「利用者本位」という言葉は、介護の現場やケアマネジャーで頻繁に耳にするものですが、その真の意味や背景にある介護保険の理念を深く理解している人は少ないかもしれません。この記事では、利用者本位の真の意味、介護保険制度におけるその位置づけ、そしてその理念をどこまで尊重すべきかについて介護の世界の深い部分に踏み込んで詳しく解説します。
このページの目次
利用者本位とは
利用者本位とは、介護サービスが提供される際に、何よりも利用者の立場、ニーズ、希望を最優先に考える姿勢を指します。
この考え方は、高齢者が自分らしい生活を継続できるよう、自立した生活を積極的に支援することを目的としています。
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利用者本位についてわかりやすく5分でわかる動画
利用者本位についてまずは概要を分かりやすく把握したいというケアマネや介護・福祉の仕事の方向けに動画を用意しました。
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利用者本位のメリット
まずは一旦は、利用者本位でケアの方針やケアをする時の気持ちに寄り添って関わっていくことのメリットを挙げてみたいと思います。
高齢者の生活の質の向上
利用者本位に視点で、サービスが利用者の立場に立って提供されることで、高齢者の今まで持っていた生活習慣や、好みだったことなど生活の質が維持・向上されます。また、老後生活で今までできなかったことにチャレンジしたりすることも心の内に秘めているご利用者も多くおり、それを目標に生きがいにするということも素敵です。
個別性の尊重
高齢者一人ひとりの個性やニーズを尊重し、それに合わせたサービスが提供されます。大勢でコミュニケーション取るのが好きな人にはそのような環境でケアを受けるような配慮をしたり、もともと人と対面して大勢で同じ空間にいるのが辛いという個性を持っている人などに対しては介護者と利用者が1対1のサービスにするなどの配慮で個別性の尊重をすることができます。
利用者を他の利用者と同じ「ただの要介護者」という見方でなくなる
介護の仕事を始めてしまうと、要介護のいくつの人だからこんな感じの人でしょうという風に先入観でその人の人柄やニーズを一生懸命把握するということを怠ってしまう状況になってしまうことがあります。業者本位の姿勢を意識してどんどん利用者の立場や希望を引き出していき、今の心身の状態でどのようにしたらそれが実現できるかという建設的なケアプランの作成や支援が可能となります。
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利用者本位とは逆の支援とは
ここまでは利用者本位とは何かということについて述べてきました。
利用者本位というと簡単に言うと「利用者の言うことをそのまま聞くことでしょう?」と思ってしまいますが、ちょっと違う考え方で、利用者本位の姿勢とは逆の支援とはどんなものかを考えてみたいと思います。
利用者本位とは逆の支援とは、提供者側の事情や法令・行政制度の論理が優先されるようなサービスの提供方法を指します。これは「縦割り」や「お役所仕事」といった言葉で表現されることが多いです。
例えば、介護保険サービスを利用する時間についても本人が今まで望んできた生活の時間とずれてしまったり、本当はお風呂はリハいびりで運動をした後に入りたいと思っているのに、朝デイサービスに着いたらすぐにお風呂に入らなければならないなど、サービスを提供する側の都合で利用者のスケジュールや提供されるサービスが決まってしまうというのが利用者本位とは逆の支援になります。事業者本位です。
もちろんこのような議論をする時には理想と現実の問題がつきまといます。全ての利用者の希望通りに利用者本位のサービス提供をしていたら、職員が何人いても足りませんし、希望を全部叶えるならば、介護保険という社会保障制度で提供される健康で文化的な生活のための支援ではなく、やりたいことを全部叶えるわがままに対するただのお手伝いさんです。
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利用者本位の視点の例
このように利用者本位の視点のケアをする時には、利用者や家族のニーズは十分に一人をして把握した上で、わがままにはなりすぎず、各サービス事業者も現実的にできるという落としどころをあらかじめ決めなくてはなりません。
つまり、利用者本位というのは、いきなり出てきた利用者の希望をその場でで叶えてあげるというものではなく、高齢者が自分らしい生活を継続できるようにあらかじめ利用者本位の視点のケアプランを作成しておき、それに沿ってサービス担当者みんなで同じような価値観を持って支援するということです。
これは介護保険の制度にも通じるものがあります。介護保険を利用してサービスを受ける場合にはあらかじめケアマネジャーが利用者のニーズを把握した上で日々どんなケアが生活上必要になるかをケアプランで明記しておきます。
