ヒヤリハットとは?医療介護での事例と対策、報告書の書き方
 

介護現場で働く職員にとって、日々の業務は利用者の安全と快適な生活を支える重要な役割を担っています。しかし、予期せぬ状況や小さな注意散漫が、大きな事故につながる可能性を秘めていることも事実です。このような「もう少しで事故になりかねない」という状況を「ヒヤリハット」と呼び、これを適切に管理することは、介護現場での事故を未然に防ぎ、質の高いケアを提供する上で不可欠です。本記事では、ヒヤリハットの基本的な理解から、具体的な事例、報告書の書き方、対策と予防、さらにはスタッフや利用者、家族への適切な対応方法まで、介護職員が知っておくべき全てを網羅的に解説します。

ヒヤリハットとは

ヒヤリハットの定義とは

ヒヤリハットとは、介護現場などで発生した事故に至らなかったが、もう少しで事故になりかねないと感じるような状況や出来事を指します。この言葉は、日本の厚生労働省によっても用いられ、介護現場での安全管理や事故防止のための重要な概念とされています。ヒヤリハットは英語なのではないかと思う方もいるかと思いますが、英語でヒヤリハットを表現するとしたら「Near Miss accident」となり、ニアミス(ミスに近い出来事)のような形になります。

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ヒヤリハットとハインリッヒの法則

ヒヤリハットの考え方は、ハインリッヒの法則に基づいています。この法則は、大きな事故の背後には数多くの小さなインシデントやヒヤリハットが存在し、これらを未然に防ぐことで事故そのものを減少させることができるという理論です。つまり、ヒヤリハットを適切に管理し、対策を講じることが、介護現場での安全を守る上で非常に重要になります。

ハインリッヒの事故予防の原則(1:29:300の法則)

事故とヒヤリハットの違い

ヒヤリハットと事故の主な違いは、結果にあります。

項目 事故 ヒヤリハット
定義 人の死傷や物的損害など、実際に損害が発生した出来事 今回はたまたま無事だったが、次に同じ状況が起これば事故につながりかねない危険な出来事
結果 物理的、精神的な損害を伴う実際の被害が発生している 直接的な被害は発生していないが、潜在的な危険性をはらんでいる
目的 事故の原因を分析し、再発防止策を講じることにある 危険を未然に防ぐため、潜在的なリスクを特定し、対策を講じることにある
対応策 事故後の対応(救急処置、報告、原因調査、再発防止策の実施など) リスク評価、教育・訓練の強化、作業環境の改善など、予防策の実施
事例 転倒して骨折する、機械に指を挟んで裂傷するなど 転倒しそうになったが支えられた、機械に手が近づいたが事前に停止したなど
重要性 事故は発生した後の対応が中心で、具体的な損害や影響の評価が必要 ヒヤリハットは予防が中心で、潜在的な危険やリスクの早期発見・対応が重要

ヒヤリハットは、事故に至らなかった状況や出来事を指し、事故は実際に何らかの損害や怪我が発生した状況を指します。この境界線を理解することは、介護職員が日々の業務を行う上で、どのような状況を特に注意して報告し、対策を講じるべきかを判断するために重要です。なお、事故報告書については介護分野での報告書様式は標準様式が用意され統一されてきています。

