医療保険の訪問看護「特掲診療料の施設基準等 別表第七」の内容・疾病

医療保険の訪問看護「特掲診療料の施設基準等 別表第七」の内容・疾病

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訪問看護において医療保険が適用されるかどうかの判断で最も重要な根拠となるのが、「特掲診療料の施設基準等 別表第七」(以下「別表第七」)です。

この記事では、別表第七に掲げられた疾病等の一覧と内容、別表第七に該当した場合の特例(訪問回数・時間・保険適用の変化)、そして混同されやすい別表第八・特定疾病との違いについて、訪問看護事業者・経営者・ケアマネジャーが実務で判断できるレベルで解説します。

「別表第七」とは何か、正式名称と根拠法令

「別表第七」の正式名称は「特掲診療料の施設基準等別表第七 在宅患者訪問診療料(Ⅰ)及び在宅患者訪問診療料(Ⅱ)並びに在宅患者訪問看護・指導料及び同一建物居住者訪問看護・指導料に規定する疾病等」です。

特掲診療料は「とっけいしんりょうりょう」という読み方をします。特定の診療行為に対する報酬のことです。

根拠は「特掲診療料の施設基準等」(平成20年3月5日厚生労働省告示第63号)であり、診療報酬の算定方法(平成20年厚生労働省告示第59号)に基づいて定められています。

訪問看護の文脈では「厚生労働大臣が定める疾病等」とも呼ばれます。介護保険施設基準においても「指定居宅サービス介護給付費単位数表の訪問看護費の注1の厚生労働大臣が定める疾病等」として同様の疾病等が規定されており、介護保険・医療保険の双方にまたがって影響する重要な告示です。

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医療保険の訪問看護が適用される条件の全体像

訪問看護に適用される保険は、利用者の年齢・要介護認定の有無・疾病・状態等によって決まります。原則として介護保険が優先されますが、以下の場合は医療保険が適用されます。

医療保険が適用される主なケース

条件内容
要介護・要支援認定を受けていない方医療保険のみ適用
② 別表第七に掲げる疾病等に該当する方要介護認定がある場合でも医療保険が優先
③ 精神科訪問看護指示書が交付されている方精神疾患(認知症を除く)のある方
④ 特別訪問看護指示書が交付されている期間中急性増悪等により月1回・最大14日間

この記事では②の「別表第七に掲げる疾病等」を中心に解説します。

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別表第七の疾病等一覧(20疾病・状態)

以下が告示に掲げられた疾病等です。

No.疾病等備考
1末期の悪性腫瘍
2多発性硬化症
3重症筋無力症
4スモン
5筋萎縮性側索硬化症(ALS)
6脊髄小脳変性症
7ハンチントン病
8進行性筋ジストロフィー症
9パーキンソン病関連疾患進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、およびパーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ3以上であって生活機能障害度がⅡ度またはⅢ度のものに限る)
10多系統萎縮症線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症及びシャイ・ドレーガー症候群
11プリオン病
12亜急性硬化性全脳炎
13ライソゾーム病
14副腎白質ジストロフィー
15脊髄性筋萎縮症
16球脊髄性筋萎縮症
17慢性炎症性脱髄性多発神経炎
18後天性免疫不全症候群(AIDS)
19頸髄損傷
20人工呼吸器を使用している状態

疾病等の数は「20」ですが、9番のパーキンソン病関連疾患はいくつかの病名を含み、10番の多系統萎縮症も複数の病名を含みます。

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各疾病の実務上のポイント

末期の悪性腫瘍

がんと診断されていれば自動的に別表第七に該当するわけではありません。「末期」とは、医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものです。主治医が訪問看護指示書にその判断を記載することで適用されます。

パーキンソン病関連疾患

パーキンソン病は、ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ3以上かつ生活機能障害度がⅡ度またはⅢ度のものに限定されます。ステージ1・2のパーキンソン病は別表第七に該当しません。

