理学療法士とは?仕事内容、就職先、どんな仕事なら将来性あるか

理学療法士とは?仕事内容、就職先、どんな仕事なら将来性あるか

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理学療法士(PT:Physical Therapist)は、身体に障害を持つ人のリハビリテーションを担う国家資格職です。病院・介護施設・スポーツ分野など幅広い就職先があり、一時期は高校生のなりたい職業ランキング上位に入るほど人気を集めました。しかし現在の状況は、その輝かしいイメージとは少し異なります。

この記事では、理学療法士になるための学校・試験・仕事内容を紹介した上で、理学療法士という職業の「明るい側面」と「直視すべき現実」の両方を、根拠を示しながら率直にお伝えします。進路を検討している高校生やその保護者の方に特に読んでいただきたい内容です。

理学療法士とは(定義・資格概要)

理学療法士は、理学療法士及び作業療法士法(昭和40年法律第137号)によって定められた国家資格です。

厚生労働大臣の免許を受けて、「理学療法士」の名称を用いて、医師の指示の下に、「理学療法」を行うことを業とする者。この法律で「理学療法」とは、身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう。

理学療法士及び作業療法士法(昭和40年法律第137号)

英語では Physical Therapist といい、現場では「PT(ピーティー)」と略称で呼ばれます。身体の基本的な動作能力の回復・維持・向上を目的として、運動療法や物理療法などを行う専門職です。

原則として医師の指示のもとでリハビリテーションを行いますが、介護保険分野や自費リハビリの分野では医師から独立した形で働いているケースもあります。

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理学療法士になるには(学校・養成課程)

理学療法士になるには、文部科学大臣または厚生労働大臣が認定した養成校(大学・専門学校・短期大学)に入学し、所定のカリキュラムを修了したうえで国家試験に合格する必要があります。

養成校の種類と修業年限

種別修業年限
大学(4年制)4年
専門学校(4年制)4年
専門学校(3年制)3年
短期大学(3年制)3年

現在、全国には約275校の養成校があります(2023年時点、日本理学療法士協会調べ)。国公立大学は25校程度で、私立大学・専門職大学を合わせると90校以上の大学が養成課程を設置しています。

国公立大学の偏差値例

国公立大学の理学療法学科は難易度が高く、偏差値の目安は以下のとおりです(前期日程・目標偏差値の参考値)。

  • 京都大学 医学部(人間健康科学科):65前後
  • 神戸大学・名古屋大学 医学部(保健学科):59〜60前後
  • 埼玉県立大学・神奈川県立保健福祉大学 など:55〜57前後

私立大学・専門学校では偏差値45前後から幅広く分布しており、定員割れしている学校では実質的に偏差値の意味が薄れているところも少なくありません。

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理学療法士の養成校で学ぶ主な科目

養成校では、理学療法の基礎となる医学的知識と、実践的な技術の両方を学びます。主な科目は以下のとおりです。

基礎医学系

解剖学・生理学・運動学・生化学・病理学・微生物学・公衆衛生学

臨床医学系

内科学・外科学・整形外科学・神経内科学・脳外科学・循環器・呼吸器・心理学・リハビリテーション医学

理学療法専門科目

運動療法学・物理療法学・義肢装具学・日常生活活動(ADL)・地域理学療法学・神経系理学療法・小児理学療法・老年期理学療法

実習

基礎実習や評価実習、臨床実習(数ヶ月にわたる実際の医療・介護現場での実習)

内容は広範囲にわたり、医学的な基礎から実践まで体系的に学びます。3〜4年間かけて相当な量の学習をこなす必要があります。

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理学療法士国家試験の概要と合格率

試験概要

  • 実施時期:毎年2月下旬
  • 試験会場:東京・大阪など全国8都道府県
  • 試験形式:マークシート方式(多肢選択)
  • 問題数:200問(一般問題159点満点+実地問題114点満点)
  • 合格基準:総得点の60%以上かつ実地問題の40%以上

合格率の推移

直近の合格率は以下のとおりです(厚生労働省発表)。

回(年)受験者数合格率(全体)合格率(新卒)
第60回(2025年)12,691人89.6%95.2%
第59回(2024年)12,629人89.3%95.3%

合格率は全体で約89%、新卒者に限ると95%前後という高い水準です。ただし、養成校の卒業試験の段階で一定数が足切りされており、実際の学習難易度は合格率だけでは測れません。

新卒者と既卒者では合格率に大きな差があり、第60回では新卒95.2%に対して既卒者は61.7%にとどまっています。一度落ちると就業しながらの再受験となり合格が難しくなる傾向があります。

