主任介護支援専門員(主任ケアマネ)は、介護支援専門員(ケアマネジャー)の上位資格であり、指導的立場として後進の育成や地域包括ケアの推進に関わる役割を担います。本記事では、主任介護支援専門員の資格要件、更新研修の内容、取得することで得られるメリットについて詳しく解説します。「主任ケアマネを取得すべきか迷っている」「更新研修の内容を知りたい」という方は、ぜひ参考にしてください。
このページの目次
主任介護支援専門員とは?
主任介護支援専門員は、通称「主任ケアマネ」と呼ばれ、ケアマネとして5年以上の経験がある人が主任介護⽀援専⾨員研修を受講して取得できる資格です。2006年に介護支線専門員(ケアマネジャー)の上位資格として創設され、地域包括支援センターの必須人材であることや、居宅支援事業所の管理者の要件になっているなど、介護保険サービスや他の保健・医療・福祉サービスを提供する者との連絡調整、他の介護支援専門員に対する助言・指導などケアマネジメントが適切かつ円滑に提供されるために必要な業務に関する知識や技術を持ち、地域包括ケアシステムの構築に向けた地域づくりを実践できる人財として、ケアマネジャーの中でも重要な役割として期待される資格です。
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主任介護⽀援専⾨員の定義
主任ケアマネジャーは、主任介護支援専門員研修実施要綱において、「他の保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者との連絡調整、他のケアマネジャーに対する助言、指導その他の介護支援サービスを適切かつ円滑に提供するために必要な業務を行うこと」とされてます。
参考:介護支援専門員資質向上事業の実施について(平成26年7月4日厚生労働省老発0704第2号老健局長通知)
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主任介護⽀援専⾨員研修の受講要件
主任介護支援専門員の受験資格については、介護⽀援専⾨員資質向上事業実施要綱(平成26年7⽉4⽇ ⽼発0704第2号 厚⽣労働省⽼健局⻑通知)で以下のように定められています。
介護⽀援専⾨員更新研修修了者であって、以下の①から④のいずれかに該当する者
① 専任の介護⽀援専⾨員として従事した期間が通算して5年(60ヶ⽉)以上である者(管理者との兼務期間も算定可能)
② ケアマネジメントリーダー養成研修修了者⼜は⽇本ケアマネジメント学会が認定する認定ケアマネジャーであって、専任の介護⽀援専⾨員として従事した期間が通算して3年(36ヶ⽉)以上である者(管理者との兼務期間も算定可能)
③ 主任介護⽀援専⾨員に準ずる者として、現に地域包括⽀援センターに配置されている者
④ その他、介護⽀援専⾨員の業務に関し⼗分な知識と経験を有する者であり、都道府県が適当と認める者
※ その他、質の⾼い研修を実施する観点から、都道府県において上記要件以外の要件を設定することも可能。
主任介護支援専門員になるためには、介護支援専門員としてアセスメント、ケアプラン原案作成、サービス担当者会議の開催、モニタリング等、一連のケアマネジメント実務を担当した期間が研修開始日の前日までに、通算して5年(60か月)以上ある方となっています。管理者との兼務は認められていますが、他の職種と兼務していた場合は専任の介護支援専門員として従事した期間には含められないので、介護職員などと兼務してしまった場合には主任支援専門員になるための道が遠のくという厳しい要件です。
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5年ごとの介護支援専門員証の更新対象の場合、主任介護支援専門員研修と両方受講しないとならないことも
介護支援専門員証の更新は5年ごとに必要ですが、介護支援専門員証の更新に必要な研修を受けた上で主任介護支援専門員研修も修了しないとケアマネジャーの仕事を続けられないという縛りがあります。実務を行いながら長時間の研修を複数行うことは介護支援専門にとって非常に大きな負担となっています。
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主任介護支援専門員の人数推移
主任介護支援専門員研修の受講者数は、例年5000人から1万人くらいとなっています。居宅介護支援事業所の管理者の要件として主任介護支援専門員であることが追加されたことから、一時的に受講者数が増えましたが、その後は落ち着いています。
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主任介護支援専門員しかできないこと、メリット
主任介護支援専門員(主任ケアマネージャー)は、介護支援専門員(ケアマネージャー)の上位資格であり、特定の業務や役割において重要な位置づけを持っています。以下に、主任介護支援専門員のみが担う具体的な業務や配置要件、加算取得に関する情報をまとめます。
居宅介護支援事業所の管理者要件
2021年4月1日から、居宅介護支援事業所の管理者は原則として主任介護支援専門員であることが求められています。
これは、事業所内での人材育成や質の高いケアマネジメントの推進を目的としています。
特定事業所加算の算定要件
居宅介護支援事業所の特定事業所加算を取得するためには、主任介護支援専門員の配置が必要です。具体的な要件は以下の通りです。
特定事業所加算Ⅰ: 専ら指定居宅介護支援の提供に当たる常勤の主任介護支援専門員を2名以上配置すること。
特定事業所加算Ⅱ・Ⅲ: 専ら指定居宅介護支援の提供に当たる常勤の主任介護支援専門員を1名以上配置すること。
また、管理者が主任介護支援専門員である場合、その管理者は「専ら指定居宅介護支援の提供に当たる常勤の主任介護支援専門員」としてカウントされます。
地域包括支援センターでの配置
地域包括支援センターでは、主任介護支援専門員の配置が必須とされています。これは、地域における包括的・継続的なケアマネジメント支援を行うためです。
もしかすると他にも主任介護支援専門員でないとできないことはあるかもしれませんが、制度で定められてる範囲でよく言われる主任支援専門員でないとできないことはようにこのような感じになっています。
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主任ケアマネになると年収・給料は上がる?
