日常生活自立支援事業とは サービス内容・ケース事例

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日常生活自立支援事業とは何か、どんなサービスがあるかについてイラストや事例などを使って分かりやすく解説します。日常生活自立支援事業と成年後見制度の違い、日常生活自立支援事業のメリットとデメリット、問題点、日常生活自立支援事業の専門員の仕事などについても紹介します。

このページの目次

日常生活自立支援事業の目的

日常生活自立支援事業の目的は、障がいや高齢により、一人では自立した生活が困難な人々に対し、社会福祉協議会(社協)が本人との契約に基づきながら、日常生活に必要な支援を提供することで、障がい者や高齢者の権利擁護を図ることを目的とした事業です。

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日常生活自立支援事業の根拠法

日常生活自立支援事業の根拠法は「社会福祉法」です。

社会福祉法第一章第2条3項に第二種社会福祉事業の1つとして「福祉サービス利用援助事業」が定義されたもので、同法第八章第二節には事業を行うに当たっての留意点が規定されていて、介護保険及び成年後見制度(民法改正)に先だって平成11年10月から実施されています。

実施主体は都道府県・指定都市社会福祉協議会(窓口業務等は市町村の社会福祉協議会等で実施)です。

なお、日常生活自立支援事業はもともと「地域福祉権利擁護事業」という名称でしたが、平成19年度に事業名称が現在のものに変更されています。

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日常生活自立支援事業の概要

日常生活自立支援事業の主なサービスとしては次の通りです。

日常的な福祉サービスの利用援助

  • 福祉サービスについての情報の提供
  • 福祉サービスの利用手続き
  • 福祉サービスの支払い
  • 福祉サービスの苦情手続き

※「障害者自立支援法」や「介護保険制度」等に基づく福祉サービスを利用する際の情報提供や手続きの支援がおこなわれています。

日常的な金銭管理サービス

  • 年金や福祉手当の手続き代行
  • 社会保険料の支払い代行
  • 公共料金の支払い代行
  • 医療費支払い代行
  • 家賃支払い代行
  • 税金支払い代行 など

書類等預かりサービス

  • 預貯金通帳
  • 年金証書
  • 権利証
  • 印鑑(実印・銀行印等)
  • その他重要書類

※保管場所は金融機関の貸金庫などを使用しています。

※日常生活自立支援事業は「書類等の預かりサービス」のみではサービスを利用することができませんのでおぼえておきましょう。

※日常生活自立支援事業では預けることができないものもありますので、お住まいの社協に 連絡をして確認をしておきましょう。

次のようなものは預けることができません

  • 宝石
  • 書画
  • 骨董品
  • 貴金属
  • 株券
  • 小切手

 

見守りサービス

定期的な訪問による利用者の生活変化の察知(見守り)

日常生活自立支援事業には他にもいろいろ

  • どんな福祉サービスが使えるのか手続き方法なども教えてくれます。
  • 役所に出す書類の書き方や家賃・水道代などの払い方を教えてくれます。
  • 次の給料または年金が入るまで生活ができるようお金の上手な使い方を教えてくれます。
  • 家に置いておくと心配な通帳などを安全に預かってくれます。

その他、困ったことがあればまずは相談してみましょう。

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日常生活自立支援事業の対象外サービス

日常生活自立支援事業では、以下のようなことはサービス対象外となります。

医療に関する支援

日常生活自立支援事業は、医療に関する支援を提供しません。

医療に関する支援は、医師や看護師などの医療従事者によって提供されます。

療養に関する支援

日常生活自立支援事業は、療養に関する支援を提供しません。

療養に関する支援は、病院や施設などで提供されます。

生活保護

日常生活自立支援事業は、生活保護に関する支援を提供しません。

生活保護に関する支援は、市町村や県などの地方公共団体によって提供されます。

※ただし、上記に該当する場合でも地域や施設によっては支援の対象が異なるため、詳細 については確認することが必要です。

※日常生活自立支援事業では、個人の日常生活に必要な支援を提供することを目的としています。薬物治療に関する支援や医療機関による治療や手術などは対象外です。

※法的な問題や犯罪に関する支援も提供されないことが一般的です。

 

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日常生活自立支援事業を受ける時の費用は無料?

