訪問看護「特掲診療料の施設基準等 別表第八」の内容・状態等一覧(2024年改定対応)

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訪問看護の算定や加算を考えるうえで「別表第八」に該当するかどうかは、長時間訪問・複数回訪問・特別管理加算などの算定に直接関わる重要な判断です。
この記事では、「特掲診療料の施設基準等 別表第八」(以下「別表第八」)の正式名称・根拠・状態一覧を告示原文に基づいて解説します。2024年(令和6年)4月の診療報酬改定で追加された3つの状態も含めて最新情報をお伝えし、別表第七との違い・保険適用の判断方法・算定できる特例まで実務に即してまとめます。
「別表第八」とは何か:正式名称と根拠法令
「別表第八」の正式名称は「特掲診療料の施設基準等別表第八 退院時共同指導料1の注2に規定する特別な管理を要する状態等にある患者並びに退院後訪問指導料、在宅患者訪問看護・指導料及び同一建物居住者訪問看護・指導料に規定する状態等にある患者」です。
根拠は「特掲診療料の施設基準等」(平成20年3月5日厚生労働省告示第63号)であり、最新版は令和6年度(2024年)診療報酬改定で改正された内容が適用されています。
訪問看護の実務では「厚生労働大臣が定める状態等」とも呼ばれます。この告示は医療保険の訪問看護だけでなく、介護保険の訪問看護における特別管理加算・長時間訪問看護加算等の算定根拠にもなっています。
別表第七との根本的な違い
別表第八を理解するうえで、別表第七との違いを押さえることが最初の重要なポイントです。
| 比較項目 | 別表第七 | 別表第八 |
|---|---|---|
| 判断の対象 | 疾病等(病名で判断) | 状態等(現在の状態・処置で判断) |
| 医療保険への切り替え | あり(要介護認定があっても医療保険が優先) | なし(別表第八のみでは原則介護保険のまま) |
| 主な効果 | 医療保険適用+回数・時間の特例 | 回数・時間・複数名等の特例(保険種別は変わらない) |
| 長時間訪問看護加算(90分超) | 算定不可(別表第八との重複が必要) | 算定可 |
| 特別管理加算の算定根拠 | 直接の根拠ではない | 直接の根拠(特別管理加算Ⅰ・Ⅱの対象) |
「疾病名」の別表第七、「状態」の別表第八と覚えると実務で判断しやすくなります。
別表第八の状態一覧(告示原文・2024年改定後)
以下は「特掲診療料の施設基準等 別表第八」の告示原文(令和6年度改定後の現行版)です。
別表第八 在宅患者訪問看護・指導料及び同一建物居住者訪問看護・指導料に規定する状態等にある患者
一 在宅麻薬等注射指導管理、在宅腫瘍化学療法注射指導管理又は在宅強心剤持続投与指導管理若しくは在宅気管切開患者指導管理を受けている状態にある者又は気管カニューレ若しくは留置カテーテルを使用している状態にある者
二 在宅自己腹膜灌流指導管理、在宅血液透析指導管理、在宅酸素療法指導管理、在宅中心静脈栄養法指導管理、在宅成分栄養経管栄養法指導管理、在宅自己導尿指導管理、在宅人工呼吸指導管理、在宅持続陽圧呼吸療法指導管理、在宅自己疼痛管理指導管理又は在宅肺高血圧症患者指導管理を受けている状態にある者
三 人工肛門又は人工膀胱を設置している状態にある者
四 真皮を越える褥瘡の状態にある者
五 在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者
上記の5区分が別表第八の全内容です。(令和6年度改定後)
各状態の実務上のポイント
区分「一」:在宅指導管理・気管カニューレ・留置カテーテル
この区分は2つのグループに分かれます。
【指導管理を受けている状態】
【機器・器具を使用している状態】
区分「二」:在宅指導管理(10種類)
医療機関から各種在宅指導管理を受けている状態です。指導管理の種類は以下のとおりです。
| 指導管理名 | 主な対象 |
|---|---|
