OHスケールとは?褥瘡の発生リスク評価方法・仙骨の突出度の測り方

OHスケールとは?褥瘡の発生リスク評価方法・仙骨の突出度の測り方

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OHスケールは、寝たきり高齢者・虚弱高齢者を対象とした褥瘡(床ずれ)発生リスクのアセスメントスケールです。わずか4項目の評価で褥瘡発生の危険度を数値化でき、そのスコアに応じた体圧分散マットレスの選択まで直結する実践的なツールとして、病院・施設・在宅の現場で広く使われています。

OHスケールとは

OHスケールは、褥瘡(床ずれ)の発生リスクを4項目で点数化する褥瘡発生危険要因評価スケールです。「OH」は開発者の名前(大浦・堀田)の頭文字をとったものです。

寝たきりや虚弱な高齢者が持つ身体的な特性から褥瘡が発生しやすい状態にあるかを、シンプルな評価項目で数値化します。合計点数は0〜10点で、点数が高いほど褥瘡発生リスクが高いと判定されます。

褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版、日本褥瘡学会)では、高齢者を対象としたリスクアセスメントスケールとして「推奨度C1(行うよう勧められるだけの根拠が明確でないが、行っても差し支えない)」とされています。

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OHスケールの開発経緯

OHスケールは、褥瘡研究の第一人者である大浦武彦氏を班長とする厚生労働省長寿科学総合研究班が、1998年(平成10年)から3年間にわたって全国の施設・在宅において褥瘡の発生とケア・治療の実態調査を実施したことに端を発します。
この調査で検出された褥瘡発生の危険要因を統計学的手法で分析した結果、「自力体位変換の可否」「病的骨突出の有無・程度」「浮腫の有無」「関節拘縮の有無」という4つの個体要因を確認するだけで、以下の4つを予測できることが明らかになりました。

  • 褥瘡発生リスクの程度
  • 褥瘡発生確率
  • 褥瘡が発生した場合の平均治癒期間
  • 使用すべき体圧分散マットレスのグレード

この研究成果をもとに大浦武彦氏・堀田由浩氏が開発したスケールが「大浦・堀田スケール(OHスケール)」です。日本人高齢者を対象とした実態調査に基づいている点が、国際的なブレーデンスケールとは異なる特徴のひとつです。

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OHスケールの4つの評価項目

OHスケールは以下の4項目で構成されています。それぞれの状態に応じた点数を付け、合計点でリスクレベルを判定します。

① 自力体位変換能力(0〜1.5点)

意識的・無意識的を問わず、身体に加わった圧力とずれ力に対して、自分で体位を変えて軟部組織の血流を改善できるかどうかを評価します。自力体位変換能力の低下は、OHスケールの中でも最も大きな褥瘡発生要因とされています。

状態点数
自力で体位変換できる0点
どちらともいえない0.5点
自力で体位変換できない1.5点

② 病的骨突出(0〜3点)

仙骨部(仙骨周囲)の骨の隆起(突出)の程度を評価します。骨突出部は体重が集中しやすく、圧迫や摩擦が生じやすいため、褥瘡の好発部位になります。廃用性萎縮や低栄養による皮下脂肪・筋肉の減少が骨突出を生じさせます。

状態点数
骨突出なし(正常:仙骨部が左右の臀部に守られてやや凹んでいる)0点
軽度突出(ほぼ水平になった状態)1.5点
高度突出(仙骨部が明らかに周囲より突出している)3点

③ 浮腫(0〜3点)

浮腫(むくみ)がある場合、皮膚・皮下組織が圧迫に対して脆弱になり、褥瘡が発生しやすくなります。

状態点数
浮腫なし0点
浮腫あり3点

④ 関節拘縮(0〜1.5点)

関節拘縮があると体位変換が困難になり、同一部位への持続的な圧迫が生じやすくなります。

状態点数
関節拘縮なし0点
関節拘縮あり1.5点

評価上の注意点として、栄養状態・皮膚の衛生状態・湿潤状態などの環境要因にかかわらず、上記4項目のみで判定します。環境要因(栄養・湿潤・スキンケアなど)は、OHスケールの評価には含まれませんが、看護・介護計画の中で別途対応する必要があります。

