介護の仕事での労働災害(労災)認定要件と腰痛等の適用の事例
 

介護の仕事中の怪我などの「労働災害(労災)」認定要件や労災の事例を紹介します。特に介護の仕事の業務災害として多い、利用者の介助が原因で発症したぎっくり腰やヘルニアなどの腰痛に関して、労災適応になるかの事例の紹介や、労災の認定基準、介護の仕事での労災の分類・内訳、労災で仕事を休んだ場合の休業補償・補助など、介護の仕事で知ってくと役立つ労災の知識を解説します。

労災とは

労災保険とは、仕事中や通勤途上での事故・災害などでの怪我や病気、身体の障害、死亡などに対する補償を行うもので、介護職員・看護師などももちろん対象の制度です。

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療養給付(補償)、休業給付(補償)、ほかにも障害給付(補償)、遺族給付(補償)、傷病年金、介護給付(補償)、葬祭料などの保険給付があります。このように、労災保険対象として認定されると、災害にあった被保険者の社会復帰や、被保険者の遺族への援助なども行っています。

業務災害

業務中に荷物を落として従業員がけがをしてしまった、残業が多くて精神疾患になったなど、業務上起きた病気や怪我のことを業務災害と呼び、補償の対象とされています。

通勤災害

労災保険では、通勤中の事故による負傷、疾病、障害または死亡について、通勤災害として労災補償の対象としていますが、通勤であるかの範囲には決まりがあります。

労災の認定基準(腰痛の例)

労災の適用になるかについて、厚生労働省は平等で適正な認定がなされるよう認定要件を定めています。一例として、厚生労働省が作成した「業務上腰痛の認定基準」を紹介します。

認定基準では、腰痛を2種類に区別して、それぞれの労災補償の対象と認定するための要件を定めています。労災補償の対象となる腰痛は、医師により療養の必要があると判断されたものに限ります。腰椎や頸椎などのヘルニアやぎっくり腰という状態だけでは判断できず、認定要件に照らして労災であるか、その他の原因で発生したものであるか判断されます。

労働災害の場合は、必ず労災保険を請求しましょう。労災適用になるかの判断は労働局・労働基準監督署が行います。

移乗介助中に腰痛を発症 労災

災害性の原因による腰痛の労災認定基準

負傷などによる腰痛で、次の①・②の要件をどちらを満たす場合には労災認定の基準となります。

① 腰の負傷またはその負傷の原因となった急激な力の作用が、仕事中の突発的な出来事によって生じたと明らかに認められること

② 腰に作用した力が腰痛を発症させ、または腰痛の既往症・基礎疾患を著しく悪化させたと医学的に認められること

災害性の原因によらない腰痛の労災認定基準

突発的な出来事が原因ではなく、重量物を取り扱う仕事など腰に過度の負担のかかる仕事に従事する労働者に発症した腰痛で、作業の状態や作業期間などからみて、仕事が原因で発症したと認められるもの

介護の仕事での労災の事例

腰痛で労災認定されるかの例について紹介しましたが、実際に労災認定されるかを事例をベースにみてみたいと思います。

介護の仕事での労災の具体例<災害性の原因による腰痛の例>

ご利用者の移乗介助の際に予想に反して重かったり、逆に軽かったりする場合に、不適当な姿勢で介助した場合のように突発的で急激な強い力が腰に異常に作用したことにより腰痛を発症した場合、労災の認定要件を満たす事例が多いです。(病名でいうと急性腰痛症などですが、日常的な動作の中で生じたものでなく、発症したときの姿勢や異常性などから判断されます。)

介護の仕事での労災の具体例<災害性の原因によらない腰痛の例>

毎日数時間、腰にとって不自然な姿勢で保持を行わなければならない、利用者を長時間繰り返し持ち上げるなどの業務が発生していた場合などは労災補償の対象となる場合もありますが、介護場面では全く同じ業務を繰り返すことや、無理な姿勢を取らないようにする回避策があるなど、業務による負荷が徐々に作用して発症したことについて判断しずらい傾向にあります。

腰痛は加齢による骨の変形などでも発症することが多いため、通常の加齢による骨の変化の程度を明らかに超える場合などに限り労災補償の対象と判断されます。

持病で椎間板ヘルニアなどの既往があった場合の悪化は労災補償対象か?

持病で椎間板ヘルニアなどの基礎疾患があった場合、仕事によりその疾病が悪化したり再発したりすることがあります。その場合には、基礎疾患が業務により悪化する前の状態に回復させるための治療に限り労災補償の対象になります

 労災認定について詳しくは最寄りの都道府県労働局・労働基準監督署にお問い合わせください。

介護の仕事での労災の分類・内訳

介護の仕事での事故の型別でみると、転倒、動作の反動・無理な動作、交通事故などに起因する労働災害・通勤災害が多くなっています。

介護業務中の「動作の反動・無理な動作」に起因する業務災害

介護施設での労災の業務災害としては、利用者の介助中の動作の反動・無理な動作の中で、ベッド上での介助作業とベッド移乗作業を合わせて52%という結果が示されています。動作の反動・無理な動作の詳細についてはデータとしては示されていませんが、踏ん張った際の足の捻挫や腰部への過負荷による腰痛などが考えられます。