| 在宅自己腹膜灌流指導管理 | 在宅CAPD(腹膜透析)を行っている方 |
| 在宅血液透析指導管理 | 自宅で血液透析を行っている方 |
| 在宅酸素療法指導管理 | HOT(在宅酸素療法)を行っている方 |
| 在宅中心静脈栄養法指導管理 | IVH(中心静脈栄養)を在宅で行っている方 |
| 在宅成分栄養経管栄養法指導管理 | 在宅での経腸栄養(経管栄養)を行っている方 |
| 在宅自己導尿指導管理 | 自己導尿を行っている方 |
| 在宅人工呼吸指導管理 | 人工呼吸器を使用している方 |
| 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理 | CPAP(持続陽圧呼吸療法)を行っている方 |
| 在宅自己疼痛管理指導管理 | 植込型鎮痛ポンプ等による疼痛管理を行っている方 |
| 在宅肺高血圧症患者指導管理 | 在宅でプロスタグランジン製剤等の投与を行っている肺高血圧症の方 |
区分「三」:人工肛門・人工膀胱
人工肛門(コロストミー・イレオストミー等)または人工膀胱(ウロストミー)を設置している状態です。ストーマ管理が必要な方が対象となります。
区分「四」:真皮を越える褥瘡
真皮を越える褥瘡(DESIGN-R®分類でd2以上)の状態にある方が対象です。表皮のみの浅い褥瘡(DESIGN-R®でd1)は対象外であることに注意が必要です。
褥瘡の深さはDESIGN-R®2020などの評価ツールを用いて確認します。「真皮を越える」とは、皮下組織以深(皮下組織・筋膜・筋肉・骨に至る)への損傷があることを意味します。
区分「五」:在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者
主治医が「在宅患者訪問点滴注射管理指導料」を算定している利用者が対象です。これは週3日以上の点滴注射が必要と医師が認めた場合に算定されるものであり、在宅での点滴治療が継続して必要な状態を意味します。
2024年改定で追加された3つの状態
令和6年(2024年)4月の診療報酬改定で、区分「一」に以下の3つの在宅指導管理が新たに追加されました。
① 在宅麻薬等注射指導管理
経口での麻薬服用が困難な方に対して、在宅でモルヒネ・フェンタニル等の麻薬を注射または持続皮下注で投与する管理です。主治医(医療機関)が投与量・副作用・残液・保管状況などを定期的に確認・指導します。
主な対象: 悪性腫瘍や難病による疼痛緩和、心不全や呼吸器疾患の苦痛緩和などを目的とした麻薬注射管理が必要な方
② 在宅腫瘍化学療法注射指導管理
抗がん剤を注射または持続注入ポンプで在宅投与している方に対して行われる管理です。医療機関が投与の実施・副作用のモニタリング・管理計画の策定・指導を行います。
主な対象: がん患者で抗がん剤を在宅で継続投与しており、通院せずに化学療法を継続している方
③ 在宅強心剤持続投与指導管理
心不全患者へ輸液ポンプを用いた強心剤(ドブタミン等)の持続投与を行う管理です。
主な対象: 重症心不全で持続的な強心剤投与が必要で、在宅療養を続けている方
追加の背景
これら3つの追加は、在宅医療の高度化・多様化への対応として行われました。かつては入院でなければ対応困難だったような医療処置が在宅でも実施可能となった一方、従来の別表第八の対象に含まれていなかったため、追加によって適切な評価・算定ができるよう整備されたものです。
別表第八に該当した場合の特例
別表第八に該当する状態にある利用者に対しては、訪問回数・時間・体制等について以下の特例が適用されます。
医療保険の訪問看護における特例
| 特例 | 内容 |
|---|---|
| 週4日以上の訪問 | 通常の週3回制限が解除され、週4日以上の訪問が可能 |
| 1日複数回訪問 | 1日2回または3回以上の訪問が可能(難病等複数回訪問加算) |
| 複数ステーションの利用 | 別表第八該当者(特別管理加算対象者)は週4日以上訪問の場合に2か所、毎日訪問の場合は3か所まで利用可能 |
