作業療法士の仕事内容、理学療法士との違いを活かし価値も年収も上がる

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作業療法士(OT:Occupational Therapist)は、本来リハビリテーション職のなかでも仕事の射程が最も広い資格です。身体機能だけでなく、精神・認知・生活・社会参加まで「人が生きていく上での作業全体」を扱う。
そういう意味では、理論上は理学療法士よりも広いフィールドで活躍できるはずの資格です。
ところが現実はどうか。多くの作業療法士が、本来の専門性である「作業」の視点を活かしきれず、理学療法士がやるようなリハビリの真似事をしている。それが現場でよく見られる光景です。
この記事では、作業療法士の定義・仕事内容・理学療法士との違い・国家試験・年収を押さえつつ、作業療法士という職業の「使われていない可能性」と「見過ごされている現実」を、筆者(理学療法士・ケアマネジャー)の視点から率直に伝えます。
作業療法士とは(定義・資格概要)
作業療法士は、理学療法士及び作業療法士法(昭和40年法律第137号)によって定められた国家資格です。
厚生労働大臣の免許を受けて、「作業療法士」の名称を用いて、医師の指示の下に、「作業療法」を行うことを業とする者。
法律上の「作業療法」の定義は、身体または精神に障害のある者に対し、応用的動作能力または社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作その他の作業を行わせることとされています。
さらに世界作業療法士連盟(WFOT)の作業療法の定義では、
作業療法は、人々が日常生活を構成する作業に参加できるようにすることである。作業療法の効果は、人々が意味を見いだした作業に参加できる程度によって判断される。
とされており、その人にとって意味のある「作業」への参加を支援するというのが作業療法の本質です。ここでいう「作業」とは、手工芸や工作だけでなく、食事・入浴・仕事・趣味・社会参加など、生活を構成するあらゆる行為を指しています。
英語では Occupational Therapist といい、現場では「OT(オーティー)」と略されます。
理学療法士との違い、制度上・考え方の違い
理学療法士と作業療法士はよく「似たような仕事」と思われていますが、資格の定義と本来の考え方には明確な違いがあります。
| 比較項目 | 理学療法士(PT) | 作業療法士(OT) |
|---|---|---|
| 法律上の対象 | 身体に障害のある者 | 身体または精神に障害のある者 |
| 主な目的 | 基本的動作能力の回復 | 応用的動作能力・社会的適応能力の回復 |
| アプローチの視点 | 身体・運動機能 | 生活・作業・精神・社会参加 |
| 精神科への関与 | 原則的に少ない | 精神科が主要な活躍分野 |
| 強みのフィールド | 身体機能の回復・訓練 | 生活全体の再構築・社会復帰支援 |
作業療法士の最大の特徴は、精神疾患のある方も対象に含まれることです。統合失調症・うつ病・認知症・発達障害などに対して、その人の生活の質や社会参加を支援できるのはOTの独自領域です。また、身体疾患であっても「どう生活を再構築するか」という応用的・生活的な視点からアプローチするのがOTの本来の強みです。
理学療法士は「身体機能を治す」、作業療法士は「生活と作業を整える」と大まかに言えます。ただし現実の現場では、この境界は曖昧になっていることが多いのも事実です。
作業療法士の仕事内容
作業療法士の仕事内容は、働く分野によって大きく異なります。
身体障害分野
脳卒中・骨折・脊髄損傷・神経疾患などによる障害のある方に対し、上肢機能の回復訓練・日常生活動作(ADL)の訓練・自助具の提案・住環境整備などを行います。理学療法士が歩行などの「下半身・移動」を中心に担う場合が多いのに対し、OTは手や腕の機能・細かい動作・日常生活の応用動作を中心に担うことが多いです。
精神障害分野
統合失調症・うつ病・双極性障害・発達障害・依存症などのある方に対し、生活習慣の安定化支援・社会生活技能訓練(SST)・就労支援・グループ活動・レクリエーションを通じた対人関係の訓練などを行います。精神科病院・精神科デイケア・就労移行支援事業所などが主な場所です。