なお、進行性核上性麻痺(PSP)と大脳皮質基底核変性症(CBD)はステージや障害度の条件なしに別表第七に該当します。

人工呼吸器を使用している状態

疾病名ではなく「状態」による規定です。人工呼吸器(侵襲的・非侵襲的を問わず)を現に装着・使用している状態であれば、基礎疾患が別表第七の他の疾病でなくても別表第七に該当します。

頸髄損傷

頸椎レベルの脊髄損傷で、呼吸管理や高度な身体介護が必要な状態です。胸髄損傷・腰髄損傷は別表第七には含まれません。

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別表第七に該当した場合の特例

1. 医療保険が優先適用される

要介護・要支援の認定を受けている利用者であっても、別表第七の疾病等に該当する場合は医療保険の訪問看護が優先されます。介護保険の支給限度額とは別枠で請求されるため、介護保険の残枠を訪問リハビリ福祉用具等の他サービスに充てることができます。

関連記事:訪問看護とは 指示書の内容、介護保険・医療保険・精神科の違い

2. 週4日以上の訪問が可能

通常、医療保険の訪問看護は週3回・1日1回が原則ですが、別表第七に該当する場合は週4日以上の訪問が可能になります。

3. 1日複数回(難病等複数回訪問)が可能

1日に2回または3回以上の訪問看護が可能です。2回または3回以上訪問する場合は「難病等複数回訪問加算」を算定できます。

4. 複数の訪問看護ステーションを利用できる

通常、医療保険の訪問看護は1か所のステーションのみですが、別表第七に該当する場合は最大2か所(週4日以上で毎日訪問の場合は最大3か所)の訪問看護ステーションを利用できます。

5. 退院日に訪問看護に入ることができる(退院支援指導加算)

通常は退院日当日に医療保険の訪問看護は算定できませんが、別表第七に該当する場合は退院日当日の訪問看護(退院支援指導加算)を算定できます。

6. 施設入所者にも訪問看護基本療養費を算定できる

通常、特別養護老人ホーム等の施設入所者への訪問看護は医療保険では算定できませんが、別表第七に該当する場合は算定が可能です。

7. 複数名訪問看護加算を算定できる

1人の利用者に対して複数の看護師等が同時に訪問する場合の加算を算定できます。

特例別表第七該当時
医療保険の優先適用○(要介護認定があっても医療保険)
週4日以上の訪問
1日複数回訪問(難病等複数回訪問加算)
複数ステーションの利用○(最大2〜3か所)
退院日の訪問看護○(退院支援指導加算)
施設入所者への訪問看護
複数名訪問看護加算
長時間訪問看護加算(90分超)△(別表第八該当が必要)
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別表第八とは何か、疾病ではなく「状態」で判断

特掲診療料の施設基準等別表第八」(以下「別表第八」)は、別表第七と並んで訪問看護の算定に大きく影響する重要な告示です。

別表第七が「疾病名」で判断するのに対し、別表第八は「状態」で判断します。

別表第八は医療保険の適用を決定するものではなく、特別に手厚い訪問看護が必要な状態にある利用者への特例を規定するものです。別表第八のみに該当する場合は原則として介護保険が適用されます(別表第七にも該当する場合は医療保険が適用)。

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別表第八の状態一覧(2024年改定後)

2024年(令和6年)4月の診療報酬改定で3つの状態が追加されました。現行の別表第八は以下のとおりです。

区分状態
在宅悪性腫瘍等患者指導管理(※1)を受けている状態にある者、在宅気管切開患者指導管理を受けている状態にある者、気管カニューレを使用している状態にある者、または留置カテーテル(※2)を使用している状態にある者
在宅自己腹膜灌流指導管理、在宅血液透析指導管理、在宅酸素療法指導管理、在宅中心静脈栄養法指導管理、在宅成分栄養経管栄養法指導管理、在宅自己導尿指導管理、在宅持続陽圧呼吸療法指導管理、在宅自己疼痛管理指導管理または在宅肺高血圧症患者指導管理を受けている状態にある者
人工肛門または人工膀胱を設置している状態にある者
真皮を越える褥瘡の状態にある者
在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者