| 長時間訪問看護加算(90分超) | 別表第八に該当する場合のみ算定可能 |
| 退院日の訪問看護 | 退院支援指導加算の算定が可能 |
| 複数名訪問看護加算 | 複数の看護師等が同時に訪問する場合の加算を算定可能 |
| 特別管理加算 | 別表第八の内容に応じて特別管理加算Ⅰ・Ⅱを算定可能 |
介護保険の訪問看護における特例
別表第八のみに該当し介護保険で訪問看護を提供している場合も、以下の特例が適用されます。
| 特例 | 内容 |
|---|---|
| 週4日以上の訪問 | ケアプランの支給限度額の範囲内で週4日以上の訪問が可能 |
| 1日複数回訪問 | ケアプランに位置づけることで1日複数回の訪問が可能 |
| 長時間訪問看護加算(90分超) | 別表第八に該当する場合に算定可能 |
| 複数ステーションの利用 | ケアプランの範囲内で複数ステーションの利用が可能 |
| 特別管理加算 | 別表第八の内容に応じて特別管理加算Ⅰ・Ⅱを算定可能 |
| 退院日の訪問看護 | 退院支援指導加算の算定が可能 |
| 複数名訪問加算 | 複数名が同時に訪問する場合の加算を算定可能 |
別表第八と特別管理加算の関係
別表第八に該当する状態は、介護保険・医療保険双方における特別管理加算の根拠にもなっています。
特別管理加算は2区分(ⅠとⅡ)に分かれており、対象状態が別表第八の区分に対応します。
特別管理加算(Ⅰ)の対象状態(重症度が高い)
以下の状態にある利用者が対象です(別表第八の区分「一」の一部に対応)。
特別管理加算(Ⅱ)の対象状態
以下の状態にある利用者が対象です(別表第八の区分「二」〜「五」に対応)。
なお、特別管理加算は「介護保険の訪問看護」「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」「看護小規模多機能型居宅介護」の特別管理加算と同月に重複して算定することはできません。
保険適用の判断、別表第八は介護保険が原則
別表第八に該当しているだけでは、医療保険には切り替わりません。
これは別表第七と混同されやすい重要なポイントです。
別表第八に該当する状態にある利用者であっても、以下の基本的な保険適用の原則は変わりません。
つまり別表第八は、適用される保険の種別には影響を与えず、保険種別に関わらず「手厚い訪問看護ができる」という特例を規定するものです。
別表第七と別表第八の両方に該当する場合
利用者が別表第七の疾病等と別表第八の状態等の両方に該当するケースは珍しくありません。典型的なのは**末期がん患者(別表第七)で在宅麻薬等注射指導管理を受けている(別表第八)**場合などです。
| 該当状況 | 保険適用 | 利用できる主な特例 |
|---|---|---|
| 別表第七のみ | 医療保険 | 週4日以上・1日複数回・複数ステーション・退院日訪問等(90分超の長時間訪問加算は不可) |
| 別表第八のみ | 介護保険(原則) | 週4日以上・1日複数回・長時間訪問加算(90分超)・複数名訪問・特別管理加算等 |
| 両方に該当 | 医療保険 | 上記すべて(長時間訪問加算・90分超も算定可) |
長時間訪問看護加算(90分超)は別表第八への該当が必要です。別表第七の疾病等に該当していても、別表第八の状態でなければ90分を超える訪問看護は長時間加算を算定できません。
保険適用判断フローチャート
利用者の訪問看護に適用される保険を判断する際の基本的な流れは以下のとおりです。
年齢・要介護認定の確認
─ 65歳未満かつ要介護認定なし → 医療保険
─ 65歳未満かつ要介護認定あり(特定疾病による)
─ 65歳以上ならSTEP2へ
別表第七に該当するか確認
─ 該当する → 【医療保険】(要介護認定があっても医療保険優先)
─ 該当しないならSTEP3へ
精神科訪問看護指示書が出ているか
─ 出ている(認知症を除く精神疾患)→ 【医療保険】
─ 出ていないならSTEP4へ
