介護現場で重要な役割を果たす居宅ケアマネジャー。しかし、法定業務だけでなく保険外サービスへの対応も求められる場面が増えています。「部屋の片付け」や「財産管理」といった家事・生活支援のニーズに、ケアマネがどう向き合うべきか。この記事では、介護保険法や運営基準上の規定を整理し、「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」の中間報告から具体的な事例を掘り下げます。ケアマネが非効率な業務負担を避け、より良い支援を提供するための課題と提案を考察します。
このページの目次
介護支援専門員に係る法令上の規定(介護保険法上)
介護支援専門員、いわゆるケアマネジャーは、法令上「要介護者又は要支援者がその心身の状況に応じて適切な介護サービスを利用できるよう、市町村や介護サービス事業者等との連絡調整を行う者」とされています(介護保険法第7条第5項)。さらに、ケアマネジャーは要介護者等の自立を支援するための専門的知識と技術を持ち、特定の事業者やサービスに偏らない、公正かつ誠実な業務遂行が求められています。
また、居宅介護支援(ケアプランの作成など)は、利用者が自立した日常生活を送れるように、多様な事業者から保健医療サービスや福祉サービスを総合的に提供するための調整を行うことが含まれます。
(定義)
第七条 この法律において「要介護状態」とは、身体上又は精神上の障害があるために、入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部又は一部について、厚生労働省令で定める期間にわたり継続して、常時介護を要すると見込まれる状態であって、その介護の必要の程度に応じて厚生労働省令で定める区分(以下「要介護状態区分」という。)のいずれかに該当するもの(要支援状態に該当するものを除く。)をいう。
2 この法律において「要支援状態」とは、身体上若しくは精神上の障害があるために入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部若しくは一部について厚生労働省令で定める期間にわたり継続して常時介護を要する状態の軽減若しくは悪化の防止に特に資する支援を要すると見込まれ、又は身体上若しくは精神上の障害があるために厚生労働省令で定める期間にわたり継続して日常生活を営むのに支障があると見込まれる状態であって、支援の必要の程度に応じて厚生労働省令で定める区分(以下「要支援状態区分」という。)のいずれかに該当するものをいう。
3 この法律において「要介護者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
一 要介護状態にある六十五歳以上の者
二 要介護状態にある四十歳以上六十五歳未満の者であって、その要介護状態の原因である身体上又は精神上の障害が加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病であって政令で定めるもの(以下「特定疾病」という。)によって生じたものであるもの
4 この法律において「要支援者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
一 要支援状態にある六十五歳以上の者
二 要支援状態にある四十歳以上六十五歳未満の者であって、その要支援状態の原因である身体上又は精神上の障害が特定疾病によって生じたものであるもの
5 この法律において「介護支援専門員」とは、要介護者又は要支援者(以下「要介護者等」という。)からの相談に応じ、及び要介護者等がその心身の状況等に応じ適切な居宅サービス、地域密着型サービス、施設サービス、介護予防サービス若しくは地域密着型介護予防サービス又は特定介護予防・日常生活支援総合事業(第百十五条の四十五第一項第一号イに規定する第一号訪問事業、同号ロに規定する第一号通所事業又は同号ハに規定する第一号生活支援事業をいう。以下同じ。)を利用できるよう市町村、居宅サービス事業を行う者、地域密着型サービス事業を行う者、介護保険施設、介護予防サービス事業を行う者、地域密着型介護予防サービス事業を行う者、特定介護予防・日常生活支援総合事業を行う者等との連絡調整等を行う者であって、要介護者等が自立した日常生活を営むのに必要な援助に関する専門的知識及び技術を有するものとして第六十九条の七第一項の介護支援専門員証の交付を受けたものをいう。
介護保険法
このように、介護保険法における介護支援専門員の定義としては、「連絡調整等を行う者」となっており、「等」は入っていますが、主体的にサービスを提供する立場ではないと考えられます。
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居宅ケアマネの法定業務(運営基準上)
指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準に定められている業務には、以下のようなものがあります。
1. アセスメント(課題の把握)
利用者の生活や心身の状況、家族の支援状況を評価し、自立した日常生活を支えるための課題を明確にします。訪問や面接を通じて利用者のニーズを正確に把握することが求められます。