主任ケアマネになると年収・給料は上がるかについては職場や役職によりますが、多くのケースで年収・給料が上がる可能性があります。
ここまで紹介してきたように、主任介護支援専門員でないとできない仕事があるので、主任介護支援専門員が不在になってしまったり、不足している事業者からするとどうしても欲しい人材であるからです。他の介護支援専門員と同じ業務・役割ならば年収が上がる可能性は低いですが、例えば・・・
「主任介護支援専門員として居宅介護支援専門員の管理者要件を満たすための人材として採用されている」
「事業者の方針で、主任介護支援専門員しか採用しない」
「経験を活かして地域包括支援センターに必要な主任介護支援専門員として勤務する」
などといった「事業者から必要な人材」となることで年収アップが期待できます。
また、主任介護支援専門員は居宅介護支援事業所の管理者になれる、つまり開業できる資格なので、自分で事業所を持つことで収益をコントロールすることもできます。
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主任介護⽀援専⾨員研修の内容
主任介護支援専門員研修で行うべき科目については、「介護保険法施行令第37条の15第2項に規定する厚生労働大臣が定める基準」(平成18年厚生労働省告示第265号)に規定されているところであるが、その科目、目的、内容及び時間数については以下のとおりであり、合計70時間以上とされています。
科目 | 時間数 |
主任介護支援専門員の役割と視点 | 講義5時間 |
ケアマネジメント(居宅介護支援、施設における施設サービス計画の作成、サービスの利用援助及び施設サービス計画の実施状況の把握並びに介護予防支援をいう。以下同じ。)の実践における倫理的な課題に対する支援 | 講義2時間 |
ターミナルケア | 講義3時間 |
人材育成及び業務管理 | 講義3時間 |
運営管理におけるリスクマネジメント | 講義3時間 |
地域援助技術 | 講義及び演習6時間 |
ケアマネジメントに必要な医療との連携及び多職種協働の実現 | 講義及び演習6時間 |
対人援助者監督指導 | 講義及び演習18時間 |
個別事例を通じた介護支援専門員に対する指導・支援の展開 | 講義及び演習24時間 |
これらが主任介護支援専門員研修の実施要綱で定められている研修内容です。介護保険事業者としての居宅介護支援事業所の管理者の要件として主任介護支援専門員の資格が求められていますが、研修の中で介護保険事業者としての管理に関する内容は含まれておらず、強引にこの研修を受けさせるために居宅介護支援事業所の管理者要件に付け加えたようで整合性が取れていません。
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居宅介護支援専門員の管理者要件に主任ケアマネという制度変更、緩和の声相次ぐ
居宅介護支援専門員の管理者要件に主任ケアマネ資格が必要になりましたが、「管理者を主任ケアマネジャーとする要件の適用を令和9年3月31日まで猶予する」という経過措置はあります。しかし、「令和3年4月1日以降に新たに管理者となる者に対しては経過措置は適用されない」としており、主任ケアマネが配置できないために居宅介護支援事業所の立ち上げができない、後任の主任介護支援専門員がいないために事業を継続できないというケースもある状態です。主任ケアマネを管理者要件にするという制度変更当初から問題視されていましたが、管理者要件の緩和(主任介護支援専門員資格を必要としない) についての声が現場から多く上がっています。そもそも居宅介護支援事業所の管理者の業務や責務と主任介護支援専門員の資格の内容はマッチしていないため、要件を決める根拠はなく、研修を受けさせるための強引な変更だったことが示唆されています。以下はケアマネからよく聞かれる声です。
主任であることが管理能力と直結しない
「主任ケアマネでなくても優秀な管理者はいる。経験年数を重ね、実績を積んだケアマネが管理者を務める方が適切ではないか。」
