもあります。

実際に普段より介助量を減らしてアセスメントしてみるときには、すぐに支えに入れる体制で行いましょう。

歩行の評価や移動能力の機能訓練の参考にどうぞ

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