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仙骨の突出度(病的骨突出)の測り方

OHスケールの中でも「病的骨突出」の評価は、仙骨部の形状を確認する必要があるため、慣れるまで判定に迷いやすい項目です。

正常(0点)の状態

健常な状態では、仙骨部は左右の臀筋(お尻の筋肉)によって守られており、仙骨部の中央がやや凹んだ状態になっています。仙骨部に圧やずれ力がかかりにくい状態であり、褥瘡発生リスクはありません。

軽度突出(1.5点)の状態

廃用性萎縮や低栄養などによって臀筋が萎縮してくると、仙骨部が徐々に突出し始め、左右の臀部と仙骨部がほぼ水平(フラット)な状態になります。この状態になると、仙骨部に圧力やずれ力が直接かかりやすくなり、褥瘡発生の危険が始まります。

高度突出(3点)の状態

骨突出がさらに進むと、仙骨部が周囲の臀部より明らかに高く突出した状態になります。左右の臀部よりも仙骨の中央部が高くなり、まるで「シーソー」のように左右の一方と仙骨中央部しか接しない状態です。この状態は圧力が仙骨部に集中するため、褥瘡発生リスクが非常に高くなります。

実際の確認方法

おむつ交換時などの側臥位の機会に、仙骨部の形状を視診・触診で確認します。側臥位で脊椎に対して垂直方向に観察し、仙骨部が左右の臀部に対してどのような位置関係にあるかを確認します。

骨突出測定器を使うと簡単・便利に判定できる

日本褥瘡学会・在宅ケア推進協会では「骨突出測定器」という簡易な測定ツールを販売しており、これを仙骨部に当てることで3段階の突出度を1〜2秒で判定することができます。測定器の詳細は「日本褥瘡学会・在宅ケア推進協会骨突出測定器」でご確認ください。

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合計点数とリスクレベルの判定

4項目の点数を合計し、以下のようにリスクレベルを判定します。

合計点数リスクレベル褥瘡発生確率(目安)
0点リスクなしほぼなし
1〜3点軽度約14〜25%(4〜7人に1人程度)
4〜6点中等度約26〜65%(4人に1〜3人程度)
7〜10点高度約66%以上(2人に1人以上)

中等度(4点)の場合、褥瘡が発生した場合の平均治癒期間は約57日とされています。スコアが上がるにつれ、発生確率・治癒期間ともに大きくなります。

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スコアに応じた対応・体圧分散マットレスの選択

OHスケールの大きな特徴は、スコアに応じた体圧分散マットレスの選択基準が示されている点です。

リスクレベルマットレスの目安
リスクなし(0点)一般的なマットレスでよい
軽度(1〜3点)体圧分散効果のある予防マットレス(静止型ウレタン等)
中等度(4〜6点)高機能タイプのマットレス(エアマットレスまたは特殊素材で厚さ10cm以上のもの)
高度(7〜10点)より高機能なエアマットレス(自動体位変換機能付き等)

在宅の場合は病院に比べて介護力が弱いことが多いため、同じリスクレベルでも病院よりも1段階高機能のマットレスを選択することが推奨される場合があります。
また体圧分散マットレスの選択だけでなく、リスクレベルに応じた体位変換の頻度・スキンケア・栄養管理・排泄ケアなども組み合わせた総合的なケア計画の立案が必要です。

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OHスケールの特徴・ブレーデンスケールとの違い

OHスケールとブレーデンスケールはどちらも代表的な褥瘡発生リスクアセスメントスケールですが、いくつかの点で異なります。

比較項目OHスケールブレーデンスケール
開発日本(大浦武彦・堀田由浩)米国(Barbara Braden・Nancy Bergstrom)
主な対象寝たきり・虚弱高齢者幅広い患者(高齢者に限らず)
評価項目数4項目6項目
合計点の範囲0〜10点(高いほどリスク大)6〜23点(低いほどリスク大)
評価の簡便さシンプルで短時間(約1分)やや詳細で時間がかかる
マットレス選択との連動スコアと直結している直接連動していない
ガイドラインの推奨度推奨度C1(日本褥瘡学会第4版)推奨度B(日本褥瘡学会第4版)
エビデンスレベル国内高齢者のデータに基づく国際的なエビデンスが豊富