※1 在宅悪性腫瘍等患者指導管理:2024年改定で「在宅麻薬等注射指導管理」「在宅腫瘍化学療法注射指導管理」「在宅強心剤持続投与指導管理」が含まれるよう拡充されました。

※2 留置カテーテル:膀胱留置カテーテル胃チューブ(胃ろう・経鼻)など経管栄養を利用している場合等が対象です。

2024年改定で追加された3つの状態

区分「一」の在宅悪性腫瘍等患者指導管理に以下が追加されました。

  • 在宅麻薬等注射指導管理:経口での麻薬服用が困難な方に在宅でモルヒネ・フェンタニル等の麻薬を注射または持続皮下注で投与する管理
  • 在宅腫瘍化学療法注射指導管理:抗がん剤を注射または持続注入ポンプで在宅投与する管理
  • 在宅強心剤持続投与指導管理:心不全患者へ輸液ポンプを用いた強心剤の持続投与を行う管理

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別表第七・別表第八が両方該当する場合とどちらか一方の場合の違い

別表第七と別表第八の該当状況によって、適用される保険・利用できる特例が異なります。

該当状況適用保険主な特例
別表第七のみ該当医療保険週4日以上・1日複数回・複数ステーション・退院日訪問等
別表第八のみ該当介護保険(原則)長時間訪問看護加算(90分超)・複数名訪問・週4日以上・1日複数回等
別表第七・第八の両方に該当医療保険上記すべて+90分超の長時間訪問看護加算も算定可

90分を超える長時間訪問看護加算は別表第八への該当が必要です。別表第七のみに該当している場合、医療保険での訪問は可能ですが長時間訪問看護加算は算定できません。

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特定疾病・指定難病との違い・混同しやすいポイント

特定疾病(介護保険の16特定疾病)との違い

介護保険の「特定疾病」は、40歳以上65歳未満の第2号被保険者が介護保険サービスを利用するための条件となる16疾病です。別表第七と一部重複しますが、別物です。

制度目的疾病数
介護保険の特定疾病40〜64歳が介護保険を利用するための条件16疾病
別表第七要介護認定があっても医療保険の訪問看護を受けるための条件約20疾病・状態

別表第七にはあるが特定疾病にない疾病の例として、後天性免疫不全症候群(AIDS)、頸髄損傷、人工呼吸器を使用している状態など。

特定疾病にはあるが別表第七にない疾病の例としては、初老期における認知症、脳血管疾患、閉塞性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)関節リウマチなど。これらは要介護認定を受けていれば介護保険での訪問看護となり、医療保険への切り替えは通常行われません。

指定難病・難病医療費助成との違い

「難病の患者に対する医療等に関する法律」に基づく指定難病は現在300疾患以上あります。しかし難病医療費助成の受給者証(特定医療費受給者証)を持っていても、別表第七に該当しない場合があります。

「難病受給者証があるから医療保険の訪問看護」と自動的に判断することはできません。別表第七に記載された疾病等に該当するかどうかを訪問看護指示書や診療情報提供書の病名で確認することが必要です。

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保険適用判断フローチャート

利用者の訪問看護に適用される保険を判断する際の基本的な流れは以下のとおりです。

STEP

年齢・要介護認定の確認

─ 65歳未満かつ要介護認定なし → 医療保険

─ 65歳未満かつ要介護認定あり(特定疾病による)

─ 65歳以上ならSTEP2へ

STEP

別表第七に該当するか確認

─ 該当する → 【医療保険】(要介護認定があっても医療保険優先)

─ 該当しないならSTEP3へ

STEP

精神科訪問看護指示書が出ているか

─ 出ている(認知症を除く精神疾患)→ 【医療保険】

─ 出ていないならSTEP4へ

STEP

特別訪問看護指示書が出ているか(急性増悪等)

─ 出ている → 【医療保険】(期間限定・最大14日間)
─ 出ていないならSTEP5へ

STEP

要介護・要支援認定があるか

─ ある → 【介護保険】(支給限度額の範囲内)

