主治医意見書とは?介護保険の認定に必要な書類の書き方・フォーマット、料金や断られた場合の対応

介護保険の要介護認定を申請すると、認定調査と並んで「主治医意見書」が必要になります。申請者を診ている医師が作成するこの書類は、認定審査会の判断材料として重要な役割を果たしますが、「どうやって依頼するのか」「断られたらどうすればいいか」「料金はかかるのか」など、わかりにくい点が多い書類でもあります。
本記事では、主治医意見書の役割・記載項目・フォーマットの入手先・依頼の流れ・料金・断られた場合の対処法まで整理します。
主治医意見書とは
主治医意見書とは、介護保険の要介護認定を行うにあたり、申請者の主治医(かかりつけ医)が申請者の心身の状態・傷病・治療内容・生活機能などについて記載する書類です。介護保険法第27条第3項に基づき、市区町村が申請者の主治医に対して意見を求めるものです。
要介護認定は、認定調査員による認定調査票とコンピューターによる一次判定、主治医意見書をもとにした介護認定審査会での二次判定を経て決定されます。主治医意見書は、コンピューターでは把握しきれない医学的な情報や、個別の介護の手間・改善可能性・サービスの必要性などについて審査会が判断する際の重要な根拠資料です。
また、40〜64歳の第二号被保険者については、主治医意見書に記載された内容をもとに特定疾病に該当するかどうかの判断も行われます。
主治医意見書の依頼から審査までの流れ
主治医意見書は、申請者や家族が医師に直接渡すのではなく、市区町村が申請者の同意のもとで医師に作成を依頼する仕組みになっています。
申請者・家族が主治医に「意見書の作成をお願いします」と事前に伝えておくことで、スムーズに手続きが進む場合が多いです。また、主治医が在宅での生活状況を把握しにくい場合は、家族が日頃の様子をメモにまとめて渡しておくと、より実態に即した意見書の作成につながります。
主治医意見書の様式フォーマットと記載項目
主治医意見書の様式は、厚生労働省が定める標準様式があります。様式は「要介護認定等の実施について(平成21年9月30日付老発第0930第5号厚生労働省老健局長通知、最終改正令和7年11月20日)」に基づいており、主治医意見書記入の手引きも厚生労働省から示されています。
実際の様式・記入の手引きは、各市区町村または都道府県の介護保険担当課が公表しているほか、各自治体のウェブサイトからダウンロードできます。
お住まいの自治体窓口でも配布・案内を受けられますので、不明な場合は市区町村の介護保険担当課にご確認ください。
主治医意見書の主な記載項目
引用:要介護認定等の実施について(平成21年9月30日付老発第0930第5号厚生労働省老健局長通知、最終改正令和7年11月20日)
主治医意見書は2枚構成で、以下の5つの大項目で構成されています。
| 項目 | 主な記載内容 |
|---|---|
| 1.傷病に関する意見 | 診断名・発症年月日、症状の安定性、生活機能低下の直接原因となっている傷病の経過・治療内容(投薬内容を含む)、特定疾病の記載 |
| 2.特別な医療 | 過去14日間に受けた医療処置(点滴・中心静脈栄養・透析・ストーマ処置・酸素療法・気管切開・疼痛管理・経管栄養など)の有無 |
| 3.心身の状態に関する意見 | 日常生活の自立度(認知症高齢者の日常生活自立度・障害高齢者の日常生活自立度)、認知症の症状(BPSD・中核症状)、その他の精神症状・神経症状・身体症状の有無 |
| 4.生活機能とサービスに関する意見 | 移動・栄養・食生活・現在あるまたは今後起こりうる状態とその対処方針(転倒・骨折・褥瘡・誤嚥・認知症の周辺症状等)、サービス利用時の医学的観点からの留意事項、感染症の有無 |
| 5.特記すべき事項 | 要介護認定・介護サービス計画作成(ケアプラン)に必要な医学的意見を自由記述。専門医等に別途意見を求めた場合はその内容も記載。 |
このうち「3.心身の状態に関する意見」の日常生活自立度は、介護認定審査会での二次判定において特に重要な情報となります。認知症高齢者の日常生活自立度はランクⅠ〜Mの6段階、障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)はランクJ〜Cの4段階で評価されます。
主治医意見書の料金は誰が払うか
主治医意見書の作成料は、申請者本人や家族が負担するものではなく、市区町村が負担します。要介護認定にかかる事務費として市区町村が医療機関に支払う仕組みになっており、申請者が別途料金を支払う必要はありません。
ただし、主治医が意見書を作成するために診察が必要な場合(特に3か月以上受診の間隔が空いていた場合など)は、その診察料については通常の医療保険が適用され、1〜3割の自己負担分が発生します。また、医療機関への交通費は自己負担です。
主治医がいない場合の対処法
「持病がない」「病院に行く習慣がない」「長らく受診していない」という場合でも、主治医意見書がなければ要介護認定は進められません。主治医がいない場合は以下の方法で対応します。