日常生活自立支援事業の利用料は、実施主体である都道府県や指定都市の社会福祉協議会が定める利用料を利用者が負担します。

お住まいの地域によって利用料は異なるものの、訪問1回あたり利用料の目安は、平均1,200円程度です。

ただし、契約締結前の初期相談等に係る経費や生活保護受給世帯の利用料については、無料となっているケースが多いです。

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日常生活自立支援事業と成年後見制度の違い

日常生活自立支援事業と「成年後見制度」は似ています。

「日常生活自立支援事業」は、判断能力が不十分な障がい者や高齢者が地域において自立した生活が送れるよう、先ほどまで述べてきた支援を提供する事業であるのに対して、「成年後見制度」は、民法に基づく法定後見制度や任意後見契約に関する法律に基づく任意後見制度で、判断能力が不十分な方に、金銭管理や生活上の事務などの手伝いをすることで、日常生活を安心して送れるように支援を行う制度です。

名称 日常生活自立支援事業 法定後見制度(補助・保佐・後見)
根拠法 社会福祉法 民 法
対象者 障がいや高齢の理由で「福祉サービス」の利用や金銭管理が自分だけの判断では難しい方(ただし、契約能力を有する者) 障がいや高齢によりする事理弁識能力が

⇒不十分な方(補助対象)

⇒著しく不十分な方(保佐対象)

⇒能力が欠けている方(後見対象)

担当機関 都道府県・指定都市社会福祉協議会

担当する専門家⇒専門員・生活支援員

補助人・保佐人・後見人

親族、弁護士、社会福祉士、行政書士、司法書士など複数も可

手続方法 相談⇒本人が契約

(本人の契約能力ありが条件)

家庭裁判所に申立

⇒本人

(本人以外にも配偶者・四親等内の親族・市区町村長・検察官など手続き可能)

※本人の同意:補助=必要 保佐・後見=不要

意思能力

確認・審査

診断・鑑定

ガイドラインに則り確認

契約締結審査会で契約能力を審査

医師の診断書

診断書附票(裁判所テンプレート)を家庭裁判所に提出

保佐人・後見人は原則鑑定が必要となる

援助内容 本人と社会福祉協議会による援助契約に沿って

・福祉サービス利用援助

・日常的金銭管理

・書類等の預かり

・見守り

家庭裁判所による審判の後、

財産管理や身上監護に関する法律行為

「同意権」「取消権」については以下の通り、

補助人⇒申立ての範囲内の「特定の法律行為」

保佐人⇒民法13条1項に定められた行為

後見人⇒日常生活に関する行為以外の行為

「代理権」については以下の通り、

補助人・保佐人⇒申立て範囲内の「特定の法律行為」

後見人⇒財産に関するすべての法律行為

費用 ・契約までは無料

・契約後は利用者負担(1回1,200円平均)

※生活保護受給者は公費補助

・申立・登記手続・事務費用、後見人等への報酬など

(報酬は本人の財産などに応じて家庭裁判所が審判)※成年後見制度利用支援事業(適用要件あり)

日常生活支援事業は、福祉サービスの利用や家計管理の支援にサービスが限定されているのに対し、成年後見制度は「悪徳商法に引っかかった時の対処」であったり、不動産の売買や賃貸契約に関わる法律行為についての「代理権」「同意権」も補助人が契約の代理人になることが可能など、法律行為の代理や代行も含まれます。

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日常生活自立支援事業のメリットとデメリット

日常生活自立支援事業のメリット

メリットその1 金銭管理ができるようになる

判断能力と身体能力に低下の見られる障がい者や高齢者の方は、自分だけの力で銀行などの金融機関に出向くことができない場合もあります。

例え金融機関に行くことができたとしても、金銭の出し入れを本人1人でできない場合もあるでしょう。

同居している家族がいる場合は手伝ってもらえるかもしれませんが、独居生活である方々も多くいらっしゃいます。

日常生活支援を対象とした介護保険サービスの1つに訪問介護がありますが、訪問介護員は預貯金等の金銭の出し入れをするサービスが認められていないため、手伝うことができません。

このようなケースなどを解決するために役立つのが「日常生活自立支援事業」になります。

他にも、家賃や光熱費の支払いなど、未払いだと生活に支障がでる生命線を確保するための支払いなどにも手を貸してもらえる事業です。

 

