通所介護サービスにおける「送迎」とは、利用者を自宅から施設まで、またはその逆のルートで輸送することを指します。この重要なサービスは、利用者の安全と利便性を確保するために不可欠です。しかし、送迎サービスには、加算と減算の両面が存在し、これらは介護報酬に直接影響を与えます。さらに、業務委託や共同送迎の可否も、サービス提供者にとって重要な検討事項です。本記事では、通所介護における送迎サービスの基本的な概念、加算と減算の条件、そして業務委託や共同送迎の可能性について詳しく解説します。
このページの目次
送迎とは
通所介護の送迎業務とは、利用者が自宅と通所介護施設(デイサービスセンターなど)の間を移動する際の輸送サービスを提供することです。このサービスは、高齢者や障害を持つ方々が介護サービスを利用する上での利便性を高めるために重要であり、特に移動が困難な方々にとっては必須のサポートです。送迎業務には、安全な運転はもちろんのこと、利用者の乗降補助、車両の清掃やメンテナンス、緊急時の対応など、車両の運行に関わる様々な業務が含まれます。また、運転者は接遇能力も求められ、利用者の快適で安心な移動を支える役割を担っています。
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通所介護の送迎業務の加算と減算の歴史
通所介護の送迎は、平成12年の制度開始から17年まで加算されていましたが、18年の改定で基本報酬に含まれるようになり、27年の改定で送迎を行わない場合に減算が適用されるように変わりました。
算定要件(片側につき) | 単位数 | |
---|---|---|
平成12年 | 制度創設の趣旨と事業所の閾値交渉行う場合に加算。 | +44単位 |
15年 | (上記に同様) 利用者自身の事情により送迎を行わずとも基本報酬に含まれているため、評価せず。通所介護計画上送迎の提供が位置付けられていたが、利用者側の事情により送迎を実施しなかった場合は、加算を算定できない。 |
+47単位 |
18年〜26年 | (基本報酬に組み込む) 基本に従い、基本報酬での送迎にかかる費用等の評価を行わなかった場合の評価は行わない。(指定老人福祉施設等は除く) |
ー |
27年〜 | 利用者の許諾と事業所間の送迎を行わない場所場合に減算することに(通称:送迎減算)
※ 徒歩での送迎は、減算の対象とはならない。 |
-47単位 |
この表は、日本の通所介護サービスの送迎加算の算定要件とその単位数を年度ごとにまとめたものです。平成18年から平成26年までの期間は単位数が記されていませんが、それは送迎に関する費用が基本報酬に組み込まれていたためです。
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送迎業務の課題・問題点・怖いから断る人も多い現状
送迎業務というのは本来は介護職員や看護職員、機能訓練指導員などが日々の業務として日常的に行うような設計にはなっていません。しかしながら、例えば看護職員は看護職員としての業務を行う時間にその業務に従事してれば良いということでその他自由に動けてしまうことや、機能訓練指導員なども機能訓練を行った時以外の時間については自由に動けることなどを踏まえてある意味すでに効率化されてしまっています。そんな中で介護職員に関しても時間帯によっては利用者がまだいない時に送迎をやってもらいたいと依頼されたりすることも多々あります。送迎が怖いから送迎の仕事は断るということも雇用契約で業務内容として書かれていなければ拒否することはできると思います。
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生活相談員や看護職員が送迎業務まで行わならなければならない状況
生活相談員が行う業務の中で「利用者の送迎」に関する業務は80.7%で大半を占めていたことがわかります。また、専門職である看護師・准看護師などの看護職員が「利用者の送迎」に関する業務を行うことも28.3%となっています。これは、送迎業務を担当をしなければならない職員が不足していることを如実に表していると考えられます。
送迎職員の採用に関する課題
送迎サービスの課題として、ドライバーを確保するためのコスト負担が大きいということが18.3%で指摘されており、これは送迎業務の実施における大きな障壁となっています。さらに、ドライバーの確保が難しいという点に加えて、利用者の自宅が送迎範囲外であるといった地理的な問題も課題として挙げられていることがわかります。
「事業所間」送迎車の共同運行
スケールメリットや地域との関係性、業務委託の整備などの課題はありますが事業所間の送迎車での共同運行について運用されています。実際に厚生労働省が調査した結果によると内野効率的効果的な活用の促進について「事業所間の送迎車の共同運行」と回答した事業所は21.6%ありました。このことからも通所型サービスや障害サービスも含めて送迎車を共同運行することや、業務委託契約を結んで送迎の業務だけ別の事業者に行ってもらうことなどが検討を進められています。
総合的な問題点
総合的に、通所介護の送迎業務は、人材の確保、地理的な制約、接遇の質という複数の面で課題を抱えていることが明らかです。これらの問題に対応するためには、ドライバーの待遇改善や教育の充実、送迎範囲の再検討、接遇スキルの向上など、多角的なアプローチが求められるでしょう。また、利用者満足度の向上を図るためには、これらの課題に対する明確な解決策を策定し、実行に移す必要があります。さらには生活相談員が送迎の業務を行ってしまっている現状を踏まえ、生活相談員の業務のあり方や送迎の時間についての人員基準の緩和などについてもしっかりと検討を進めることが必要だと思います。人材の効率的効果的な活用の促進についての資料でも配置要件の緩和についてが本来は大きく重要視されているところですが、あえて送迎車の共同運行の方に焦点をずらしているので不思議です。
