介護福祉士の法律上の倫理 誠実義務・信用失墜禁止・秘密保持義務

 

介護福祉士・介護職の法律上の倫理について、誠実義務・信用失墜禁止・秘密保持義務を紐解いて紹介します。社会福祉士及び介護福祉士法で具体的に規定されている職業倫理・義務について紹介しますが、違反や罰則があるからという理由だけでなく、良い介護、トラブルなく、利用者とも良い関係性を続けるために必要なことなので振り返ってみてください。

介護従事者の倫理とは

介護福祉士の倫理については「社会福祉士及び介護福祉士法」で具体的に示されています。

「社会福祉士及び介護福祉士法」で倫理について述べている条文と、その意味を考えて見たいと思います。なお介護福祉士の倫理については日本介護福祉士会が倫理綱領を公表していますので、こちらもご確認ください。

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誠実義務 介護福祉士の義務

社会福祉士及び介護福祉士法第四章第44条で「誠実義務」を規定しており、その原文は以下です。

第四章 社会福祉士及び介護福祉士の義務等
(誠実義務)
第四十四条の二 社会福祉士及び介護福祉士は、その担当する者が個人の尊厳を保持し、自立した日常生活を営むことができるよう、常にその者の立場に立つて、誠実にその業務を行わなければならない。

介護職の誠実義務とは

第44条2項では、介護職の誠実義務について規定されていますが、「誠実義務」とはどのようなことでしょうか。この誠実義務は、介護職として倫理に関わりが強いものです。この条文では介護福祉士が介護に向き合うときの姿勢を明文化しています。

介護の知識と技術を活かして、利用者の尊厳を保ち、自立した日常生活を営むことができるように、利用者の立場に立ってその業務を誠実に果たすという姿勢です。

介護職の職務上の誠実さにはいろいろな考えがありますが、利用者との関係性を悪用しないこと、私的な関係になりすぎてはいけないこと、個人的な利益のために自分の立場を悪用しないことなどが挙げられると思います。

介護の仕事は利用者や家族のプライベートをよく知れる仕事ですし、継続して関わっていく仕事なので、不誠実に私欲を満たそうとしたり、自分の利益を優先したり、介護従事者としての知識や信用を使って悪事をすることもできますが、そうしたことはせず支援者としての誠実さを常に意識して行動しなければなりません。

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信用失墜行為の禁止 介護福祉士の義務

社会福祉士及び介護福祉士法第四章第45条で「信用失墜行為の禁止」を規定しており、その原文は以下です。

(信用失墜行為の禁止)
第四十五条 社会福祉士又は介護福祉士は、社会福祉士又は介護福祉士の信用を傷つけるような行為をしてはならない。

介護職の信用失墜行為とは

第45条では「信用失墜行為」について規定していますが、信用失墜行為とはどのようなことでしょうか?

信用失墜行為とは介護福祉士が利用者や家族、地域、その他の専門職から社会的に認められて獲得した「社会的信用」を失わせるような行為のことです。介護福祉士をはじめとする介護職は、社会的に重要な役割をしており、高い倫理性をもち、その専門性や人間性が社会から認められてきています。このように専門職としての介護福祉をはじめとする介護職が、社会的な信用を損なうような事件やモラルに反する行為などがあった場合に、その当事者だけでなく介護福祉士全体の信用を失うことになります。他の専門職でも同じですが、社会的な不正行為に関わってしまいニュースになったりすると、「介護福祉士の〇〇 〇〇容疑者が・・・」というような感じで、介護福祉全体のイメージや社会的信用に関わるため、専門職としての自覚と誇りを持ち、信用失墜行為を行わないようにしましょう。

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秘密保持義務 介護福祉士の義務

社会福祉士及び介護福祉士法第四章第46条で「秘密保持義務」を規定しており、その原文は以下です。

(秘密保持義務)
第四十六条 社会福祉士又は介護福祉士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。社会福祉士又は介護福祉士でなくなつた後においても、同様とする。

介護職の秘密保持義務とは

第46条では秘密保持義務について規定していますが、秘密保持義務とは具体的にどのようなことでしょうか?

プライバシーの尊重

秘密保持について考える前に、まずはプライバシーの尊重が重要であり、利用者の生活課題を解決するために不可欠な情報以外の情報を詮索しないということも大切です。介護職は利用者の生活全体を考えるため利用者や家族に色々な個人情報やプライベートなことも理由なく聞き取ってしまうこともありますが、本当に必要な情報は何であるのかを改めて考える必要があります。まずはこのように不要な情報収集をしてしまうことを見直し、また、利用者や家族の秘密情報について話さないとならない場合には、プライバシーが確保される場所でヒアリングや面談を行うなどの配慮が必要です。

プライバシー感覚の欠如と守秘義務違反の問題

介護職の秘密保持義務、そして介護職としての倫理に関わることで、利用者の個人情報を公共の場で口にしてしまうことなども大変不適切な行動です。通勤の電車の中やファミレス、居酒屋などで介護職同士で利用者の個人情報を話しているという例もありますが、このような介護職のプライバシーの価格の低さによって利用者や家族の利益を著しく傷つけることもあり、守秘義務違反として問題となります。

個人情報保護と個人情報使用・共有をする際の注意点

公共の場で業務に不必要な利用者の個人情報を話していることは論外ですが、業務上、ケアチーム内で他の専門職などに情報を開示したり共有したりすることが必要になります。

個人情報保護法が施行され、介護サービスを利用する場合にも個人情報使用に関する同意書に同意を得て利用者の個人情報を決められた範囲で使用するという形になっています。介護職や事業者が勝手な判断で他社に情報を渡すということがないよう、利用者から同意を得てどの情報を誰と共有するか許可を得る必要があります。まずは同意を得ている内容がどのような内容で誰と共有するということを利用者に説明してあるかを確認しなければなりません。確認をした上で、利用者に同意を得ていないような相手に利用者の個人情報を開示するような場合には、目的、対象情報、相手、期間などを利用者に十分説明し、再度同意をいただく等の配慮は必要です。

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介護職は法律上も倫理的行動が必要

今回の記事では、社会福祉士及び介護福祉士法で具体的に規定されている職業倫理・義務について紹介しました。介護の仕事では今回の社会福祉士及び介護福祉法以外にも色々な法律や厚生労働省からの通知などがあり、一人ひとりの倫理観だけでなく、ルールの面でもコンプライアンス(法令遵守)が大切です。

 

社会的に重要な役割を担っている仕事であり、利用者や家族のプライベート・プライバシーに関わることも知ったうえで仕事をするという性質です。

高い倫理観を持ち誠実に仕事をしていくことで介護職の社会的地位や処遇は改善されてきています。介護職の印象も日本を支えてくれている重要な仕事であるという認識が広まってきています。今回紹介したのは法律上の介護職としての倫理ですが、法で定められているから、罰則があるからという動悸だけでなく、正直で正義感があり、利用者の気持ちを大切にする、かっこいい介護を実践していけると素敵ですね。

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