介護職員・美容師がカミソリで髭剃り・顔剃りする行為は避けるべきであると、厚生労働省は理容師法第1条 の2、第2条、第3 条、第6条を根拠に見解を示しました。
介護施設や訪問ヘルパーなどが、ご利用者の髭剃りを担当することがありますが、本人がカミソリで剃る分には問題ないですが、職員がT型カミソリやL形カミソリを持って剃る行為を行うことはできません。美容師についても髭剃り顔剃りは認められていません。
その後、「カミソリでの髭剃りも可能だが、十分に気を付けて」という回答も厚生労働省から出てはいるが、筆者としてはカミソリはお勧めできない。
デイサービス・老人保健施設・老人ホーム・ショートステイ・訪問介護などで、ご利用者のヒゲそり介助する方法・コツ、おすすめの電気シェーバー、必須の機能「キワゾリ刃」についてまとめました。
介護施設では主にご高齢の要介護認定者の日常生活上のお手伝いをするのですが、「整容」に分類される介護業務の一つ、男性の「髭剃り」はいろいろな課題を含んでいます。
このページの目次
- 介護職員がT字カミソリで高齢者の髭剃りを行うリスクと課題
- 髭剃りはADL評価の整容に含まれるが、カミソリによる理容は介護に含まれない
- 介護職員による女性のムダ毛処理、わき毛処理についてもカミソリは原則禁止
- 理容師法で定める業務範囲と介護職や美容師のカミソリでの髭剃りについて
- 介護保険施設の入所者等に対する髭剃り行為について(通知)(福岡県保健医療介護部介護保険課)
- 介護施設・老人ホームでは電気シェーバーの用意を依頼
- 髭剃り介助する介護職員が喜ぶ、おすすめの電気シェーバー
- 介護場面での髭剃り介助方法のコツ
- 介護施設・老人ホーム入所時や入院時におすすめの電気シェーバー
- ご利用者にも介護スタッフにもストレスの少ない道具を
介護職員がT字カミソリで高齢者の髭剃りを行うリスクと課題
カミソリによる髭剃りは現状では理容行為であり医療行為になる可能性も
カミソリで髭を剃るという行為を、自分自身で行う分には全く問題のない生活上の行動ですが、これを他人が行うとなると理容師の業務範囲の理容業務であり、人体を傷つける恐れのある医療行為となる可能性があります。理容師法の解釈としては、介護サービスの中のことならば一応理容の業には該当しないこととされてはいます。
カミソリは刃物なので介護施設で安全管理が難しい問題
カミソリは髭剃り用として一般的に使用されていて、銃刀法違反などには当たりません。しかし、カミソリも刃物であるため飛行機の中に持ち込めない物品です。
介護施設では個室の場合も多床室の場合も職員の目に見えないところでカミソリを使用て怪我をしたり、認知症の方などが使い方を誤って傷つけてしまったりする事故リスクがあります。
そのため、健常でカミソリを使用することができる方でも、施設全体としてカミソリの持ち込みを遠慮していただく施設もあります。
カミソリは感染リスクがあり使いまわしができない
髭剃りの道具はカミソリです。血液や体液が付着するおそれがあり、自分専用のものを使っていただかないとなりません。理容師は衛生面含めて安全なカミソリの管理方法や使用方法を身に着けて合格した資格者です。床屋さんでは紫外線の消毒滅菌設備などを用意して感染対策を行っています。安易に使いまわしたり、代用したりできないのです。
介護職員の髭剃りについての解釈 参考資料
Q23 訪問介護員等が髭剃りを行うことは可能か。
A23 利用者に対し、「カミソリ(T字カミソリ含む。)を使用しての髭剃り」は、必要な知識及び技能をもって行う「理容」であり、理容師法に抵触する(理容師免許を受けた者でなければ理容を業としてはならない)おそれがあるため、訪問介護員等が行うことはできない。
また、「理容」は訪問介護サービスの内容に含まれないため、理容師免許を持ったヘルパーが理容を行った場合でも介護保険給付の対象とならない。
なお、「電気カミソリを使用しての髭剃り」は、一般的に専門的な知識及び技能が不要であり、「理容」には当たらないと考えられることから、訪問介護員等が行って差し支えないものと考える。
ただし、電気カミソリを使用する場合は、1つの電気カミソリを複数人で使用することは避け、利用者本人の電気カミソリを使用することを原則とするなど感染症予防に十分注意すること。
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髭剃りはADL評価の整容に含まれるが、カミソリによる理容は介護に含まれない
髭剃りは剃らなくても生命にかかわることはありませんが、毎日髭は伸びるので男性にとっては大切な整容のADLです。
日常生活動作(ADL)の評価指標のBarthel Index(バーセルインデックス)では、整容の評価項目に髭剃りも含まれています。
しかし、専門的な技術がないと身体を傷つける恐れがある「カミソリ」を使用して、高齢者や要介護者の髭を剃ってあげるという行為は「理容」に当たります。
解釈的には、電気シェーバーならば専門的な技術を必要としないので整容として髭剃り介助を行ってよいラインとしています。