ブレーデンスケールは知覚の認知・湿潤・活動性・可動性・栄養状態・摩擦とずれの6項目で評価し、国際的なエビデンスが豊富です。一方OHスケールは日本人高齢者のデータに基づく個体要因のみの評価で、簡便さと体圧分散マットレス選択への直結性が優れています。
両者を組み合わせて使用したり、施設の対象者の特性に合わせて使い分けたりすることも有効です。

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OHスケールの注意点・限界

環境要因は評価に含まれない

OHスケールは「個体要因(患者自身の身体的な状態)」のみを評価するスケールです。栄養状態・皮膚の湿潤・スキンケアの質・体位変換の実施頻度などの「環境要因(ケアの質)」は評価に含まれません。OHスケールのスコアが低くても、ケアが不十分であれば褥瘡が発生する可能性があります。

再評価のタイミング

入所・入院時の初回評価だけでなく、状態の変化に応じて定期的に再評価することが重要です。病状の悪化・栄養状態の低下・活動性の変化などがあればスコアが変動するため、ケアプランの見直しにつなげます。

ガイドラインの推奨度について

日本褥瘡学会のガイドラインにおける推奨度はC1(行うよう勧めるだけの根拠が明確でない)であり、ブレーデンスケール(推奨度B)よりエビデンスレベルは低い位置づけです。ただしシンプルさと実用性から現場での活用は広く行われています。

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よくある質問(Q&A)

Q
OHスケールの「OH」は何の略ですか?
A

開発者である大浦武彦(Oura)氏と堀田由浩(Hotta)氏のアルファベット表記の頭文字を取ったものです。「大浦・堀田スケール」とも呼ばれます。

Q
OHスケールは介護職員でも使えますか?
A

はい。4項目のシンプルな評価なので、看護師だけでなく介護職員・ケアスタッフも評価に参加できます。実際に老人保健施設などでは、看護師とケアスタッフが共同でOHスケール評価を行っているケースがあります。ただし評価結果の解釈と対応計画の立案は、看護師・医師と連携して行うことが重要です。

Q
病的骨突出の評価が難しいのですが、何かコツはありますか?
A

仙骨部の形状変化は「左右の臀部に対して仙骨中央がどのような位置にあるか」で判断します。おむつ交換時などの側臥位の機会に、手で触れながら確認するのが実践的です。日本褥瘡学会・在宅ケア推進協会の「骨突出測定器」を使うと、道具を仙骨部に当てるだけで客観的に3段階を判定できます。

Q
OHスケールのスコアは0点でも褥瘡発生リスクはゼロですか?
A

0点は「個体要因によるリスクなし」を意味しますが、環境要因(不適切な体位変換・皮膚の湿潤・栄養不足など)が重なれば褥瘡が発生する可能性はあります。0点であってもスキンケアや適切なケアの継続は必要です。

Q
OHスケールは在宅でも使えますか?
A

はい。在宅療養の現場でも広く活用されています。在宅では病院・施設より介護力が弱い場合が多いため、同じスコアでも体圧分散マットレスのグレードを1段階高めに設定することが推奨される場合があります。

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まとめ

  • OHスケールは大浦武彦氏・堀田由浩氏が日本人高齢者のデータに基づいて開発した褥瘡発生リスクアセスメントスケール
  • 4項目(自力体位変換能力・病的骨突出・浮腫・関節拘縮)を評価し、合計0〜10点で判定
  • 1〜3点:軽度、4〜6点:中等度、7〜10点:高度のリスクレベルに分類
  • 仙骨の病的骨突出は0点(正常)・1.5点(軽度)・3点(高度)の3段階で評価。仙骨部が左右の臀部に対してどの位置にあるかで判断する
  • スコアに応じた体圧分散マットレスの選択基準が示されており、ケアへの直結性が高い
  • 栄養・湿潤などの環境要因は評価に含まれないため、ケアプランでの別途対応が必要
  • ブレーデンスケールと比べてシンプルで短時間の評価が可能だが、エビデンスレベルはやや低い(推奨度C1)
  • 在宅・施設・病院を問わず活用できるが、状態変化に応じた定期的な再評価が重要

参考

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