自立支援の介護の目標設定で、「筋力をつけて安定して歩けるようになりたい」などのニーズが設定されることがあります。
ADL低下の原因は下肢筋力の低下だけではありません。下肢の柔軟性の低下かもしれませんし、麻痺かもしれません。
ニーズや長期目標には、課題となっているADL低下の原因や手段は明確に示さない方が良いケースもあります。
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ケアプランで高齢者だからADLの「維持」だと決めつけてはダメ
理学療法士や作業療法士などのリハビリテーション専門職・機能訓練指導員ができるところ・できないところを明確にして、本人のやる気と適切な介入で90歳代でもADLは向上します。
老化により、体や脳の機能は衰えてきます。しかし、それが日常生活動作や活動を低下させるかというとそうではありません。
むしろ、体力低下や交流不足により、日々の生活で使わなくなってしまった機能に着目して、使うように介入するとADLは上がったりします。
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自立支援の基本は相手の「伸び白」探し
介護が必要になったきっかけ、病気の経過、動きや活動の観察・分析、検査測定からADLが向上するかの予測ができます。これらは、理学療法士・作業療法士等の専門分野です。
どうやってもできないことは、受容して頂きながらあきらめ、ちょうどいい方法を探します。このとき、住環境整備として、福祉用具を用いた自立を目指したり、自助具を用いた方法を考えたりして自立支援をしていきます。後遺症や認知症などで能力的にできないことを無理に行わせることは自尊心を傷つけ、さらに萎縮させてしまう可能性があります。伸び白をみつけて、生き生きと活動していただくことを考えた方が前向きであり、心理的にも自立に向けて歩み始められます。
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ADL低下の原因、転倒の原因の多くは筋力低下じゃない!
ここからは介護分野で働く理学療法士としての主観的な意見です。
ケアプランで「筋力維持・筋力向上して転倒を防ぐ」の因果関係は直結しない
よく、介護のケアプランなどで「筋力低下を防いで歩行を安定させたい」や「下肢筋力を維持して安心して生活したい」などの転倒予防や歩行安定のニーズに対して、筋力向上や筋力増強という具体的な訓練内容が示されているケースがあります。
確かに老化により下肢の筋力は弱る傾向にありますが、それが転倒リスクを高める「主原因」かと言われれば疑問です。
転倒予防として、筋力を強く発揮できる状態にしておくに越したことはないですが、転倒の原因の多くは不注意やバランスを崩したというものです。
筋力をつける=転倒のリスクが減少するというわけではなく、筋力も鍛えつつもその他の要素や立位のパフォーマンスを高めていくことで転倒予防につながります。
ICFで考えるとしっくり、長期目標に心身機能の問題を持ち込まない方が良いかも
不注意やバランスを崩すということを少なくするために、動きやすい環境面への介入と、バランス・体の使い方の練習が有効です。
しかし、計画として手段や目標が筋力強化・筋力維持となっていると、その他の介入に気づけなかったり、しにくくなることもあります。
そのため、心身機能への着目に偏り過ぎないように、ICFでのその方全体の評価が、介護業界で重視されてきているのだと思います。
日常生活での動作ができなくなっている原因は、しなくなったことが原因であることが多い
介護が必要になったきっかけが、急な病気や怪我の発症や、認知症だった場合はそれらに起因する原因があります。
しかし、特にきっかけがなく、少しずつ介護が必要になった場合は、伴侶の死をきっかけに落ち込んでしまって介護が必要になった場合などはその動作・活動を「しなくなったこと」が原因である場合も多いです。
筋力がどうこうでなく、そもそも廃用によるもので、する習慣に戻すだけで自立に近い状態になったりします。
筋力は力でしかない、目的のある動きは脳が関わる
立っている、歩いている、握っている、持っているというその動きだけならば、筋力が原因でそれができないということもあります。
しかし、目的がある動き、つまりADLは、脳の機能が必ず関わります。
排泄の感覚があり、排泄の準備をして、排泄して、後始末します。
衛生保持のため、気持ち悪くて(気持ち悪い状態になる前に)、脱衣して、入浴して、ふき取って、服を着ます。
立っていること、歩くことが目的でなく、別のことに目的があるからこそ、注意が散って転倒などが起きます。
筋力だけが弱ってADLが低下していることというのは滅多になく、むしろバランスや注意などの問題のことの方が多いです。
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介護でも役立つ「予後予測」、医師・看護師・療法士に聞いて
医療の考え方では、診断や予後予測には、たくさんの症例や臨床データから、その疾病の年齢性別進行度の方のどれくらいの割合が、どのような経過をたどったかを主に考慮します。
大腿骨骨折の例
大腿骨骨折の場合、手術方法や体力などにもよりますが、患部が順調に良くなれば2ヶ月くらいで歩行できます。
脳卒中の例
後遺症の程度や受傷部位によりますが、半年くらいは麻痺自体の回復の可能性があります。その後は別の部分の機能でおぎなっていきます。
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ケアプランは道筋を提示し、その道筋にあった支援内容を選択する
例えば、骨折と脳卒中の一例を出しましたが、医師から患部の症状がどうなるかを聞くことは、自立支援で重要になります。
どうやってもできないことを要介護者に押し付ければ精神的虐待に近い状態になります。
あまりできないことをできないと決めつけてしまうと、モチベーションや生活意欲の問題が出ることもありますが、できないことを目標としたケアプランでは現場で働く職員は不信感が沸きます。生活を総合的に把握して課題の判断をするためにICFを用いる方法はあります。
自立支援はデリケートなもので、他の職種の意見を常に聞き、常にアセスメントを繰り返しながらでないとできないものです。
疾病と症状とその方の特性を考慮したうえで、ADLがどうなるかという見込みの意見を医師と療法士に聞くことも自立支援では役立つと思います。
あくまで情報なので、その上で自分のアセスメントをもとにいろいろな介助方法、かかわり方を試してみて、他者と共有してよりよりケアにつなげられると一番ですね!
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