介護現場での具体的なヒヤリハット事例

医療介護分野で起きるヒヤリハット事例として以下のようなものがあります。

ヒヤリハットの種類 内容
墜落・転落 患者様がベッドからの転落、または車椅子からの落下事例
転倒 施設内での患者様の滑りやつまずきによる転倒事例
激突 移動中に患者様や介護者が設備や家具にぶつかる事例
飛来・落下 棚からの物品の落下による怪我や、設備の一部が壊れて飛んでくる事例
崩壊・倒壊 使用中の家具や設備の破損による事故、例えばベッドの一部が壊れて患者様が挟まれる事例
激突される 患者様が不慮の動きで介護者にぶつかる事例
不適切な食事・誤配 利用者の咀嚼嚥下食形態に合っていない食事、水分のとろみの誤り、配膳を間違える事例
はさまれ・巻き込まれ ドアやベッドサイドのレールに患者様の手足が挟まれる事例
切れ・こすれ 医療器具の使用による皮膚の切れ、こすれ事例
高温・低温の物との接触 温熱療法器具や冷却パックの不適切な使用によるやけどや凍傷事例
感電・火災 医療機器の不具合による感電事故や、使用中の機器からの火災事例
離設行方不明 介護施設や事業所から利用者が出ていってしまったり、いなくなってしまう事例
交通事故 患者様の送迎車両の事故や、施設内での車椅子、ストレッチャーの衝突事例
動作の反動・無理な動作 介護者が患者様を移動させる際の無理な体勢からくる怪我や筋肉痛事例
誤薬 薬の介助忘れや飲みすぎ、違う人の薬を飲ませてしまう恐れがあった事例
その他 医療・介護現場での予期せぬ事故やトラブル、例えば患者様の個人情報の誤扱いなど

ヒヤリハットの記録・報告書の例

報告書の書き方と例文

ヒヤリハットが発生した際には、その詳細を正確に記録し、報告することが重要です。報告書には、発生日時、場所、当事者、目撃者、ヒヤリハットの状況、対応措置、今後の予防策などを含めるべきです。

例文としては、「2024年3月17日、午後3時頃、居室にて、利用者Aさんが立ち上がろうとした際にバランスを崩し、転倒しそうになりました。介助中で隣にいた職員Bがすぐに支えたため、転倒はありませんでした。今後は、利用者Aさんが立ち上がる際は、必ず職員がサポートに入れいるよう注意して見守りましょう。」といった具体的な記述が求められます。

5W1Hを用いた事実の明確な記述

報告書では、事実を明確に伝えるために5W1H(Who, What, When, Where, Why, How)を用いることが推奨されます。これにより、事象の全容が明確になり、同様のヒヤリハットを防ぐための対策が立てやすくなります。

医療・介護分野以外でのヒヤリハット報告書の記入例(工場・運送)

ヒヤリハット活動は、医療や介護分野以外でも取り入れられています。以下は商品を運搬して経路にドアがあり、急にドアが開いて危なかったというヒヤリハットの記入例です。

介護分野以外でのヒヤリハット報告書の記入例(工場・工業)

ヒヤリハット活動でリスクアセスメント 兵庫労働局作成

 

情報共有の重要性と方法

ヒヤリハットの報告書は、ただ記録するだけでなく、関連する全てのスタッフと共有することが重要です。情報共有には、定期的なミーティングでの口頭報告、掲示板への掲示、内部メールシステムやSNSを利用した共有など、様々な方法があります。共有の目的は、全員がヒヤリハットから学び、同様の事象を防ぐための意識を高めることにあります。

ヒヤリハットの原因

介護現場でのヒヤリハットの事例を紹介しましたが、ヒヤリハットを客観的に整理すると、原因としてどんなことが挙げられるかが見えてきます。

施設の設備、椅子、車いすなど現場環境とヒヤリハット

施設内の設備や家具の配置がヒヤリハットの原因となることがあります。例えば、通路が狭い、照明が不十分である、車いすや椅子が不安定であるなどが挙げられます。

心身の低下や認知症とヒヤリハット

利用者の身体機能の低下や認知症の進行は、ヒヤリハットのリスクを高めます。ご利用者の心身や認知機能の状態を把握し、個々の利用者に合わせた対応を行うことが重要です。特に、介護施設などでは、入所時に評価を行った状態から、長期間の施設生活の中で状態が変化していても気づけていない場合もあるため、定期的にモニタリングすることはもちろんですが、ヒヤリハットは状態変化に気づいて大きな事故につながることを防ぐチャンスとしてとらえて報告・共有し、対策方法を考えましょう。

スタッフの対応や屋外での活動時のリスク

介護職員の疲労や注意力の散漫、経験不足などもヒヤリハットの原因となり得ます。また、屋外での活動時には、交通事故のリスクや天候の変化によるリスクも考慮する必要があります。

