介護の倫理 日本介護福祉士会倫理綱領、倫理基準(行動規範)

 

介護の仕事での倫理・倫理観について紹介します。倫理的に判断するにはどうするのか、その際の指針となる、日本介護福祉士会倫理綱領・倫理基準(行動規範)、倫理的判断の4つの視点を取り上げます。介護の現場では、研修や事例通りのケースはなかなかなく、倫理的課題、倫理的ジレンマが発生しやすいです。介護の仕事に従事する人の倫理としては、より良いケアのあり方を考える姿勢、介護の仕事をする者としてどのような行動がより善いのかを考える参考になれば幸いです。

倫理とは

倫理とは、善いことや悪いこと、正しいことを正しくないこと、こういう場合にはこうするべきであるという、人の内面的な規範(ルール、指針)のことです。

倫理は、法律で定められているわけではなく、法的な拘束力・強制力はないものの、利用者や家族、社会の人々からも、高齢者の介護に従事する介護職員に対して、高い倫理観が求められるようになりました。

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介護の仕事における職業倫理

日本介護福祉士会事務局が公開している、約3分で「介護福祉士の職業倫理」を学べる研修動画がありました。施設内、事業所内研修で概要を掴むために使ってみてはいかがでしょうか?

介護の仕事に従事する人の倫理としては、より良いケアのあり方を考える姿勢のことや、ケアされる人の立場に立った場合にどう感じるか、介護の仕事をする者としてどのような行動がより善いのかを考えることが求められています。

介護の仕事では利用者の生命や生活に直接関わる仕事であり、認知症や疾病があってもその人らしい暮らしを実現すること、利用者の尊厳を保つことなど、高い職業倫理、人間性が問われる仕事となっています。

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介護職の法律上の倫理

社会福祉士及び介護福祉士法では、介護職の倫理に関わる条文がいくつかあります。詳しくは以下の記事で紹介しています。

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日本介護福祉士会倫理綱領

倫理綱領は、専門職成立の条件の一つとなっているものであり、日本介護福祉士会も介護従事者としての職業倫理を宣言・公表しています。

専門職の倫理綱領とは、専門職としての目指すべき価値や目的を表し、望ましい実践へと向かうべき方向を指し示し、専門職の取るべき態度や姿勢を明確にするものですので、介護の仕事をする人は自分の仕事の善し悪しや、他の職員とケアの方針について意見を交わすときなどに役立つと思いますのでご確認ください。

日本介護福祉士会倫理綱領
1995年11月17日宣言

前文
私たち介護福祉士は、介護福祉ニーズを有するすべての人々が、住み慣れた地域において安心して老いることができ、そして暮らし続けていくことのできる社会の実現を願っています。
そのため、私たち日本介護福祉士会は、一人ひとりの心豊かな暮らしを支える介護福祉の専門職として、ここに倫理綱領を定め、自らの専門的知識・技術及び倫理的自覚をもって最善の介護福祉サービスの提供に努めます。

(利用者本位、自立支援)
介護福祉士は、すべての人々の基本的人権を擁護し、一人ひとりの住民が心豊かな暮らしと老後が送れるよう利用者本位の立場から自己決定を最大限尊重し、自立に向けた介護福祉サービスを提供していきます。

(専門的サービスの提供)
介護福祉士は、常に専門的知識・技術の研鑽に励むとともに、豊かな感性と的確な判断力を培い、深い洞察力をもって専門的サービスの提供に努めます。
また、介護福祉士は、介護福祉サービスの質的向上に努め、自己の実施した介護福祉サービスについては、常に専門職としての責任を負います。

(プライバシーの保護)
介護福祉士は、プライバシーを保護するため、職務上知り得た個人の情報を守ります。

(総合的サービスの提供と積極的な連携、協力)
介護福祉士は、利用者に最適なサービスを総合的に提供していくため、福祉、医療、保健その他関連する業務に従事する者と積極的な連携を図り、協力して行動します。