2. 居宅サービス計画(ケアプラン)の作成
利用者の希望やアセスメント結果をもとに、利用する介護サービスや福祉・医療サービスを組み合わせた具体的な計画を作成します。計画にはサービス内容、目標、達成時期などを詳細に記載し、利用者の同意を得ます。
3. サービス担当者会議の開催
ケアプラン作成や変更にあたり、担当者会議を開催して専門的な意見を収集し、利用者や家族とサービス提供者間で情報を共有します。必要に応じて医師や薬剤師とも連携します。
4. モニタリング(状況の把握と計画の見直し)
月に1回以上原則対面でケアプランの実施状況を確認し、利用者の生活状況や心身の変化を把握します。必要に応じてケアプランを見直し、継続的なサービスの適正化を図ります。
5. サービス提供事業者との調整
訪問介護や福祉用具貸与などの事業者と連携し、サービス内容や計画が適切に実施されるよう調整します。また、利用者のニーズに応じた事業者選びや情報提供も行います。
6. 医療との連携
訪問看護やリハビリテーションなど医療サービスを利用する場合、主治医の意見を求めたり指示を反映させたりします。また、利用者が自宅での生活が困難な場合には、介護施設への紹介を行います。
7. 記録と報告
ケアプランやモニタリング結果、利用者に提供した説明内容など、すべての業務を適切に記録します。市町村や関係機関から求められた場合には、必要な報告を行います。
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保険外サービスで対応しうる業務を明示した背景
「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」では、居宅ケアマネの業務が増加・多様化している現状が指摘されました。特に高齢化の進展に伴い、利用者や家族からの幅広い相談や依頼が増え、法定業務を超える対応(いわゆる「保険外サービス」)が必要となるケースも増加しています。
これらの状況を踏まえ、ケアマネジャーが対応可能な業務を明確化することで、業務範囲の適切な整理と役割分担を促進し、負担軽減と業務効率化を図る意図がありましたというのが、検討会および厚生労働省からの説明です。
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保険外サービスで対応しうる具体的な業務と対応
「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」の中間報告で保険外サービスとしてケアマネジャーが対応可能な業務として以下のような事柄について事例と対応例を示しています。居宅介護支援事業所におけるケアマネジャーが実施する業務については、以下の考え方に沿って、負担の軽減を図るとし、法定業務以外の業務については、ケアマネジャーの業務上の課題というだけではなく地域課題として地域全体で対応を協議すべきものであり、基本的には市町村が主体となって関係者を含めて協議し、利用者への切れ目ない支援ができる地域づくりを推進すると取りまとめています。
保険外サービスとして対応しうる業務
- 郵便・宅配便等の発送、受取
- 書類作成・発送
- 代筆・代読
- 救急搬送時の同乗
上記のような事例については、地域の関係者間で協議した上で、保険外サービスとしてケアマネジャーが対応、または他の地域資源につないで対応として例を示しています。一応、この検討会の中間報告としててケアマネジャーが対応しうる業務としては「郵便や宅配便手続き」「書類作成・発送」「代筆・代読」「救急搬送時の同乗」の4つが例として示されたわけです。
他機関につなぐべき業務
こちらの事例については、地域の関係者間で協議した上で、他機関につなぐべき業務で対応例と
主な事例 | 対応例 |
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対応困難な業務
- 医療同意
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介護支援事業での保険外サービスは認められているのか
結論として、介護支援専門員が保険外サービスを直接提供することについて、今回の検討会では認められているような前提で進められていますが、居宅介護支援事業者としての自費サービスについて国が公式文書として明示したものはなく、この部分を国が明示しない限り後付けで不適切な料金の受領などで指摘される心配が大きい状況です。
一応、厚生労働省は通知として「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」を平成30年に示しましたが、こちらは訪問介護と通所介護を例に挙げたもので、もともと介護保険の提供時間と、その他の時間が区分できるものなので一定の理解は得られます。一方で、厚生労働省の検討会ではたびたびケアマネが保険外サービスとして対応しうるという言葉が登場しますが、根拠になることがらが国から示されておらず、不安が残ります。
先駆けてケアマネが自費サービスに取り組んでいる事業者もあり、月額の定額制や、30分あたりの料金設定など様々です。