対処法1 市区町村窓口に相談する
主治医がいない旨を申請時に市区町村の介護保険担当窓口に伝えると、地域の医師会を通じて適切な医師を紹介してもらえる場合があります。自治体によっては指定の協力医療機関を案内しています。
対処法2 過去に受診歴のある医師に依頼する
主治医意見書を作成する医師の診療科は問いません。過去に受診したことがある医師がいれば、その方に依頼することもできます。現在の状態をよく知っている医師であれば、より実態に即した意見書が作成されやすくなります。
対処法3 受診しやすい医療機関を新規に受診する
内科・かかりつけ医として通いやすい医療機関を新規受診し、要介護認定の申請を予定している旨を伝えます。その医師にそのまま主治医として意見書を作成してもらうことが可能です。
主治医に意見書の作成を断られた場合の対処法
稀なケースですが、医師が意見書の作成を断る場合があります。「患者のことをよく知らないので書けない」「最後の受診から時間が経ちすぎている」といった理由が多いです。
断られた場合は、以下の対応をとります。
意見書を断られた場合でも、市区町村が代わりに動いてくれる場合があります。一人で抱え込まずに担当窓口に相談することが大切です。
主治医意見書と認定調査の違い
要介護認定では主治医意見書と認定調査の両方が行われますが、それぞれ異なる目的と役割があります。
| 比較 | 主治医意見書 | 認定調査 |
|---|---|---|
| 実施者 | 主治医(医師) | 市区町村が派遣する認定調査員(介護支援専門員等) |
| 主な内容 | 医学的診断・傷病の経緯・治療内容・医療処置・心身の状態・サービス上の留意事項 | 74項目の基本調査(身体機能・認知機能・社会生活能力等)と特記事項 |
| 場所 | 医療機関(外来・往診等) | 自宅・施設・入院先への訪問調査 |
| 申請者の同席 | 診察が前提 | 本人・家族の立ち会いのもと実施 |
認定調査票の書き方や特記事項の内容については認定調査票の書き方をご参照ください。
主治医意見書に関するよくある質問
主治医意見書は「当該主治医意見書は、本人、家族、成年後見人、介護支援専門員等からの資料提供の申出があった場合、開示されます。」と様式の注意書きに明記されています。開示の申請は市区町村の介護保険担当窓口で受け付けています。
主治医意見書の様式には「本意見書が介護サービス計画作成に利用されることに □同意する □同意しない」 という欄があります。「同意しない」にチェックされた場合、ケアプラン作成時に意見書の内容がケアマネジャーに共有されなくなります。要介護認定そのものに影響するわけではありませんが、適切なケアプランの作成に支障が出る可能性があるため、「同意する」とすることが通常です。
ケアプランの作成や適切なサービス提供のために、ケアマネジャー(介護支援専門員)や介護サービス事業者が主治医意見書の内容を確認したい場合があります。意見書には「医学的管理の必要性」「医学的観点からの留意事項」「現在あるまたは今後起こりうる状態とその対処方針」など、ケアプラン作成に直結する情報が記載されているためです。
取得の方法は2つあります。
方法1 申請時の本人同意を確認する
要介護認定の申請書には「主治医意見書が介護サービス計画作成に利用されることへの同意」の欄があります。申請者が「同意する」にチェックしている場合、ケアマネジャーや介護サービス計画作成に関わる事業者は、市区町村の介護保険担当窓口に「主治医意見書等の提供依頼書」を提出することで写しの提供を受けられます。契約関係が確認できる書類(居宅サービス計画作成依頼届出書等)の添付が必要になる場合もあります。
方法2 本人の同意を改めて取得する
申請時に同意が取れていなかった場合でも、あらためて本人(または成年後見人)の同意書を取得して市区町村に提出すれば、写しの提供を受けられます。自治体によって「主治医意見書等の提供に関する同意書」の参考様式が用意されています。
なお、主治医意見書をサービス担当者会議の参加者に示すことについては、主治医の守秘義務の問題は生じないとされています(令和7年2月版「主治医意見書記載マニュアル」より)。ただし本人の同意を得た上で示すことが前提です。
申請時に医師が「同意しない」にチェックしている場合は、主治医意見書のみ提供されません。この場合は担当窓口に相談するとともに、医師から直接情報提供を受けることを検討してください。手続きの詳細や様式は自治体によって異なるため、市区町村の介護保険担当課に確認することをお勧めします。
認定結果に納得できない場合は、都道府県の介護保険審査会への不服申立てや、市区町村への区分変更申請が可能です。要介護認定の不服申立て・区分変更申請についてもあわせてご参照ください。
まとめ
主治医意見書は要介護認定の審査において不可欠な医学的根拠資料です。ポイントを整理します。
要介護認定の全体的な流れについては要介護認定とはを、ケアプランの作成依頼届出書については居宅サービス計画作成依頼届出書もあわせてご参照ください。