介護業務中の「動作の反動・無理な動作」に起因する業務災害

介護業務中の「転倒・つまずき・滑った」に起因する業務災害

介護施設での労災の業務災害として、業務中に転倒した・つまずいた・滑ったといった転倒に起因する労災事案の中で、滑りによるものが38%、つまづきによるものが37%という結果が示されています。詳細についてはデータとしては示されていませんが、介護の仕事は焦ってしまうことや入浴介助中など床面が滑りやすい場合などもあるため、滑って捻挫した、骨折や脱臼した、などが考えられます。

介護業務中の「転倒・つまずき・滑った」に起因する業務災害

介護の仕事のストレスでうつになった場合、労災適用になる?

介護の仕事に限らず、うつ病など精神疾患での労災申請件数は増加傾向にあるものの、支給決定件数の割合は横ばい状態です。

精神疾患の場合の労災認定については、厚生労働省が作成した「精神障害の労災認定」などの認定要件などをもとに判定されます。

精神疾患の労災認定基準では、発病前おおむね6か月の間に行った出来事について評価します。

精神疾患の労災認定についてのハードルは高めであり、この基準の中の心理的負荷が極度なものに該当するケースなどは介護の仕事中には稀であり、発症直前の1か月に160時間以上の時間外労働を行った場合などはケースとしてはあり得るかもしれません。

業務中に傷病を負ったが、職場で認めてもらえない場合は労災にならない?

労働者が事業(又は通勤)により負傷した場合などには、労働者本人が労働基準監督署に労災保険給付の請求を行い、当該請求に基づいて労働基準監督署長が支給・不支給の決定を行いますので、労災として認められるかどうかは事業主が決めるわけではありません。

介護の仕事で労災認定された場合、給料はもらえる?

介護の仕事で労災認定された場合に、療養(補償)給付だけを受け、休業はしないという場合もありますので働いている場合には就労規則や雇用契約に基づいて給料が支払われます。

医師の判断で休業する場合には、仕事を休んでいるので職場からの給料は無く、代わりに休業補償・補助として労災保険の「休業補償給付」を受け取れます。

労災で仕事を休んだ場合の休業補償・補助

令和元年労働者死傷病報告によると、介護施設で発生した休業4日以上の労働災害の中で、休業1か月以上となる者は、転倒で64%、腰痛などの「動作の反動・無理な動作」で43%となっており、介護業務中や通勤中に転倒などの被災をしてしまうと、長期間休業して療養せざる得ない状態になることも多いです。

労災の場合には健康保険の「傷病手当金」は対象外

業務外の事由による病気やケガの療養のための休業の場合には、健康保険に「傷病手当金」という病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度があります。

しかし、労災適用の状態で休業し十分な給与が得られない状態の場合には傷病手当金による保証は適用されず、労災保険の休業補償給付が適用となります

労災で仕事を休む場合の休業補償は労災保険の「休業補償給付」

労災保険の休業補償給付とは、業務上または通勤時が原因となった負傷または疾病により、休業せざるを得ない状況になってしまった場合、休業中の所得を補償するための給付です。

※事業主との間に雇用関係がある場合が労災保険給付の対象となるため、派遣社員や請負契約で働く労働者(直接契約がない)は休業補償給付の対象外です。

休業特別支給金の計算式

休業補償給付=給付基礎日額の60%×休業日数

休業特別支給金=給付基礎日額の20%×休業日数

労災の休業補償給付請求に必要な3要件

  • 労働者が業務上の事由による負傷または疾病によって療養していること
  • その療養のために労働ができないこと
  • 労働することができないために、賃金を受けていないこと

業務災害の場合、待期期間中は、事業主(使用者)が労働基準法の規定に基づく休業補償(1日につき平均賃金の60%)を行います。

その他の労災保険給付

労災の場合には、そのほかにも以下のような労災保険での給付があります。

  • 療養補償給付療養給付
  • 遺族補償年金遺族年金(遺族(補償)給付)
  • 遺族補償一時金・遺族一時金(遺族(補償)給付)
  • 傷病補償年金傷病年金
  • 葬祭料葬祭給付
  • 介護補償給付介護給付

まとめ

介護の仕事での労災について紹介をしてきました。介護施設では、利用者の転倒などの事故への対策は重点的に行われていますが、職員の転倒・腰痛のない施設づくりについてはおろそかになりやすいです。

また、介護の仕事をしている人たち自身も、業務中の怪我などについて労災の仕組みを把握していないなどのために受けられる保証を放棄してしまっていることもあります。

日本では、仕事をするときに起きた業務災害、通勤中の通勤災害を国が保証してくれるという仕組みが整っているので、理解していざというときに対応できるようにしましょう。介護の仕事は奉仕の心も時には必要ですが、自分が被災したときにまで涙を飲む必要は全くありません。介護の仕事での労災や腰痛などでお悩みの方の参考になれば幸いです。

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