老年期・認知症分野
認知症のある高齢者に対し、生活機能の維持・余暇活動・回想法・生活リズムの整備などを支援します。介護老人保健施設・通所リハビリ・認知症デイサービスなどが中心です。
小児・発達障害分野
発達障害(自閉スペクトラム症・ADHDなど)・脳性麻痺・知的障害などのある子どもに対し、感覚統合療法・遊びを通じた発達支援・学校生活への適応支援などを行います。児童発達支援センター・放課後等デイサービス・特別支援学校などが主な活躍の場です。
就労支援分野
障害のある方が働けるよう、職業準備訓練・作業能力の評価・職場との調整支援などを行います。就労移行支援事業所・障害者職業センターなどで活躍します。
国家試験の概要と合格率
作業療法士国家試験概要
実施時期:毎年2月下旬
試験地:全国8都道府県
試験形式:マークシート方式(多肢選択)
問題数:200問(一般問題・実地問題)
合格基準:総得点60%以上かつ実地問題35%以上
合格率の推移
| 回(年) | 受験者数 | 合格率(全体) | 合格率(新卒) |
|---|---|---|---|
| 第60回(2025年) | 5,693人 | 85.8% | 92.5% |
| 第59回(2024年) | 5,736人 | 84.4% | 91.6% |
出典:厚生労働省「第60回理学療法士国家試験及び第60回作業療法士国家試験の合格発表について」
理学療法士(第60回:89.6%)に比べるとやや合格率は低めですが、いずれも比較的高い水準です。新卒者に限ると92.5%と高く、既卒者は37.8%と大きく下がります。
受験者数は理学療法士の約半分(約5,700人)で、資格保有者の規模も理学療法士より少ない状況です。
作業療法士の就職先
作業療法士の就職先は多岐にわたります。
医療分野
急性期病院・回復期リハビリテーション病院・精神科病院・クリニック・精神科訪問看護
介護分野
介護老人保健施設・通所リハビリ(デイケア)・訪問リハビリ・通所介護・認知症対応型施設
障害福祉分野
就労移行支援事業所・障害者支援施設・児童発達支援・放課後等デイサービス・精神科デイケア
その他
特別支援学校・自費リハビリ施設・企業(職場環境の改善・産業領域)・研究・教育機関
精神科・障害福祉・発達支援など、理学療法士が手薄な分野に作業療法士は多く配置されています。これが本来のOTの強みでもあります。
年収・給料の実態
作業療法士の平均年収は400〜450万円前後が一般的で、理学療法士とほぼ同水準です。
「勝ち組」と言われるような作業療法士でも、年収500万円程度が目安というのが現実です。
高校時代の偏差値帯で考えると、他の仕事と比べて悪くはない水準かもしれませんが、専門職・国家資格として期待する水準に達しているかというと、そうとは言えません。
大幅な昇給が見込みにくい構造的な理由は明確で、仕事の大半が医療保険・介護保険・障害者総合支援法といった公的保険財源に依存しているからです。報酬単価は国が決めており、社会保障費の見直し圧力が続く中で大幅に上昇する余地はほとんどありません。
本来の専門性を活かせていない作業療法士が多すぎる
ここからは、作業療法士という職業のリアルな現実を率直に伝えます。
作業療法士の本来の専門性は「作業を通じた人の生活・社会参加の支援」です。身体だけでなく精神・認知・心理・社会的な側面まで視野に入れた、総合的な生活支援こそがOTの独自の強みのはずです。
しかし現実の多くの病院・施設では、理学療法士と作業療法士が同じようなことをやっている光景が少なくありません。OTが肩関節の可動域訓練をして、PTが手の細かい動作訓練をして、あまり役割が変わらない。これはOTにとっては本来の専門性を活かせていない状況です。
なぜそうなるのか。ひとつには、現場のシステムや医師・施設側の理解が十分でないこと。もうひとつは、OT自身が「作業療法の独自性を打ち出す」より「PTと同じことをしていた方が無難」という道を選んでしまいがちなことです。
その結果、「OTとPTって何が違うの?」という問いに答えられない現場が生まれ、作業療法の存在価値が曖昧になっています。それは患者・利用者への損失であり、OT自身の仕事のやりがいへの損失でもあります。
社会保障依存の構造と供給過多は理学療法士と同じ問題
