意識障害は、様々な原因によって引き起こされる状態であり、患者の意識レベルが低下することを特徴とします。意識障害の症状や意識レベルの評価方法に焦点を当て、JCS(Japan Coma Scale)とGCS(Glasgow Coma Scale)という主要な評価手法について解説します。
このページの目次
意識障害とは
意識障害は、意識のクリアさ、覚醒レベル、または認知機能に影響を与える医療状態です。意識障害には、意識レベルの低下、反応の遅れ、または外界刺激に対する応答の欠如が含まれます。
意識障害は、脳の広範囲にわたる損傷や機能障害、代謝異常、薬物の影響など、さまざまな原因によって引き起こされる可能性があります。この状態は、軽度の傾眠から完全な意識喪失に至るまで、重症度に幅があります。意識障害の診断と管理は、原因を特定し適切な治療を行うために重要な情報で、緊急の医療の介入が必要となることもあります。
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意識障害の症状
嗜眠(lethargy)、傾眠 (Somnolence)、昏蒙(obtundation)、昏迷(stupor)、昏睡(coma)という用語を説明すると、これらは意識の異なる段階を示します。以下にそれぞれの状態の特徴を表にまとめてみます。
状態 | 説明 | 応答性 |
---|---|---|
嗜眠 (Lethargy) | 患者は眠いが、適切な刺激によって目を覚まし、短時間の間は応答が可能。 | 刺激に対して遅いが適切な反応 |
傾眠 (Somnolence) | 患者は非常に眠いが、適切な刺激によって一時的に目を覚ますことができる。しかし、活動が低下しており、自発的な注意が持続しない。 | 刺激によって一時的に目を覚ます |
昏蒙 (Obtundation) | 意識は低下しており、通常より強い刺激が必要で、反応が鈍い。 | 強い刺激で部分的に反応 |
昏迷 (Stupor) | 極めて強い刺激(痛み刺激など)でのみ最小限の反応がある。 | 極めて限定的な反応のみ |
昏睡 (Coma) | 意識がなく、どんな刺激に対しても反応がない。 | 一切の応答がない |
嗜眠 (Lethargy)
嗜眠状態では、患者は非常に眠い状態ですが、名前を呼ばれるなどの刺激には反応し、目を開けて話すことができます。しかし、その反応は遅く、持続性に欠けることが多いです。
傾眠 (Somnolence)
傾眠状態では、過度の眠気や睡眠への強い傾向を示す状態を指し、通常、患者は起こされると反応はしますが、非常に眠たそうに見え、活動が低下しています。自発的に目を開けたり会話を続けたりすることが困難であることが特徴です。
昏蒙 (Obtundation)
昏蒙状態では、意識はより深く低下しており、患者は強い刺激に対してのみ反応します。反応は非常に鈍く、環境への関心や対応が著しく低下しています。
昏迷 (Stupor)
昏迷状態では、患者は極めて重い刺激、例えば痛みを与えることによってのみ、非常に限定的な反応を示します(たとえば痛みに対して手を引っ込めるなど)。日常的な声掛けや触れるだけではほとんどまたは全く反応しません。
昏睡 (Coma)
昏睡状態では、患者は全く反応がなく、瞳孔反射や痛みに対する反応も含め、外部からのどんな刺激にも応じません。生命維持のための基本的な反射すら失われることがあります。
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意識レベルの確認方法
意識レベルの確認方法としては、医療的な側面からはJCS(Japan Coma Scale)とGCS(Glasgow Coma Scale)が用いられます。
よく、人が倒れているのを見つけた時の緊急時の対応として、耳元で大丈夫ですかと大きな声で声をかけたり、肩を叩いたりして反応があるかなどを確かめるということが一般的ですが、このような意識レベルの確認方法をもJCSやGCSの項目と近い内容になっています。刺激をしても覚醒しない昏睡状態の場合には、心肺蘇生などの緊急救命対応が選択肢になります。
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JCSとGCSの違い
JCS(Japan Coma Scale)とGCS(Glasgow Coma Scale)はどちらも意識レベルの評価に使用されるスケールですが、使用目的や詳細さに違いがあります。
特徴 | JCS (Japan Coma Scale) | GCS (Glasgow Coma Scale) |
---|---|---|
適用範囲 | 主に日本国内で使用 | 国際的に使用される |
構成 | 覚醒レベルのみ(1桁:目開き、2桁:言葉、3桁:運動) | 開眼、言語、運動の3つの項目から構成 |
詳細性 | 比較的シンプル | 詳細な評価が可能 |
使用時の便利さ | 簡単で迅速に評価可能 | 詳細な情報を提供し、より複雑 |
用途 | 緊急時や一般病棟での迅速な意識評価に適している | ICUや専門的な診断が必要な場合に用いられる、より精密な意識レベルの評価に適している |
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ジャパンコーマスケール 意識レベルの評価方法(JCS:Japan Coma Scale)
ジャパンコーマスケールにおいては、大きくI桁、II桁、III桁の3段階に分類し、さらにそれらを3段階に細分化して9段階で評価します。
0 清明 意識清明
