摘便、在宅酸素療法、褥瘡の処置など介護職員は禁止の医療行為
 

訪問介護のヘルパー、施設などの介護現場で介護職員に禁止されている医療行為の範囲についてまとめました。

この記事は厚労省が提示した行為一覧を中心に構成していますが、現実的にはその他の医療行為に出くわすことも多くあります。
医行為とは、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ、人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為 のことです。
ただし、「業として行う(反復継続の意思をもって行う)」ことでなければ医師法に違反するものではないという考え方もあります。
しかし、業として行う医療行為でなくても万が一人体に危害を及ぼしたら過失や損害賠償などの問題に発展する可能性もあります。
この記事では、具体例を挙げて介護職員でも実施可能な医療的ケア介護職員は禁止の医療行為条件付きで介護職員に認められている医療行為を紹介します。
ケアマネジャー、施設の管理者、看護師等も、介護職員が行える行為・業務について再認識しておくことが大切です。

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介護職員がやってはいけない医療行為の具体例

1 背中、足指等の薬塗り(かゆみ止め等感染症も含む。)
2 目薬さし、服薬の管理
3 摘便
4 褥創の処置(消毒、薬塗り)
5 経管栄養の処置
6 たんの吸引

回答:厚生労働省

患者の生命・身体に及ぼす危険性にかんがみて、医師、看護師等医療関係資格を有する者が行うべきものと考えており、医療関係資格を有さないホームヘルパー等が業として行うことは認められておりません(「業として行う」とは、「反復継続の意思をもって行う」ことであると解しております。)。
要介護者の状態に急変が生じた場合で医師、看護師等による速やかな対応が困難であるとき等において、医療関係資格を有さないホームヘルパー等が緊急やむを得ない措置として「医行為」を行うことは、それが業として行われるものでない限り、医師法第17条(医師でない者の医業の禁止)に違反するものではありません。
抜粋引用:ホームヘルパーに許される医療行為の範囲は, 内閣府政府広報室 国政モニター厚生労働省回答

介護職員として働くと、研修で習っていないことまで先輩方が行っていたり、危なく怖いと思うようなことも依頼されることがあります。
基本的には法令順守が最善策です。規制は、大多数の安全のためにあらゆる検討を経て作られています。介護のプロとして、業務として可能な範囲を再認識しましょう!

摘便(てきべん)は医療行為

摘便とは

摘便とは、肛門から指等で腸内の便を取り出す手技で、医療行為です。しかし、介護施設などでは介護職員が排泄の処理を行うことが多いため、ついでに摘便を行っているというケースも見られました。

介護職員が摘便

摘便を行っていたら腸壁を傷つけて大出血を起こし、救急車で病院に搬送されたという深刻なケースもありました。
摘便が必要な状態の要介護者の場合には、利用者の状態を考慮してケアマネジャーが適切な医療処置が受けられるサービスの優先順位を上げ、プランに組み込む必要があります
現場で動く介護職員の認識と合わせて、プランナーの認識も重要です。

褥瘡の処置(消毒、薬塗り)は医療行為

汚物で汚れたガーゼの交換は原則として医行為でないとしていますが、褥瘡部位での軟膏の塗布等は医行為に該当すると厚労省の回答があります。
創の周囲を水洗いする。創の周囲の皮膚に外用薬(ワセリン、抗真菌薬など)を塗る。汚れたガーゼを交換。モイスキンパッド(衛生材料・ガーゼ類)を交換。ラップ・穴あきラップ/紙おむつを交換。おむつを直接当てる。~おむつ交換。は介護職員でも可能です。

医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)に対して寄せられたご意見について
平成17年7月 厚生労働省医政局 医事課・看護課
主な意見の要約:医師の指示の下に、褥瘡部位における軟膏の塗布や湿布の貼付等が認められるべき。
考え方:汚物で汚れたガーゼの交換は原則として医行為でないとしていますが、褥瘡部位での軟膏の塗布等は医行為に該当すると考えます。
介護職・ホームヘルパーができる褥瘡処置(医行為除外)は…
×:消毒
×:軟膏塗布
×:特定医療材料の交換(ハイドロサイト® 、デュオアクティブ®など)。
○:創の周囲を水洗いする。
○:汚物で汚れたガーゼの交換。
○モイスキンパッド(衛生材料・ガーゼ類)の交換。
○ラップ・穴あきラップ/紙おむつの交換(ガーゼ類)~おむつ交換。
○:キズの周囲を水洗いしておむつを当てる。~おむつ交換。
医師の指示と患者・家族の同意によるケアをしましょう。 家族の同意によるケアをしましょう。コミュニケーションが大前提。
引用:介護職のできる褥瘡ケアと「医行為」について, 鳥谷部 俊一 たかせクリニック 顧問

