2025年版 医行為ではない具体例、介護職員ができること

医療行為の範囲が明確でないまま、現場で「これって介護職がやっても大丈夫?」と迷う場面は少なくありません。

実際、厚生労働省はこれまで複数回にわたり「原則として医行為ではない行為」の通知や解釈を公表してきました。この記事では、2005年(平成17年)の初通知から、最新の2025年3月に発表されたガイドラインまでを整理・解説し、血圧測定や経管栄養、インスリン補助、吸引、在宅酸素療法、ストーマ処理、服薬介助など、どの範囲までなら介護職員が担えるのかを明確にします。現場で安全・適切に対応できるよう、最新版の情報をぜひ確認してください。

「原則として医行為ではない行為」とは何か?今まで示された内容

「原則として医行為ではない行為」とは、以下の通知において示された行為を指します。

平成17年に初めて厚生労働省が公式に、医療機関以外の高齢者介護・障害者介護の現場等において判断に疑義が生じることの多い行為であって原則として医行為ではないと考えられるものを通知し、その後も何度か見直しがあり、2025年3月にこれまでの内容をまとめ、より実践的にする形で「令和6年度老人保健健康増進等事業 原則として医行為ではない行為に関するガイドライン」が公表されました。

「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)」(医政発第0726005号・平成17年7月26日)

平成17年の厚生労働省通知では、初めて介護職員等が行う行為について具体例が示されました。

医師法第17条等により、医師でない者が医業を反復継続して行うことは禁止されていますが、介護現場等での実務においては過度な拡大解釈が問題視され、次のような行為は原則として医行為ではないと示されました。

原則として医行為ではない具体例

  • 腋下や外耳道での体温測定
  • 自動血圧計による血圧測定
  • パルスオキシメーターの装着(新生児・入院治療中を除く)
  • 軽微な切り傷・擦り傷・やけどの簡易処置
  • 医師等が条件を満たすと判断した場合の以下の服薬介助
    ・軟膏塗布(褥瘡除く)
    ・湿布貼付
    ・点眼薬点眼
    ・一包化された内用薬の内服(舌下錠含む)
    ・坐薬挿入
    ・鼻腔噴霧薬の使用

注1に掲げる追加例

  • 爪切り・やすりがけ(異常や糖尿病がない場合)
  • 口腔清拭(重度歯周病がない場合)
  • 耳垢除去(耳垢塞栓除く)
  • ストーマ排泄物の処理(貼替除く)
  • 自己導尿の補助(準備・体位保持等)
  • 市販浣腸器の使用(用量基準あり)

これらも安全管理と研修が必要であり、病状が不安定な場合は医行為に該当する可能性があります。

「ストーマ装具の交換について」(医政医発0705第3号・平成23年7月5日)

平成23年の厚労省通知では、ストーマ装具の交換は、ストーマやその周囲の状態が安定し、専門的管理が不要であれば、原則として医行為には該当しないとされました。ただし、実施にあたっては医師法第17条等に基づき、医師や看護職員との連携が必要とされ、特に状態が不安定な場合は医行為に該当する可能性があります。業務として行う場合には、研修や監督体制の整備が求められます。

「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(その2)」(医政発1201第4号・令和4年12月1日)

令和4年12月の厚労省通知により、介護現場で判断に迷いやすい行為のうち、医行為に該当しないものが明確化されました。実施には安全配慮や医師・看護職員との連携、必要な場合の研修・指導、記録・報告体制が求められます。以下が原則として医行為ではないとされる具体例です。

原則として医行為でない行為一覧

《インスリン注射準備・確認》

  • インスリン注射の声かけ、見守り、注射器の手渡し・片付け(針抜き除く)・記録
  • 指示された血糖値範囲との照合
  • 指示されたインスリン単位との目盛り照合

《血糖測定》

  • 持続血糖測定器のセンサー貼付、測定値読み取り

《経管栄養》

  • 経鼻チューブのテープ再貼付(皮膚に異常なし)
  • 栄養注入前後の準備・片付け(注入・注入停止は除く)