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通所介護などの通所系サービスに関する送迎業務のよくある質問()
・送迎については、通所サービスの介護報酬において評価しており、利用者の心身の状況により通所サービスの事業所の送迎車を利用することができないなど特別な事情のない限り、訪問介護員等による送迎を別途訪問介護費として算定することはできない。
・ただし、利用者が、居宅から病院等の目的地を経由して通所サービスの事業所へ行く場合や、通所サービスの事業所から病院等の目的地を経由して居宅へ帰る場合等、一定の条件の下に、令和3年度から訪問介護費を算定することができることとする。
・なお、訪問介護員等により送迎が行われる場合、当該利用者が利用している通所サービスの事業所の従業者が当該利用者の居宅と事業所間の送迎を実施していないため、送迎減算が適用されることに留意すること。
介護保険最新情報vol.952「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(vol.3)(令和3年3月26日)」
・送迎減算は、送迎を行う利用者が利用している事業所の従業者(問中の事例であれば、A事業所の従業者)が当該利用者の居宅と事業所間の送迎を実施していない場合に適用されるものであることから、適用される。
・ただし、B事業所の従業者がA事業所と雇用契約を締結している場合は、A事業所の従業者(かつB事業所の従業者)が送迎を実施しているものと解されるため、この限りではない。
介護保険最新情報vol.952「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(vol.3)(令和3年3月26日)」
・指定通所介護等事業者は、指定通所介護等事業所ごとに、当該指定通所介護等事業所の従業者によって指定通所介護等を提供しなければならないこととされている。
・ただし、利用者の処遇に直接影響を及ぼさない業務についてはこの限りではないことから、各通所介護等事業所の状況に応じ、送迎に係る業務について第三者へ委託等を行うことも可能である。
・なお、問中の事例について、送迎に係る業務が委託され、受託した事業者により、利用者の居宅と事業所との間の送迎が行われた場合は、送迎減算は適用されない。
介護保険最新情報vol.952「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(vol.3)(令和3年3月26日)」
・居宅まで迎えに行くことが原則である。
・ただし、道路が狭隘で居宅まで送迎車が入ることができない場合など、地理的要因等から妥当と考えられ、かつ、利用者それぞれに出迎え方法を予め定めるなどの適切な方法で行う必要がある。
介護保険最新情報vol.59介護報酬等に係るQ&A(平成12年3月31日)
・個別に送迎する場合のみに限定するものではないが、居宅内介助に要する時間をサービスの提供時間に含めることを認めるものであることから、他の利用者を送迎時に車内に待たせて行うことは認められない。
介護保険最新情報vol.454「平成27年度介護報酬改定に関するQ&A(平成27年4月1日)」
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複数事業所の共同送迎や業務委託は可能か
通所介護などの通所系サービスにおける共同送迎と業務委託の現状、課題、および今後の展望について、以下のようにまとめられます。
複数事業所の共同送迎や業務委託の現状
共同送迎の可能性
厚生労働省は、通所系サービスにおいて、複数の事業所が共同で送迎を行うことを可能とするルールを明確化しようとしています。これには、外部への委託を含む共同送迎が含まれます。
障害福祉分野の参画
通所介護の共同送迎に加えて、障害福祉事業所も同様の措置を取る計画があります。これにより、制度の垣根を超えた共同送迎が可能になる見込みです。
複数事業所の共同送迎や業務委託課題
制度の曖昧さ
現場からは、共同送迎に関する制度が曖昧で取り組みにくいとの声が上がっています。自治体によって共同送迎の解釈や対応が異なることも問題とされています。
責任の所在の明確化
共同送迎を行う際の責任の所在を明確にする必要があります。これは、事業所間の協力体制を構築する上で重要な要素です。
今後の展望
ルールの明確化と普及
厚生労働省は、共同送迎に関するルールを明確化し、より多くの事業所が共同送迎を実施できるようにすることを目指しています。
効率化と負担軽減
共同送迎の実施は、運行の効率化と現場の負担軽減に寄与すると期待されています。特に、運転手不足の問題解決に大きな効果があると見られています。
利便性の向上
共同送迎により、利用者にとっても移動の利便性が向上する可能性があります。
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結論
通所介護などの通所系サービスにおける共同送迎と業務委託は、運行の効率化と現場の負担軽減を目指していますが、制度の明確化や責任分担のモデル事例の提示など、実施に向けた課題が存在します。
今後、これらの課題に対処し、より実用的で利便性の高いシステムの構築が期待されています。厚生労働省は27日、来年度の介護報酬改定に向けた協議を重ねている審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)で、通所系サービスの送迎について資料を提示し議題には上げていますが、グレーゾーンだらけで下手すれば送迎減算になったり、運営基準違反や、責任の所在の押し付け合いになるなどのリスクが想定されるので、送迎業務業務委託契約書や、送迎業務のモデル例など明確に実例を挙げて取り組み、地域でのルールの格差がないように整備していただくことを期待しています。
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