このような過程で進めると、次で紹介するような介護保険の基本理念にある利用者本位、高齢者の自立支援、利用者による選択が採用されていることになります。
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利用者本位と自立支援
介護保険の基本理念は、「利用者本位」「高齢者の自立支援」「利用者による選択(自己決定)」にあります。これは、高齢者が自分らしい生活を継続できるよう、自立した生活を積極的に支援することを目的としています。
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利用者本位はわがまま?どこまで尊重すべきか
利用者本位はわがままではありません。しかし、サービス提供者としては、利用者のニーズや希望を尊重しつつも、現実的な制約や法令・行政制度の論理も考慮する必要があります。
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利用者本位の介護を法的な介護保険制度の中で実現していくためにはどのような課題感
介護保険制度の中で「利用者本位」の介護を実現していくためには、以下のような課題感が考えられます。
- 介護保険制度は非常に複雑であり、一般の利用者やその家族が理解するのは難しい。この複雑さが、利用者本位のサービス提供を妨げる要因となっている。特に介護保険でできるラインと介護保険ではなく自分で費用を払ってやるべき範囲の設定・理解が難しい。
- 制度上の基準やガイドラインに従ってサービスを提供することで、個別のニーズに応じた柔軟なサービスが提供されにくい場合がある。
- 現行の評価・介護報酬体系が、量的なサービス提供を重視する傾向にあるため、質的なサービス提供や利用者本位のサービスが十分に評価されない場合がある。
- 利用者やその家族が、自らの権利や選択肢を知らない、または理解していないために、利用者本位のサービスを求めることができない場合がある。
- コミュニケーションの不足:ケアマネージャーやサービス提供者と利用者やその家族との間でのコミュニケーションが不足している場合、利用者のニーズや希望が正確に伝わらないことがある。
これらの課題を解決するためには、制度の簡素化、サービスの質を重視した評価・報酬体系の見直し、利用者やその家族の教育・啓発、コミュニケーションの向上などの取り組みが必要と考えられます。
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本質は、ケア側の都合の支援ではなく、利用者の能動的な気持ちや活動を支援すること
介護サービスの本質は、ケア側の都合や制約を優先するのではなく、利用者の能動的な気持ちや活動を最優先に支援することにあります。これにより、高齢者が自分らしい生活を継続できるようになります。利用者本位という言葉を使うと利用者の気持ちを大切にという精神的な面ばかりに気持ちが行きがちですが、利用者本位の気持ちは活動や自己実現にまでつなげることが理想です。
ケアプランを作成するケアマネジャーは、利用者本位の気持ちを大切にするのならば、本人が将来的にやりたいことや、昔から好きで続けていることなどもケアプランに組み込み、日常製つを送るためのことではないため介護保険サービスはできないかもしれませんが、家族や地域の社会資源、付き添いサービスなどを活用して、本人の望むことができる道筋を一緒に考えていってあげられたら素敵だなと思います。
おそらく、ケアマネジャーさんの中でニーズをしっかりと抽出して利用者本位の生活につなげるにはどうしたらよいかを真剣に感がていった場合には「社会資源」というところに行きつくと思います。
介護保険サービスとして存在しているような支援方法だけでその人の生活をパズルのように組み込むだけのケアプランなのであれば、おそらくそれは利用者本位の生活とは離れたものになってしまうでしょう。
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まとめ
利用者本位の支援を考えるということは、事前に利用者のニーズを確認し、それに沿って計画を立てて、利用者や支援者が同意し目線を合わせて生活を支えていくということにあります。
もちろんその場で発生した利用者の希望に沿うことも利用者本位ですが、
「高齢者の自立支援」
「利用者による選択(自己決定)」
そしてそれを定期的にモニタリングして次の計画に活かすというプロセスを繰り返していくことが、利用者本位の落としどころではないでしょうか。そこには、サービス担当者会議などで、利用者や家族、専門職等の意見も踏まえていくことで、どこまで支援すべきか、どういう手段でするかという現実的なラインがケアプランに明記されて決まっていきます。ケアプランの原案を作り、利用者の気持ちや望む生活に沿っているか、手段やどこまでを目標にするか、それがケアマネジメントの価値であり、ケアマネの重要な利用者本位を実現する仕事だと思うのです。
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