介護職員が行う服薬の介助は条件を確認

介護職員が行える服薬介助とは

具体的に介護職員が行うことができる薬剤の服用介助は、皮膚への軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く。)、皮膚への湿布の貼付、点眼薬の点眼、一包化された内用薬の内服(舌下錠の使用も含む)、肛門からの坐薬挿入又は鼻腔粘膜への薬剤噴霧を介助することと通知されています。

服薬を介助するときの条件

  1. 患者が入院・入所して治療する必要がなく容態が安定していること
  2. 副作用の危険性や投薬量の調整等のため、医師又は看護職員による連続的な容態の経過観察が必要である場合ではないこと
  3. 内用薬については誤嚥の可能性、坐薬については肛門からの出血の可能性など、当該医薬品の使用の方法そのものについて専門的な配慮が必要な場合ではないこと

インスリン(糖尿病患者)の自己注射は医療行為

糖尿病の在宅療養、施設療養で「インスリン」を注射している方がいます。自分で注射する分には違法ではありませんが、注射は医行為であり介護職員が行うことは禁止です。
補助・単位数の確認ならばその行為自体は医療行為には当たりません。

血糖値測定は医療行為

血糖測定も針を体に刺す行為であり、医療行為で禁止です。
補助・確認ならばその行為自体は医療行為ではありませんが、血糖値や食事の量に合わせてインスリン分泌促進薬やインスリン注射の単位などを調整する行為は医行為に当たります。

痰の吸引、経管栄養(胃ろう、腸ろう、PEGペグ)は条件付きで介護職員が実施可能な医療行為

痰の吸引、経管栄養(胃ろう、腸ろう)は、医行為であっても、介護現場のニーズが高いもので特例的に介護職員が実施することが認められています。
ただし、条件があり、介護職員全員が痰の吸引、経管栄養(胃ろう、腸ろう、PEGペグ)を実施する資格があるわけではありません

喀痰吸引とは

咽頭炎や気道炎症などの呼吸器疾患、肺のうっ血、ALS(筋萎縮性側索硬化症)などと合わせ、自発的に咳嗽(がいそう・せき)で排出できないときの手段として吸引するという方法があります。
チューブでのどにたまってしまった痰などの分泌物を吸い取って呼吸を楽にするものです。しかし、喉はやわらかい粘膜で傷つきやすく、神経もいろいろ通っている場所です。のどの構造や呼吸の仕組み、痰の種類、吸引機の使い方などを理解するともに、感染予防などの知識も必要になります。

介護職員が行う喀痰吸引の条件・要件

家族以外の者が在宅の患者・障害者(以下、単に「患者・障害者という。)に対してたんの吸引を行う場合の条件として、いくつかの見解が示されています。

  1. 2016年1月以降の介護福祉士合格者
  2. 一定の研修を受け都道府県知事から「認定特定行為業務従事者認定証」を受けた介護職員
  3. 勤め先の施設や事業者が、医療と介護の連携を整えた上、都道府県知事の登録が必要
  4. 医師から痰の吸引の実施について指示、実施手順書に明記して業務の流れを共有
  5. 家族以外の者がたんの吸引を実施することについて、文書により同意する
  6. かかりつけ医及び訪問看護職員は、定期的家族以外の者がたんの吸引を適正に行うことができていることを確認する
  7. 家族、入院先の医師、在宅患者のかかりつけ医、訪問看護職員、保健所の保健師等及び家族以外の者等の間で、緊急時の連絡・支援体制を確保する