(利用者ニーズの代弁)
介護福祉士は、暮らしを支える視点から利用者の真のニーズを受けとめ、それを代弁していくことも重要な役割であると確認したうえで、考え、行動します。

(地域福祉の推進)
介護福祉士は、地域において生じる介護問題を解決していくために、専門職として常に積極的な態度で住民と接し、介護問題に対する深い理解が得られるよう努めるとともに、その介護力の強化に協力していきます。

(後継者の育成)
介護福祉士は、すべての人々が将来にわたり安心して質の高い介護を受ける権利を享受できるよう、介護福祉士に関する教育水準の向上と後継者の育成に力を注ぎます。

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介護の実践での倫理的判断の4つの視点・ポイント

介護を実践する中では、介護福祉士会倫理綱領に示された専門職としての倫理観を持ち、介護実践を進めていくことが求められます。ここでは、倫理的判断をわかりやすく整理した中村裕子著の「新・介護福祉士養成講座4 介護の基本Ⅱ(中央法規出版)」に記載されている理論をもとに紹介します。

倫理的判断の4つの視点

中村先生は、介護の現場で生じる様々な問題を倫理的視点から考えるには、判断の手順として四つの倫理的判断の視点から検証すると良いと論じています。4つの視点のうち3つ以上を満たせば倫理的な判断に基づいた行動と言えると考えられています。現実の介護の中では全ての視点を満たすことは難しいので、少しでも満たすことができるように話し合い、試行錯誤しながら、結論に導くことが大切です。

倫理的判断の視点1(自律尊重の視点):利用者の家族や意向を尊重することを重視する視点のことで、利用者の願いを大切にし、利用者の意向を最優先する介護実践である。

倫理的判断の視点2(善行の視点):利用者や家族にとって、最良の結果が得られることを何よりも重視する視点のこと。

倫理的判断の視点3(悪不履行の視点):利用者や家族にとって、予測される悪い結果(危害、損害、不都合など)をできるだけ避けることを重視する視点のこと。

倫理的判断の視点4(正義・公平の視点):利用者や家族に対して、正しいことを公平に行うことを重視する視点のことで、法を遵守することや価値観を大切にした介護実践である。

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日本介護福祉士会 倫理基準(行動規範)

日本介護福祉士会も倫理綱領に基づいた行動はどのように行われるとよいかを定めた「日本介護福祉士会 倫理基準(行動規範)」を規定しています。倫理綱領は規範(ルール、方針)が示された内容ですが、その要項に対応する形で倫理基準(行動規範)が作られ、具体的な行動に落とし込んで介護従事者としての倫理的判断の実践を示しています。

日本介護福祉士会 倫理基準(行動規範)

(利用者本位、自立支援)
介護福祉士は、利用者をいかなる理由においても差別せず、人としての尊厳を大切にし、利用者本位であることを意識しながら、心豊かな暮らしと老後が送れるよう介護福祉サービスを提供します。
介護福祉士は、利用者が自己決定できるように、利用者の状態に合わせた適切な方法で情報提供を行います。
介護福祉士は、自らの価値観に偏ることなく、利用者の自己決定を尊重します。
介護福祉士は、利用者の心身の状況を的確に把握し、根拠に基づいた介護福祉サービスを提供して、利用者の自立を支援します。

(専門的サービスの提供)
介護福祉士は、利用者の生活の質の向上を図るため、的確な判断力と深い洞察力を養い、福祉理念に基づいた専門的サービスの提供に努めます。
介護福祉士は、常に専門職であることを自覚し、質の高い介護を提供するために向上心を持ち、専門的知識・技術の研鑚に励みます。
介護福祉士は、利用者を一人の生活者として受けとめ、豊かな感性を以て全面的に理解し、受容し、専門職として支援します。
介護福祉士は、より良い介護を提供するために振り返り、質の向上に努めます。
介護福祉士は、自らの提供した介護について専門職として責任を負います。
介護福祉士は、専門的サービスを提供するにあたり、自身の健康管理に努めます。