メリットその2 福祉サービスや多くの社会資源を活用できるようになる

例えば高齢で判断能力や体力が衰えてきた人が、身近に安心して頼れる家族や友人がいない場合、自分に必要な情報を入手することは困難でしょうし、地域にある福祉サービスや社会資源の存在は知っていても利用方法がわからずに困っている方はけっして少なくはありません。日常生活自立支援事業では、「専門員」や「生活支援員」と呼ばれる職員が、利用者の要望に応じた福祉サービスや社会資源を教えてくれて、 利用手続きも一緒にやってくれます。

このように、一人生活を余儀なくされている高齢者や障がい者の方々にとっては、特に「日常生活自立支援事業」を利用することはメリットだと言えるでしょう。

日常生活自立支援事業のサービスを受けることによって…

「福祉サービスが活用できるようになり、身の回りのことや金銭管理ができるようになる」、さらに「日常生活自立支援事業」は利用者本人が福祉施設に入所したり、病院に入院した場合でもサービスを利用することが可能です。

専門員や生活支援員が定期的に訪問して、施設や病院での生活やサービスの利用に関する情報提供や相談、助言、施設や病院などの利用料の支払いなどのお手伝いをしてくれるのは嬉しいですよね。

 

日常生活自立支援事業のデメリット

メリットばかりが先行するこの日常生活自立支援事業ですが、実はおさえておくべきデメリットも存在します。

デメリットその1 サービス利用は無料ではない

相談や支援計画の作成にかかる費用は無料ですが、福祉サービス利用手続き、金銭管理などのサービスを利用する際は都度料金が発生するので、すべてが無料ではないのがデメリットかもしれません。

※サービス利用料の目安は平均1回1,200円

(生活保護受給世帯は、利用料を国と都道府県・指定都市が助成しますので無料です)

 

デメリットその2 成年後見制度と比較して効力や認知度が低い

金融機関や支店によって、日常生活自立支援事業への理解に差があることも事実です。

認知症や障害の程度が軽くても、成年後見制度(多くは後見類型を想定)の利用を強く勧めたり、本事業による代行は認めないとする金融機関もあり、手続きがスムーズにいかないケースもあるようです。

また、施設や病院に入所・入院が必要な際に「身元保証人」「身元引受人」を求められることがありますが、本事業では保証人(引受人)になれないことは把握しておく必要があります。

成年後見制度では、

  • 後見人がついていることで、連絡先は確保されていること
  • 不測の事態には、後見人が窓口となること

以上2点を施設・病院側に伝えることで、成年後見人を立てていれば身元引受人や身元保証人は不要であるとされる場合が多いのですが、日常生活支援事業では一切そのような効力はありません。

「法律行為」のレベルにあたる場合は本事業では対応できないと認識しておくと良いでしょう。

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日常生活自立支援事業の問題点

全国社会福祉協議会が各都道府県社会福祉協議会の日常生活自立支援事業(担当部局向け)に実施した令和2年12月の調査結果では、次にあるような問題(課題)があることが分かっています。

  • 財源確保
  • 人材の確保
  • 日常生活自立支援事業と成年後見制度の連携
  • 日常生活自立支援事業と生活保護との連携・役割分担
  • 関係機関(行政含む)における本事業に対する適切な理解の促進
  • 関係機関(行政含む)における本事業との連携、協力体制づくり
  • 地域共生社会に向けた包括的支援体制との連動
  • 生活困窮者自立支援制度との連携・役割分担
  • 初回相談から契約までに時間がかかる

 

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日常生活自立支援事業の事例

ここからは、日常生活自立支援事業のいくつかの実例をご紹介します。

日常生活自立支援事業の事例 1

「ホームヘルパーの利用と通帳管理」

仮名)丸山明子さん(77歳)

丸山さんは現在独居生活をしています。

近頃「預金通帳をなくしてしまいそうになる」という不安をもっていました。

また、ホームヘルパーを利用したいと思っていますが、手続きの仕方が分かりません。

そんな不安を、思い切って民生委員に相談したことが「日常生活自立支援事業」を知るきっかけとなりました。

契約にあたっては、社会福祉協議会の専門員が丸山さん宅を訪れ、事業の目的やサービスの内容について説明してくれました。

吉田さんの担当となった生活支援員は同市に住む田中さん。地域で詩吟を広めるボランティア活動もしています。サービス内容は、福祉サービスの利用援助と日常的な金銭管理の支援です。