気管カニューレ下端より肺側の気管内吸引については、迷走神経そうを刺激することにより、呼吸停止や心停止を引き起こす可能性があるなど、危険性が高いことから、家族以外の者が行うたんの吸引の範囲は、口鼻腔内吸引及び気管カニューレ内部までの気管内吸引を限度。特に、人工呼吸器を装着している場合には、気管カニューレ内部までの気管内吸引を行う間、人工呼吸器を外す必要があるため、安全かつ適切な取扱いが必要。

胃瘻とは

在宅経管栄養法は、高齢者や障害の後遺症、重度の精神疾患、認知症の進行などの理由により、重度の嚥下障害、意識障害、食思不振などが生じ、口から栄養摂取が困難な方に行われる栄養確保の手段です。
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胃瘻・胃ろうは、業界ではペグ(PEG=Percutaneous Endoscopic Gastrostomy : 経皮内視鏡的胃瘻造設術)と呼ばれ、手術で胃にカテーテルを通して直接栄養剤を注入する手段です。
内視鏡や専用の器具(オブチュレータ)を用い、医師が手術で造設します。

介護職員が経管栄養(胃ろう、腸ろう)を行う場合の条件・要件

  • 2016年1月以降の介護福祉士合格者
  • 一定の研修を受け都道府県知事から「認定特定行為業務従事者認定証」を受けた介護職員
  • 勤め先の施設や事業者が、医療と介護の連携を整えた上、都道府県知事の登録が必要

在宅酸素療法の付け替え・酸素流量の調整変更操作は医療行為

在宅酸素療法(HOT・ホット)とは

在宅酸素療法は、肺で酸素を取り入れて二酸化炭素を排出することができにくくなった状態である慢性呼吸不全などで行われます。
普通の空気中に存在する酸素は20%くらいの濃度で存在していますが、酸素濃縮装置や酸素ボンベから高濃度の酸素ガスを流入させて取り入れる酸素の割合を高くする治療です。
カニューラと呼ばれる細長いチューブをとおして酸素を吸入します。

介護職員が在宅酸素療法の操作をすると

在宅酸素療法では、安静時や労作時の流量について○リットル~○リットルと医師から指示が出ています。
酸素流量の調整などの操作自体はただ目盛りを回すだけかもしれませんが、苦しそうだから酸素を多く与えればよいと安易に考えてはならないものです。
酸素100%に近い空気を吸い続けたとしたら、酸素をとり過ぎてもバランスが崩れて下手すると昏睡になります。
また、カニューレの付け替えやボンベの交換などの手順を誤ったり、医療者がみたら危ない徴候があるときに気付けない、適切な対応ができないなどのことが起きる可能性があります。
このようなことから、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ、人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある医療行為にあたると考えられます。

在宅で家族が行っていることでも、第三者が行うときは注意

「在宅」という名前がつき、病院じゃなくても治療ができるんだから医療行為じゃないと考えてしまいがちです。
一般的に在宅酸素療法を手助けするのは家族なので、医師が本人と家族には在宅酸素の機器等の操作を許容しますので問題になりません。
しかし、介護職員等が操作を行い万が一のことがあった場合には業務上過失で罪に問われる可能性もあります。

介護職員として心配な医療行為は必ず上司や医療機関に確認

介護職員として、要介護者の介助を行うときには、基本的には介護計画に沿って行われます。
介護計画に無い行為は原則行いませんが、生活上の援助や身体面の介護を行う中で衛生管理や応急処置の必要性を感じる場面は多々あります。

医療行為の判断は難しいが、行なって良い根拠がないならやめた方が良い

今回紹介した介護職が遭遇することがある医療行為についても、介護職員が行なっていけないという通知などはないですが、喀痰吸引や胃ろうなどのように介護福祉士や研修を受けた人に認められている医療行為もあります。
一方で、そのような制度的な保護がないものに関しては、例え同意や医師の指示などがあったとしても介護職員が行うことは避けた方が良いと思います。

法的な裏付けや厚労省からの通知等もない状態で行われた医療行為については、判断して実施した介護職員に責任を問われ、罪や裁判沙汰になる可能性もあると思います。

ご本人から依頼されることもあるかと思いますが、心配なことはケアマネジャーや上司に相談してどうするか決めて安全第一で行動しましょう。

参考:医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の 解釈について(通知) 厚生

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