(プライバシーの保護)
介護福祉士は、利用者が自らのプライバシー権を自覚するように働きかけます。
介護福祉士は、利用者の個人情報を収集または使用する場合、その都度利用者の同意を得ます。
介護福祉士は、利用者のプライバシーの権利を擁護し、業務上知り得た個人情報について業務中か否かを問わず、秘密を保持します。また、その義務は生涯にわたって継続します。
介護福祉士は、記録の保管と廃棄について、利用者の秘密が漏れないように慎重に管理・対応します。

(総合的サービスの提供と積極的な連携、協力)
介護福祉士は、利用者の生活を支えることに対して最善を尽くすことを共通の価値として、他の介護福祉士及び保健医療福祉関係者と協働します。
介護福祉士は、利用者や地域社会の福祉向上のため、他の専門職や他機関と協働し、相互の創意、工夫、努力によって、より質の高いサービスを提供するように努めます。
介護福祉士は、他職種との円滑な連携を図るために、情報を共有します。

(利用者ニーズの代弁)
介護福祉士は、利用者が望む福祉サービスを適切に受けられるように権利を擁護し、ニーズを代弁していきます。
介護福祉士は、社会にみられる不正義の改善と利用者の問題解決のために、利用者や他の専門職と連帯し、専門的な視点と効果的な方法により社会に働きかけます。

(地域福祉の推進)
介護福祉士は、地域の社会資源を把握し、利用者がより多くの選択肢の中から支援内容を選ぶことができるよう努力し、新たな社会資源の開発に努めます。
介護福祉士は、社会福祉実践に及ぼす社会施策や福祉計画の影響を認識し、地域住民と連携し、地域福祉の推進に積極的に参加します。
介護福祉士は、利用者ニーズを満たすために、係わる地域の介護力の増進に努めます。

(後継者の育成)
介護福祉士は、常に専門的知識・技術の向上に励み、次世代を担う後進の人材の良き手本となり公正で誠実な態度で育成に努めます。
介護福祉士は、職場のマネジメント能力も担い、より良い職場環境作りに努め、働きがいの向上に努めます。

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介護の仕事と倫理的課題

日本介護福祉士会 倫理基準(行動規範)では、介護従事者として業務上どんなことを気をつけて行くか、目指すべき態度・仕事への向き合い方を示しています。
しかし、実際の介護現場では、倫理基準(行動規範)を全て満たすことができるようなケースは多くありません。

介護の仕事での倫理を問われる事例

事例としては、以下のようなケースです。
  • 利用者の自立支援の視点を大切にしたいが、家族のマンパワーの問題で家族の意見を優先しなければならないこと
  • 利用者本意の視点に立つと、入浴を週2回でなく毎日入浴したいと希望しているが、施設の状況や通例として週2回の入浴以外は対応できないということなど
特に、新人のときには介護倫理の研修やグループワーク・事例検討などを通して、倫理の大切さを学んでから現場の難しさを知ることになるので、倫理観と現実の間で悩む部分です。また、このように利用者の希望を聞いたときに、自己覚知が不十分だと、ケアする介護従事者側の感情や価値観が強く露出してしまうこともあるので、自らの特性は把握しておくようにしましょう。

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介護での倫理的ジレンマ

利用者本意・利用者ニーズの代弁が介護の倫理ではありますが、専門職・従業者として現実性とのバランスをとりながら仕事をすることとなると思います。どんなときでも、倫理観は捨てずに、利用者に対して現状でできる最良のケア、最良の生活環境を整えていけるよう思考を停止させないようにしましょう。介護従事者としての視点から抽象度を少し上げてケアマネジャー視点で考えてケアマネジメントする際には、利用者の希望はできるだけ反映して、その利用者の望む生活実現のために、介護という手段以外まで含めて関係者や手段を広げることでジレンマを解消できる場合もあります。
介護の仕事について、専門家としての社会的責任を十分に理解し、倫理を意識した姿勢、支援の方法を考えて業務に活かしていきましょう。

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