毎月2回生活支援員の田中さんが訪れ、預金から生活費をおろしてきてもらい、丸山さん宛の郵便物のなかで支払いの必要なものがあれば、一緒に確認をして手続きのお手伝いをしてくれます。さらに要介護認定の申請や介護支援専門員(ケアマネジャー)へのケアプラン作成依頼にも、生活支援員の田中さんが立ち会うなど、丸山さんの暮らしをしっかりとサポートしています。

 

日常生活自立支援事業の事例2

「銀行の暗証番号がわからなくなってきた」

仮名)木下みよ子さん(81歳)

ご主人を亡くし3年が経つ。

老齢年金を受給しながら賃貸住宅で独り暮らしをしています。

預金の引き出しは、近くのコンビニエンスストアにあるATMを利用していましたが、身体機能の低下によって外出することが難しくなってきていました。それに加えて最近は記憶力の低下も著しく、暗証番号を思い出せない時もあるなど不安を感じて生活していました。

光熱費は口座引落しとしていましたが、預金通帳の記帳はしておらず、収支状況を把握できずにいました。自宅に届く郵便物の文字が小さく、内容を把握するのにも苦労していたそうです。

日常生活自立支援事業を知ったきっかけは、定期的に通っていた「かかりつけ医」からの紹介だったそうです。

日常生活自立支援事業のサービス内容は月に1回、生活支援員の近藤さんが自宅を訪問。

その月に必要なお金について相談をして、生活支援員の近藤さんが預金払戻しと通帳記帳を代行しています。

そして都度、訪問時に木下さんの生活状況や、お困りごとがないかを確認するとともに、相談に応じてくれています。

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日常生活自立支援事業の専門員とは

日常生活自立支援事業の専門員は地域の社会福祉協議会に所属しています。

サービス利用に関する相談を受けたり、サービスの対象者が確認ができたら支援計画を立て契約を結ぶ専門的な知識を持った人です。また、生活支援員に指導や指示を行うのも仕事です。

高齢や障がいなどで判断能力が不十分な人向けには「成年後見制度」がありますが、成年後見制度を利用するほどではないものの、判断能力が低下した人が身近に利用できる仕組みとして、今後さらに需要が高まる専門職といわれています。

日常生活自立支援事業の専門員になるには

支援を必要としている人の掘り起こし、または初期相談から契約に至るまでのきめ細かな相談支援を行う業務内容のため、専門員になるためには「社会福祉士」や「精神保健福祉士」の資格があると有利です。

日常生活自立支援事業の専門員研修

日常生活支援事業の専門員研修は、日常生活支援事業を行うために必要なスキルや知識を学ぶための研修プログラムです。

日常生活自立支援事業は、全国都道府県各地において権利擁護の視点から高齢者や障がい者の生活を支える事業として定着していて、令和3年3月時点では利用契約件数は約5万7千件にのぼり、事業開始以来の新規契約締結件数の累計は19万件を越えました。

一方、本事業に寄せられる相談・支援内容は年々複雑かつ多様化してきており、障がい者の地域生活移行や権利侵害事例への対応、成年後見制度との連携が必要な事例が増加しています。

また、地域包括支援センターをはじめ幅広い関係機関や専門職との連携や協働による対応が求められるなど、日常生活自立支援事業の専門員に求められる専門性の水準が高まっているのが事実です。

こうした状況において、本事業に新たに従事する専門員が各地域において十分な役割を果たしていけるよう、権利擁護および相談援助の基本的な視点ならびに本事業の推進に必要とされる知識・技術の習得の支援を目的に専門員研修は全国各地で開催されています。

2020年2月以降から現在にかけてのコロナ禍では密を避けるためにオンデマンド配信で研修会を実施するなどして進めています。

まとめ

以上が日常生活自立支援事業についての説明となりました。

日常生活自立支援事業は、認知症高齢者、知的障がい者、精神障がい者など、身体能力や判断能力に問題を抱えている人が、地域で自立した生活を過ごせるように、専門知識や経験のある人々が手助けをする事業です。

  • 福祉サービスを安心して利用したい
  • 毎日の生活に欠かせないお金の出し入れの支援を受けたい
  • 日常生活に必要な事務手続きの支援を一緒にやってもらいたい
  • 大切な通帳や証書などの保管を安全な場所で預かってもらいたい

上記にあるような悩みを抱えている当事者の方はもちろん、そのご家族様、当事者と在宅介護でかかわる介護支援専門員(ケアマネージャー)の皆さんは「日常生活自立支援事業」を上手く利用していきましょう。

 

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