作業療法士も理学療法士と同様、厚生労働省の需給推計で「将来的に供給が需要を上回る」という問題を抱えています。
養成校の数は全国に207校(2024年時点)と多く、少子化による学生確保難で定員割れが続いている学校も相当数あります。入学ハードルが下がり、基礎学力の面では課題がある入学者が一定割合いるという状況は、PTと同じ構図です。
仕事の財源が医療保険・介護保険・障害者総合支援法に集中しているため、社会保障費の削減傾向の中では報酬の上昇余地は狭い。働く人が増えても、公的財源の総額が増えなければ、一人当たりに回ってくる分は増えません。
精神科・認知症・発達障害の分野は需要がありますが、そのほとんどが社会保障の給付対象です。この構造から抜け出さない限り、年収の天井は変わりません。
「変な人」と思われやすいOTの気質と、それが持つ可能性
作業療法士には「やや変わった人が多い」と言われることがあります。これは批判ではなく、むしろOTの本質的な気質の話です。
OTは、弱っている人に寄り添いながら、その人の「小さな変化」や「ちょっとした笑顔」や「些細な意欲の芽」を見つけようとする仕事です。そのために、折り紙をやらせてみたり、将棋を打ったり、庭仕事をしたり、塗り絵をしたりする。外から見ると、「あれ、リハビリって言いながら遊んでるだけ?」と思われることも少なくないでしょう。
実際、一般の人から見れば「何のためにそんなことをしているのか」よくわからないことを、真剣にやっている。それがOTです。
ただし、これには逆の可能性があります。「作業」「遊び」「楽しみ」「生きがい」「社会とのつながり」という視点から人間を見ていると、精神的な豊かさとは何か・人が元気になるとはどういうことか・人が社会の中で意味を見つけるとはどういうことかを、間接的に深く理解していきます。
その広い視野を活かせる場所に行けば、OTは非常に価値の高い人材になれます。医療や介護の現場だけにとどまる必要はないのです。
作業療法士が価値を高めるためのフィールドとは
作業療法士が本来の強みを活かせる、あるいは新しい価値を発揮できる分野を整理します。
精神科・発達支援の専門家として
精神科リハビリ・発達障害支援・就労支援は、OTにしかできない専門性が活かせる分野です。「生活を立て直す」「社会に参加する」という視点は、医師・看護師・支援員とは異なるOT独自の価値です。
認知症ケアの中心的存在として
認知症の方の「残っている能力」「楽しめること」「生活のリズム」を見つけて活かすアプローチは、まさにOTの本領です。単なる機能訓練ではなく、その人の「生きる意味」を支えることができます。
自費・予防・ウェルネス分野へ
公的保険に縛られない自費リハビリや、予防・健康増進・ウェルビーイングの分野では、作業療法の考え方が新しいサービスの形になる可能性があります。
産業・企業領域での活躍
職場環境の改善・働き方支援・メンタルヘルス対策・復職支援など、企業の人事・産業保健の分野でもOTの視点は活きます。障害があってもなくても住みやすい住環境の知見や工夫などを強みにして、建築や設計分野などで活躍する人も出てくるでしょう。この分野は公的保険に依存しないため、年収の天井も変わります。
教育・研究・地域活動
作業療法の視点から子どもの育ちや地域コミュニティを支える活動、大学での教育・研究なども、OTの広い視野が力を発揮できる場所です。
OTの本当の強みを使い切れているか
作業療法士は、制度上は理学療法士よりも広い射程を持った資格です。身体だけでなく精神も、機能回復だけでなく生活と社会参加も扱える。その可能性は本物です。
しかし現実には、多くのOTがその強みを十分に使えていません。PTの真似事をして役割の差別化ができていない、公的保険に依存した分野でただ人数だけが増えている、という現状があります。
作業療法士を目指す・続ける方に伝えたいのは、「OTらしさ」を捨てないでほしいということです。「遊びのようなことを真剣にやる変な人」は、見方を変えれば、人が生きる喜びや意味を深く考えられる人です。そのフィールドを正しく選べば、社会保障の外にも活躍の場はあります。
進路として選ぶ際に確認してほしいこと
作業療法士は「使いこなせれば価値が高い」資格です。その逆もまた真であり、中途半端に使えば埋没します。どちらになるかは、どこで・どんな専門性を磨くか次第です。




