訪問看護について、利用するための流れ、必要な医師の指示書の内容、介護保険と医療保険の適用範囲の違い、そして精神科訪問看護の特徴、訪問看護と訪問介護の違いなど、訪問看護について多くの人が抱えている疑問に焦点を当てて解説します。介護保険と医療保険の保険制度がどのように訪問看護サービスをカバーしているか、訪問看護の役割について詳しく説明します。
このページの目次
訪問看護とは
訪問看護とは、病気や負傷で自宅での継続的な療養が必要な人を対象に、看護師やその他の医療従事者が患者の自宅を訪れて、日常の世話や医療的な支援を提供するサービスです。このサービスは、病院や診療所、訪問看護ステーションによって実施されます。利用者の状態に応じて、医療保険や介護保険が適用され、患者のニーズに基づいた適切なケアが行われます。
訪問看護のサービスは、利用者の年齢や疾患、状態に応じて、医療保険または介護保険が適用されますが、介護保険の給付は医療保険の給付に優先されます。ただし、末期の悪性腫瘍を患う方、重症心身障害児者、または急性増悪の状態にある者については、主治医の指示に基づいて医療保険からの給付で訪問看護が行われます。精神科訪問看護が必要な方についても医療保険での訪問看護の対象になります。
訪問看護は、患者がより快適な自宅環境で質の高い医療を受けられるよう支援する重要な役割を果たしています。
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訪問看護の流れと利用している人数(医療保険と介護保険の割合)
訪問看護を利用する場合には、まず医師が訪問看護の必要性について指示を出します。病院や診療所からの訪問看護の場合には指示を受けた旨を、訪問看護ステーションからの訪問看護の場合には指示書を受け、それに沿って訪問看護を提供していきます。
厚生労働省が調査した令和元年6月審査分の訪問看護費の推計によると、要介護や要支援の認定を受けて介護保険で訪問看護を利用している利用者数は約55万4000人、医療保険での訪問看護の利用者数は約28万9000人となっています。
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訪問看護指示書と記入例
訪問介護を提供するためには医師からの指示書が必要になりますが、指示書の様式については必ずこの様式を使わなくてはならないという決まりはなく、一般的には以下のような訪問看護指示書、精神科訪問看護指示書の様式を各事業所ごとにサービス提供内容を分かりやすく記入しやすいよう改変した入りしながら使用していることが多いようです。
訪問看護指示書様式
精神科訪問看護指示書様式
この様式例をそのまま使用した場合には、訪問看護を何分提供すれば良いのかや、実際にどんな内容の訪問看護を提供すれば良いかの具体的な内容は示されないような様式になってしまっているので、各事業所で実際に訪問看護サービスを提供するために必要な時間やサービス内容の欄を追記して、指示書を作成する意思が記入をしやすいように記入例を作成したりしていることが多いです。
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介護保険の訪問看護
説明をしてきたように訪問看護のサービスを利用する場合には原則として介護保険の認定(要介護・要支援)を受けている場合には介護保険の「訪問看護費」を利用した給付が優先されます。介護保険サービスの一環として訪問看護を提供する上では、訪問看護ステーションや病院・診療所の訪問看護事業所としては主治医から訪問看護の指示を受けることが必要ですが、ケアマネとの連携も必要であり、利用者はどんなニーズ・目標に対して訪問看護が必要であるのか居宅サービス計画(ケアプラン)にもサービスを位置づける必要もあります。他の介護サービスを提供する事業者とも目線を合わせるために、サービス担当者会議にも参加し、チームでケアを行っていくことが大切です。
介護保険での訪問看護の場合には、利用者が受けている要介護認定の介護度に応じて区分支給限度額が設けられているため、その区分支給限度額の範囲内へ他の介護保険サービスなどで必要性が高いサービスのバランスを見て医療的な面や生活面など考慮して提供方針が決められていきます。
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医療保険の訪問看護
医療保険での訪問看護については、小児から高齢者まで、特に年齢や要介護認定を受けているかなどに関係なく、医師が訪問看護の必要性を認め指示を行った場合には利用することができます。介護保険の場合には、要介護要支援の介護度に応じた区分支給限度額が決められていて利用できる上限がありますが、医療保険の訪問看護の場合には医師が必要性を認めた範囲でサービスを利用できます。