自立や社会復帰へのきっかけは身だしなみを整えることからなどと言われ、床屋さんで髪や髭をさっぱりすることである「理容」は気持ち新たになると言われますし、訪問理美容などのサービスも増えてきていますので本格的な髭剃りは理容師にお願いしたいですね。
介護業務でT型カミソリ・L型カミソリでの髭剃りは禁止した方が無難
介護施設では、ドラッグストアやスーパーなどで購入できる一般的に使用されるT型カミソリ(T字カミソリ)、床屋さんなどが使用するL型カミソリともに、介護職員がカミソリを握って剃る行為を行うことは原則避けるべきです。ご本人がカミソリを握って剃っているのを見守る形ならば自立支援の観点からも可能と言われています。(髭剃りを安全に行えているかについて観察し、不適切な場合は家族やケアマネーシャー等と電気シェーバー等を検討する必要はあります。)
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介護職員による女性のムダ毛処理、わき毛処理についてもカミソリは原則禁止
カミソリによる髭剃りを介護職員が介助可能かについて紹介してきましたが、女性に対してもムダ毛、わき毛、すね毛、腕毛などいろいろな毛がはえます。
カミソリで髭剃り介助を介護職員が行うことが非推奨であること同様に、女性へのムダ毛処理も介護職員が代行(全介助)する場合には「レディースシェーバー」を使用する必要が出てきます。
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理容師法で定める業務範囲と介護職や美容師のカミソリでの髭剃りについて
厚生労働省の規制緩和案をまとめた検討資料です。
NPO法人 日本理美容福祉協会 札幌センター が中心に、「介護福祉施設で訪問美容した時に、美容師にも顔剃りさせて下さいよ~」とかけあったときに、「介護職員は髭剃りいつもしてるじゃん!」と言うと、「介護従事者にもカミソリでの顔そりは認めていない!」と回答された資料です。(簡略化してありますので、以下の引用リンクをご参照ください。)
理容師法第1条 の2、第2条、第3 条、第6条 について
理容師法は、理容の定義について「頭髪の刈込、顔そり等の方法によ り、容姿を整えること」とし、これを業として行うことができる者を理容師に限定しており、理容師免許は、厚生労働大臣が指定する養成施設におい て、理容を業として行うに際して必要な法令の内容、理容において使用 する器具の取扱方法及び理容の専門技術等を習得し、養成施設を卒業 後に国家試験である理容師試験に合格した者に与えられている。 顔そり等については、まさに「理容」行為に該当し、上述のとおり、理容 に関する専門的知識・技術を有しているとして免許を与えられている理容 師のみがこれを業として行うことが可能なものとなっている。 したがって、顔そり等を業として理容師以外の者が行うことは、現行の理容師法に基づく理容師制度の存在意義を否定するものと等しく、仮に 御提案にあるように場所及び対象者を限定するとしても、これを認めることは困難である。
顔そり等は理容行為に該当し、理容に関する専門的 知識・技術を有しているとして免許を与えられている理 容師のみがこれを業として行うことが可能なものとなっ ており,また,身体が不自由などの理由により理容所 に来ることができない方は,法令上出張理容の対象と して位置付けられ,出張理容サービスを受けることが できることとなっている。そのため,美容師が顔そり等を行うことを認めることは困難である。 なお,介護従事者であっても,かみそりによる顔そり等は認めていない。
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介護保険施設の入所者等に対する髭剃り行為について(通知)(福岡県保健医療介護部介護保険課)
福岡県保健医療介護部介護保険課長、福岡県保健医療介護部保健衛生課長の連名で通知された『介護保険施設の入所者等に対する髭剃り行為について』では、以下のように通知されています。
電気シェーバーやT字カミソリといった入所者等本人の持ち物で、介護保険施設等の職員が髭剃りの介助を行うことは、介護サービスの一環で行うものであり、理容師法(昭和 22 年法律第 234 号)における理容の業には該当しないこととされています。
しかしながら、介護保険施設等において入所者等の髭剃りを行う際には、剃り傷などの事故の発生防止の観点から、T字カミソリの使用はできるだけ避けてください。
また、髭剃りに使用する用具については、必ず入所者等本人のものを使用するとともに、洗浄、消毒等により清潔を十分に保つようにしてください。
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介護施設・老人ホームでは電気シェーバーの用意を依頼
介護職員は、ご利用者ができないことは介助しますし、できそうなことは自立支援の姿勢で接してできない部分をお手伝いします。しかし、髭剃りや歯ブラシなど、原則自分で用意していただかなければならない道具がないと、モヤモヤしちゃうのです。