現場スタッフへの対応:ヒヤリハットに適切に対応する

現場での対応と問題発見の重要性

介護現場でのヒヤリハットに対する迅速かつ適切な対応は、事故を未然に防ぐ上で極めて重要です。現場スタッフは、日々の業務を通じて、潜在的なリスクや問題を発見し、それに対する対応策を講じる必要があります。このプロセスには、状況を正確に把握し、適切な判断を下す能力が求められます。

スタッフの労働環境とヒヤリハット

スタッフの労働環境もヒヤリハットの発生に影響を与えます。過度の労働、不適切な労働条件、スタッフ間のコミュニケーション不足は、ミスや注意散漫を引き起こしやすくします。したがって、適切な労働環境の整備と、スタッフ同士のコミュニケーションの促進が重要となります。

情報共有と心身のケア:予防への取り組み

ヒヤリハットの予防には、情報共有が不可欠です。発生したヒヤリハットの詳細を全スタッフと共有し、同様の事態を防ぐための対策を検討することが重要です。また、スタッフ自身の心身のケアも重要であり、ストレス管理や健康管理にも配慮することが、ヒヤリハットの予防につながります。

家族と利用者への対応

家族への明確な説明と情報共有の方法

ヒヤリハットが発生した場合、家族への適切な情報提供と説明が求められます。事象の詳細、対応した措置、今後の予防策などを明確に伝えることで、家族の理解と信頼を得ることができます。情報共有の方法としては、直接面談、電話連絡、報告書の提供などがあります。

利用者の心身の状態の把握と対応

利用者一人ひとりの心身の状態を正確に把握することは、ヒヤリハットの予防において非常に重要です。利用者の健康状態、日常の行動パターン、好みや苦手なことなどを理解し、それに基づいた個別のケアプランを作成することが求められます。

個々の利用者に合わせた介護と予防

利用者一人ひとりに合わせた介護計画のもと、ヒヤリハットの予防策を講じることが重要です。例えば、転倒リスクが高い利用者には、移動時のサポートを強化する、認知症の進行が見られる利用者には、周囲の環境をより安全なものにするなど、個別のニーズに応じた対策を実施します。

ヒヤリハットの分析と活用

ヒヤリハット事例の分析と検討

ヒヤリハット事例を収集し、定期的に分析することで、介護現場のリスクを把握し、改善策を講じることができます。事例の分析を通じて、発生傾向や原因を明らかにし、効果的な予防策を検討します。

未然防止と改善への取り組み

ヒヤリハットの分析結果を基に、未然防止策や改善策を実施します。これには、施設の物理的な環境の改善、スタッフの教育・研修の強化、利用者のケアプランの見直しなどが含まれます。

ヒヤリハットとリスクマネジメント

介護分野におけるリスクマネジメントは、患者や職員の安全を確保し、質の高いケアを提供するために潜在的なリスクを特定、評価、そして対処するプロセスです。ヒヤリハットはこのプロセスにおいて、実際には事故に至らなかったが潜在的な危険があった状況を指し、これらの事例から学び、未来のリスクを予防するための対策を講じるのに役立ちます。介護現場でのヒヤリハットの共有と分析は、リスクマネジメントの効果を高め、より安全なケア環境の実現に寄与します。

事故防止への実活用は事業所独自の特性を反映したマニュアルへ

ヒヤリハットの事例とその分析結果は、介護の質を向上させるための貴重な資源です。事例を共有し、スタッフ間での学びを促進することで、事故防止だけでなく、より質の高い介護サービスの提供を目指します。一般的に介護の仕事もマニュアル化が進んでいますが、ヒヤリハットをしっかりと蓄積して分析をしていくと、事故を予防し、職員の責任や負担を軽くするための独自のマニュアルにも活きてきます。

まとめ

介護現場でのヒヤリハットに対する理解と適切な対応は、事故を減少させるだけでなく、利用者、職員、そして家族全員の安全と安心に直結します。本記事を通じて、ヒヤリハットの概念を深く理解し、その記録・報告、具体的な事例から学び、実践的な対策と予防を身につけることができました。日々のケアの質を高め、より安全な介護環境を実現するために、この知識を活用し、常に意識して行動することが重要です。介護現場で働く全ての人が、ヒヤリハットに対する正しい理解と対応を心がけることで、事故のない、より良い介護の実現に近づくことでしょう。

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