線分抹消試験のやり方・評価用紙とは?半側空間無視(USN)の把握

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線分抹消試験は、脳血管障害や外傷性脳損傷後にみられる高次脳機能障害のうち、とくに半側空間無視(USN:Unilateral Spatial Neglect)を簡便に評価するための神経心理検査です。ベッドサイドや病棟、介護施設などでも実施しやすく、注意障害や視空間認知の偏りを客観的に把握できる点が特徴です。
本記事では、線分抹消試験の基本的な考え方から実施方法、評価用紙(画像・PDFファイル)や結果から考える実務的な活用方法までを整理します。
線分抹消試験とは何を評価する検査か
線分抹消試験は、紙面上に無作為に配置された短い線分の中から、すべての線分を見つけて消していく課題です。一見単純な作業ですが、実際には視覚的注意、空間探索能力、注意の持続といった複数の認知機能が関与しています。
1973年に、M. L. Albert (アルバート)によって開発されたことから「Albert's Test」とも呼ばれます。
とくに重要なのは、左右どちらか一方の空間に対する注意の向きに偏りがないかを確認できる点です。右半球損傷後に多くみられる左半側空間無視では、左側に存在する刺激を「見えていないかのように」見落とすことがあり、線分抹消試験ではその特徴が結果に反映されます。
線分抹消試験は「Behavioural Inattention Test (BIT)」という包括的な行動性無視検査セットの一部としても用いられています。
線分抹消試験と半側空間無視(USN)との関係
半側空間無視は、感覚器自体に問題がないにもかかわらず、身体や空間の片側に注意を向けられなくなる症状です。視覚だけでなく、聴覚や触覚、身体イメージにも影響が及ぶことがあります。
線分抹消試験では、紙の中央から左右に配置された線分のうち、特定の側だけが一貫して消されない、あるいは消し残しが多い場合にUSNを疑います。単に全体の消去数を見るだけでなく、「どの位置の線分が消されていないか」という空間的な偏りを確認することが重要です。
線分抹消試験の基本的なやり方
検査は静かな環境で、被検者が無理のない姿勢で座った状態で行います。用紙は被検者の正面、身体の中心線に合わせて配置することが原則です。この位置がずれると、結果の解釈に影響を与える可能性があります。
被検者には「この紙にある短い線を、見つけたらすべて消してください」といった簡潔で中立的な指示を出します。左右どちらから始めるか、どの順番で行うかについては原則として指示しません。あくまで自然な探索行動を観察するためです。
実施中は、検者が過度に声かけを行うことは避け、被検者の探索の仕方や消し方を観察します。所要時間は数分程度で、途中で中断する必要がある場合はその状況も記録しておくことが望まれます。
線分抹消試験の評価方法
線分抹消試験は、評価用紙の線の数などに厳格な決まりはなく、数にはほぼ意味がないので、線分抹消試験の評価は、単純に「何本消せたか」だけでは不十分です。確かに消去できた線分の総数は集中して注意をそらさずに全ての線を消せたのかという点では重要な指標ですが、それ以上に左右差の有無が臨床的には重視されます。
例えば、右側の線分はほぼすべて消されているのに、左側の線分だけが多数残っている場合、左半側空間無視が強く疑われます。また、中央付近は消せているが端の方だけが抜けている場合には、注意の範囲が狭くなっている可能性も考えられます。
研究や施設によっては、左側の消去率が一定割合を下回る場合をリスクありと判断する運用がなされていることもありますが、あくまで参考値として考えましょう。
臨床や介護現場では、「以前より左右差が改善しているか」「リハビリ介入後に探索範囲が広がっているか」といった経時的変化を追う目的で用いられることも多く、スクリーニングとモニタリングの両面で活用されます。
線分抹消試験の評価用紙
線分抹消試験の評価用紙には厳しい決まりはありません。例えばの例として以下の画像を掲載しておきます。評価用紙としてダウンロード・印刷してお使いいただくこともできます。

「左右差があるかどうかを大まかに把握するスクリーニング」「リハビリ前後の変化を見る内部評価」として用いるのであれば、各自が作成した用紙を使っても差し支えないです。
紙のサイズは目的に合わせて設定した方が良いと思います。例えば、食事のお盆の上のお皿やお椀を左右差なく認識できているのかを確認したいということであれば、A4サイズの紙だと空間の範囲が狭いの不十分です。A3サイズくらいに拡大した紙を評価用紙として実施すると、空間の認識範囲がよりリアルになります。
介護・看護・リハビリ現場での線分抹消試験の実務的な活用方法
線分抹消試験は、検査結果がそのまま日常生活上のリスク評価につながりやすい点でも有用です。
たとえば、左半側空間無視がある利用者では、食事で左側のお皿に手を伸ばさない、車椅子操作で左側をぶつける、ベッドからの移乗時に左側のブレーキを忘れるといった場面が起こりやすくなります。
検査結果を多職種で共有することで、介助方法や環境設定、声かけの位置などを統一し、事故予防や自立支援につなげることが可能になります。その意味で、線分抹消試験は単なる評価ツールではなく、ケアの質を高めるための共通言語としても重要な役割を果たします。
おわりに
線分抹消試験は、簡便でありながら半側空間無視をはじめとする注意・視空間認知の偏りを的確に捉えられる検査です。点数だけに頼らず、消し残しの位置や探索の仕方を丁寧に観察することで、臨床や介護現場での実践的な判断に役立てることができます。