現状だと、24時間365日対応可能なオーダーメイド介護サービス「イチロウ」みたいなサービスを紹介してあとはご自身で!という感じになりそうですね。
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ケアマネの保険外サービス(自費サービス)について公式な決まりはない
ケアマネの保険外サービス(自費サービス)について公式な決まりは現状ありません。
介護保険サービスの事業として行うと自治体等の目に触れることになるため、比較的安全そうな提供方法としては、同法人だとしても保険外サービスの部分は便利屋のような事業として部門を分けて提供する形なのではないかと現時点では考えます。もちろん、現在の社会課題に敏感な自治体などでは、介護保険事業者としての自費サービス提供に対して前向きに相談に乗ってくれたり、自費部分には過剰な関わりを持たないというところもあると思いますが、まだ検討会段階なので、国や介護の職能団体が急に方針を変えたりして掌返しされる可能性も念のため考慮して事業設計した方が良いかと思います。
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高齢者の多様な支援の需要はあるので国や自治体が整備すべき
2024年ころから「ケアマネのシャドーワーク問題」が急に話題になってきましたが、令和3年3月に、株式会社 日本総合研究所が「保険外サービス活用推進に関する調査研究事業(令和 2 年度老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分) )」を公表しています。国の補助も入って行われたこの調査報告でも「ケアマネジャーによる保険外サービス・サポートについて、ケアマネジャーは業務の一環と考えていないことが多いにも関わらず、ケアマネジャーによって無償でサービス・サポートが提供されていることが多い実情を明らかにすることができた。特に公的機関での手続きや申請の代行・支援、救急車への同乗等の緊急対応、日常的な通院等への付き添いや自宅内での簡単な作業といった日常生活のサポートについてこのような傾向がみられた。(引用) 」ということがすでに示されており、課題としては認識されていたはずです。
お金と時間をかけて3年以上前に調査して、一定の集計結果はとっくに出ている状態であるのに、ケアマネがやるとかやらないとかを学者や職能団体を集めてわざわざパフォーマンスで検討会している状況です。もちろん厚生労働省としては、有識者からの意見を聞いたという後述を作りたいと思いますし、当事者の意見も聞きたいとは思います、そして現にサービスでシャドーワークとして対応しているケアマネを立てる意味でも職能団体などからの意見や現状を伝えてもらう機会を作ろうというのも理解できます。しかし、課題が目核になってからもう数年たっている状況であり、ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会でメインで話される内容ではなく、国や自治体で話し合うべき問題です。
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ケアマネが他機関につなぐべき業務も、ケアマネが探すのは非効率で責任が重すぎる
ケアマネが他機関につなぐべき業務として整理された内容である、部屋の片付け・ゴミ出し、買い物などの家事支援、預貯金の引き出しや振込、財産管理なども、これらを行っている会社などもありますが、ケアマネがわざわざ見つけてきて紹介してあげるというのはなかなか非効率です。もしそれでもケアマネに対してこれらの業務を強いるとするならば、自治体側で高齢者や要介護者の対応ができる業者を一定の基準で選定してネット上などに公表しておくなど、それくらいは行ってからではないでしょうか。そもそも個人個人のケアマネが多種多様な業者の特徴などを把握する努力をすることもナンセンスですし、業務効率化やICT活用といった方針からもかけ離れていることを強いようとしているのです。
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ケアマネジャーの転職は、ケアマネ専門の転職サイトを利用しよう
ケアマネジャーの転職はケアマネ専門の転職サイトの利用が安心です。自分で求人を探したり、人づてに紹介してもらったりする場合、本心では希望している条件をいろいろ我慢してしまいがちになります。転職サイトを挟むことで、希望に合う職場を見つけてもらい、見学・面接対策・条件調整なども行ってもらえるので、希望理由や面接対策で悩んだりすることも減ります。新人ケアマネも、ベテランのケアマネも専門の転職サイトの方がケアマネの求人情報を多く持っています。
居宅介護支援事業所では人手不足状態、ケアマネージャー、主任ケアマネージャー資格を有する人の求人が増えています。多くの転職サイトは介護の仕事のおまけのような感じでケアマネの転職支援をしていますが、ケア求人PECORIだけはケアマネ専門なので、登録して電話面談するときにもケアマネとしての状況や今後の働き方、賃金の相場などを相談しやすいです。
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