特別訪問看護指示書が出ているか(急性増悪等)
─ 出ている → 【医療保険】(期間限定・最大14日間)
─ 出ていないならSTEP5へ
要介護・要支援認定があるか
─ ある → 【介護保険】(支給限度額の範囲内)
算定・記録上の実務的注意点
訪問看護計画書・訪問看護記録書への記載
別表第八に該当する状態である根拠を、訪問看護計画書および訪問看護記録書に明確に記載することが必要です。
記載のポイントとしては以下が挙げられます。
主治医の指示書との照合
別表第八の該当判断は、主治医が発行する訪問看護指示書や診療情報提供書の記載内容と照合することが基本です。特に区分「二」に掲げる在宅指導管理は、医療機関が算定している指導管理の名称と一致することを確認します。
判断に迷う場合は独自に判断せず、主治医またはケアマネジャーに確認することが重要です。
在宅患者訪問点滴注射管理指導料(区分五)の注意点
区分「五」の「在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者」については、主治医(医療機関)が当該指導管理料を算定していることが前提です。
点滴注射が行われていても、主治医が当該指導管理料を算定していない場合は別表第八(区分五)に該当しません。主治医への確認が必要です。
特別管理加算の重複算定禁止
前述のとおり、介護保険の特別管理加算は「介護保険の訪問看護」「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」「看護小規模多機能型居宅介護」の間で同月に重複算定することはできません。複数のサービスを利用している場合は注意が必要です。
よくある質問(Q&A)
こちらのQ&Aは、厚生労働省のQ&Aというわけではなく、編集部でよくある質問を厚生労働省資料や告示などをもとにまとめたものになります。判断に迷う部分は自治体等にご確認いただくことを強く推奨します。
胃ろうは「留置カテーテル(経管栄養)」に該当するため、区分「一」として別表第八に該当します。また、「在宅成分栄養経管栄養法指導管理」を受けている場合は区分「二」にも該当します。
在宅持続陽圧呼吸療法指導管理を受けている状態として区分「二」に該当します。ただし、CPAP装置を使っていても、主治医が「在宅持続陽圧呼吸療法指導管理」を算定していることを確認してください。
いいえ。「真皮を越える褥瘡」が条件です。表皮のみの浅い褥瘡(DESIGN-R®でd1)は対象外です。DESIGN-R®でd2以上(真皮から皮下組織以深の損傷)が別表第八(区分四)の対象となります。
いいえ。別表第八のみに該当する場合は保険種別は変わりません。要介護認定を受けている利用者は引き続き介護保険で訪問看護が提供されます。ただし、別表第七の疾病等にも該当する場合は医療保険に切り替わります。
いずれも「在宅悪性腫瘍等患者指導管理」の枠組みに含まれ、特別管理加算(Ⅰ)の対象となります。2024年改定で在宅悪性腫瘍等患者指導管理の対象が拡充された結果、これら3つの指導管理も特別管理加算(Ⅰ)の算定対象となりました。
別表第七には「人工呼吸器を使用している状態」が含まれています。在宅人工呼吸指導管理を受けており実際に人工呼吸器を使用している利用者は、別表第七にも別表第八(区分二)にも該当します。この場合は医療保険が適用され、長時間訪問看護加算も算定できます。
まとめ
別表第八のポイントをまとめます。
参考法令・資料
- 特掲診療料の施設基準等(平成20年3月5日厚生労働省告示第63号)(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84aa9733&dataType=0)
- 令和6年度診療報酬改定の概要 在宅(在宅医療・訪問看護)(厚生労働省、2024年)
- 厚生労働省「訪問看護のしくみ」
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(厚生労働省告示)