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理学療法士の仕事内容

理学療法士の仕事は、患者や利用者が「自分の力で動ける状態」を取り戻すための支援です。具体的には以下のような内容が含まれます。

運動療法

筋力訓練・関節可動域訓練・バランス訓練・歩行訓練・呼吸訓練など。患者の状態に合わせた運動プログラムを立案・実施します。

物理療法

電気刺激・温熱(ホットパック)・寒冷・超音波・牽引療法など。機械・器具を用いて身体の回復を促します。

日常生活動作(ADL)訓練

起き上がり・立ち上がり・歩行・階段昇降・移乗など、日常生活に必要な動作の訓練。

評価・アセスメント

関節の可動域測定・筋力検査・歩行分析・バランス評価など、患者の身体機能を客観的に評価し、問題点を把握します。

リハビリ計画の立案・記録

評価結果をもとにリハビリプログラムを作成し、医師・看護師・作業療法士・言語聴覚士・ケアマネジャーなど多職種と連携します。

家族への指導・退院支援

患者家族への介助方法の指導、住環境整備のアドバイス、退院後の生活を見据えた支援も行います。

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理学療法士の主な就職先

理学療法士の就職先は幅広く、以下のような施設・分野があります。

医療分野

急性期病院・回復期リハビリテーション病院・地域包括ケア病棟・クリニック・診療所

介護分野

介護老人保健施設特別養護老人ホーム通所リハビリ(デイケア)通所介護(デイサービス)訪問リハビリ訪問看護ステーション

障害福祉分野

障害者支援施設・就労移行支援・児童発達支援・放課後等デイサービス

その他

小児療育施設・スポーツチーム・フィットネス施設・自費リハビリ施設・学校教員・研究職

就職先の多様性は理学療法士の強みのひとつです。ただし、どの分野を選ぶかによって将来性・年収・仕事のやりがいは大きく異なります。

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理学療法士の年収・給料の実態

厚生労働省「賃金構造基本統計調査」や各種調査によると、理学療法士の平均年収はおおむね400〜450万円前後とされています(施設・地域・経験年数によって差があります)。

一般的な大卒・大学院卒の給与水準と比較すると、飛び抜けて高いとは言えない水準です。初任給は月給20〜25万円程度が多く、経験を積んでも大幅な昇給が見込みにくい構造になっています。

なぜ年収が上がりにくいのかについて、次の章で詳しく説明します。

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将来性についての本音、供給過多と社会保障の現実

ここからは、理学療法士という職業の将来性について、私(筆者:理学療法士・介護支援専門員・介護医療情報サイト運営)の視点から、根拠を示しながら率直に述べます。良いことばかり書いてある記事が多い中で、これから進路を決める方に「もう一方の現実」を知ってほしいからです。

供給過多は厚生労働省も認めている

厚生労働省の「医療従事者の需給に関する検討会 理学療法士・作業療法士需給分科会(第3回、平成31年)」の資料では、以下のように明示されています。

PT・OTの供給数は現時点ですでに需要数を上回っており、2040年頃には供給数が需要数の約1.5倍になると推計されています。2024年時点で理学療法士の資格保有者はすでに約21万人に達しています。2000年頃(養成校118校)と比べて養成校は275校以上に倍増しており、毎年1万人以上の新たな有資格者が輩出され続けています。

医療・介護財源に依存した仕事の構造的問題

理学療法士の仕事の大半は、医療保険・介護保険・障害者総合支援法などの公的保険財源によって支えられています。いわば、限られた社会保障の医療介護費を大勢の療法士で山分けしている構造です。

財源が一定である以上、供給が増えれば一人当たりの取り分は減ります。実際、医療・介護報酬は改定のたびに算定要件が厳しくなり、効果の薄いリハビリへの報酬は縮小傾向にあります。

職能団体(日本理学療法士協会)は保険分野での職域拡大や処遇改善を訴え続けていますが、社会保障費の削減や社会保険料の抑制を求める世論の方向性とは逆行しており、大衆の共感を得にくくなっています。社会保険料を下げるということは、医療・介護職の原資が減るということでもあります。

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養成校の偏差値低下と資格の質の問題

1990年代後半から2000年代にかけて、少子高齢化による需要増を見越して、学費が高くても学生が集まる学科として注目され養成校が急増しました。しかし皮肉なことに、少子化で高校卒業生の絶対数が減る中で、多すぎる養成校が入学者を奪い合う状況になっています。

このようになることは予測できましたが、職能団体も見て見ぬふりをして、有資格者が集まれば政治力が持てるという幻想を会員に示し、養成校の乱立を止めようとはしませんでした。その結果、私立大学・専門学校の多くで定員割れもおき、偏差値は実質的に機能しなくなっているケースもあります。理論上の偏差値は設定されていても、ほぼ全入状態のところもあります。

厚生労働省の需給分科会でも「養成施設出身者の国家試験合格率が低下傾向にあるなど、養成の質の低下を指摘する意見がある」と明記されています。

一方で国公立大学の理学療法学科は偏差値55〜65と高く、教育の質も高い水準を維持しています。同じ「理学療法士」という資格でも、どの養成校を経たかによって実力・思考力・応用力に大きな差が生じているのが現実です。
基礎学力の低い人が多く入学する資格になってしまっていることは、社会全体で見たときに地位向上や職域拡大を難しくしている要因のひとつです。