《喀痰吸引》

  • 吸引器の汚水廃棄、水の補充、洗浄用水の補充

《在宅酸素療法》

  • 指示に基づく酸素マスク等の装着準備・片付け(吸入中の装着・除去除く)
  • 加湿瓶の水交換、機器の拭き取り等の環境整備
  • 医師等の立会いの下で人工呼吸器の位置変更

《膀胱留置カテーテル》

  • 蓄尿バッグからの排尿処理(DIBキャップ開閉含む)
  • 尿量・尿色の確認
  • チューブ固定用テープの再貼付
  • 医師等の確認があれば陰部洗浄

《服薬等介助》

  • 条件下での以下の服薬介助:
    ・水虫や爪白癬への塗布(褥瘡除く)
    ・吸入薬の吸入
    ・分包液剤の内服
    (※条件:①容態安定 ②継続観察不要 ③専門的配慮不要)

《測定》

《食事》

  • 食事介助(とろみ食含む)

《口腔・義歯》

  • 有床義歯(入れ歯)の着脱・洗浄

《注1:補足》
以下の患者については、酸素マスク等のズレを元に戻すことも医行為に該当しない

  • 自力で戻せない肢体不自由者
  • 睡眠中や意識のない者

 

このような歴史があったことを踏まえて、ここから先は2025年3月に公表された「令和6年度老人保健健康増進等事業 原則として医行為ではない行為に関するガイドライン」の内容から抜粋したものになります。

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原則として医行為ではない行為の考え方

「原則として医行為ではない行為」は、介護職員が日常的に行う行為の中で、法律上医師免許がなくても実施可能とされるものを指します。ただし、利用者の病状が不安定であったり、専門的管理が必要な場合には医行為に該当する可能性があるため、医療職との連携と判断が重要です。万が一事故が起きた場合の法的責任は、医行為であるか否かに関係なく個別に判断されるため、現場では慎重な対応が求められます。

介護職員の知識や経験には差があるため、事業所では多職種による情報共有、技術研修、緊急時対応の整備など、組織的な体制を整えることが不可欠です。特に、医療職が常駐しない在宅サービスでは、外部医療職との具体的な連携方法を事前に決めておく必要があります。

利用者や家族には、当該行為の内容や留意点を丁寧に説明し、理解と同意を得ることが求められます。また、行為後の振り返りや多職種とのカンファレンスも、サービスの質と安全性を高めるうえで有効です。

管理者には、事故時の迅速な報告、原因分析、再発防止策の整備、賠償責任保険の加入、職員研修の充実など、組織全体の安全とサービス品質を確保する役割が期待されます。ヒヤリ・ハットも共有し、改善の機会とすることで、職場全体の意識向上と事故予防につながります。

