感染症まとめ 感染源・経路・抵抗力の3要素で予防

 

高齢者・介護施設で多い感染症を紹介します。

尿路感染症、接触感染する流行性結膜炎・疥癬・ノロウイルス、飛沫感染するインフルエンザ・新型コロナウイルス感染症(COVID-19)・百日咳・マイコプラズマ肺炎など、高齢者は若いころと比べると感染症にかかりやすく、感染した場合に悪化しやすくなるので感染源・経路・抵抗力などを意識して感染予防をすることが大切になります。
免疫機能、呼吸機能、嚥下機能など様々な機能低下だけでなく、膀胱留置カテーテル(バルーンカテーテル・尿道カテーテル)や褥瘡など、医療管理や疾患特性的に感染しやすい状態ということも重なることがあります。

感染の3要素から感染予防を考える

感染症には、感染源、感染経路、免疫力の低下という3要素があり、それぞれの感染症ごとにこれらを理解することは感染予防策を考えるうえで重要です。感染は、人の抵抗力よりも体内に侵入した病原微生物の病気を起こす力が強い場合に起こります。高齢者は、加齢に伴い、免疫機能や代謝機能、粘膜などの自浄作用が低下するとともに、皮膚組織が萎縮して感染しやすい状態となります。
また、感染は、3つの要素(感染源、感染ルート、感染を受けやすい人)で起こりますが、感染ルートを遮断することが最も有効な手段と言われています。

感染源

感染のもとになる病原菌、ウイルス、寄生虫はなんであるのか。

感染経路(感染ルート)

感染源である病原菌、ウイルス、寄生虫などがどのような経路で身体に感染するのか。

免疫機能・抵抗力の低下

人間の免疫機能は、のどや鼻からの侵入を防ぐ機能があるほかに、もし侵入した場合にも抗体や免疫細胞が異物を除去する機能が備わっていますが、体力低下や別の疾患の罹患などで弱まり感染しやすくなります。

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常在菌の日和見感染が原因になることも

日和見感染(ひよりみかんせん)とは?

黄色ブドウ球菌、緑膿菌、ヘルペスウイルス、カンジダ菌など、通常は弱毒性で身の回りにも常に多く付着しているため、日和見(天気模様をうかがうこと⇒生体の免疫機能の変化をうかがうこと)で感染発症する感染症を日和見感染と呼んでいます。

 

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主な感染経路(感染ルート)

感染経路 特徴
接触感染 皮膚、粘膜の接触により感染する。介助と介助の間の手洗いや手袋の交換が行われなかった場合に起こりやすい。
飛沫感染 咳やくしゃみなどの飛まつに混入した細菌やウイルスを吸い込むことにより感染する。マスクは有効な予防策である。
空気感染 飛まつの水分が蒸発してできた飛まつ核に付着した病原体が空気中を長時間浮遊し、その核を吸い込むことにより感染する。
経口感染 病原微生物に汚染された水や食物を口にすることにより感染する。
血液媒介型感染 病原微生物を含む血液に傷のある手で触れた場合や病原菌に汚染された注射針による刺し事故により感染する。日常の家庭生活や食器などからの感染はない。

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高齢者に多い感染症

高齢者に最も多い「尿路感染症」

尿路感染症は、黄色ブドウ球菌などの菌などが、尿道を通って侵入し、通常は無菌である膀胱、腎臓に感染を起こします。
男性よりも尿道が短く膀胱まで近い女性の方が感染に注意しなければならず、尿路への留置カテーテルの挿入がある場合にも注意が必要です。

尿路感染症の症状

発熱、頻尿、排尿時の痛み、尿が出ないなどがあります。

空気感染(飛沫核感染)する感染症

空気感染(飛沫核感染)とは、病原体が長時間空気中で生存でき、長距離の移動も可能なため呼吸により感染が成立するタイプです。
結核、ノロウイルス、麻疹(はしか)、水痘(みずぼうそう)などがあります。

飛沫感染する感染症

飛沫感染とは、咳・くしゃみの飛沫で感染するタイプです。
インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、百日咳、マイコプラズマ肺炎、風疹などがあります。

接触感染する感染症

接触感染とは、皮膚や粘膜への接触、感染者が触れたものに触るなどにより感染するタイプです。
流行性結膜炎、疥癬、性感染症、ノロウイルス、とびひ(伝染性膿痂疹)、水虫(白癬菌)などがあります。
接触感染する感染症の予防には、手洗いにより介護職などが媒介しないことや、ドアノブや手すりなどよく手を触れる場所を消毒することなどが有効です。

疥癬(かいせん)とは?

疥癬(かいせん)とは、ヒゼンダニの寄生によっておこる感染症です。過去には性感染症として流行したことがありましたが、高齢者施設などで介護者の手で媒介してしまい流行するケースもあります。
ノルウェー疥癬の場合は、ヒゼンダニが大量に繁殖して皮膚が白く角化しており、他者が感染しやすい状態のため隔離して慎重な対応が必要です。

通常疥癬と角化型疥癬
通常疥癬(普通に見られる疥癬) 角化型疥癬(ノルウェー疥癬)
ヒゼンダニの数 数十匹以上 100万〜200万
患者の免疫力
(病気一般に対する抵抗力)
正常 低下している
感染力(他人へうつす力) 弱い 強い
主な症状 赤いブツブツ(丘疹、結節)、疥癬トンネル 厚いあか(垢)が増えたような状態(角質増殖)
かゆみ 強い 不定
症状が出る部位 顔や頭を除いた全身 全身

褥瘡(じょくそう)感染症

褥瘡の患部から細菌が侵入して感染を起こすものを指します。
仙骨、大腿骨転子部、踵部(かかと)などの好発部位では注意が必要です。

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スタンダードプリコーション(標準予防策)で感染予防

医療介護の分野では、相手が感染症にかかっているという明確な情報がなくても、普段から感染症に対する予防策を行う必要があります。
スタンダードプリコーションとは、汚染物や汚染箇所として想定されるものの取り扱い方です。
血液、体液、分泌液、排泄物、創傷のある皮膚、粘膜には、普段から感染症があると考えて取り扱う』ということがベースになっています。

一般的には、1ケア1手洗い、消毒の実施、マスクや手袋などの防護具を使用するということが具体策とされていますが、みんなが一丸となって取り組まないと感染予防としては不十分です。
感染症の成立についてみんなで共有し、意識を高めていきたいですね!

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