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介護・高齢者リハビリの社会的価値への疑問

もうひとつ、進路選択の前に深く考えてほしいことがあります。

高齢者へのリハビリは、本当に社会全体にとって最善の投資なのか。

これは理学療法士を否定する問いではなく、社会の成熟とともに真剣に問われるべきテーマです。
現在の介護保険・医療保険制度下では、「なんとなく状態維持のために続けている」「患者・利用者の希望や習慣で惰性的に続いている」リハビリが少なくないのも事実です。介護分野のケアマネジャーの現場感覚としても、「リハビリは単価が高いわりに効果が見えにくい」という声が聞かれることもあります。しかし、「人柄」や「生活の張り合い」のような、本質的ではないところで高齢者との関わりを保つケースもあります。

また、人生の最終段階にある高齢者に対して、どこまでリハビリ介入を続けることが本人の幸福に資するのかという倫理的な問いも、今後の日本社会で避けられないテーマになっていきます。医療・介護の過剰提供を見直すべきだという声は、反サロ的な思想の強い人だけではなく、医療や介護の仕事をしている人たちの間でも強まっています。

「患者のためにリハビリをする」という志は尊いものです。しかし広い視野で社会全体の生産性や持続可能性から考えると、今後は「どんな対象に・どんなリハビリを・どのくらい行うことが社会的に正しいか」が厳しく問われる時代になります。その問いを内面化できるかどうかが、これからの理学療法士の価値を左右します。

それでも理学療法士に価値がある分野とは

厳しいことを書きましたが、理学療法士という仕事がなくなるわけではありませんし、確かに価値を発揮できる分野もあります。

急性期・回復期の医療リハビリは、手術後や脳卒中発症後など、介入によって明確に回復を促せる場面です。科学的なエビデンスに基づいて介入できる専門家として、必要性は今後も変わりません。

小児・障害分野は、発達支援や障害のある方の生活支援において、長期的な関わりが必要です。社会的な意義も高く、人口動態の影響を受けにくい側面があります。

自費リハビリ・予防・スポーツ分野は、公的保険に依存しないビジネスモデルを構築できるかが鍵です。今でもストレッチの専門店やパーソナルトレーニングのジムなどは一定の需要があり、効果や成果も出していますが、そこで働く人は理学療法士の資格を持っている人ではないケースがほとんどです。

国公立大学などで高い専門性を培った理学療法士が、研究・教育・起業・国際活動などで活躍する可能性もあります。理学療法士だからというわけではなく、健康分野での研究に関する知見や、公衆衛生や予防医学などの観点からの発想で新しいビジネスを始めてる方などもいます。

また、今でも健康意識は少しずつ高まっているので、自ら進んで体を動かす習慣を作る人などが増えています。そこにうまく絡んでいくことができれば、何かしらの仕事になるかもしれません。

もしかするとAIなどの技術が躍進して、人間がほとんど働かなくても社会が回るような状況になった場合、スポーツやボディメイクなどに時間やお金を費やす人が増え、それとともに理学療法士のような知見が求められる場面が来るかもしれないです。ただ、その時には1人の理学療法士の知識よりもAIの知見が大きく超えていますし、フィジカルAIのように物理的な面でも施術やコンディショニングをロボットが行える状態になっているかもしれません。人が必要になるのかはわかりません。

ポイントは理学療法士の知見を持ちつつ、「どこで何をするか」です。すべての理学療法士が将来性を失うわけではありません。社会の変化を読んで適切なポジションを選べるかどうかが、分かれ目になります。

進路として選ぶ前に考えてほしいこと

理学療法士は、人の身体機能の回復を支える意義深い仕事です。一方で、進路として選択するにあたっては、以下の現実をしっかり把握したうえで判断してほしいと思います。

理学療法士という仕事の現実

  • 厚生労働省の推計でも、2040年には供給が需要の1.5倍になることが示されており、供給過多は確実に進む
  • 仕事の大半は医療保険・介護保険という公的財源に依存しており、財源が増えない限り年収の大幅な向上は期待しにくい
  • スポーツをしてきたのでスポーツの分野で理学療法士として働きたいという希望は多いが、現実的に考えて理学療法士にお金を払って何かしてもらうというニーズも市場も小さい、資格に関係なくできる人は実績を出している
  • 養成校の乱立によって一部の私立大学・専門学校では定員割れ・偏差値の実質崩壊が起きており、資格の質の低下が懸念されている
  • 介護・高齢者分野でのリハビリの社会的意義は今後さらに問われるようになり、漫然とした長期リハビリへの公的支出は縮小される可能性が高い

それでも選ぶなら

  • 国公立大学など教育の質が高い養成校を目指すこと
  • 急性期・小児・障害・自費・研究・教育など社会的意義の高い分野・ビジネスモデルを選ぶこと
  • 「なんとなく医療職・人助けの仕事がしたい」ではなく、20〜30年後の社会保障・人口動態・職業構造を見据えた選択をすること

若いうちにやりたいことを一生懸命やることは大切ですし、理学療法士として現場で人を支える仕事には確かなやりがいがあります。しかし、それは「将来性がある」こととは別の話です。資格を取った後に「こんなはずじゃなかった」とならないよう、進路決定前にこの記事が少しでも参考になれば幸いです。

参考

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