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「原則として医行為ではない行為」の条件一覧

番号 通知上の条件
1 病状が不安定であること等により専門的な管理が必要な場合には、医行為であるとされる場合もあり得る。このため、介護サービス等事業者においては、サービス担当者会議の開催時等に、必要に応じて、医師、歯科医師又は看護職員に対して、そうした専門的な管理が必要な状態であるかどうかを確認することが考えられる。さらに、病状の急変が生じた場合その他必要な場合は、医師、歯科医師又は看護職員に連絡を行う等の必要な措置を速やかに講ずる必要がある。
2 測定された数値を基に投薬の要否など医学的な判断を行うことは医行為であり、事前に示された数値の範囲外の異常値が測定された場合には医師、歯科医師又は看護職員に連絡することが望ましいとされており、介護サービス等の業務を行う職員として業務として実施者に対して一定の研修や訓練が行われることが望ましいとされている。
3 医行為に該当しない行為であっても、事故防止のため、本人の安全に十分配慮するとともに、安全にこれらの行為が行われるよう監督することが求められる。
4 看護職員による実地指導がなされている場合には、具体的な手技や方法をどのような計画に基づいて行うとともに、その結果について報告、連絡、相談することが重要である。
5 利用者の動揺状態が著しく、病状が不安定である場合には、対応が必要である。
6 当該業務の実施にあたっては、利用者本人や家族の希望等を尊重し、個別に実施内容、介護職員等の実施する行為について利用者本人や家族に対して説明を行うとともに、その同意を得ることが望ましい。また、必要に応じて、サービス担当者会議の開催時等に、医師、歯科医師又は看護職員に相談する。必要に応じて事前に指示を受けることも考えられる。さらに、病状の急変が生じた場合その他必要な場合には、医師、歯科医師又は看護職員に連絡を行う等の必要な措置を速やかに講ずる必要がある。
7 医療の使用・服薬の前提が介助に該当するものであっても、介助が困難である場合には、看護職員によって実施されることが望ましく、また、その配置がなされることも望ましい。
8 利用者が概ね以下の3つの条件をすべて満たしていない場合には、医師、歯科医師又は看護職員が服薬し、これらの免許を有しない者による医薬品の使用のうち投薬に該当する行為を行うことはできないとされている。① 原則として当該薬剤を自己の意思により使用することができ、医師又は歯科医師の処方及び薬剤師の服薬指導の上、看護職員の保険指導・助言等に基づいた医薬品の使用を自ら行うことができること。② 同一の薬剤を日常的に使用していること。③ 服薬時に投薬支援の必要があるものの、医師又は看護職員による連絡が容易な経過観察が必要である場合ではないこと。

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行為ごとの通知上の条件

血圧等の測定関係

No. 行為 1 2 3 4 5 6 7 8
1 水銀体温計・電子体温計により腋下で体温を計測すること、及び耳式電子体温計により外耳道で体温を測定すること
2 自動血圧測定器により血圧を測定すること
3 半自動血圧測定器(ポンプを含む)を用いて血圧を測定すること
4 新たに導入されたものを除き日常生活で差異がないものに対して、動脈血酸素飽和度を測定するため、パルスオキシメータを装着すること
5 新たなものや特定機種測定器のセンサーの貼付や当該測定器の測定値の読み取りを含まない、血糖値の確認を行うこと

血糖測定関連

No. 行為 1 2 3 4 5 6 7 8
6 利用者への持続血糖測定器のセンサーの貼付や当該測定器の測定値の読み取り といった、血糖値の確認を行うこと

在宅等の介護場面におけるインスリンの投与の準備・片付け関係

No. 行為 1 2 3 4 5 6 7 8
7 在宅等の介護場面においてインスリン注射の実施に当たって、利用者が介護職員等に説明を行い、事前に医師等からの指示があり、当該血糖値があらかじめ医師から指示された血糖値の範囲と合致していることを確認して行うこと
8 在宅等の介護場面においてインスリン注射の実施に当たって、利用者が準備したインスリン注射薬を介護職員等があらかじめ医師から指示されたインスリンの単位数をそのまま読み取ること
9 在宅介護等の介護現場におけるインスリン注射の実施に当たって、利用者が準備したインスリン注射器の目盛りが、あらかじめ医師から指示されたインスリンの単位数と合っているかを読み取ること

経管栄養関係

No. 行為 1 2 3 4 5 6 7 8
10 皮膚に発赤等がなく、身体へのテープの貼付に当たって専門的管理を必要としない利用者について、既に留置されている経管胃管等のチューブが外れた場合に再度貼付ける行為
11 経管栄養の準備(栄養を注入するための行為、および片付け)

食事介助関係

No. 行為 1 2 3 4 5 6 7 8
12 食事(とろみ食を含む)の介助をすること

嚥下吸引関係

No. 行為 1 2 3 4 5 6 7 8
13 吸引器を使用したたんの吸引、経口吸引の補助、吸引チューブの洗浄等

在宅酸素療法(HOT)関係

No. 行為 1 2 3 4 5 6 7 8
14 在宅酸素療法における酸素マスクやカニューレの装着・補正(流量調整を除く)
15 酸素吸入装置の清掃、鼻カニューレの交換(医師指示下)
16 在宅人工呼吸器の使用に関する医師の指示下での準備と操作
17 酸素マスクや鼻カニューレの一時的なずれの補正・元に戻す行為