ジャパンコーマスケールでは、意識の状態を何桁なのかで判定・評価するため、意識が清明な場合は0桁となります。JCSを記入する書類などがある場合には意識が清明な場合は0となります。
Ⅰ桁 刺激しないでも覚醒している状態
分類 | 刺激への反応 |
1 | だいたい意識清明だが、今ひとつはっきりしない |
2 | 見当識障害がある (現在の時刻や場所、周囲の人を正しく認識できない) |
3 | 自分の名前、生年月日がいえない |
Ⅱ桁 刺激すると覚醒する状態(刺激をやめると眠り込む)
分類 | 刺激への反応 |
10 | 普通の呼びかけで容易に開眼する
※何らかの理由で開眼できない場合 |
20 | 大きな声または身体をゆさぶることにより開眼する
※何らかの理由で開眼できない場合 |
30 | 痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと、かろうじて食べたい開眼する |
Ⅲ桁 刺激をしても覚醒しない状態
分類 | 刺激への反応 |
100 | 痛み刺激に対し、払いのけるような動作をする |
200 | 痛み刺激で少し手足を動かしたり、顔をしかめる |
300 | 痛み刺激に反応しない |
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グラスゴーコーマスケール 意識レベルの評価方法(GCS:Glasgow Coma Scale)
グラスゴーコーマスケール(GCS)は、意識レベルを評価するために「開眼」を4段階、「発語」を5段階、「運動」を6段階で区切り、それぞれの最良の反応を点数化して合計します。この合計点によって患者の重症度や緊急度を判断し、点数が低いほど患者の状態が重く、緊急性が高いことを示します。
カテゴリ | スコア | 説明 |
---|---|---|
開眼反応 (E) | 4 | 自発的に開眼 |
3 | 呼びかけに対して開眼 | |
2 | 痛み刺激に対して開眼 | |
1 | 開眼しない | |
言語反応 (V) | 5 | 混乱しているが、適切な会話ができる |
4 | 不適切な言葉(会話は可能だが、混乱している) | |
3 | 不適当な言語(言葉は理解できるが無意味な言語) | |
2 | 不可解な音(声は出るが、言葉になっていない) | |
1 | 発語なし | |
運動反応 (M) | 6 | 命令に従って適切な動作(指示に従う) |
5 | 局所化反応(痛み刺激に向かって適切な動作をする) | |
4 | 正常な曲げ(痛み刺激に対して手足を引っ込める) | |
3 | 異常屈曲(痛み刺激に反応して不自然な姿勢をとる) | |
2 | 異常伸展(痛み刺激に反応して体を後方に反らす) | |
1 | 運動反応なし |
GCSは、意識障害の深さと脳機能の障害の程度を評価するために使用されます。GCSの総合点は3から15点で、点数が低いほど意識障害の重度が高いと判定されます。
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JCS(Japan Coma Scale)とGCS(Glasgow Coma Scale)の使い分け
JCS と GCS は、職場環境や救命が必要な患者が多い環境なのかなどによって使われる頻度は異なってきます。JCS と GCS の違いの表で紹介したように、JCS は 意識レベルのみを簡単に把握できるという利点がある意識レベルの評価方法ですが、GCS の方は開眼、言語、運動の3つのことについて意識で自分でコントロールができる状態なのかという情報が増えます。
JCSの使用
JCSはそのシンプルさから、迅速に意識レベルを評価する必要がある緊急時や一般病棟で特に有効です。日常的な患者モニタリングや急変時の初期評価に適しており、訓練を受けたスタッフならば容易に利用できます。
GCSの使用
GCSは国際的に広く認知されており、より詳細な評価が必要な場合や特定の臨床研究において選ばれます。ICUや神経科学的な評価が求められる専門病棟での使用に適しており、詳細な病状の追跡や治療効果の評価に役立ちます。
評価スケールの併用
特定の状況では、JCSとGCSを併用して患者の意識状態をより総合的に評価することが有益です。例えば、緊急時にJCSで迅速評価を行いつつ、病状が安定してからGCSによる詳細なフォローアップを行うことで、患者管理を最適化できます。
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まとめ
今回は意識障害についての解説と意識レベルの評価方法について紹介をしてきました。
意識障害や意識レベルの状態を客観的に評価するためには、JCS(Japan Coma Scale)とGCS(Glasgow Coma Scale)という主要な評価手法が有効です。これらの評価と合わせて、その他の所見も記録・報告するとより伝達がしやすくなります。
医療的な観点からはJCS や GCS を使った 伝達が求められますが、介護の現場においてはこれらの評価スケールを使った評価よりも、ご利用者に対してどんなことをした時にどんな反応だったのか、意識がはっきりしない状態がどれぐらいの時間続いたのかなどを、時系列でありのままに記録しておく方が、そのご利用者の状態を的確に把握できることも多いです。
医療との連携という観点では、意識レベルの評価方法に JCS や GCS があるということを知っておき、JCS と GCS の確認項目に沿った意識状態の確認をしておけると状況の伝達がスムーズになるかと思い
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