
住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の「囲い込み」が問題だ、と声高に叫ばれている――。
だが本当にそれは悪なのか?利便性・連続性・効率化という観点から、民間事業者が地域包括ケアの理念を具現化してきた努力を、行政は一方的に否定しようとしていないか?
「囲い込み=不正・虐待の温床」と決めつける論調の裏には、現場を知らない机上の空論が透けて見える。むしろ、介護の質を高め、入居者の安心を守ってきたのは、囲い込みによって支えられた現場の力だ。
本記事では、政府が提示する問題点と、それに対する本質的な反論を、資料と論点整理をもとに明らかにする。
このページの目次
囲い込み=悪なのか?
「囲い込み」という言葉は、介護業界においてネガティブな印象を持たれがちです。住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などでは、入居者に対して介護・医療・生活支援サービスを同一事業者または関連事業者が一体的に提供する体制が一般的に整えられています。これは囲い込みと称される一方で、入居者の利便性・安心感・サービスの効率化に大きく寄与してきた実績があります。
果たして、この「囲い込み」は本当に問題なのでしょうか?
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囲い込みの何が問題とされているのか?
厚生労働省の検討会では、囲い込みに関して以下のような問題点が指摘されています。
- ケアマネジメントの中立性が確保されにくくなる
- サービス選択の自由が形式的になりがち
- 第三者の目が入りにくく、不正請求や虐待の温床になりやすい
- サービスが固定化し、改善や工夫がされにくくなる可能性
これらの懸念に対し、国は「特定の事業所に利用者が偏っている場合には、中立性や本人意向の尊重が担保されているか確認すべき」という指摘をしています 。
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地域包括ケアと民間の工夫からできた囲い込み
しかしながら、囲い込み的な構造は制度上、もともと国が提唱してきた「地域包括ケアシステム」の構築の中で自然と形成されたとも言えます。
例えば、住宅型有料老人ホームやサ高住では、民間事業者が「住まい・医療・介護」を一体的に提供できるように工夫し、高齢者の生活を切れ目なく支える体制を整えてきました。これは「住まいとサービスの一体的提供」という国の方針に従った形でもあります。
むしろ、事業者が試行錯誤して効率化・安定化させた結果、職員が入居者の状態を長期的に把握しやすくなり、サービスの質が向上しているという声も多くあります。常に顔なじみの職員がケアにあたることが、ご利用者の安心感や認知症の進行抑制につながるケースもあります。
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国の論点整理 今後の方向性は?
国(厚労省)の検討会では、囲い込みについて次のような方向性が整理されています。
- ケアマネジャーの中立性確保のための対応策が必要
- 「囲い込みかどうか」だけでなく、「本人の意向が尊重されているか」を確認すべき
- 外部サービスの積極的活用を促す方針も示唆
- 特定施設(介護付き有料老人ホーム)への転換や活用促進の検討
ただし、指摘されているのは「囲い込みのすべて」ではなく、「囲い込みに付随する中立性の欠如や不正の温床となる構造」の部分であることは注目すべきです。国としても、事業者の経営努力や提供体制そのものを否定しているわけではありません 。
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民間の努力を否定していいのか?
効率的な囲い込み型サービスを展開してきた民間事業者は、高齢者にとって安心で安定した生活環境を提供するという大きな社会的役割を果たしてきました。
現在、国が進めている施策――たとえば、、、
- 介護業界の大規模化・効率化の促進
- 人材不足への対応
- ICT導入による業務省力化
これらは、ある意味で囲い込み的なモデルと親和性が高い方向です。にもかかわらず、囲い込みを一概に悪とし、規制を強める方向に進めば、結果として現場の効率は落ち、介護職の処遇改善も遅れ、働き方改革も進まないという悪循環になりかねません。
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本当に議論すべきこと
現在の議論の焦点は、「囲い込みを排除するか否か」ではなく、
- 利用者本位のケアがなされているか
- ケアマネジメントの中立性が構造的に確保されているか
- 利用者の声や第三者の視点がどのように反映される仕組みか
- 結果的に不正や虐待の温床となるリスクをどう抑えるか
- 少子高齢化の中で介護崩壊が叫ばれる中、効率的で安定的な支援をしやすいルールを整備すること
といった内容になっています。
そして、国が事業者に新たな規制を課すのであれば、それによって生じる現場の負担や、経営的・人的リソースのひっ迫にも十分な配慮が必要です。議論の前提として、これまで事業者が民間の努力で地域包括ケアの現実的実装を支えてきたこと、効率的な囲い込みが一定の質と満足を提供してきた現実を直視すべきでしょう。
金づるとしての生活保護や精神科、難病・リハビリの囲い込みは強く規制すべき
生活上欠かすことができない介護を行う上での囲い込みはやむを得ない部分がありますが、生活保護や難病への医療保険など、患者や利用者への自己負担が生じない中で医療保険や福祉の制度を悪用して、青天井に訪問看護などのサービスを提供して請求を行う事業者に対しては強く規制をすべきです。利用者の選択の自由もないですし、過剰であるという判断は医師にしかできない中で医師は具体的な時間や回数などは示さない指示を出すだけで、効果検証もあまり行われないような囲い込みがそこにはあります。
医師が指示を出していることや、不適切であるという判断や線引きが難しいことで、サービスを受けても金銭的な負担が少ない難病や精神科、生活保護などに過剰な医療提供を行って不要な医療の分まで請求しているケースはかなり慎重に審査するなど議論してほしいところです。今のルールは性善説でできていますが、悪用してお金儲けに走って今しまっている事業者が増えている今、見直しをしなければ本当に必要な人に支援が行き届かなくなる可能性があります。
参考:PDハウスのやばい不正請求の後、会社・スタッフ・入居者はどうなる?(介護施設・老人ホーム入門)
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本当に求められるのは「構造の透明性と利用者本位」
住宅型有料老人ホームやサ高住における囲い込みは、単なる利潤追求の構造ではなく、民間が介護保険制度と高齢化に応える形で築いてきたサービスモデルです。その一体的な仕組みが入居者に安心と連続性をもたらし、ケアの質を高めてきた事実もあります。
問題視すべきは「囲い込みそのもの」ではなく、「囲い込みの中で何が起こっているか」です。中立性の担保、本人意向の確認、情報の可視化といった本質的な対策こそが、今後の政策と現場をつなぐ鍵になるはずです。
参考:課題と論点に対する構成員の意見・ヒアリング内容を踏まえた 「これまでの議論の整理」(案)2025年6月20日
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