医療保険の訪問看護を利用できる対象者
要介護(要支援)認定者のうち以下の場合
がん末期
厚生労働省が定める疾病
- 末期の悪性腫瘍
- 多発性硬化症
- 重症筋無力症
- スモン
- 筋萎縮性側索硬化症
- 脊髄小脳変性症
- ハンチントン病
- 進行性筋ジストロフィー症
- パーキンソン病関連疾患
・進行性核上性麻痺
・大脳皮質基底核変性症
・パーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ3以上であって、生活機能障害度がII度又はIII度のものに限る) - 多系統萎縮症
・線条体黒質変性症
・オリーブ矯小脳萎縮症
・シャイ・ドレーガー症候群 - プリオン病
- 亜急性硬化性全脳炎
- ライソゾーム病
- 副腎白質ジストロフイー
- 脊髄性筋萎縮症
- 球脊髄性筋萎縮症
- 慢性炎症性脱髄性多発神経炎
- 後天性免疫不全症候群
- 頸髄損傷または人工呼吸器を使用している状態及び急性増悪期の場合
「特別訪問看護指示書」期間である
65歳以上で要支援・要介護に該当しない方(非該当者)
40歳以上65歳未満で16特定疾病以外の方
訪問看護のサービスは介護保険が優先となるためがん、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、後縦靱帯骨化症、骨折を伴う骨粗鬆症
初老期における認知症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病【パーキンソン病関連疾患】、脊髄小脳変性症、脊柱管狭窄症、早老症、多系統萎縮症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症、脳血管疾患、閉塞性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患、両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症という16の特定疾病を持つ40歳以上65歳未満の方は介護保険の認定を受けて介護保険が優先されます。
40歳未満の医療保険加入者とその家族(病的な妊産婦や乳幼児など含む)
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精神科訪問看護
精神科訪問看護では、精神疾患を抱える患者や精神的なサポートが必要な方の自宅へ保健師、看護師、作業療法士などが訪問し、ケアを行う制度です。訪問看護を提供している事業所の中でも精神科訪問看護を提供しているかどうかは事業所によるので確認が必要です。
精神科訪問看護は医療保険での訪問看護の一つです。他の訪問看護と同様に精神科訪問看護についても医師から指示がないと受けることができません。精神科訪問看護の利用者の主病名として多いのは、統合失調症や双極性障害、アルコール依存症などいうデータもあります。精神科訪問看護については精神科の経験を持つ看護師や作業療法士などが対応する場合には有意義な提供になる可能性がありますが、精神疾患の患者が増えている中で精神疾患の患者のケアは長期化する傾向があることからビジネスとして算入されているケースも目立つようになりました。もちろん地域の精神科や医療機関との連携があってこそですが、将来精神科訪問看護がどのような取り扱いになるかは現在提供されている精神科訪問看護の介入による効果などにより検証されていくのではないかと考えられます。
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訪問看護と訪問介護の違い
訪問看護と訪問介護は提供を行うスタッフの職種、提供する内容に違いがあります。
訪問介護とは、訪問介護員(訪問ヘルパー)などが、要介護者等などの利用者の居宅を訪問して、入浴・排せつ・食事などの介護、調理・洗濯・掃除などの家事を提供する介護保険サービスをいいます。
一方で、訪問看護とは、この記事でも紹介してきているように医師の指示に基づいて医療面のケアを看護師や准看護師、理学療法士などが提供していきます。訪問看護の提供内容としては、リハビリテーションや褥瘡などの処置、医療機器の操作や装着管理など、医学的管理のもとで行われるべき内容となります。
介護保険での訪問介護の身体介護の例
- 利用者の安否確認
- 顔色・発汗・体温等の健康状態のチェック
- 環境整備、換気、室温・日あたりの調整、ベッドまわりの簡単な整頓等
- 排泄介助(トイレ利用・ポータブルトイレ利用・おむつ交換)
