平均寿命が延長するにつれて健康予防に注目が集まっていますが、介護予防としては老年症候群としてよく取り上げられる足腰の力や体力に目が行きがちです。
体力や足腰の力と同じぐらい大事な力として「嚥下機能≒飲み込む力」を維持していくことがとても大事なのです。
嚥下機能は、高齢者の多くが罹る可能性が高い「誤嚥性肺炎」の予防に密接に関係しています。
今回は誤嚥性肺炎を予防するために大事な ①リハビリ ②食事の姿勢 ③食事形態 について簡単にお伝えしていきたいと思います。
このページの目次
誤嚥性肺炎とは
誤嚥が原因で肺炎に罹患することを「誤嚥性肺炎」と呼びます。食べ物や唾液などが誤って気管に入ることを「誤嚥」と呼びます。また、誤嚥した場合に私たちは、むせたり咳込んだりしますよね。むせや咳き込みが通常の誤嚥のサインになりますが、高齢者など嚥下機能が低下すると誤嚥していてもむせないことがあり、急に肺炎になる場合があります。これを「不顕性誤嚥」と呼びますが、予防するためには嚥下機能の維持が不可欠です。
肺炎は高齢者の死因の上位で死亡率も高い
実は、高齢者の死因は悪性新生物や心疾患・脳血管障害に次ぎ、「肺炎」が挙がり、死亡率が高い注意すべき病気になっています。
嚥下機能の低下には加齢の他に脳疾患や、神経筋疾患、心因性などの影響があります。
加齢に伴う嚥下機能の低下には適切な段階で予防する事で嚥下機能を維持していくことが可能ともいわれています。
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誤嚥の種類
嚥下障害があり、摂食時の誤嚥から誤嚥性肺炎に至る場合
病気の後遺症などで嚥下障害あり、誤嚥をしてしまい全身状態が不良な場合は肺炎を起こしやすいです。事前に嚥下評価などを行い口腔機能や嚥下機能の状態に応じた食形態やとろみなどを検討すること、誤嚥しにくい食事姿勢をとることなどが予防策になります。
経口摂食をしていない場合の誤嚥性肺炎
臥床中に唾液を誤嚥(唾液に混ざった口腔内の細菌を誤嚥)するなどで、食事を直接摂取した場合でなくても全身状態が良くない場合には肺炎を起こしやすいです。
普通に食べているように見えたが誤嚥性肺炎と診断される場合(不顕性誤嚥)
高齢者など嚥下機能が低下すると誤嚥していてもむせないことがあり、急に肺炎になる場合があり、不顕性誤嚥と呼ばれています。
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誤嚥性肺炎対策のための嚥下障害に対するリハビリテーション
嚥下障害に対するリハビリテーションは「直接訓練」と「関節訓練」があります。
摂食嚥下に関する仕組みや誤嚥について詳しく知りたい方は、以下の摂食嚥下のメカニズムの記事をご覧ください。
嚥下障害に対する直接訓練とは
嚥下障害に対する直接訓練とは、嚥下障害(飲み込みの障害)に対して、飲み込みの訓練を直接行うことを指します。
嚥下障害に対する直接訓練では、柔らかいものから段階的に食事形態を調整し実際に食べ物を飲み込むことを目標とした訓練を行います。
よく行われる技法としては、飲み込んだ後も何度か咀嚼し残渣(口腔内に残る物)を防ぐ「複数回嚥下訓練」や食物と少量の水分など形状の異なる物を交互に摂取する「交互嚥下訓練」などが用いられます。直接訓練は場合によっては誤嚥を生じる可能性もあるため、必ず専門職に相談し吸引器などを準備した状態で行うのが望ましいでしょう。
嚥下障害に対する間接訓練とは
嚥下障害に対する間接訓練とは、嚥下のための準備といった内容で実際に食べ物を使うことはありません。
間接訓練の内容としては、口唇や舌、頬の運動や「パタカラ体操」などの発声練習、口腔ケアの際のアイスマッサージ、呼吸筋のリラクゼーションが行われることが多いです。
間接訓練の特徴としては、病院ではなく在宅やデイサービスなどで、ご家族や介護職員でも危険なく取り組めるため、嚥下機能を予防していくにはとても大切になります。
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誤嚥性肺炎予防のために食べる人の姿勢に注目しよう
食事の際の座位姿勢によって誤嚥のリスクは変わります。
最も大切なのが座った際に「体幹および頸部の後屈」が起こらないように注意することが必要です。
食事の時に適切な座位姿勢になるように、体幹が不安定な場合はクッションなどでポジショニングを行い補正することも可能です。
またご自身で食事摂取ができない場合には、食事介助をこともあると思いますが、その際は「介助者の目線の高さ」で「介護を受ける方と同じ高さにする」ことに配慮してください。
理由として立ったままで食事介助を行うと、食べる方の視線が上を向き自然と頸部の後屈を促進してしまう危険性があるためです。(介助者が上の方から食事を口に運ぶ介助をするとちょうど図のような姿勢になり誤嚥リスクが高まります)
ぜひ食事介助を行う際は、座って目線の高さをそろえて介助を行うように気を付けましょう。
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誤嚥の予防のためにユニバーサルデザイン食を活用しよう
嚥下機能が低下すると誤嚥および誤嚥性肺炎のリスクが高まるという話してきました。
食事形態についてですが、介護用食事にもユニバーサルデザインがあるのをご存知でしょうか?
この記事では概要を紹介していますが、気になる方は以下の記事で詳しく紹介しています。
嚥下機能と食事形態に合わせたユニバーサルデザインフードの選び方
日本介護食品協議会では、消費者の皆様が分かりやすいように、ユニバーサルデザインフードの商品の基準を「かたさ」や「粘度」の規格で4つの区分と「とろみ調整」という表示で統一しています。
ユニバーサルデザインフード 区分1: かたいものや大きいものはやや食べづらいが、普通に飲み込める。
ユニバーサルデザインフード 区分2: かたいものや大きいものは食べづらく、ものによっては飲み込みづらいことがある。
ユニバーサルデザインフード 区分3: 細かくまたはやわらかければ食べられるが、水やお茶が飲み込みづらいことがある。
ユニバーサルデザインフード 区分4: 固形物は小さくても食べづらく、水やお茶が飲み込みづらい。
引用;ユニバーサルデザインフードとは - 日本介護食品協議会
「食べやすさ」に着目し食べる人の「かむ力」と「飲み込む力」に合わせた「介護食」のことで、嚥下や口腔機能の状態に合わせて食事形態を4段階に分け市販されています。
実際介護食を作るとなると「刻み食」や「とろみ食」など介護する側としても負担に感じることもあるかもしれません。市販であれば再現性も高く、最近では味付けもかなり多くの味付けがあります。最初は嚥下状態を看護師や栄養士など専門職に相談し、活用を検討するのもおススメです。適切な食事形態で経口摂取を続けることも立派な誤嚥性肺炎の予防へと繋がります。
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まとめ
誤嚥性肺炎と聞くと経口摂取を続けていくのに不安に感じてしまいますよね。
口腔内の清潔を保つのはもちろんですが、嚥下のリハビリや経口摂取を続けることで嚥下機能を維持し、どれが誤嚥性肺炎の予防にも繋がっていきます。
食事を楽しみ、その人らしく過ごすことができるためにも、誤嚥性肺炎予防を上手に日常に取り入れてみてください。
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