膀胱留置カテーテル関係

No. 行為 1 2 3 4 5 6 7 8
18 膀胱留置カテーテルの蓄尿バックからの尿廃棄(DIBキャップの開閉を含む。)を行うこと
19 膀胱留置カテーテルの蓄尿バックの尿量及び尿の色の確認を行うこと
20 膀胱留置カテーテル等に接続されているチューブを留めているテープが外れた場合に、あらかじめ明示された貼付位置に再度貼付を行うこと
21 専門的管理が必要無いことを医師又は看護職員が確認した場合のみ、膀胱留置カテーテルを挿入している利用者の陰部洗浄を行うこと

排泄関係

No. 行為 1 2 3 4 5 6 7 8
22 ストマ装具のパウチにたまった排泄物を捨てること。(肌に接着したパウチの取り替えを除く。)
23 専門的な管理が必要とされない、肌への接着面に皮膚保護機能を有する肌に密着したストーマ装具を交換すること。
24 自己導尿を補助するため、カテーテルの準備、体位の保持などを行うこと
25 市販のディスポーザブルグリセリン浣腸器(※)を用いた浣腸(条件あり)
※ 挿入部の長さが 5 から 6 センチメートル程度以内、グリセリン濃度 50%、成人用の場合で 40 グラム程度以下、6 歳から 12 歳未満の小児用の場合で20 グラム程度以下、1 歳から 6 歳未満の幼児用の場合で 10 グラム程度以下の容量のもの

その他関係(入れ歯・義歯、歯磨き、爪切り、耳掃除)

No. 行為 1 2 3 4 5 6 7 8
26 有床義歯(入れ歯)の着脱および洗浄
27 重度の歯周病がない者への歯磨きや義歯の清掃(汚れの除去含む)
28 爪の切り揃え(皮膚疾患や爪の病変のない場合に限る)
29 耳垢を除去すること(耳垢塞栓の除去を除く)
30 軽微な切り傷、擦り傷、やけど等について、専門的な判断や技術を必要としない処置をすること(汚物で汚れたガーゼの交換を含む。)
※切り傷、擦り傷、やけど等に対する応急処置を行うことを否定するものではない。

服薬介助関係

No. 行為 1 2 3 4 5 6 7 8
31 皮膚への軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く。)を介助すること
32 皮膚への湿布貼付
33 点眼薬、点鼻薬の補助
34 一包化された内用薬の内服(舌下薬含む)の介助
35 肛門からの坐薬挿入の補助
36 鼻腔粘膜への薬剤噴霧を介助すること
37 水虫や爪白癬に対する外用薬の塗布を介助すること
38 吸入薬の吸入介助
39 分包された液剤の投与介助

ガイドラインでは、「原則として医行為ではない行為」について、介護職員が安全に当該行為を実施できるように、基本的な手技や一般的な観察項目などを記載していますので、詳細はガイドラインをご確認ください。

「原則として医行為ではない行為に関するガイドライン」は、株式会社日本経済研究所のホームページ(https://www.jeri.co.jp/report/elderlyhealth-r6)に掲載し、公開されています。

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吸引や経管栄養はを研修を完了した介護職員でもできますが、事務手続きは必要

吸引や経管栄養は、一定の研修を修了した介護職員であれば実施可能ですが、実施には事業所として都道府県等への届出や、医師・看護職員との連携体制、マニュアル整備、本人や家族の同意取得などの事務手続きが必要です。

「私は研修を受けた人だから、喀痰吸引も経管栄養もできます!」というだけだと実施できず、事業所として介護職員が喀痰の吸引や経管栄養ができる準備が整っているのかを確認しないとなりません。制度上の要件を満たし、安全管理を徹底することが求められます。

 

 

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