- 食事介助
- 特段の専門的配慮をもって行う調理
- 清拭(全身清拭)
- 部分浴(手浴及び足浴・洗髪)/入浴/洗面/身体整容(日常的な行為としての身体整容)の介助
- 更衣介助
- 体位変換
- 移動・移乗介助、外出介助
- 起床および就寝介助
- 服薬介助、内服介助、服薬確認
- 自立生活支援のための見守り的援助(自立支援、ADL向上の観点から安全を確保しつつ常時介助できる状態で行う見守り等)
介護保険の訪問介護の生活援助の例
- 居室内やトイレの掃除、卓上等の清掃
- ゴミ出し、準備・後片づけ
- 洗濯機または手洗いによる洗濯、洗濯物の乾燥(物干し)、洗濯物の取り入れと収納、アイロンがけ
- 利用者不在のベッドでのシーツ交換、布団カバーの交換等
- 衣類の整理(夏・冬物等の衣替え)、衣類の補修(ボタン付け、破れの補修等)
- 配膳、食事の後片づけのみ、一般的な調理
- 日常品等の買い物(内容の確認、品物・釣り銭の確認を含む)、薬の受け取り
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訪問看護でできることとできないこと
訪問看護でできることできないことについて整理してみたいと思います。訪問看護でできることとしては基本的には医師の指示に基づいて行われるものなので、指示にあるものができることで、指示にないものはできないことということになります。
38行為21区分の医療行為は研修・医師の指示・手順書が必要
訪問看護では医療的な処置なども提供することになりますが、38行為21区分の医療行為は研修を修了した看護師が、一定の診療の補助として医師または歯科医師の判断を待たずに、予め患者ごとに指示された手順書により、一部の医療行為を行うことができることが認められています。看護師が行うことができる特定行為とは、例えば、脱水時の点滴・脱水の程度の判断と輸液による補正など、予め手順書や患者の病状の範囲などを定めた上で看護師が実施することができる38行為21区分の医療行為のことであり、これらの医療行為を行う場合には医師の指示を受けているだけでなく研修を修了していることや手順書の作成などが必要であることも覚えておきましょう。
厚生労働省が介護サービス施設の事業所調査で、訪問看護の内容としてどんな内容が多かったかということについて紹介しておきたいと思います。
看護内容の具体的な内容
訪問看護の看護内容は、介護度が高くなるにつれ「家族等の介護指導・支援」「身体の清潔保持の管理・援助」「排泄の援助」等の実施割合が高くなっています。
病状観察 本人の療養指導 家族等の介護指導・支援 介護職員によるたんの吸引等の実施状況の確認・支援 栄養・食事の援助 排せつの援助 口腔ケア |
身体の清潔保持の管理・援助 認知症・精神障害に対するケア 嚥下訓練 呼吸ケア・肺理学療法 その他リハビリテーション 社会資源の活用の支援 家屋改善・環境整備の支援 |
訪問看護の医療処置にかかる看護内容
訪問看護の医療処置にかかる看護内容は、介護度が高くなるにつれ「浣腸・摘便」「褥瘡の予防」「胃瘻の管理」等の実施割合が高くなっています。
気管内吸引 その他の吸引 在宅酸素療法の指導・援助 膀胱留置カテーテルの交換・管理 ドレーンチューブの管理 じょく瘡の予防 じょく瘡の処置 じょく瘡以外の創傷部の処置 重度のじょく瘡の処置・管理 中心静脈栄養法の実施・管理 経鼻経管栄養法の実施・管理 胃瘻による経管栄養法の実施・管理 人工肛門・人工膀胱の管理 自己導尿の指導・管理 |
気管カニューレの交換・管理 人工呼吸器の管理 がん化学療法の管理 薬物を用いた疼痛管理 ターミナルケア 緊急時の対応 注射の実施 点滴の実施・管理 服薬管理・点眼等の実施 浣腸・摘便 在宅透析の指導・援助 採血等の検体採取 吸入 |
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まとめ
今回は訪問看護について詳しく紹介をしてきました。訪問看護は、医療的な管理や処置が必要な在宅生活者にとって重要な役割を担っています。介護保険でのサービスと医療保険でのサービスがありますが、どちらの場合も医師が必要性を認め、指示をし、その指示と各事業所で作成した看護計画に沿って提供されます。看護師や保健師の資格を持っているスタッフがサービスを提供することになりますが、医療行為全てをどんな看護師でもできるというわけではなく、一定の研修を受けて医師とともに手順書などを作成していないとできない医療行為などもあることは覚えておきましょう。
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