障害者との関わり方 障害名で判断しないコミュニケーション
 

私は、障害者福祉施設で看護師(保健師)として働いています。今回は、障害を持つ方々との関わり方についてお話していきたいと思います。

障害とは

障害を持つ方の専門施設で働いてみて感じた「障害」とは何かについて話したいと思います。

私が働く施設には、知的障害を持つ方や、重度の肢体不自由(腕や足が動かない)の方、両方を持つ方、が主にいらっしゃいます。先天性の障害であったり、あるいは外傷によって障害を持つようになったり、原因は様々です。自閉傾向のある方、こだわりの強い方、とっても人見知りな方、障害による特性は様々です。

「障害」でひとくくりにしないこと

私は、今の職場に勤務することになったとき、利用者の方々がどのような障害を持っているのか、そしてその障害に対してはどう接したらよいのかと、ある意味「マニュアル」的な関わりをしなければならないのではないか、という先入観がありました。看護師・保健師になるための養成校でも、疾患としての障害を学び、リハビリテーションや援助法としての疾患ごとの関わり方を学習していくためそのようなイメージになります。もちろん、先輩方からは疾患で人を判断しないようにということは教えていただきますし、私自身もそのように接しようと考えていても、初めは基本的な関わり方から入ってしまいます。

しかし、実際に利用者の方々と関わっていく中で、障害のある方に対して、疾患ごとにマニュアル的な関わり方をするのは違うと感じるようになりました。

「障害」と「性格」と「特性」の違い

障害がある方との関わりの中で、信頼関係を築いていくことが大切ですが、そのために障害、性格、特性について簡単に紹介します。

「〇〇障害」という肩書きラベルで、性格を判断しない

障害を持つ方には、「知的障害」や「自閉症スペクトラム」、「肢体不自由」等の言わば肩書きやラベルのような障害名が付いています。

そして、そのような障害を持つ方の関わり方を学ぶ時の参考書などの書籍には「○○な障害特性に対しては●●に接するとよい」とまるで障害者をひとくくりにまとめたようになっていることもあります。

しかしながら、実際に関わりを持ち、私が感じたことは、その人が持つ障害による特性と、その人が生まれ育って培ってきた性格が混ざり合って、障害のある「その人」個人が存在しているのだと思っています。障害と、性格と、特性にはこのような関係性があり、意味合いに違いがあります。

障害者と「その人」それぞれの特性を

例えば、同じく自閉傾向がある方でも、特定の時間だけなら皆と活動ができる人、ダンボール等で自分の視界を皆から遮ることで活動を行う部屋で落ち着いて過ごせる人、自分の「お守り」のようなものがあって、それを常に触っていることで活動ができる人など、同じ障害であっても、「その人」それぞれの特性があります。

施設で障害を持つ方々に接するスタッフは、その人がどのような特性があるのか、そしてどうしたら施設で過ごす時間を有意義にできるだろうかと、「その人」に合わせた関わり、支援を行っています。

障害を持つ方の中には他害、自傷をしてしまう方も

障害を持つ方の中には、他害(他人を傷付けてしまう)、自傷(自分を傷付けてしまう)をしてしまう方もいます。

手段としての他害・自傷 理由を考える

障害を持ち他害・自傷をしてしまう方の多くは、コミュニケーションが取りたい、もしくは気持ちの切り替えができずにイライラしてしまい、それを表現するがための「手段」であったり、他害や自傷が「悪いこと」である認識が薄い方だったりします。

行動が自立や社会性の障害になるときは向き合う

私が働いている障害者福祉施設は、自立支援を目的としているため、社会性を身につけることや自立を目指し、支援を行います。そのため、他害や自傷のある方については、「何故なのか」、「それはいけないこと」、してしまった時には「謝ること」を軸として、他害や自傷に対する認識を高めたり、それをしなくてもうまく気持ちの切り替えができるよう、その人それぞれに対してどのように向き合っていけばよいのかを、日々模索しています。

障害名があってもコミュニケーションの取り方は十人十色

障害を持つ方のコミュニケーションの取り方は多種多様です。うまく言葉が出ない人、うまく身体が動かせない人、障害も様々なため、コミュニケーションの取り方も、身振りや手振り、マカトンサインという手話に似たものを用いる人、トントンと肩を叩いて自分の伝えたいことや見せたいものがあるところに連れて行く人、目や指先のちょっとした動きでYESやNOを伝えようとする人、皆が自分の「オリジナル」を持っています。

そのオリジナルをいかに理解し、いかにコミュニケーションを取っていくかが、関わる側の課題であり、一方で関わっていく中での信頼関係の構築や、面白みを感じるきっかけになるのではないかと感じます。

まとめ

今回は、障害を持つ方々との関わりについてお話しました。関わる中で大切なのは、同じ障害を持っていても、コミュニケーションの取り方は様々であること、特性は似て非なるものであることの理解、個別性に配慮した関わりが必要と感じます。

しかしながら、障害を理解し、その人を理解しながら関わりを持ったり支援を行うことは、とても大変なこととも感じます。

何がしたいのか、何を伝えたいのか、戸惑うことも多々あります。

いつも、真摯にその人と向き合い、何が必要なのかを判断しながら向き合っていく姿勢が必要であると日々感じています。