なお、STEP 5で介護保険が適用になる場合でも、別表第八に該当する状態であれば長時間訪問・複数回訪問などの特例が介護保険の中で適用されます。

よくある質問(Q&A)

こちらのQ&Aは、厚生労働省のQ&Aというわけではなく、編集部でよくある質問を厚生労働省資料や告示などをもとにまとめたものになります。判断に迷う部分は自治体等にご確認いただくことを強く推奨します。

Q
パーキンソン病と診断されていれば自動的に別表第七に該当しますか?
A

いいえ。別表第七が適用されるのはパーキンソン病関連疾患の中でも「ホーエン・ヤール重症度分類ステージ3以上かつ生活機能障害度Ⅱ度またはⅢ度のもの」に限られます。ステージ1・2のパーキンソン病は別表第七に該当しません。ただし、進行性核上性麻痺(PSP)・大脳皮質基底核変性症(CBD)はこの条件の制限なく該当します。

Q
がん患者は必ず別表第七に該当しますか?
A

いいえ。「末期の悪性腫瘍」のみが対象です。主治医が「一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したもの」である必要があります。がんと診断されていても回復が見込まれる状態では別表第七には該当しません。

Q
別表第七に該当しているかどうかは誰が判断しますか?
A

主治医が判断し、訪問看護指示書にその旨を記載します。訪問看護ステーションは指示書の記載内容に基づいて判断します。疑問がある場合は主治医に確認することが必要です。

Q
難病医療費助成(特定医療費受給者証)を持っていれば医療保険の訪問看護になりますか?
A

必ずしもそうではありません。現在難病医療費助成の対象は300疾患以上ありますが、別表第七に掲げられているのは約20の疾病等です。受給者証を持っていても別表第七に該当しない難病も多くあります。受給者証の有無だけで判断せず、別表第七の疾病一覧との照合が必要です。

Q
別表第七に該当しているが、別表第八の状態でもある場合はどうなりますか?
A

医療保険が適用され(別表第七の効果)、さらに90分超の長時間訪問看護加算が算定できるようになります(別表第八の効果)。両方に該当する場合が最も多くの特例を受けられます。

Q
別表第八のみに該当する場合、医療保険になりますか?
A

原則として介護保険が適用されます。ただし別表第八に該当する状態の方は介護保険の中で長時間訪問看護加算・複数名訪問・週4日以上の訪問等の特例が適用されます。なお、別表第八に該当していても別表第七の疾病でもある場合は医療保険が優先されます。

まとめ

別表第七・別表第八についてのポイントをまとめます。

  • 別表第七は「疾病等」のリストで、要介護認定がある方でも医療保険の訪問看護が優先適用される条件
  • 別表第七に掲げられているのは20の疾病・状態。代表例は末期の悪性腫瘍・ALS・脊髄小脳変性症・パーキンソン病関連疾患(重症例のみ)・後天性免疫不全症候群・頸髄損傷・人工呼吸器使用中
  • 別表第七に該当すると週4日以上・1日複数回・複数ステーション利用・退院日訪問等の特例が適用される
  • 別表第八は「状態」のリストで、医療保険の適用を決めるものではなく特別に手厚い訪問看護の特例(90分超の長時間訪問等)を規定するもの。2024年改定で3状態が追加
  • 別表第八のみに該当する場合は原則介護保険。両方に該当する場合は医療保険で長時間訪問加算も算定可
  • 「難病受給者証がある=別表第七に該当」ではない。300疾患以上ある難病医療費助成と、約20疾病の別表第七は別物
  • 「パーキンソン病=別表第七」でもない。ホーエン・ヤール重症度分類と生活機能障害度の条件を確認する必要がある

参考法令・資料

  • 特掲診療料の施設基準等(平成20年3月5日厚生労働省告示第63号)(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84aa9733&dataType=0)
  • 厚生労働省「訪問看護のしくみ」
  • 令和6年度診療報酬改定の概要 在宅(在宅医療・訪問看護)(厚生労働省)
  • 介護保険法第8条(指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準)
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