介護における髭剃りの問題は、医療・理容・介護・倫理に関わる非常に難しい問題です。カミソリを使った髭剃り介助は介護施設では原則行えないため、電気シェーバーを必ず用意して介護施設に入所・入居していただきましょう。介護職員の方も、この記事を参考にしてご利用者やご家族に『介助者が髭剃り介助しやすく、タフな電気シェーバー』を用意していただくよう促してみてください。
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髭剃り介助する介護職員が喜ぶ、おすすめの電気シェーバー
介護施設で髭剃りのための電気シェーバーを選ぶときの大原則があります。絶対に「旅行用」や「簡易タイプ」は避けてください。
当たり前ですが、介護施設に入って髭を剃るのは毎日続きます。また、ご高齢で加齢により剃りにくくなっているところに加えて、簡易タイプではきれいになんて剃れません。電気シェーバーも中身はカミソリなので消耗品です。介護施設に預けていても、定期的に買い替えをしなければならないものだということは覚えておいてください。
介護施設では防水設計で水洗い可能・キワゾリ刃付きは必須
先ほど簡易型の髭剃りは良くないという話をしましたが、理想的な機能はこれです。
- 防水設計で水洗い可能
- キワゾリ刃付き
- 充電スタンド付き
キワゾリ刃とは、電気シェーバーのバリカンのような部分
キワゾリ刃というのは、このバリカンの様な部分です。キワゾリ機能は、モミアゲのきわの仕上げやあごのくせ髭(ひげ)の処理になどを介護職員やご本人が綺麗に剃るときに重宝します。
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介護場面での髭剃り介助方法のコツ
介護サービスを利用する要介護者の髭剃りをするとき、ご高齢者は皮膚がたるんでいたり、剃り忘れて髭が伸びてしまいがちです。たるんだ皮膚に生えている髭やちぢれた毛は、ヘッドだけでは剃りきれないこともよくあります。
首の方に生えてしまった髭を剃りたくて苦戦していると時間があっという間に経ってしまいますし、何度もこすりつけていると皮膚を傷めます。
キワゾリ刃があれば、たるんだ皮膚をうまく手繰りながらサクサク剃れます。
介護中の髭剃りにキワゾリ大切です。もちろんキワゾリ刃を強く押し付ければ表皮を傷つけてしましますので、説明と同意、安全管理には気を付けてください。
髭や顔を剃るということは、本来であれば本人もしくは理容師が行うことが望ましいですので、出張理容サービスや床屋さんなどの利用を促していきさっぱりしてもらうのも良いと思います。
ちなみにデイサービスなどで理美容サービスを提供している人にきてもらい、カットやカラー、顔そり、髭剃りなどの理美容サービスを行うことは可能なのかについては、以下の記事でまとめています。
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介護施設・老人ホーム入所時や入院時におすすめの電気シェーバー
介護施設・老人ホームへの入所・入院などで電気シェーバーの持ち込みを要求されたとき、迷った時は、Amazonでも口コミ高評価、価格コムで人気で、私自身もご利用者の介助で使い勝手も良いので、以下のメンズシェーバーなどが良いかと思います。
ブラウン シリーズ7 メンズシェーバー
パナソニック ラムダッシュ メンズシェーバー
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ご利用者にも介護スタッフにもストレスの少ない道具を
介護は髭剃り含めて、ご本人、ご家族、介護に当たる職員の共同作業です。
髭剃りは男の人ならば毎日行う整容行為であり、顔の印象を大きく変える要素です。髭を剃らなくても死にはしませんが、容姿のことは誰でも気になるためQOLには関わってくる課題です。
みんなで気持ちよく関わっていけるよう、道具や環境の面も整えていきたいですね!
ケアマネジャーの転職は、ケアマネ専門の転職サイトを利用しよう
ケアマネジャーの転職はケアマネ専門の転職サイトの利用が安心です。自分で求人を探したり、人づてに紹介してもらったりする場合、本心では希望している条件をいろいろ我慢してしまいがちになります。転職サイトを挟むことで、希望に合う職場を見つけてもらい、見学・面接対策・条件調整なども行ってもらえるので、希望理由や面接対策で悩んだりすることも減ります。新人ケアマネも、ベテランのケアマネも専門の転職サイトの方がケアマネの求人情報を多く持っています。
居宅介護支援事業所では人手不足状態、ケアマネージャー、主任ケアマネージャー資格を有する人の求人が増えています。多くの転職サイトは介護の仕事のおまけのような感じでケアマネの転職支援をしていますが、ケア求人PECORIだけはケアマネ専門なので、登録して電話面談するときにもケアマネとしての状況や今後の働き方、賃金の相場などを相談しやすいです。
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