「主任ケアマネの資格を持っていても、それが優秀な管理者になる保証にはならない。」
業務負担の増加と人材確保の困難さ
「管理者としての業務と主任ケアマネとしての業務が混在し、多忙になることで質の低下が懸念される。」
「人材確保が難しい現状で、主任ケアマネを必須とすることで事業所の閉鎖が増え、地域のケア体制が脆弱化する可能性がある。」
研修・更新の負担が大きい
「主任ケアマネ資格の維持に研修費用と時間の負担が大きく、更新を続けるのが難しい。」
「主任資格の更新に必要な実務経験が、一人ケアマネでは満たせず、更新できないケースが発生する。」
事業所の形態によっては適用が困難
「一人ケアマネ事業所では管理者と主任ケアマネを兼務することが困難で、制度の適用が現実的ではない。」
「特定事業所加算を取得していない事業所に主任ケアマネを必置とするのは無理がある。」
介護支援専門員の資格制度の見直しが必要
「主任ケアマネを管理者とするのであれば、介護支援専門員を国家資格化すべき。」
「主任ケアマネの資格制度自体が、実務の中でどこまで意味を持つのか疑問がある。」
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まとめ
主任介護支援専門員の資格について、その実態を詳しくまとめました。
主任ケアマネとしての研修を受けるためにも大変な労力と時間がかかるのに加え、資格を維持するために定期的な研修を受け続けなくてはいけないことなど、ある意味で資格ビジネスとして都合のいいように扱われてしまっている状態です。この原因としては、介護支援専門員の資格のあり方や業務範囲などを検討している有識者や検討会が「質」と「研修」を強調しすぎて迷走させている影響が大きいと考えます。介護支援専門員を続けていく中でキャリアアップや生涯学習として主任介護支援専門員を目指したいという人も多いですが、行く手を阻んで定義されていない質を押し付けるハラスメント状態を解消していかないといつになっても介護支援専門員が成果を出しているということが認められず、日本介護支援専門員協会や有識者と言われる人たちが都合よく「まだ介護支援専門員の努力が足りない」という論調を展開してしまいます。ケアマネジメントを展開する中でできるだけ具体的な目標を立てるようにと指導する人たちが、具体性に欠ける質というものを振りかざして職域を踏みにじっているのです。
今の制度であれば、主任介護支援専門員を取得するメリットとしてわかりやすいところは居宅介護支援事業所の管理者になれるということですが、ケアマネジメントの展開や地域での役割を果たしていくことなど、一応専門的なことを学び見識があることの証明として一目置かれる資格であることは確かです。年収を上げたい、給料上げたいという目的で主任介護支援専門員を取得するとしたら、主任を取得することで手当などはつくか確認してみること、地域でどれくらいの給与水準で主任ケアマネの求人情報が出ているか確認してみた方が良いでしょう。
ケアマネジャーの転職は、ケアマネ専門の転職サイトを利用しよう
ケアマネジャーの転職はケアマネ専門の転職サイトの利用が安心です。自分で求人を探したり、人づてに紹介してもらったりする場合、本心では希望している条件をいろいろ我慢してしまいがちになります。転職サイトを挟むことで、希望に合う職場を見つけてもらい、見学・面接対策・条件調整なども行ってもらえるので、希望理由や面接対策で悩んだりすることも減ります。新人ケアマネも、ベテランのケアマネも専門の転職サイトの方がケアマネの求人情報を多く持っています。
居宅介護支援事業所では人手不足状態、ケアマネージャー、主任ケアマネージャー資格を有する人の求人が増えています。多くの転職サイトは介護の仕事のおまけのような感じでケアマネの転職支援をしていますが、ケア求人PECORIだけはケアマネ専門なので、登録して電話面談するときにもケアマネとしての状況や今後の働き方、賃金の相場などを相談しやすいです。
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